FXトレードで、テクニカルチャートの中にある「パラボリック」を使ってみたい、とお考えですか?
というような、パラボリックチャートが気になるあなたに、FXにおけるパラボリックチャート分析の見方と活用法についてわかりやすくまとめました。
今回は
- パラボリックチャートの見方
- パラボリックチャートの特徴とメリット・デメリット
- パラボリックチャート分析のデメリットをカバーする方法
- パラボリックの応用
の4つのポイントについて、実際のトレードでそのまま使える実践手順としてまとめています。ぜひトレードで使ってみてください。
パラボリックとは?
「パラボリックっていう名前が気になるんですけど、どんな意味なんでしょうか?パラボラアンテナと何か関係があるのでしょうか?」
パラボラアンテナ
パラボリックは英語にすると「Parabolic」で、「放射線状の」という意味を持ちます。パラボリックチャートはローソク足の上下に点が並んでいますが、これをつないでいくと、放射線状になるところから、パラボリックという名前が付けられています。
「パラボラアンテナ」は「parabolic antenna」ですが、これはパラボラアンテナの形が放射曲線になっていることに由来します。「パラボラ」はまさに「パラボリック」なのです。
パラボリックはトレンドフォロー系のテクニカル指標です。トレンドフォロー系のテクニカル指標では移動平均線(MA)が有名ですが、パラボリックもこれと同じグループのテクニカル指標です。
パラボリックの生みの親は、テクニカル分析の大家であるJ・ウエルズ・ワイルダー(ジュニア)氏です。オシレーター系指標の定番である「RSI」も同氏が考案したものです。
氏がパラボリックを開発したのは1978年で、40年以上にわたって使用されていることになります。ここからもパラボリックの有用性を見い出すことができます。
パラボリックチャートで特徴的なローソク足の上下に並んでいる点は「SAR」と言います。「SAR」は「Stop And Reverse」を略したもので、「Stop(止まって)」「Reverse(反転する)」という意味です。このため、「パラボリック」は、正式には「パラボリックSAR」と言います。
パラボリックSARの計算式
「パラボリックSARへの理解を深めるため、ここではパラボリックSARの計算式について解説します。計算式が理解できなくても使用上はなんら支障はありませんので、数学が苦手な方はこの部分を飛ばして読んでいただいて構いません。」
SARの計算式は以下のようになります。
「EP」と「AF」は何者でしょうか。この2点がパラボリックの概念を理解するポイントとなります。
パラボリックSAR計算式のポイント(1):EP
「EP」は「Extreme Price」の略語で、日本ではそのまま「エクストリーム・プライス」と呼ばれたり、「極大値」などと訳されることがあります。
「EP」は、上昇トレンド中(SARが買いシグナルを発している間)はその期間中の最高値、下降トレンド中(SARが売りシグナルを発している間)はその期間中の最安値がその値となります。
パラボリックSAR計算式のポイント(2):AF
「AF」は「Acceleration Factor」の略語で、日本語ではふつう「加速因子」と呼ばれます。「AF」値はパラボリックの感度を左右します。
「AF」は初期値と最大値を設定し、「EP」が上昇トレンドでは新高値、下降トレンドでは新安値を更新するたびに初期値に足し算していきます。
「AF」はふつう以下のように設定されます。
- 初期値:0.02
- 最大値:0.2
終値が新高値(もしくは新安値)を更新したら、「0.02」ずつ加算していきます。初期値が「0.02」ならば、一度目の更新で「0.02+0.02=0.04」、これをさらに更新したら「0.04+0.02=0.06」と増加していきます。
このように、「AF」は終値が新高値(もしくは新安値)を更新するたびに増加していきますが、最大値である「0.2」を超えることはありません。
パラボリックSAR計算式のポイント(3):SAR
パラボリックの値となる「SAR」は、上述の「EP」と「AF」から求められます。計算式は以下のようでしたね。
SAR=(EP−前日のSAR)×(AF)+(前日のSAR)
なお、トレンド転換直後のSAR初期値は以下のようになります。
- 上昇トレンドの場合:直前の下降トレンドの最安値
- 下降トレンドの場合:直前の上昇トレンドの最高値
最後に、パラボリックSAR計算式をまとめておきます。
値 | 備考 | |
SAR | (EP−前日のSAR)×(AF)+(前日のSAR) | 初期値は直前のトレンドの最高値(最安値)。 |
EP | トレンド期間中の前日までの新値 | 上昇トレンド時は最高値、下降トレンド時は最安値。 |
AF | 0.02≦AF≦0.2 | 初期値:0.02、終値が新値を更新するごとに「0.02」ずつ加算。 |
パラボリックSARチャートの見方のポイント
ここからはFXトレードにおける基本的なパラボリックSARチャートの見方について解説します。
パラボリックSARチャートの見方のポイントは3つです。
- トレンド判定
- トレンドの強弱
- トレンドの転換点
パラボリックSARチャートの見方のポイント(1):トレンド判定
パラボリックSARはローソク足の上か下に点(SAR)が表示されます。以下の図を見ていただければわかるように、上昇トレンドではローソク足の下に、下降トレンドではローソク足の上に表示されます。
これはトレンドフォロー系の移動平均線と同じですね。
パラボリックSARチャートの見方(2):トレンドの強弱
パラボリックSARは、トレンドの方向のみならず、トレンドの強弱もわかります。強弱判定のポイントは点(SAR)の「スキマ」です。
パラボリックは、トレンドの強弱と2つの点(SAR)のスキマが比例するよう作られています。トレンドが強くなると点と点のスキマが広くなり、逆にトレンドが弱くなると、点と点のスキマが狭くなります。
点のスキマが広がったら「強いトレンドが発生している」と、逆に点のスキマが狭まったら「トレンドが弱くなっている」と判断できます。
パラボリックSARチャートの見方(3):トレンドの転換点
パラボリックチャートでは、下記の図のようにローソク足と点(SAR)が交差するポイントがトレンドの転換点となります。
パラボリックでは交差すると点(SAR)がローソクの反対側に飛ぶので、トレンドが転換したことがひと目でわかります。この点は移動平均線より見やすいですね。
パラボリックSARチャートの見方のポイントは以下の3点です。
- 上昇トレンドではローソク足の下に、下降トレンドではローソク足の上に点(SAR)が表示される。
- トレンドが強くなると2つの点(SAR)のスキマが広がり、弱くなると狭くなる。
- ローソク足と点(SAR)が交差するとトレンドが転換する。
パラボリックSARによる基本的なトレードの手順
「パラボリックSARの見方はわかったけど、実際にはどうやってトレードすればいいの?」
「パラボリックSARは見やすいチャートなので簡単に使えます。ここからは、FXにおける、パラボリックSARを使った基本的なトレード方法について解説します。」
パラボリックSARトレードの手順(1):エントリー
パラボリックSARでは、他のトレンドフォロー系のテクニカル指標と同様に、トレンドの転換点でエントリーします。
これまでローソク足の下にあった「点(SAR)」がローソク足の上に飛んだら売りエントリーを、逆にローソク足の上にあった「点(SAR)」がローソク足の下に飛んだら買いエントリーをします。
パラボリックSARトレードの手順(2):決済
パラボリックSARでは、決済のポイントもトレンドの転換点を用います。
売りポジションでは、ローソク足の上にあった「点(SAR)」がローソク足の下に飛んだら決済し、買いポジションでは、ローソク足の下にあった「点(SAR)」がローソク足の上に飛んだら決済します。
パラボリックSARを使ったトレードの手順は以下のとおりです。
- 点(SAR)が反転したトレンドの転換点でエントリーする。
- 点(SAR)が逆の方へ反転したら決済する。
パラボリックSARの要点:メリットとデメリット
「簡単ですね。これならわたしにもできそうです。」
パラボリックは初心者にも読みやすいテクニカル指標ですが、デメリットもはっきりしているので注意が必要です。
FXトレードの実戦において重要になるのは、パラボリックがどのような特徴を持っており、その長所と短所がどこにあるのか、というポイントについてよく理解することです。
ここからはパラボリックSARの特徴について、そのメリットとデメリットを整理します。
パラボリックSARのメリット
パラボリックSARのメリットは以下の3点です。
- 大きなトレンド相場に強い
- トレンドの転換を明示する
- ドテン売買できる
パラボリックSARのメリット(1):大きなトレンド相場に強い
パラボリックSARは大きなトレンド相場で威力を発揮します。点(SAR)が美しい放射曲線を描きつつ、トレンドに乗って快走するローソク足についていくその姿はまるで芸術のようです。
点(SAR)の間隔でトレンドの強弱を判断できるので、間隔が開いている間は安心してトレンドについていき、間隔が狭まってきたらトレンド転換点が迫っているかもしれないと考え、利確を意識します。
パラボリックSARのメリット(2):トレンドの転換を明示する
パラボリックSARはトレンドが転換すると点(SAR)が反対側に飛ぶので、トレンドの転換がひと目でわかります。
パラボリックSARのメリット(3):ドテン売買できる
パラボリックSARでは、トレンドの転換点で売買を行うので、売りのポジションを決済したらすぐに新規で買いのポジションをとり、買いのポジションを決済したらすぐに新規で売りのポジションをとる、というような、「ドテン売買」を行うことができます。
「ドテン売買」を行うと、常に買いか売りのポジションを持っていることになります。
ドテン売買が成功すると収益はまたたく間に増大しますが、初心者の場合、パラボリックに慣れるまでは、無理に「ドテン売買」を行わず、大きなトレンドの方向に従って「エントリー」→「決済」という単発のトレードを繰り返しながら練習するのがよいでしょう。
パラボリックSARのデメリット
パラボリックSARのデメリットは以下の2点です。
- ダマシにひっかかりやすい
- レンジ相場に弱い
パラボリックSARのデメリット(1):ダマシにひっかかりやすい
パラボリックSARはトレンド転換を明示してくれる分、ダマシにも引っかかりやすくなります。以下の図をご覧ください。
反転のシグナルが出ているにも関わらず、すぐにまた元のトレンドに戻っています。よくトレンド中の押し目でトレンド転換シグナルが発生してしまうので、転換シグナルは過信できません。
パラボリックSARのデメリット(2):レンジ相場に弱い
パラボリックSARはトレンドフォロー系のテクニカル指標なので、レンジ相場(もみ合い相場)では正しく機能しません。
パラボリックSARをレンジ相場で使うと、買うと下がり、売ると上がるという往復ビンタを食らうことになります。
パラボリックSARのメリットとデメリットについて簡単にまとめます。
パラボリックSARのメリットは、
- 大きなトレンド相場に強い
- トレンドの転換を明示してくれる
- ドテン売買できる
ところです。一方のデメリットは、
- トレンド中の押し目でトレンド転換シグナルが発生しやすく、ダマシにひっかかりやすい
- レンジ相場に弱い
点です。
パラボリックSARのデメリットをカバーする方法
ここからはパラボリックSARの弱点であるダマシとレンジ相場対策について解説します。
パラボリックSARのデメリットをカバーする方法(1):ダマシ対策
パラボリックSARのダマシ対策として以下の3つの方法があります。
- 点(SAR)をカウントする
- 長期足でトレンドを確認する
- パラメーターを変更する
パラボリックSARのダマシ対策(1):点(SAR)をカウントする
パラボリックSARのダマシ対策として、点(SAR)が3つ出現するのを待ってトレンド転換を確定するという方法があります。
点(SAR)が3つ出現するのを待つことで、小さな押し目を回避できます。
パラボリックSARのダマシ対策(2):長期足でトレンド確認
短期足ではトレンド転換のシグナルが出ていたとしても、長期足ではまだトレンドが継続している場合、トレンド転換ではなく押し目であると判断します。
以下の図は同じ期間の1時間足と4時間足のチャートです。
同じ期間でも、1時間足では何度もトレンド転換シグナルが発生していますが、4時間足では一つのトレンドがきれいに続いています。
パラボリックSARのダマシ対策(3):パラメーターの変更
パラボリックSARはAF値(加速因数)を調整することで、感度を調整できます。
初期値は0.02で、この値を小さくすることで感度を下げ、ダマシを減らせますが、その分転換シグナルの発生も遅れます。
パラメーターの変更は細かい調整が効きますが、最適な数値を見つけるには検証を重ねる必要があり、初心者にとっては少し難しいかもしれません。
「3つの方法の中では、点(SAR)のカウントは一つのチャートの中で直感的に理解できるので、初心者にとってはよりわかりやすいかもしれません。」
パラボリックSARのデメリットをカバーする方法(2):レンジ相場対策
パラボリックSARはレンジ相場に弱いのが最大のデメリットです。この点をカバーするため、他のテクニカル指標と併用して、レンジ相場に入ったら使用を停止するなどの対策を行います。
パラボリックの生みの親であるJ・ウエルズ・ワイルダー(ジュニア)氏は、同じく氏が開発した、トレンドの強弱を見る指標であるDMIのADXとの併用を推奨しています。
ADXはトレンドが強くなると数値が大きくなります。基本的には25%を判断基準として、これを超える場合はトレンド相場、これを下回る場合はレンジ相場と判断します。
DMIとADXからは他にもいろいろな情報を読み取ることができますが、トレンドの強弱を知りたいのならば、ADXの値を見るだけで十分です。
パラボリックSARの応用
ここまではパラボリックSARのデメリットをカバーする方法について紹介していきました。ここからはパラボリックSARを応用したテクニカル手法について解説します。
パラボリックSARは大きなトレンドに強いというメリットがあります。であるならば、トレンドの波にうまく乗っている状態で、決済ポイントの確認にパラボリックSARを用いる、というやり方もあります。
パラボリックSARでエントリーから決済まで行うのではなく、決済ポイントの判断にのみパラボリックSARを使用するのです。
この方法では、エントリーの判断は別のテクニカル指標を使用します。うまくトレンドに乗ることができたら、パラボリックSARを使って、トレンドについていきます。
決済の判断にパラボリックSARを用いるこの手法は、利が出ると持ちきれずにすぐに利益確定してしまうというトレーダーに有用です。パラボリックSARを使って、可能な限りトレンドについていくのです。
パラボリックSARが転換シグナルを発した時点で決済を行い、利益を確定します。こうすることで、トレンド相場に強いパラボリックSARのメリットを最大限に活かすことができます。
まとめ
パラボリックSARは、
- 大きなトレンド相場に強い
- トレンドの転換を明示する
- ドテン売買(決済と同時に反対方向へ新規にエントリー)できる
というメリットがあります。一方で
- ダマシにひっかかりやすい
- レンジ相場に弱い
というデメリットがあり、これをいかに回避するのか、というのがポイントとなります。
パラボリックSARの基本的な見方は
- 上昇トレンドではローソク足の下に、下降トレンドではローソク足の上に点(SAR)が表示される。
- トレンドが強くなると2つの点(SAR)のスキマが広がり、弱くなると狭くなる。
- ローソク足と点(SAR)が交差するとトレンドが転換する。
の3点で、実際のトレードでは、
- 点(SAR)が反転したトレンドの転換点でエントリーする。
- 点(SAR)が逆の方へ反転したら決済する。
のように実行しますが、デメリットの問題を回避するため、
- 点(SAR)が3つ出現するのを待つ
- 長期足でトレンド確認する
- パラメーターを変更する
- DMIのADXと併用する
のような方法でダマシやレンジ相場を回避します。
また、パラボリックSARを決済ポイントの判断にのみ使用することで、レンジ相場を避け、確実にトレンド相場に乗って利益を拡大するという方法もあります。
パラボリックSARは、チャートのわかりやすさから初心者にもおすすめできるテクニカル指標です。特にトレンドが出ている場面では、トレーダーに大きな利益をもたらしてくれます。
レンジ相場さえうまく回避できれば、初心者でも十分に利益をとることができるでしょう。
「パラボリックって英語だと思うんですけど、どんな意味なんでしょうか?」
「パラボリックの点々は何ですか?どうやって使うんでしょうか?」
「移動平均線はラインが多くて、どのラインを使えばいいのかわからないから、パラボリックを使ってみたい。」