一目均衡表(いちもくきんこうひょう)は有名の指標のひとつです。世界中で使われている指標ですが、その一目均衡表を開発したのはなんと、細田悟一氏という日本人です。
そんな一目均衡表は、FXの分析をするうえでたいへん重宝するので、ぜひその使い方を身に着けておきたい指標です。
同じ日本人だから、という言い方だと少し飛躍してしまう感じもしますが、先人が残した偉大な発明を日本人である我々が使わない手はありません。
この記事では、一目均衡表の基本的な見方、分析方法をご紹介します。知識だけ知って終わりではなく、実戦で使えるようにぜひ身に着けてください。
一目均衡表の誕生の歴史
一目均衡表の開発者である細田氏は、新聞記者でした。彼は長年の月日をかけて一目均衡表を開発し、「一目山人」という彼のペンネームからその名を付けました。
一目均衡表はその名前の通り、一目見ただけで簡単に相場の流れを把握することができます。それでは早速、一目均衡表をチャートに表示してみましょう。
たくさんの線がチャート上に出現しました。他の指標に比べて情報量が多いので、ひょっとしたら、
と感じる方もいるでしょう。しかしその見方はいたってシンプルで簡単なのでご安心ください。ひとつずつ丁寧に解説していきます。
それぞれの線の名称・役割
それでは一目均衡表の見方について解説します。まず初めに、赤色の基準線、黄緑色の転換線、ピンク色の遅行線についてです。
1.基準線
赤色の線を「基準線」と呼びます。この線は移動平均線に近い性質を持っています。
移動平均線のポピュラーな使い方に、相場の状況を確認するというものがあります。線が上向きであれば上昇トレンド、反対に下向きであれば下降トレンド、横ばいであればもみ合いが発生している、という見方です。
移動平均線はローソク足との位置関係も重要で、ローソク足が移動平均線の上にあれば上昇トレンド、下にあれば下降トレンドを意味します。基準線はこの2つの特徴を持っています。
こちらのチャート上にある基準線をご覧ください。他の線は全て無視して、赤色の基準線だけ注目してください。
基準線の向き、ローソク足との位置関係ではっきりとトレンドを追従できるのが確認できます。
2.転換線
転換線の性質も基準線と同じく、移動平均線の性質に近いものがあります。
既に移動平均線についてご存知の方は、
- 基準線=中期の移動平均線
- 転換線=短期の移動平均線
と解釈すると分かりやすいでしょう(厳密には全く同じものではありませんが、その違いに関しては後述します)。
基準線と転換線を見るときに、注目したい重要なポイントがあります。それはふたつの線の「クロス」です。
ゴールデンクロスが発生したら上昇トレンドのシグナル、デッドクロスは下降トレンドのシグナルです。このクロスの性質も移動平均線に似ていますね。
基準線と転換線はその他も移動平均線的な見方ができます。移動平均線の3つの線の並び方が長期線、中期線、短期線と並んでいた場合、トレンドのシグナルです(下から長→中→短期線の並び方で上昇トレンド、上から長→中→短期線の並び方で下降トレンド)。
この特徴は基準線・転換線でも使用可能で、基準線→転換線という順番に並んでいる相場はトレンドが発生しているという分析ができます。
下から数えて基準線、転換線という並びなら上昇トレンド、上から基準線、転換線という順番になっていれば下降トレンドです。
3基準線と転換線を割り出す計算式
基準線と転換線について「全く同じではないが、移動平均線に近い性質」と説明しました。
使い方や見方は移動平均線と遜色ないのですが、これらの線を割り出す計算式が異なっているので、「全く同じ」ではなく「近い性質」という言い方をしました。
参考までに移動平均線、基準線、転換線の計算式をご紹介します。必ず覚えなければいけないものではありませんが、知っていた方がより理解が深まるので、頭の片隅に入れておいてください。
- 移動平均線:ある期間の終値の平均値(10日線であれば10日分の平均、25日線であれば25日分の平均、)
- 基準線:一番新しいローソクから数えて26日間の(高値+安値)÷2
- 転換線:一番新しいローソクから数えて9日間の(高値+安値)÷2
4遅行線
遅行線は、その名前の通りチャート上で遅れて推移している線です。次のチャートをご覧ください。
ピンク色の線が遅行線で、この線だけ一番右側まで達していないのが分かります。(※本記事で用いる画像には、より分かりやすい解説のため過去のチャートを使っています。過去の、既に経過したチャートなので、遅行線が一番右に達している画像もあります。)
そんな中、
そう思う方もいるかもしれません。しかしこの遅行線は、開発者の細田氏もその重要性を強く説くほど大切な指標なのです。
開発者自身もその重要性を説く遅行線、その見方は至ってシンプルです。こちらのチャートでピンク色の遅行線をご覧ください。
遅行線の見方は、移動平均線、基準線、転換線とは反対に、遅行線がローソク足より上にあれば買いの勢い、反対に下にあれば売りの勢い優位です。
また、遅行線は他の線とのクロスではなく、ローソク足とのクロスに注目します。遅行線がローソク足を下から上に抜けたら買いのシグナル、反対に上から下に抜けたら売りのシグナルです。
ちなみに遅行線が遅れて発生する理由ですが、その理由も至ってシンプルです。それは、「遅行線=一番新しいローソクの終値を26日前に示している線」だからです。
意図的に後ろに表示しているので、遅れて現れるのは当然のことです。
一目均衡表のシンボル、雲
一目均衡表の中で最も目を引く特徴的なのがこの雲でしょう。その名前の通り、チャート上にモクモクと紫の雲のような塊が出現しています。
他の線同様この雲もまた、チャート分析を一目でできる重要な指標です。まず雲の役割の一つ目は、サポートラインとレジスタンスラインです。
1サポートラインとレジスタンスライン
ローソク足は、たとえトレンドが発生している最中でも、トレンド方向へ一方的に上がり続けるのではなく、上がったり下がったりジグザグに推移していきます。
例えば上昇トレンド中、相場全体の流れを見ると上昇しているのですが、中には陰線が発生したり一時的に下がることもあります。
しかしそこでトレンドが転換するのではなく、再び買いの勢いに押されて上昇をします。
以上を踏まえて次のチャートをご覧ください。
ローソク足チャートのみを表示していますが、その中に1本オレンジ色の線を引きました。
線を引いた部分は上昇トレンドなのが分かりますが、上昇中に一度大き目の陰線が現れ下降しました、そのあたりでオレンジの線に触れています。しかしその線を割ることなく再び少々をしています。
このように、上昇トレンド中に出現する、下降したローソク足の下値を支える線を「サポートライン」と呼びます。
反対に下降トレンドで上昇を妨げる上側の線を「レジスタンスライン」と呼びます。ふたつの線を総称してトレンドラインという言い方もします。
雲はこのトレンドラインの役割も果たします。雲が下値・上値を支える目安になり、雲に接近したら反発しやすい、雲を抜けたらトレンド終了、と相場の流れを分析することができます。
ただ、あくまで相場の分析の指標であり、
とポジションを持つのはNGです。雲を目安にローソク足が転換することもありますが、転換せずそのまま雲の中に侵入、雲を突き抜けてしまうこともあります。
2雲を抜けたかどうかは慎重に見ること
また、雲とローソク足の関係を見るうえで注意したいポイントがあります。それは、「しっかりと雲を抜けきっているかどうか」です。
ローソク足が雲の中に侵入している時、ローソク足の高値や陽線の終値が雲から少しはみ出すことはよくあります。ローソク足の頭が少し抜けただけでは、ローソクが抜けきったとは言えません。
しっかりとローソク足が雲を突き抜けたかどうか、焦らず慎重にローソク足を見てください。
ただ、雲を抜けたにもかかわらず、その直後に雲の中に押し戻されてしまうことも中にはあります。雲を抜けたというシグナルが、ダマシになってしまうパターンです。
FXはいかなるシグナルでも、ダマシになってしまうことがあります。100%信用できるシグナルは存在しません。
雲を抜けたことでトレンドの転換と断定するのではなく、他のシグナルと併用するのが賢明でしょう。
3雲の厚みにも注目
今までご紹介してきた雲の使い方だけでも豊富な情報量ですが、雲が教えてくれるのはこれだけではありません。
雲の厚さに着目して、ローソク足が雲を抜けるかどうか予想を立てると良いでしょう。
このチャートを見てください。前半部分は比較的厚みのある雲があり、ローソク足は雲の中に侵入することはありましたが押し戻されて再び雲から抜けています。
しかし、最新のローソク足の陰線部分は薄い雲です。雲の薄さは抵抗の強さを表すので、この雲は抵抗の弱い雲です。
このチャートの続きを見てみると、
予想通り薄い雲の抵抗は弱く、ローソク足が下に抜けました。
4未来の雲で一歩先の相場を見る
雲は今まさに、「必要な情報を教えてくれる重要な指標」です。しかし、今現在必要な情報だけではなく、なんと未来の相場も示してくれるのです。
これは他の指標にはない一目均衡表ならではの特徴です。通常ローソク足チャートでは、最新の情報は一番右側、現在の値段です。
しかし一目均衡表は、現在のローソク足よりも先に雲が出現します。
と思うかもしれません。たしかにトレードの手法によっては参考にしない人もいますが、未来の雲は相場観を立てるのに非常に有効です。
雲にはサポートラインとレジスタンスラインの役割、また、雲の厚さは抵抗の強さを表すとご紹介しました。
つまり、現在のローソク足の位置と値を見て、
「勢いが強くて雲が薄いから、突き抜けてもっと上がりそうだな」
と分析できました。この分析が今現在の相場ではなく、未来のローソク足の動きにも当てはめることができるのです。
ポジションメイクやトレード戦略を立てるのにかなり重宝します。また、実際にトレードすると実感できることですが、一歩先の相場が見えるというのは安心感があります。
5雲の成り立ちと計算式
雲はただ塊をチャートに表示しているわけでは無く、その成り立ちは、2本の線です。
雲の上下を見ると分かりますが、上下を包む紫色と少し薄い紫色の線があります。この2本の線の間を塗りつぶしたものが雲です。
これらの線を先行スパン1、先行スパン2と呼びます。一目均衡表の線は今まで○○線という名前でしたがこの線だけ少し変わった名称ですが、その計算式は以下の通りです。
- 先行スパン1:(基準線+転換線)÷2
- 先行スパン2:(過去の52日間の高値+安値)÷2
一目均衡表はご紹介した通り、情報量が豊富な指標です。全て使いこなせるようになれば他の指標と併用しなくても十分と言えるほどの情報量かもしれません。
大変便利な指標ですが、見るポイントがたくさんあるので、しっかり情報を読み取れるように練習が必要でしょう。
それではこの一目均衡表使ってチャートを分析するサンプルを用意しましたので、一度今までの内容を復習したうえで次に進んでください。
一目均衡表を使って実際にトレードしてみよう
まずはこちらのチャートをご覧ください。チャート中央あたりをきっかけに強い上昇相場が発生しています。どんなシグナルが隠されているでしょうか。
答えは、基準線と転換線のゴールデンクロスと雲抜けです。
まずゴールデンクロスが発生した時点で、上昇トレンドが発生する可能性があると判断します。その後雲に侵入、雲を抜けたあとに出現した大陽線で上昇トレンド確定と判断します。
さらに遅行線がローソク足の上にあるので、まだまだ買いの勢いが強そうな相場です。
続いてはこちらをご覧ください。
前半部分は下降トレンドです。以下のシグナルが確認できます。
- 基準線→転換線の順番を形成
- 遅行線がローソク足の下を推移
- 雲がローソク足の上にある
下降トレンドの傾向が強く表れているので、ショートでエントリーします。しかしチャートの終盤部分ではゴールデンクロスが発生し、さらに雲に侵入しました。
雲の上にローソク足が少し顔を出しましたが、雲をしっかり抜けきったわけではありません。それどころか陰線が出現してしまい、雲の中に押し戻されたのが確認できます。
「まだ何とも判断できないので、このチャートでは何もしない」が正解です。
FXは、ポジションを持つタイミングを探すことは大切ですが、何もしないという判断を下すことも大切です。
当然いかなる相場でも、ポジションを持てるわけではありません。撤退した方がいい危険な相場もあります。
最後はこちらです。
前半部分で厚い雲に侵入、その後大陰線に押し戻されながらも雲を抜けました。陽線が連続しこのまま上昇トレンドが発生するかと思いきや、再び雲を下回って下降トレンドになりました。
下降の原因は、「遅行線と雲の厚み」です。一目均衡表の開発者、細田氏が重要性を説く遅行線の影響力は非常に大きく、遅行線が下にあるせいで思うように上昇できませんでした。
また、ローソク足が上に抜けた後の雲は比較的薄い雲です。上に抜けたものの、雲の薄さが災いしてすぐに反対方向に抜けてしまいました。迅速な売買が必要な相場です。
得意な指標を増やす=利益のチャンスを増やすこと
FXにはたくさんの指標があります。
中でも一目均衡表は情報量が多いので、苦手な人は一切使わず、得意な人はトレードの主軸になる、そんな両極端な指標です。
しかし得意な指標を増やすということは、利益をあげるチャンスを増やすことに他なりません。
情報量が多く大変そうだと感じるかもしれませんが、一目均衡表の使い方をマスターして役立ててください。
「ごちゃごちゃしててよく分からない!」