FXテクニカル分析で使われているインジケーターの1つに、「ヒストリカル・ボラティリティ」というものがあります。「ヒストリカル・ボラティリティ」はオシレーター系でメインチャートの下にサブチャートで挿入されるタイプです。
おもに、価格の変動率を見るために使われるインジケーターで、大きな値動きを狙いたい時に活用できます。まだ、使ったことがない方も結構多いのではないでしょうか。
FXテクニカル ヒストリカル・ボラティリティ
「ヒストリカル・ボラティリティ」は、英語でHistorical VolatilityのことでHVとも呼ばれているインジケーターです。直訳すると「歴史的な価格変動率」という意味になります。
ヒストリカル・ボラティリティとは
ヒストリカル・ボラティリティとは、
値動きの大きさや価格変動の激しさを見たい時に有効なインジケーターで、とくに、スキャルピングやデイトレードなど短時間で大きな利益を狙いたい時に使われています。
価格変動が激しいということは、短時間でも大きく稼げる反面、損失リスクも大きくなるので、初心者の方はリスク低減のために、上級者の方は効率よく稼ぐために活用することができます。
ヒストリカル・ボラティリティの特徴
その他多くのインジケーターとは異なり、ヒストリカル・ボラティリティの場合は、相場の動きとは連動しないことが多いので注意が必要です。上昇しようと下降しようと、ボラティリティ(変動率)が大きくなれば、ヒストリカル・ボラティリティの数値も高くなります。
上昇トレンド・下降トレンドを問わず、値動きを見たい時に使えるインジケーターとなります。トレンドの方向性や転換ポイントなどは、ヒストリカル・ボラティリティでは見ることができません。
ヒストリカル・ボラティリティの起源・由来
「ヒストリカル・ボラティリティ」は、シンプルに「ボラティリティ/Volatility」と呼ばれることもあります。
金融用語の「ボラティリティ」はそもそも、その金融商品のリスクを計る数値として昔から使われてきた言葉です。FXや株式の情報にて、よく「ボラティリティが低い・高い」などと使われていますよね。
「ボラティリティ」には大きく2つのタイプがあって、今回ご紹介する「ヒストリカル・ボラティリティ/歴史的な価格変動率」と「インプライド・ボラティリティ/将来的な見込み変動率」とがあります。他にも、「ボラティリティ・インデックス/VIX」と呼ばれる指標があります。
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ヒストリカル・ボラティリティの基礎知識
ヒストリカル・ボラティリティは、上昇や下降、トレンドを見るためでなく、どれくらいの値動きがあるのかを見るインジケーターとなります。価格変動率・ボラティリティはどのように計算されているのでしょうか。
ヒストリカル・ボラティリティの計算方法
価格変動率・ボラティリティの計算には統計学の標準偏差が適用されています。
統計学の標準偏差とは
標準偏差とは、ばらばらに分散したデータ値の平均値からの値幅を表したもので、どれくらい平均値から離れているのかを計る数値のことです。
例えば、テストの点数から標準偏差を見てみましょう。
4人のテストの結果は、
- 生徒A: 55点
- 生徒B: 70点
- 生徒C: 35点
- 生徒D: 80点
最低点数は35点、最高点数は80点です。データは35点~80点の間で分散しているといえます。この値幅が平均からどれくらい離れているのかを見るのが標準偏差です。
4人のテスト結果の標準偏差は以下の流れで算出することができます。
- データ全体の平均値を算出
- 各データの偏差を求める(各点数 - 平均値)
- 各偏差を2乗する
- 2乗した各偏差の合計を出す
- 偏差の合計をデータの数で割る(偏差合計 ÷ 4人)
- 5の数値から正の平方根を計算する
計算例
(55 + 70 + 35 + 80) ÷ 4 = 60(平均値)
各データの偏差の合計は、25 + 100 + 625 + 400 = 1,150、
1,150を4人で割って正の平方根を求めると、√287.5=16.955… となり、4人のテスト結果の標準偏差は16.96点となります。
ヒストリカル・ボラティリティの計算式
ヒストリカル・ボラティリティでは、相場の価格のばらつきから標準偏差が計算され、計算式で表すと以下のようになります。
Vi - Vavg: 平均からの偏差 n: 任意の期間 α: 標準偏差
基本的にインジケータは挿入すると、自動で計算してくれますので自分で計算する必要はありません。標準偏差の意味や大まかな計算の流れだけでも何となくわかっていればよいと思います。
ヒストリカル・ボラティリティの基本的な仕組み
ヒストリカル・ボラティリティの基本的な仕組みは、
- 数値が高いほど価格変動率が大きい → 価格の急落・高騰を表している
- 数値が低いほど価格変動率が小さい → 値動きが小さく推移している
- 上昇・下降のタイミングはわからない → 上昇でも下降でも変動率で数値が動く
- トレンドの方向性はわからない → 価格変動率のみに特化したインジケーター
となります。
- 重要な経済指標の発表時
- 緊急速報などのインパクトがあるニュース
- パンデミック、災害、事故などの緊急事態
などが、ボラティリティが高くなる代表的な例です。
ヒストリカル・ボラティリティの活用方法
ヒストリカル・ボラティリティは、
- 価格変動率が高い時を避けてリスクコントロールするため
- 価格変動率が高い時を狙って効率よく稼ぐため
と大きく2つの使い方があります。
ヒストリカル・ボラティリティの見方
ヒストリカル・ボラティリティの数値
ラインが最大値に向かう時は価格が大きく変動し、ラインが最小値に向かう時は価格変動が徐々に収束している状態を表しています。
- 上部の数値 → ヒストリカル・ボラティリティの最大値
- 下部の数値 → ヒストリカル・ボラティリティの最小値
- ラインが最大値にあるほど、価格変動率が大きい
- ラインが最小値にあるほど、価格変動率が小さい
となります。
複数の通貨ペアから、変動率が大きいものを選びたい時には最大値・最小値を比較して数値が高いものを選ぶと、大きな値動きが期待できます。
ラインの傾きを見る
ボラティリティの高さを狙う時には、単純にラインが上部にあるか下部にあるかだけでなく、どのように動いているかを見ることが大切です。
ラインが上部にあったとしても、水平に横に動く時は値動きにあまり変化がないケースが多くなります。
- ラインが急角度で上に向かう・ラインが急角度で下に向かう → 大きな価格変動が見られる
- ラインが水平に動く → 値動きが小さい状態
- ラインが徐々に上に向かう → 徐々に上昇・下降が大きくなっている
- ラインが徐々に下に向かう → 徐々に上昇・下降が小さくなっている
と見ることができます。
下から上に急角度で動く時が狙い時
1つのトレンドの流れ価格の動きが収束して、一気に急落・高騰が見られる傾向にあります。ラインの傾きが90度に近づくほど、大きな値上がりが期待できます。また、上部から90度に近い角度でラインが下がる時にも、価格が大きく動くことがあるので、ラインの傾きは非常に重要です。
底辺あたりでラインが水平に緩やかに動き始めたら、ラインが上向きに向かうタイミングを狙いましょう。このタイミングでエントリーを図ることができます。
上昇・下降の勢いを見ることができる
ボラティリティのラインからトレンドの方向性や上昇・下降のタイミングを読むことはできませんが、現在の上昇・下降の勢いが強まっているのか弱まっているのかの目安になります。
例えば、相場が上昇し始めた時にボラティリティのラインが上に向かう時は、上昇の勢いが強まっていると見ることができます。水平または下向きになった時は、上昇の勢いが落ち着いてきているのだなと判断の目安になります。
同様に、下降している相場の時にボラティリティのラインが上に向かう時は、下降の勢いが強まっていると見ることができます。水平または下向きになった時は、下降の勢いが落ち着いてきているとの判断材料になります。
一旦上昇・下降した相場の価格が落ち着いてくるとラインに動きがなくなってきます。このタイミングでエグジットを計ることができます。
ヒストリカル・ボラティリティの使い方
ラインの位置を目安にエントリー・エグジット
ボラティリティのラインが底辺で落ち着いた時に上に向かうタイミングを待ちます。相場の価格が一旦収束してまた動き始めるタイミングですね。
下部にあったラインが上に向かい始めたら「買い」です。予想どおりにボラティリティが上昇し、価格も上昇に向かったなら、次は上昇の勢いがピークに達するのを待ちます。
ボラティリティラインが最大値に近づいて、動きが緩やかになっていますので、おそらくこの辺が上昇のピークだと見ることができます。ここで「売り」で利確です。
ラインの動きを目安にエントリー・エグジット
水平だったラインが上に動きだしたら、価格が大きく動くサインです。相場の方向に合わせてエントリーを計ります。下降している時は「売り」、上昇している時は「買い」ですね。一気に価格が動いて、ボラティリティが水平・価格が収束した時点でエグジットで利確です。
この方法は、長くポジションを保有せずに、ちょうど大きな値動きがあるタイミングのみを狙います。スキャルピングやデイトレードなどの短期トレードで活用できる方法です。
勝つためのヒストリカル・ボラティリティトレード手法
ヒストリカル・ボラティリティは価格変動の大きさを計るのに有効なインジケーターです。合わせて、その他のインジケーターや分析手法と組み合わせる必要があります。
そこで、最後にヒストリカル・ボラティリティと相性のいいインジケーター、ジグザグチャートを組み合わせたトレード手法をご紹介しておきたいと思います。
ジグザグチャートを組み合わせたトレード手法
ジグザグチャートはトレンドの方向に沿って、文字通りジグザグのラインを引いてくれます。上昇トレンドでは上向きのライン、下降トレンドでは下向きのラインが表示されるため、トレンドの方向性が分かりづらいヒストリカル・ボラティリティと組み合わせるのに最適なインジケーターです。
ジグザグチャートのシグナルは大まかに、
- 下向きの頂点ができたら「買い」
- 上向きの頂点ができたら「売り」
となります。
エントリー・エグジット、分析例
- ジグザグチャートは下向きの頂点ができてラインが上に向かい始めました。ボラティリティは徐々に上に向かっています。上昇トレンドが始まることを期待して「買い」エントリーです。
- あるいは、ボラティリティが大きく動きだす②で「買い」から入る方法もあります。
- ジグザグチャートに上向きの頂点ができたら、下降トレンドが始まるサインです。ボラティリティは水平、このタイミングで「売り」エグジットです。
- また、ボラティリティが水平からほぼ90度で下向き、ジグザグは下向きとなりここで利確する方法もあります。
まとめ
ヒストリカルボラティリティは、標準偏差を基盤に相場の価格変動率を数値で表したもので、大きな値動きを狙いたい上級者や、リスクが高い時を知りたい初心者におすすめです。
- ヒストリカルボラティリティが高い → 値動きが大きい・価格変動が激しい
- ヒストリカルボラティリティが低い → 値動きが小さい・価格変動な少ない
と見ることができます。
同時にラインの方向や位置からも、価格変動の大きさ、上昇や下降の勢いを見ることができます。