FXチャートの分析には、様々な指標が用いられます。中でも多くの投資家が使っている定番の指標が移動平均線です。
移動平均線は重要なシグナルを示すだけでなく、視覚的に「簡単に理解できる」使いやすさも魅力です。その使いやすさは、初心者トレーダーでも十分に勝機を見抜くことができるほどです。
この記事では、初心者向けに移動平均線についての解説と使い方をご紹介します。また、実際のチャートを使った実践的なトレード活用法もご紹介するので、ぜひ参考にして身につけてください。
定番だけどプロも重宝、それが移動平均線
移動平均線の重要性
まず移動平均線という指標が、なぜ重要なのかという点についてお話します。
移動平均線は、プロ・初心者問わず多くの投資家たちが「参考にしている指標」です。大勢の投資家たちが、移動平均線の発するシグナルを目印にしてトレードします。
移動平均線を実際に見てみよう
上のチャートをご覧ください。赤と青のローソク足以外に紫色、オレンジ色、緑色の3つの線があります。この3本のライン全てが移動平均線です。
ローソク足に3本線が加わっただけですが、少し複雑そうに見えてしまうかもしれません。ですが大丈夫です、見方はとても簡単です。
- 一番なだらかな紫色の線:長期線
- 次になだらかなオレンジの線:中期線
- 最もローソク足に近い動きをしている緑の線:短期線
と呼びます。
長期線、中期線、短期線は何の長さ?
移動平均線の3つの線はどれも〇期線という名称なので、
と思う方もいるでしょう。この説明をするためには、移動平均線がいったい何を基準に引かれた線なのかをご説明する必要があります。
これを知っていると、移動平均線の理解度がグッと高まるので、ぜひおさえてください。
難しい言い方になりますが、移動平均線は「指定された一定期間の終値の平均値を結んだもの」です。
それだけ言われてもあまりピンとこない人が多いでしょう。先ほどのチャートの画像を見て確認してみましょう。
このチャートは、1日ごとにローソクがひとつ更新される日足です。画像左上に、
- 短期:15
- 中期:45
- 長期:75
とありますね。短期、中期、長期と数字が大きくなっています。この数字は何を表しているのかが重要です。
前述した、「移動平均線は指定された一定期間の終値の平均」という説明ですが、この数字がその一定期間を表しています。つまり終値の平均が、
- 短期線は15日間
- 中期線は45日間
- 長期線は75日間
になります。この平均をとる期間が長いほど長期線になり、短いほど短期線になります。
いくつ以上を長期線と呼ぶのか、いくつ以下が短期線なのかというボーダーがあるわけではなく、他の2本の線と比べて長いか短いかという相対的なものです。
移動平均線の3つの線の期間は人によって様々です。正解・不正解はなく、「使いやすい数値を探す」のがチャート分析のカギです。
移動平均線の本数
蛇足的な内容になりますが、移動平均線に関するプラスαの情報をご紹介します。
移動平均線は長期、中期、短期の3つの線とご説明しましたが、トレーダーによっては中期を使わずに長期、短期だけを使う人もいます。
その反対に中期だけを参考にしている人もおり、トレードの手法によって十人十色です。何日間の終値の平均なのか、という期間だけではなく線の数もカスタマイズできる奥深さがあります。
まずはしっかりと基礎を身に着けることが大切ですが、将来的には自分のトレードに合う移動平均線を探してみるのも良いでしょう。
移動平均線の使い方、トレンドを把握する
これまで移動平均線がどんなものなのかご紹介してきましたが、ここからはいよいよ使い方をご紹介していきます。
移動平均線が一番効力を発揮するのがトレンドを把握したい時です。繰り返しになりますが、FXは「トレンドに乗ること」が大原則です。
トレンドに逆らったトレードはリスキーで初心者は避けるべきです。冒険的なトレードはせず、まずは移動平均線でトレンドを掴み、それにならった王道のトレードをすることが大切です。
移動平均線でトレンドを掴む方法ですが、難しいことは一切ありません。誰にでも出来るうえに一目で分かるものです。それでは早速、移動平均線でトレンドを掴む方法を見ていきましょう。
移動平均線とローソクの位置関係
上のチャートは日足チャートです。表示されている移動平均線は25日の線です。チャート中央あたりから右側に上昇トレンドが発生しています。
この時、移動平均線の上を沿うようにローソクが並んでいます。移動平均線の上に「ローソクがある=上昇トレンド」と判断できます。
反対に、移動平均線の下にローソクがある場合は、下降トレンドと判断できます。
ローソク足が移動平均線よりも下にあるのか上にあるのか。たったそれだけで現在のトレンドを把握することができるのです。
一目見れば誰にでも分かることですが、非常に大切な分析方法なので決して忘れないでください。
長期、中期、短期≒ローソクの順になっている
先ほどご紹介したのは、中期(25日)線とローソク足の位置関係でした。
次にご紹介するのはローソク足と3本の移動平均線全てを使いトレンドを確認する方法です。長期、中期、短期の3本の移動平均線とローソク足の位置関係を見てください。
チャートの下から長期、中期、短期≒ローソク足の並びになっています。この並び方をしているときには、「上昇トレンド」と判断します。
その反対に上から長期、中期、短期≒ローソク足の並び方になっている場合には、「下降トレンド」です。
移動平均線の向き
ご紹介した2つのトレンド分析方法に加えて、移動平均線の向きも大局を見極めるのに役立ちます。
移動平均線が上を向いていれば「買いの勢いが強い」、下を向いていれば「売りの力が強い」、たったそれだけです。
上昇トレンドの最中で、移動平均線が上から横向きになったときには、買いの勢いが落ちています。横向きではとどまらずそのまま下向きになった場合、トレンドが転換する可能性が大きいです。
エントリータイミングを見極める判断材料にも
移動平均線はトレンドを把握するだけでなく、エントリータイミングの分析にも役立ちます。移動平均線を使ったエントリータイミングを見極める方法をご紹介します。
ゴールデンクロス
上のチャートの短期線と長期線を見てください。
画像の真ん中あたりに短期と長期の線がクロスしているポイントがあります。このクロスが発生した後にローソク足はどんどん右肩上がりに、上昇トレンドを形成しました。
このように、短期線が長期線の下から上に抜けていくことを「ゴールデンクロス」と言います。ゴールデンクロスが発生したときには、「上昇トレンドが発生しやすい」タイミングです。
デッドクロス
ゴールデンクロスと反対に、移動平均線のクロスが下降トレンドの入り口を示すこともあります。それがデッドクロスです。
ゴールデンクロスと真逆と考えると分かりやすいでしょう。
上のチャートの中央より少し右側の辺り、短期線が長期線の上から下へ抜けていくクロスを形成しています。これがデッドクロスです。
移動平均線とローソクの乖離
上のチャートのローソク足と移動平均線(25日)の距離を見てください。一番左のスタート地点ではローソク足と移動平均線が触れています。
しかし、時間が経つにつれて、ローソク足から大きく離れているポイントがあります。移動平均線とローソク足が離れている、これは「エントリー」のタイミングを意味します。
移動平均線とローソク足が乖離しているときにもその力は働き、まるで移動平均線に近づこうとする動きを見せることがあります。
さきほどのチャートの画像の中にもその習性が現れており、下に大きく離れたと思ったらその後移動平均線に近づいています。
この習性を利用して、エントリータイミングを考えてみましょう。移動平均線よりローソク足が下に大きく離れたとき、上に戻る習性を予想してロング、その逆の状況ではショート、といったエントリーができます。
今までご紹介してきた内容だけでも十分にトレードの心強い味方になりますが、移動平均線の魅力はこれだけではありません。
移動平均線とローソク足を組み合わせた、ある法則があります。それがグランビルの法則と呼ばれるものです。
グランビルの法則も今までの内容と同様に、世界中の投資家たちが注目するシグナルです。多くの投資家が注目するということはそれだけ信憑性が高く、正確な指標と言う他なりません。
それでは、グランビルの法則とはいったいどのような法則なのか、ご紹介します。
グランビルの法則
グランビルの法則は、エントリーするタイミングに役立つものです。
買い・売りそれぞれ4ずつ、合計8つの法則があります。ローソク足と移動平均線の動き方を見て判断します。トレードに大いに役立つので参考にしてください。
グランビルの法則、ロングでエントリー
1.下落している移動平均線+ローソク足が下から上へクロス
まず移動平均線の動きを見てください。下落してきた移動平均線が次第に「下向きから横向き」と少しずつ上方向に向きを変えています。
下向きから横向きになりつつある移動平均線を、ローソク足が下から上に抜けていく動きをしています。この動きがグランビルの法則の「買いのシグナルの一つ」です。
グランビルの法則の中でもこの法則は特に重要です。このクロスは、
「ここから上昇トレンドへ入っていく=トレンドの転換点」
になるときに現れやすいのです。つまり、クロスの地点を底値として上昇するので、「ロングで大きな利益」を狙うことができます。
2.上昇している移動平均線+ローソク足が上から下へクロス
移動平均線の上にローソク足がある、つまりこれは上昇トレンドです。上昇トレンドであっても必ずしもそのまま上昇し続けるわけでは無く、上昇・下落を繰り返しながら上昇していきます。
その上下の動きに注目してください。一時的にローソク足が移動平均線を下回っています。しかしその後、下降トレンドになることはなく再び上昇トレンドになっています。
上昇している移動平均線をローソク足が上から下へ抜ける、このクロスもまたグランビルの法則です。「ロングでのエントリーに非常に有利」な相場です。
3.上昇している移動平均線+ローソク足が上から触れない
このチャートは先ほどと同じチャートですが、この中に3つ目のグランビルの法則があります。
チャートの中でローソク足が、上から移動平均線に触れそうな位置まで下落します。しかし、ここでクロスせず再び上昇を始めています。
この上昇し始めたタイミングがグランビルの法則で、「買い増しのチャンス」を表しています。
4.下落している移動平均線+ローソク足が下に乖離
移動平均線が下向き、ローソク足がその下にある前半部分は下降トレンドです。
下降トレンドでロングでエントリーするのは、トレンドに従うという原則を破っているように感じるかもしれません。
しかしこの4つ目の法則は、ご紹介した「買われ過ぎ・売られ過ぎの相場を良しとせず、どちらかに大きく傾きバランスが崩れると元に戻ろうとする動きをする」、この力が働いています。
下落している移動平均線からさらに下へローソク足は一旦乖離しますが、元に戻ろうとする力が働き上昇するのです。
グランビルの法則、ショートでエントリー
ロングでエントリーするときの法則をそのまま上下逆にしたものが、ショートでエントリーする際の法則になります。
5.上昇している移動平均線+ローソク足が上から下へクロス
上昇している移動平均線が、上向きから横向きと変わり、次第に下向きに変わろうとしているときに、ローソク足が上から下へクロスします。
6.下落している移動平均線+ローソク足が下から上へクロス
ロングでエントリーする際にご紹介した時と逆のパターンで、ローソク足が下から上に抜けています。一度上に抜けていますが再度ローソク足は移動平均線の下へ戻っていき下降トレンドを形成しています。
7.下落している移動平均線+ローソク足が下から触れない
上昇・下落を繰り返しながら進んでいくローソク足ですが、上に行き移動平均線に触れそうになるも触れずに再び下向きに移動しています。
8.上昇している移動平均線+ローソク足が上に乖離
ローソク足が上に行き過ぎた動きをしているので、下に押し戻されています。
8つの法則がありますが、買いか売りどちらかを覚えて、もう片方はその反対だと理解すればすぐに覚えることができます。
実際のチャートで使ってみよう
それでは、いままでご紹介した移動平均線とグランビルの法則で、実際にチャートを分析していきましょう。
こちらのチャートには、ご紹介した移動平均線の分析方法を使って、どのような分析ができるでしょうか。このチャートから読み取れるのは以下の通りです。
- 上に乖離したローソク足が上から下へ中期線を抜けていく
- その後デッドクロスが発生
以上の2つから下降トレンドが発生すると判断しショートでエントリーします。その後、分析通り下降トレンドが始まりました。
画面中央から右の移動平均線が長期線、中期線、短期線≒ローソク足の順に並んでいます。「下降トレンド」だということをより明確に表しています。
ショートで利益を伸ばしていく相場でしたか、下向きだった移動平均線がチャート右端では中期線は横向きになりつつあり、短期線は上に向いています。
次にこちらのチャートをご覧ください。
こちらのチャート内に隠れているのは以下の3つです。
- 長期線、中期線、短期線≒ローソク足の並び方(トレンド)
- 長期線と短期戦のゴールデンクロス
- 中期線とローソク足がグランビルの法則「1」を形成
これだけ買いトレンドへのシグナルがそろっているので安心してロングでエントリーすることができる相場でしょう。
簡単だけど心強い見方、移動平均線
移動平均線は、一目見ただけで大切な情報を読み取ることができる便利な指標です。
簡単に使えるのに重要なシグナルを数多く示すので、初心者に使いやすいのはもちろん常勝のプロのトレーダーにも重宝されています。まずは焦らずにご紹介した基本的な見方を覚えましょう。
記事の途中で少し触れましたが、移動平均線の基礎をマスターした後は、応用として短期線、中期線、長期線の期間を設定してみましょう。
自分に合う数値を見つけることができればますます多くのトレードで成果を上げることができるでしょう。移動平均線はシンプルですが奥が深い指標です。上手く使いこなしてください。