FXチャートを見ていると、同じような推移で繰り返し値段が変動している相場を、FX初心者の方も見た事があるのではないでしょうか?
ラルフ・ネルソン・エリオット氏(1871年~1947年)が発表した、分析手法であるエリオット波動も相場のパターンを分析するためのテクニカル分析手法です。
株式相場やFX相場にはサイクルがあり、その価格変動には一定のリズムがあるとされています。
エリオット氏は、ニューヨークダウ平均から値動きの規則性を見出しており、この規則性が複数回出現することを発見しています。
この上昇5波・下落3波の計8波が、エリオット波動の定義の根幹となっていますが、その他にもエリオット波動には、数多くの分析理論が存在しており、様々なチャートパターンも分析に使われています。
そこでこれからFX初心者の方でも、エリオット波動を使って相場を分析できるように、分かりやすく使い方を解説していきます。
一見難解なエリオット波動でも、習得してしまうと相場では分からない事は無いくらいの、高い分析能力が身に付きます。
と思っている方にも、1から丁寧に解説できるよう心がけていきたいと思います。
エリオット波動は、チャートの推移を独自の見方で分析するため、最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れてしまえば強力な手法になると思います。
それでは早速ですがエリオット波動の基本となる必須項目から解説していきます。
エリオット波動の基本 上昇5波・下落3波
エリオット波動は、FX相場だけに限らずどんな相場にも対応しているテクニカル分析理論として、数多くの投資家に知られています。
大きい上昇5波チャート画像
エリオット波動の基本となる上昇5波のチャート画像です。
価格の推移は1波目、3波目、5波目が推進派と呼ばれ5つの波を形成し、チャートが進んでいます。第2波目、第4波目は修正波の下落3波として定義されています。
下落3波チャート画像
上昇5波の後に発生すると定義されている、下落3波動は修正波とも呼ばれています。
上昇5波と同じように、価格がジグザグに推移していますがこちらは3波動になっています。
エリオット氏はこのエリオット波動を発表するに当たって、価格という点では第3波動目が最も長い波となり、推進波の第1波目、第3波目・第5波目の中では最短の波にはならないことを発見したとされています。
第3波が1波目や5波目よりも、変動率という点で大きいという事であれば、第3波動が発生する前を狙う投資手法が最善となります。
エリオット氏はダウ理論を発表したチャールズ・ヘンリー・ダウ氏と同じ時代を生きたアナリストです。
歴史あるこの理論が現代の相場でも必ず通用するのであれば、この理論はスーパーコンピュータ並ということになります。
しかし、エリオット波動理論の中には、13パターンものチャートパターンが定義されており、この中から相場を分析する事もできます。
次はエリオット波動の中で定義されている、チャートパターンの中でも重要な物を中心に解説していきたいと思います。
エリオット波動のチャートパターン
また先ほどお伝えしたエリオット波動の基本である、上昇5波の中には下記の定義が付け加えられています。
- 第2波目の押しの下落率は、必ず第1波の上昇した値幅よりも小さくなる。
- 第3波は、必ず第1波の値幅よりも大きく動く。
- 第4波目の押しの下落率も第3波の値幅より小さい。
上記の推進派の定義を抑えたのであれば、次はエリオット波動のチャートパターンを覚えていきます。
エリオット波動は、このチャートパターンと上昇5波・下落3波を使って相場の分析を行っていくスタイルになります。
エリオット波動の推進波(衝撃波)
エリオット波動理論では、数多くのチャートパターンが定義されていますが、その中のいくつかを解説していきます。
まずは、エリオット波動の上昇5波である推進波から解説していきたいと思います。
エリオット波動の上昇5波である推進波は、相場を進行させる波であると定義されていて、第3波が最短の波にならないのであれば、このルールは有効であると定義されています。
また、推進波は「衝撃波」と「ダイアゴナルトライアングル」という2つの種類に分ける事が出来ると、エリオット波動で定義されています。
衝撃波
最も一般的な推進波は、「衝撃波」とされており、以下のように定義されています。
- 第4波が第1波の価格帯に割り込むことはない。
- 衝撃波のアクション波である第1波・第3波・第5波自身が推進波である。その中でも第3波は特別な衝撃波である。
この定義からエリオット波動を解説すると、第3波目の上昇波を特別な波と解釈している事が、簡単にわかります。
エリオット波動の推進派(衝撃波)とされているチャートパターンを今から解説しますが、全てではありませんので、なるべく多くを覚えてエリオット波動分析に活用していくと、分析の確率も上がるのではないかと思います。
エクステンション(延長波)N波
エリオット波動では、波は単純な形をしており簡単に認識できるものとされています。
エクステンションチャート画像
エクステンションとは、小さい波の延長した衝撃波であると定義されています。
ほとんどの衝撃波には、エクステンションが含まれると定義されています。
しかし、このエクステンション波は3つのアクション波のなかには、ひとつしかないと定義されており、エリオット波動の形が崩れている時に、形を当てはめるための有効な手掛かりとなります。
一般的にエリオット波動を使って分析する投資家は、延長する可能性の高い第3波を中心に分析します。
この理由は先ほどお伝えした第3波は、決して最短の波とならないに照らし合わせて考えると分かりやすいかと思います。
トランケーション(切頭)
推進派の中で、第3波目の高値を第5波目の高値が超えられない状況をトランケーションと言います。
エリオット波動理論の中では、切頭された第5波という意味を持ち、このトランケーションはとても勢いのあった第3波のあとに出現するとも定義されています。
トランケーションチャート画像
エリオット氏はこれを「フェイラー」とも命名していたと伝えられています。
ダイアゴナル・トライアングル
ダイアゴナル・トライアングルは推進波のチャートパターンに当てはまるが、1つか2つの修正波の特徴を持つと考えられています。
特定の位置では、ダイアゴナルトライアングルが衝撃波に入れ替わることもあり、衝撃波であれば、押しや戻りの値幅が、それに先立つアクション波の値幅を越えることはなく、3番目の波が最も短くなることもないと定義されています。
またダイアゴナルトライアングルは、トレンド方向の5波で形成されたパターンであり、第4波が第1波の価格帯に割り込んでいるチャートパターンの事を定義しています。
エンディング・ダイアゴナルトライアングル
エンディング・ダイアゴナルトライアングルは、第5波目が速く、行きすぎたような時に当てはめる事ができる特殊なタイプの波のパターンです。
まれに下落3波の3波目で出現する事もあるとされています。
このトライアングルは大きな値幅のパターンの終了地点の事を示していますので、大きな動きが出尽くしたことを示唆します。
そのためエンディング・ダイアゴナルトライアングルは、相場の天井や底となることが多いとされています。
エリオット波動の上昇5波となる推進派のチャートパターンを解説しました。
抵抗の修正波
推進波がトレンド方向に進むのに対して、修正波はトレンドと逆の相反した波と定義されています。
また、その習性から多様な波の形成をするものとされており推進波の場合よりも見方が難しいと考えられています。
エリオット波動ではこの難しい修正波をいろいろなパターンから研究しており、その研究結果から「修正波は決して5つの波とはならない」と定義付られています。
エリオット波動では推進波(衝撃波)のみが5つの波になると定義されていますので修正波の見方としては波の数をカウントすると違いが分かります。
これから修正波の中でも重要な4つのチャートパターンを解説します。
ジグザク(シングル/ダブル/トリプル)
強気相場における「シングルジグザグ」は、3波の下降パターンになります。
ジグザグチャートパターン
ジグザグ修正波は、トレンドとは逆方向に向かう特徴を持つ事から、逆ジグザグとも呼ばれています。
ジグザグが連続して2回出現した時はダブルジグザグ、3回ほど出現した時にはトリプルジグザグと呼ばれる事もあります。
修正波の代表的なチャートパターンで推進派と区別する時にも使用する事ができます。
また、連続するジグザグは衝撃波のエクステンションに似ているが、出現する確率は低いとされています。
水平トライアングル(三角形)
エリオット波動のチャートパターンであるトライアングルは、持ち合いのレンジ相場の事を示しています。
水平トライアングルチャート画像
売りと買いの力の均衡状態である事を反映するようなチャートの形となり、トライアングルには収束型と拡大型という2つの種類があります。
収束型は、レンジ相場の時間が経過するにつれ高値と安値の差も収縮し、狭くなります。
拡大型トライアングルは、収束型とは対照的に値幅が徐々に広がっていくレンジ相場を定義しています。
エリオット氏はこのようなチャートパターンの組み合わせを「逆対称」のトライアングルと名付けています。
収束型トライアングルは、範囲内に収まるレギュラーなトライアングルと呼ぶことができます。
複合型(ダブルスリーとトリプルスリー)
横ばいのレンジ相場のパターンの内、ジグザグやフラットなど2つの組み合わせから成る修正波パターンをダブルスリー、3つから構成されるパターンをトリプルスリーとエリオット氏は定義しています。
トリプルスリーチャート画像
このような複合型のチャートパターンは、
- ジグザグ
- フラット
- トライアングル
を含む単純な修正波のタイプで形成されると定義されており、最初の単純な修正波が前の波の幅を十分に修正するとされています。
エリオット波動の基本まとめ
ここまでエリオット波動のチャートパターンを解説してきました。
エリオット波動は上昇5波・下落3波の計8波の内容をより詳細にチャートパターンを使って解説されている事がご理解頂けたのではないかと思います。
上記でお伝えしたチャートパターンは、実践時にも出現する可能性が高いチャートパターンになります。
一般的に期間が長くなるとされている第3波動を狙って投資していくようにした方が、FX初心者の方でも効果を実感しやすくなると思います。
エリオット波動の実践と解説
またFX初心者の方でも、波動が進んだ事が簡単に分かるようなチャート設定が必要になります。
そこで今回はボリンジャーバンドを使って、エリオット波動を実践解説していきます。
エリオット波動の推進波はトレンド方向に動く波で勢いも強く、移動平均線から必ずと言って良いほど価格が離れていきます。
ボリンジャーバンドにタッチする確率が高くなりますので、波動分析に使っていきます。
また今回は、FX初心者の方にも分かりやすくここまでのチャート画像でもzigzagというテクニカル分析を導入しています。
エリオット波動手法チャート画像
エリオット波動はチャート本体ではなく、一連の流れを波動の組み合わせとしてチャートを分析してますので、若干ですが見やすくなると思います。
簡単にまとめると、
- ボリンジャーバンド
- 移動平均線
- zigzag
この3つをチャートに表示してエリオット波動を実践していきます。
エリオット波動を使ったトレードルール
エリオット波動を使ってトレードする時の手法のルールを、予めいくつか決めておきたいと思います。
まず1つ目は、現在の推進波を捉えるルールです。
第3波目とボリンジャーバンド
エリオット波動理論ではトレンド方向に進む波を推進波(衝撃波)と定義しており、相場の中でも一方向に進行する強力なチャート型になります。
そこでボリンジャーバンドを使ってルール付けし、推進波を分析してトレードを仕掛けるようにします。
上記のチャート画像では2波目が終了した地点から大きく価格が上昇しており、第1波目の高値も赤丸のポイントで超えており、ボリンジャーバンドにもタッチしていることから推進波である第3波動目を開始していることが分かります。
2つ目のルールは修正波の当てはめルールです。
ボリンジャーバンドを使ってエリオット波動を読めるようになると、現在の相場が第何波動目に位置しているのか分析できるようになります。
エリオット波動理論では、トレンドの抵抗となる修正波を数多くのチャートパターンで定義している事から、価格がトレンドと逆方向の動きを見せた時に、即座にチャートパターンを使って分析する事が可能となります。
ダブルスリーチャート画像
上昇トレンド中の第4波目に当たる修正波で、ダブルスリーのレンジ相場を展開しています。
このように相場の方向性が不明確になり、調整の動きを見せた場合は、すぐにチャートパターンを分析してエリオット波動の修正波のパターンに一致していないか確認します。
上記でお伝えした修正波のチャートパターンをもう一度確認し、トレンドの押しや戻りを捉えられるようにしておきます。
トレンドの方向は第3波目で分かりますので、FX初心者の方でも修正波は見つけやすくなっています。
実践期間も限定されていますので注意して下さい。
エリオット波動理論1本で相場を分析するのであれば、上昇5波・下落3波が崩れた場合にはエクステンション(延長波)として扱う事になります。
1トレード目.下落中のエリオット波動
下落中のエリオット波動チャート画像
下落トレンド中のEUR/USDのエリオット波動チャート画像です。
まずは第1波目が底を付け、第2波目に向かって上昇しているポイントに注目してみましょう。
このチャート画像ではエリオット波動の全体像を知るために、だい5波動目まで表示していますが、リアルタイムでは第2波動目のポイントで、本当に下落トレンド中なのか知る余地はありません。
これは第1波動で下落が終了している可能性もあるからです。
今回の下落では第1波動目と予測できるポイントでもいくつかボリンジャーバンドのタッチしているチャートが見つかります。
ここでエリオット波動を扱う時の最大の注意点があります。
第1波動注意点チャート画像
上記の赤丸ポイントでは、このエリオット波動のトレード手法のルールであるボリンジャーバンドにタッチしていることが分かります。
このボリンジャーバンドは、エリオット波動の第3波動目のトレードサインとなるように追加したテクニカルチャートでしたが、ここでは第1波動目の勢いが強くボリンジャーバンドにタッチしてしまいました。
価格が勢いよく動いてしまうとボリンジャーバンドだけでなく、移動平均乖離率、エンペローブなどその他のテクニカル指標でも同じような現象が起きます。
この赤丸ポイントで売ってしまっても今回は利益があがるようですが、毎回利益が上がるとは限りません。
この時の対応策としては少し待つ事がポイントです。時間が経過すれば徐々に現在の相場がどんな状況なのか把握できるようになります。
いつも第3波目が一番長いとは限りませんので、その点には十分注意するようにしておきましょう。
その後の解説に続きます。
第3波動目の始まり
第1波動目の安値を付けたところで、一度チャート全体を見渡してみます。
第1波動目の始点であるポイントから、戻りとして分析する事ができるチャートは2番のポイントまで1つもありません。
その事からも第1波動目である事が推測できます。
エリオット波動の理論である「第3波目が一番短くなることはない」の理論を使い売りトレードを行います。
赤丸のポイントを見てみると、ボリンジャーバンドの2σと3σの間で下落しており、勢いもあるので第3波動として判断するトレード手法の条件にも一致します。
また、第2波動目は修正波の下落3波に該当しますのでシングルを3回付ける計算になります。
ストップロスの設定
エリオット波動は第3波動が一番短くなる事はありませんので、仮に売りポジションを持ったあと相場が反転し、第2波動の高値を超えていくのであれば読み違えた事が証明されます。
その他のストップロスとしてはエントリーした後も、修正波である第2波動が終了していない可能性もありますので、第1波動の始点にとりあえずストップロスを置き修正波の高値が確定した後にストップロスをずらす方法です。
途中相場が反転して意図した方向に進まなくても、再度進路を変え動き出す可能性もあるからです。
ここでの売値は1.1577です。
利益確定ポイントチャート画像
移動平均線で利益を確定した場合は1.1388です。
1.1577が安値のエントリーポイントになりますので、+189pipsになります。
一番長いとされている第3波動上でのトレードになりますので、自然と20pipsや30pipsくらいの利益で無くなっていることが分かります。
次のトレードポイントの解説に移ります。
2トレード目.戻り売りポイントの第4波動
2トレード目は第4波動目の戻りのポイントを狙った売りトレードです。
エリオット波動の推進派である第5波動目を利益に変えるトレード手法になります。
トレンドの方向は第3波動が発生した後なので間違う事は無いと思いますが、戻り売りや押し目買いの目安となるポイントには違いが生じます。
そこでボリンジャーバンドを使い押し目や戻りの価格を設定します。
まずは下記チャート画像を一緒に見てみましょう。
エリオット波動第4波目戻りチャート画像
第4波動目の戻りのポイントがこのチャートでは2つあります。
2つのポイントは、ボリンジャーバンドの2σに位置しています。
第3波動目を終えて、修正波である第4波動目を確認出来た後は第5波動目の開始を待つだけになります。
エリオット波動理論では第3波動目が一番短くはならないと定義されていますので、第5波動目で騙しが出る可能性もあります。
エリオット波動のチャートパターンでご紹介しましたが、トランケーション(切頭)という第5波動目が第3波動目の安値を下回らないケースもあるのです。
このようにすることでトレンド中の押し目や戻りをエリオット波動で捉えつつ、リスクも最小限にできるからです。
ストップロスの設定ポイントは、第4波動目のボリンジャーバンド3σの少し上に設定します。
エリオット波動第4波ストップロス
ここでの売値は1.1423です。
利益確定のポイントとしては第5波動目は短い可能性もありますので、なるべく早く利益を確定するようにします。
方法としては、直近高値3本~5本でトレールしていくやり方が一番安全です。
FX初心者の方で、第5波動目が難しいと思うのであればこのトレードは控えても問題ありません。
必ずトレードしなければいけないわけではありませんので、もし波動を見失ってしまった場合には様子見をして、相場の波動が明らかになるのを待つと上達も早くなると思います。
このトレードでの利益確定ポイントは1.1343になります。
戻り売り利益確定ポイント画像
売り値が1.1423で買い戻しが1.1343なので+80pipsになりました。
このチャートでは第5波動目はとても短いパターンでした。
第5波動目がもう少し長ければ利益も伸びたのですが、トレンドの最終段階でもあるためどうなるか分かりません。
なるべく多くの利益を確定できるように追従する形で、利益確定を行えば利益を最大化できると思います。
エリオット波動を素早く習得するためのコツ
ここまでエリオット波動の基本や見方、実際のトレード手法の解説を行ってきました。
エリオット波動のチャートパターンは、お伝えしたチャートパターン以外にも数多く存在します。
エリオット波動はダウ平均が生まれた時代のテクニカル分析手法になりますので、歴史も深く、ここまでお伝えした基本や応用以外にも様々な理論が発表されています。
エリオット氏本人の理論だけでなく、その他のアナリストの見解などが含まれているものもあるため、FX初心者の方も自分で調べてみるとまた新しい発見があると思います。
基本となる上昇5波・下落3波の規則は必ずしも相場に当てはまるわけではありませんので、エリオット波動を使って運用できる期間は限られてくる可能性の方が高くなります。
また、エリオット波動の別の見方としてフィボナッチを併用して分析する手法なども存在しています。
上昇5波・下落3波の基本は変わりませんが、メジャーな分析手法であるフィボナッチなどを併用する分析法を習得する事ができれば、FX初心者の方でもさらに分析能力が向上するのではないかと思いますので、このエリオット波動の基本を抑えて発展させても良いと思います。