チャート分析をする際に用いる指標には様々なものがあります。トレーダーによって使う指標は異なりますが、初心者のうちは、できるだけ多くのトレーダーが参考にしている指標を使うのが良い分析方法です。
何故なら、参考にしているトレーダーが多い指標がシグナルを示せば、それだけ多くの人が売買するので相場に与える影響が大きいと言えるからです。
多くのトレーダーが分析に使う定番の指標が移動平均線でしょう。初心者からプロまで多くのトレーダーが重宝している指標です。
移動平均線と同じく、ボリンジャーバンドを用いたチャート分析も「定番の分析方法」です。
一見複雑に見える指標なので、初心者の中には敬遠しがちな人もいるかもしれません。しかし、ボリンジャーバンドの見方を身に着けると「トレードのチャンス」は一気に広がります。とても頼りになる指標なので、ぜひ身に着けていきましょう。
株でもFXでも使われる投資界の人気者、ボリンジャーバンドとは?
ボリンジャーバンドは、その名前の由来にもなっていますがジョン・ボリンジャー氏が考案した、統計学を駆使してチャート分析を補助する指標です。誕生したのが1980年代で、比較的歴史の浅い指標です。
実際に、こちらのチャート上にボリンジャーバンドを表示させてみましょう。
このようになりました。縮尺率が異なっていますが同じチャートです。
線の数が多く、また線が形成する形も独特なので、ひょっとしたら難しそうだと感じる人もいるでしょう。
ボリンジャーバンドの基本的な見方
先ほどご紹介したチャート画面を再度見てみましょう。
ローソク足の上下に黄色、ピンク、黄色の線、さらにローソク足の近くに青色の線があります。まずはそれぞれの線について解説します。
6つの線σ(シグマ)と移動平均線
ローソク足を囲むように上下に表示された、
- 黄色の線
- ピンクの線
- 緑の線
をσ(シグマ)と呼びます。
- 中心を走る青い線からひとつ上に離れた緑の線:+1σ
- さらにひとつ離れたピンクの線:+2σ
- もっとも離れた黄色の線:+3σ
と呼びます。ローソク足の下にある線は-1σ、-2σ、-3σと呼びます。
先ほどのチャートでσとローソク足を見てください。ローソク足がσに触れている場所が確認できます。最大でも一番外側の黄色い3σに触れてはいるものの、線をまたぐように大きく超えることは無く、±3σの内側でローソク足が推移しています。
このようにボリンジャーバンドのσの線は、ローソク足を内側に含んで推移していきます。
「σの線を越えているかどうか」という点が大きなトレードのヒントになります。±1~3σの線には、ローソク足がその線を超える確率というものがあります。その確率は以下の通りです。
- ±1σ:68.3%
- ±2σ:95.5%
- ±3σ:99.7%
先ほどのチャートも±3σの内側で収まって推移していました。ほとんどの場合は±2σの内側、それを超えたとしても99.7%の確率で±3σの内側に収まるのです。
ちなみに上下のσに囲まれた中央の青い線は移動平均線です。FX会社によって異なりますが、おおよそ短期~中期線で表示される場合が多い傾向です。(トレードの手法に合わせて数値は変更可能です。)
スクイーズ、エクスパンション、バンドウォーク
線とローソク足の関係についてご紹介しましたが、ボリンジャーバンドはσの線たちが作り出す、「全体の形」に注目することも重要です。
木を見て森を見ず、ではボリンジャーバンドを最大限活用することはできません。ボリンジャーバンドには3つの特徴的な形が確認できます。3つの形は、スクイーズ、エクスパンション、バンドウォークと呼ばれています。
1.スクイーズ
上のチャートにあるような、バンドが収縮している部分をスクイーズと呼びます。ボリンジャーバンドがこの形を示しているときは、「トレンドが生まれていない状態」を表しています。
上昇・下降どちらにもトレンドが生まれず、ローソク足が一定の範囲内で上下に行き来している状態をレンジ相場(またはボックス相場)と呼びます。スクイーズはこのレンジ相場(ボックス相場)を表しています。
2.エクスパンション
エクスパンションは、スクイーズとは真逆の形で、バンドが広がっている状態を指します。エクスパンションはこのチャート上の真ん中にある形です。バンドが一気に広がっているのが分かります。
チャートからも確認できるように、エクスパンションは相場の勢いを示したり、「トレンドが発生した時に出現」する形です。レンジ相場だったのが、エクスパンションとともに一気に上昇しました。
実際のチャートを使ってご説明します。さきほどチャートをご覧ください。
上昇トレンドに入る地点で、+3σは上向き、-3σは下向きに大きく広がっています。このように、-σが下向きに大きく開けているのがエクスパンション完成の条件です。
下降トレンドでは反対に、+σの線が上向きに大きく広がっている必要があります。続いて、エクスパンションを形成していない例をご紹介します。
バンドが縮んだり大きくなったりを繰り返していますが、それにローソク足は関係なく動いています。たしかに±3σが上下に広がっている部分はあるのですが、この程度の広がり方では不十分です。
また、バンド全体の厚みがさほど変わっていないのも確認できます。これではエクスパンションとは呼ぶことはできません。
ボリンジャーバンドの形に注目して分析するときに、「エクスパンションを勘違い」してしまわないよう十分に注意して下さい。
3.バンドウォーク
チャート上でローソク足が+2σ線に沿って動いている部分があります。このような状態をバンドウォークと呼びます。
バンドウォークが確認できた時は「大きなチャンス」です。バンドウォークはトレンドが安定していることを表し、多くの場合トレンドに従うだけで容易に利益をあげることができます。
ボリンジャーバンドを使った分析でバンドウォークは非常に重要なので、必ず頭に入れておきましょう。
ボリンジャーバンドの基本的な見方とあわせて、エントリー方法についても少しご紹介しました。続いて、ボリンジャーバンドを使ったチャート分析・トレード方法に関してより詳しくご紹介します。
ボリンジャーバンドを使った分析、トレード方法
基礎知識をおさえたところで、続いては実際に使ってみましょう。冒頭でも少し触れましたが、ボリンジャーバンドは様々なシチュエーションで使うことができます。
トレンド相場におけるボリンジャーバンド
こちらのチャートは右側を見ると分かりますが、上昇トレンドが発生しています。ボリンジャーバンドを使って、トレンドが発生していることの裏付けをすることができます。以下の通りです。
- ローソク足が移動平均線の上にある
- ボリンジャーバンドのバンドウォークが発生している
ボリンジャーバンドはσの線だけではなく、移動平均線も表示されるという点も嬉しいポイントです。
移動平均線の基礎知識、
「ローソク足が移動平均線の上にある時は上昇トレンド、下にある時には下降トレンド」
という分析も、ボリンジャーバンドを表示することで可能になります。FXの基本はトレンドに従うことです。
ボリンジャーバンドは、エントリーのタイミングだけではなく「利食いのタイミングを見極める」のにも役立ちます。
先ほどのチャートは買いの勢いが強力でした。少し上に突き抜ける部分はありますが、95.5%の確立でその内側に収まる、±2σ線を越えずに線に沿って推移しています。
そうなる前に利益を確定しましょう。
先ほどのチャートでは、反対方向へ動くどころか、下降せずそのまま買いの勢いを増しています。その場合は、単純にもう一度ロングでエントリーをすればいいだけです。
利食いしたあともまだ上がりそうであれば(バンドウォークもあるので十分その見込みアリ)、再度エントリーしてみるのも良いでしょう。
レンジ相場でも心強い分析の味方に
レンジ相場は上昇と下降を繰り返す相場です。トレンド相場のような分かりやすい状況ではなく、ロングでエントリーしては下がってしまい、ショートでエントリーしては上がってしまう、といったことが頻繁に起こる読みにくい相場です。
トレンド相場よりも利益をあげるのが、はるかに難しい相場です。
しかし、そんなレンジ相場ですが、ボリンジャーバンドを使って分析することで初心者でもチャンスを引き寄せることができます。
前述の「トレンド相場におけるボリンジャーバンド」でご紹介した、利食いポイントを見抜く方法をここでも使います。
こちらのチャートはレンジ相場です。買いと売りの勢いがもみあい、はっきりとしたトレンドを形成できずにいる状態です。
ボリンジャーバンドとローソク足を見ると、±2σ~3σのあたりで何度も反発しているのが分かります。この状況でのエントリー方法は以下の通りです。
- ローソク足が-2σに触れたらロングでエントリー、+2σに触れたら利食い
- ローソク足が+2σに触れたらショートでエントリー、-2σに触れたら利食い
このエントリーがうまくいけば、何度も上下に動くレンジ相場で、繰り返し利益を上げることができます。
ボリンジャーバンドの弱点と注意点
分析、エントリー、利食いと様々なシチュエーションで重宝しそうなボリンジャーバンドですが、弱点もあります。それは、「特別な状況、非常に強力な勢いのある相場では参考にならないことがある」という点です。
ボリンジャーバンドの弱点をご紹介する前に、FXの分析に関して少しお話します。
FXは、チャートの動向だけで分析するテクニカル分析の他、ファンダメンタル分析と呼ばれる分析方法があります。(ご紹介しているのは指標を使った分析なので全てテクニカル分析です。)
このように、チャートではなく経済の動向などを用いて分析することをファンダメンタル分析と呼びます。
アメリカの経済がFXの相場に与える影響は非常に大きく、テクニカル分析で緻密に分析したエントリーを、無慈悲に一気に飲み込んでしまうほどインパクトがあります。
ボリンジャーバンドが発するシグナルは、そのような強力な勢いがある相場ではダマシになることが多いのです。
±3σを大きく越えたら注意
例えば不規則にチャートが動いたり、チャートが急激に上昇したり、その反対に暴落する可能性もある危険な相場になるかもしれません。
そのような相場で経験の浅いトレーダーが順調に利益を上げるのは至難の業です。ポジションを持っているのであれば決済、ポジションがないのであれば何もしないのが良いでしょう。
何もしない、というトレードは非常に大切なことです。ある程度FXでトレードをしていると、
と誤ったタイミングもチャンスに見えてしまうことがあります。また、分析が不十分にも関わらず、ついポジションを持ちたくなってしまうなんてこともあります。
ボリンジャーバンドを使ってトレードしてみよう
それでは、ご紹介したボリンジャーバンドの分析方法を用いて実際にトレードしてみましょう。
このチャートの局面において、いったいどのようなトレードができるでしょうか。
こちらのチャート利益を上げる大チャンス、バンドウォークが出現しています。バンドウォークが出たときには迷わずポジションを取ります。
バンドウォークが出現する前、チャートの中央から左側を見るとエクスパンションがあるのにも関わらず、トレンドを形成できていない部分があります。
±3σが十分に上下に開いているのにもかかわらず、トレンドを形成できていない、この原因になっているのが窓です。
しかし、チャート内のエクスパンションのあたりにある大きい陰線を見てください。陰線が現れた次のローソクが、大きく下に離れたところに現れています。このように、隣接しないローソクの間にある空白を「窓」と呼びます。
通常FXではローソクがきれいに並びます。しかし窓が現れてローソクが離れているということは通常ではない状態、「相場に特別なことが起こりやすい」状況であると分析できます。
このような特別な状況では、「ボリンジャーバンドは参考にならない」とご紹介しました。
エクスパンションが発生よりも、窓が発生している通常ではない相場という力が相場を支配してしまい、ボリンジャーバンドが役に立たなくなっています。
ボリンジャーバンドが参考にならない状況に加えて、いかにバンドウォークが強力かを物語っているチャートでもあります。何故ならバンドウォークは、そんな特別な相場であっても力強く上昇しているからです。
続いてはこちらのチャートをご覧ください。特徴的な形をしています。
- どのような相場でしょうか?
- ボリンジャーバンドを使ってどのようなエントリーができるでしょうか?
正解は、
- ボックス相場なので、上下に変動を繰り返す。
- ±2σに触れたところでエントリーをして細かく複数回利益を上げる
続いてはこちらです。この相場ではどんなトレードをしたらいいでしょうか。
このチャートでは、ボリンジャーバンドを使って確認できるシグナルは何もありません。
一見エクスパンションに見えるような動きをしていますが、その広がりの幅は小さいうえに、実際にローソク足もトレンドを作っていません。さらに、スクイーズと呼ぶには収縮が不十分です。
このように、特にシグナルがない、もしくはよくわからない相場では、「何もしないということが大切」です。正しい形が現れていないのに、
と思いポジションを持ってしまう、そのような冷静さを欠いたトレードは損失のもとです。
ボリンジャーバンド+他の指標で冷静な分析を
ボリンジャーバンドは、使い方によってはそれだけで十分な良い判断材料になります。しかし他の指標もあわせて使うと、より正確性を増すという特徴があります。
代表的なもので言うと「MACD」です。ボリンジャーバンドとの組み合わせとしてよく使われる良きパートナーです。
ボリンジャーバンドが発するシグナルだけを頼りにするのも時には有効ですが、できれば他の指標も一緒に見てじっくり分析するのがベターです。
記事中でご紹介したことと重複してしまいますが、トレードにおいて肝心なのは冷静さです。冷静さを欠いたトレードは投資ではなく、ただのギャンブルです。
しっかりとチャートを分析して、明確な根拠を見つけてからポジションを持ちましょう。
もし読みが外れて損失を出した場合にはなぜ予想が外れたのか、一旦トレードをやめて敗因を分析してみましょう。