FXチャートはつねに上がったり下がったりしています。移り変わるトレンドの波を上手く読めずにくやしい思いをしている投資家は多いのではないでしょうか。もし、どこで上がってどこで下がるのか、ヒントが得られるなら、どれだけ助かることでしょう。
トレンドを読むためのインジケーターはいくつかありますが、中でも圧倒的に人気があるのがエリオット波動です。
エリオット波動は、トレンドの波には一定のリズム・ルールがあることに着目した分析手法で、トレンドの転換ポイント・方向性を探るのに大いに役に立ちます。
FXテクニカル エリオット波動
エリオット波動は、ラルフ・ネルソン・エリオットによって確立されたチャート分析手法です。
すでに多くの投資家が認識しているように、あらゆる金融商品は上昇トレンドと下降トレンドを繰り返しながら推移していきます。トレンドが今後どちらの方向へ向かうかは完全に未知の世界で、時には期待を裏切られることもしばしば。
もし、トレンドの転換ポイントや方向性がわかる手法があるのなら、と試行錯誤されている方は多いですよね。
そこで、トレンドの転換ポイントや方向性を見るのに、最も使える手法だといわれているのがエリオット波動です。
エリオット波動とは
エリオット波動は、多様なテクニカル分析を用いつつ、同時に投資家心理を組み込みながら考案された分析手法で、テクニカルの要素だけでなく投資家心理を反映した分析手法となります。
相場は不規則に上下の波を繰り返しているように見えても、エリオット波動では、実は一定のパターンを繰り返す傾向にあると結論づけています。
大まかにエリオット波動の概要をまとめると、
とのことです。
エリオット波動の基礎知識や、5つの波と3つの波をどのようにチャートに見出していけばよいのか、これから詳しく解説していきます。
ここで簡単にエリオット波動の考案者についてご紹介しておきます。
エリオット波動の考案者 ラフル・ネルソン・エリオットとは
ラルフ・ネルソン・エリオット/Ralph Nelson Elliott(1871年~)は、米国の会計士・兼分析アナリストで、独自の分析手法を用いながら企業に金融面でのアドバイスを行っていました。エリオット氏が得意とするのは、高度なテクニカルを駆使すると同時に投資家心理・市場心理を考慮した分析です。
エリオット波動は、テクニカルと心理学の双方からアプローチした結果、導き出されたトレンドの法則で、1938年にチャールズ・コリンズ/Charls J. Collinsと共作した「The Wave Principle/波の法則」という本で紹介しました。
Amazon・楽天などで「エリオット波動」に関する本が色々出ています。
ちなみに、オリジナルの初版も1万~3万円で探せます。
エリオット波動の基礎知識
エリオット波動でいうとことろの一定の周期とは、2つのタイプの波(トレンド)が基盤となっています。
- 5つの波パターン → 上昇波パターンと下降波パターン
- 3つの波パターン → 5つの波パターンの後に3つの波がくる
まず、最初に上昇波か下降波かどちらかの5つの波パターンから始まります。次にくる3つの波パターンは、最初の波が上昇だったのか下降だったのかによって変わってきます。
- 最初の波が5つの上昇波パターン → 3つの下降波パターンがくる
- 最初の波が5つの下降波パターン → 3つの上昇波パターンがくる
というように、2つの波の組み合わせを相場は繰り返しているということです。
5つの上昇波パターン
上昇波パターンは、1波、2波、3波、4波、5波と5つの波が上昇トレンドを形成するパターンです。
ここで需要なポイントは、高値・安値の位置が次第に高くなっていることです。また、2波と4波は下降しているのですが、基本的に上に向かう1波、3波、5波よりも短くなるのが特徴です。
5つの下降波パターン
5つの下降パターンは、1波、2波、3波、4波、5波と下降トレンドを形成するパターンです。
高値と安値の位置は次第に低くなっていくのが特徴で、上に向かう2波と4波は1、3、5波よりも短くなります。
要は、波の形を覚えることの方が大切なので、用語よりも波の形でエリオット波動を理解していくようにしましょう。
3つの下降波パターン
最初の波が上昇だった場合には、5つの波の後には3つの下降の波パターンがきます。
以上8つの波で形成されるパターンが上昇トレンドの基盤となる周期です。上昇トレンドではこの周期を繰り返す傾向にあります。
3つの上昇波パターン
最初の波が下降だった場合は、5つの波の後に続くのは3つの上昇波パターンとなります。
上図8つの波が下降トレンドの周期です。下降トレンドでは、この周期を繰り返す傾向にあります。
エリオット波動 基本パターン
エリオット波動の基本パターンは、
- 上昇トレンド → 5つの上昇波 + 3つの下降波
- 下降トレンド → 5つの下降波 + 3つの上昇波
があります。
基本パターンを覚えておけば、後は様々なタイプのパターンからトレンドを読むヒントを得ることができます。
エリオット波動を見極めるルール
基本パターンをチャートから見極めるためには、いくつかエリオット波動のルールがあります。
- 2波は1波の長さを超えてはいけない
- 3波が一番長い
- 3波は上昇トレンドでは1波よりも上、下降トレンドでは1波よりも下に向かう
- 4波は1波の長さを超えてはいけない
- 5波は上昇トレンドでは3波よりも上、下降トレンドでは3波よりも下に向かう
- 最後のC波が1波を超える時は、そのエリオット波動は無効となる
絶対に100%すべての相場の動きが、エリオット波動にマッチするわけではありません。ただ、起点がズレている時は起点を変えることによって、エリオット波動がマッチする可能性も多々あります。
エリオット波動の見方・使い方
では、エリオット波動の基本パターンの見方や使い方を解説していきます。いくつか代表的なパターンも合わせてご紹介したいと思います。
基本パターン
エリオット波動 上昇トレンド基本パターン
5つの上昇波が形成されて、a、b、cと3つの下降波が確認できました。最後の波「c」から、また新しい上昇波のパターンが1から繰り返されることを意味しています。波が上に向かい始めたら、上昇トレンドの継続する可能性が高いと見れます。
エリオット波動 下降トレンド基本パターン
下向きにエリオット波動の基本パターンが確認されたら、今度は下降トレンドが継続していく可能性があります。最後の波「c」から下向きに価格が動き始めたら、また下降パターンがここから始まると見れます。
エリオット波動のラインの引き方
実際にチャートを見ながら、エリオット波動を探す練習をしてみましょう。チャートツールにてエリオット波動の描画ツールが利用できます。エリオット波動のツールがない場合でも、描画ツールで自分でラインを挿入することも可能です。
エリオット波動のラインの引き方を解説していきます。
チャートツールのエリオット波動を使う
チャートツールにエリオット波動があるかどうかは「描画ツール」にて確認できます。描画ツールにエリオット波動がある場合はクリックすると、「5波ライン」と「3波ライン」が選択できるようになっています。
①エリオット波動の5波ラインを選択
最初に「5波ライン(推進波)」を選択します。すると、5つの点が表示されますので、基本パターンに沿って5か所に点を配置します。
②線を引きたい場所に5つの点を配置する
5つの点を配置したら、ラインが表示できるように設定します。
③プロパティ―を選択してラインの設定
エリオット波動の点の上で右クリックすると、プロパティ―を開くことができます。プロパティ―を開いて、ラインの設定をします。
パラメーターの一番下にある「ライン」にチェックを入れると、配置した5つの点にラインが挿入されます。
④同じように「3波ライン」も挿入する
同じような手順で「3波ライン(調整波)」を選択してラインを挿入することができます。
別のライン機能でも使える
エリオット波動が使えないチャートツールでも、トレンドラインや矢印などのオブジェクトツールを使ってラインを1本ずつ挿入することが可能です。
短いラインが挿入できないライン機能もありますので、その際はGAN(ギャン)のGANラインでも代用できます。
ZigZagを挿入すると便利
インジケーターZigZagを挿入すると、自動でジグザグのラインを引いてくれますので、エリオット波動が探しやすくなります。ZigZag機能がある場合は試してみて下さい。
エリオット波動 代表的なパターン
基本パターンが使えるようになったら、他のエリオット波動のパターンも試してみましょう。
代表的なエリオット波動のパターンをいくつかご紹介しておきます。
フラットパターン
フラットパターンは、横ばいでトレンドが移行する際に見られるエリオット波動で、この後の相場の動きを教えてくれるパターンです。「3波」と「3、3、5波」の組み合わせがあります。上昇サインと下降サインでは向きが異なるので注意しましょう。
フラットパターンで上昇パターンが形成されたら、最後の波から反発して1つ前の高値を超えた時点で買いエントリーします。反発したところでエントリーする方法もあります。
下降パターンの場合は、最後の波が確認できて下に下がり始めたら、1つ前の安値を下回った時点で売りエントリーします。下降し始めた時点で早めのエントリーもありです。
トライアングルパターン
他にも、三角形で推移していくトライアングル系のパターンがいくつかあります。トライアングル系は「3波 × 5」で形成されるエリオット波動です。これらも参考にしてみて下さい。
勝つためのエリオット波動トレード手法
複数のインジケーターや分析手法を併用しながら使うのがベストです。
最後にエリオット波動で勝つためのトレード手法として、抑えておきたいチャートパターンをいくつかご紹介します。
ダブルトップ・ダブルボトム
ダブルトップは上向きの2つの山、ダブルボトムは下向きの2つの山をチャートが形成するパターンをいいます。
- エリオット波動の最後の波がダブルトップを形成したら、「強い下降サイン」と見ることができます。
- 逆に、エリオット波動の最後の波がダブルボトムを形成したら、「強い上昇サイン」と判断できます。
トリプルトップ・トリプルボトム
トリプルトップ・トリプルボトムは、最も有名なチャートパターンの1つです。上向き3つの山がトリプルトップ、下向き3つの山がトリプルボトムです。
- エリオット波動で最後の波がトリプルトップを形成したら「強い下降サイン」です。
- エリオット波動で最後の波がトリプルボトムを形成したら「強い上昇サイン」です。
ヘッドアンドショルダー
ヘッドアンドショルダーは中央の山が突き出る形をつくるパターンです。上向きがヘッドアンドショルダーアップで下降サイン、下向きがヘッドアンドショルダーボトムで上昇サインとなります。
エリオット波動でヘッドアンドショルダーが同時に形成された時はかなり強いサインと見ることができます。
- 上向きのヘッドアンドショルダーは「強い下降サイン」
- 下向きのヘッドアンドショルダーは「強い上昇サイン」
というように、エリオット波動のサインを裏付けるために数々のチャートパターンが役に立ちます。とくに、上記3つのパターンは世界的に有名なパターンなので的中率も高い傾向にあります。
まとめ
いざ、エリオット波動分析を始めようと思っても、ルールに沿って「5波」と「3波」を見つけるのは大変かもしれません。
エリオット波動をチャートから見つけるコツは、時間足や表示期間を変えてみることです。同じ通貨ペアでも、表示する時間足や期間によって、エリオット波動が出現したりしなかったりとあります。
また、起点をどこにするかによっても、エリオット波動の出現率が変わってきます。投資家によってはかなり大まかにラインを引くケースもあれば、極めて小さなトレンドでも1本のラインを引く投資家もいます。
基本パターンに慣れてきたら、その他のエリオット波動やチャートパターンとの組み合わせもぜひ試してみて下さい。