FXチャート分析にはテクニカル・インジケーターを使うことが欠かせません。使えるインジケーターが多いほど、より勝率の高い相場予測が可能になります。「FXプロのFXチャート分析実践講座」では基礎的なインジケーターから上級者向けのインジケーターまで幅広い種類をシリーズでご紹介しています。
今回ご紹介するインジケーターは「ACオシレーター」です。
FXテクニカル ACオシレーター
まずは、最初にACオシレーターの概要を大まかに解説しておきましょう。
ACオシレーターとは
ACオシレーターとは、
例えば、市場参加者が多い時や多額の資金による売買が繰り返されると、相場の価格変動も激しくなりますよね。とくに、重要な経済指標の発表前後や何か突発的なニュースが報道された時などは、ほんの数秒~数分程度でも大きな値動きが見られます。
ちょうど値動きが活発になるタイミングでエントリー、熱が引ける前にエグジットできれば短い時間でもまとまった利益が狙えます。
ACオシレーターの開発者
ACオシレーターを開発したのは米国の有名なトレーダー、ビル・ウイリアムズ(Bill Williams)。投資心理学と力学に基づいたカオス理論とを結びつけた研究を行い、6種類のインジケーターを開発、分析アナリストとして本も出版しています。
ビル・ウイリアムズのインジケーター
- ACオシレーター
- オーサムオシレーター
- Gatorオシレーター
- アリゲーター
- フラクタル
- BW MFI
ビル・ウイリアムズの著作物
- 相場の達人~常勝のカオス思考
- Trading CHAOS
- New Trading Dimention
など
ACオシレーターの基礎知識
ビル・ウイリアムズ氏によると、取引で成功するためにはファンダメンタル分析とテクニカル分析の双方から、冷静に市場の動きを見極めることが大切だとのことです。市場が今どのように動いているのか熟知することで、次の動きが読めるのだとしています。
「ACオシレーター」の基盤になっている「オーサムオシレーター」について簡単に見ておきましょう。
オーサムオシレーター
「オーサムオシレーター/Awesome Oscillator」とは、市場の勢いや習性を測るインジケーターです。5日移動平均線と34日単純移動平均線を使って計算されています。相場の3つの特徴が分析できます。
- 0を基準に上昇・下降の動きを表示 → トレンドの方向性がわかる
- 2色のバー → 相場の勢いや強弱がわかる
- バーの高さ(棒グラフの高さ) → 相場の勢いや反転のタイミングがわかる
というのがオーサムオシレーターの特徴です。
では、ACオシレーターの基礎知識を詳しく解説していきます。
ACオシレーターの計算方法
ACオシレーターは、
にて計算されている数値をグラフにしたものです。
中央値0に対して、プラスとマイナスでどれくらいの値動きとスピードが見られているのかが表示されます。
ACオシレーターの中央値0は、
にて算出されています。
中央値からACオシレーターがどれくらい乖離しているかで市場の過熱度・現在の相場動向がわかるのです。
ACオシレーターの見方
ACオシレーターはチャートの下部に挿入されるオシレーター系のインジケーターです。
中央値0を基準に上下に数値が棒グラフにて表示されます。
- 中央値から上に伸びている数値(プラスの数値) → 市場は過熱・買いの勢いが強い
- 中央値から下に伸びている数値(マイナスの数値) → 市場は冷却・売りの勢いが強い
上記のように2方向に向けての分析が可能となります。
グラフで見るACオシレーター
緑枠で囲んだ部分がACオシレーターです。
ACオシレーターを拡大して見ていきましょう。
ACオシレーターの数値
- 現在のACオシレーターの数値
- 表示する期間内の高値圏の数値
- 表示する期間内の安値圏の数値
チャートの表示期間や時間足の種類によって、数値は異なってきます。
- 上に向かうプラスの数値が高いほど「買い」が殺到していることを意味します。
- 下に向かうマイナスの数値が高いほど「売り」が加速していることを意味します。
ACラインの高さや波を見る
ACラインを見る上で重要なポイントとなるのが、ラインの高さやカーブの具合です。
ぱっと見でわかるように、ACラインは上下に山形の波を作って形成されています。
1つ1つの山にピークの高いラインがあって、始まりと終わりは小さな低いラインが出ています。
ACラインの色を見る
ACラインの色は各自で設定が可能で2色あります。ここでは緑と赤のラインで解説していきます。
- 緑 → 勢いが強まっている
- 赤 → 勢いが弱まっている
中央値より上にあるライン
中央値より上にあるラインは、緑で始まって赤に反転して1つの山が終わります。上昇していた相場がピーク後には下降に向かうということです。
中央値より下にあるライン
中央値より下にあるラインは、赤で始まって緑に反転して1つの山が終わっていますね。これは、下降していた相場がピーク後には上昇に向かっていることの現れです。
ACオシレーターの使い方
ACオシレーターでエントリー・エグジット
ACオシレーターはエントリー・エグジットのタイミングを図るのに最適なインジケーターです。
ACオシレーターの上下にできる山の最初の方でエントリー、ピークに達したあたりでエグジットすれば、利益を最大限に大きくすることができます。
エントリー
1つの山が終わって、新しい山ができる最初の1本目にエントリーします。最初の1本のラインで山が切り替わることはほとんどありませんので、1本目にエントリーしておけば少なくともいくらかの利益につながるでしょう。山が小さい時もあるので2本目にエントリーすると利益を取り損ねる可能性があります。
エグジット
ラインが一番長くなるポイントでエグジットします。ただし、次のラインが出てこない限りはどのラインが一番長いのか判断ができかねるところです。違う色が出現した時点ですぐにエグジットすれば間違えがありません。山が終わりに近づくサインです。1つの山が終わって、相場の流れが変わってしまいます。
チャートで見るエントリー
上図のチャートは、ACオシレーターに沿ってエントリーするイメージです。黄緑色の矢印の部分がエグジットのポイントです。
1本目のラインが出たら相場の流れが変わるサインになっていますね。ここでタイミングよくエントリーしてACオシレーターにピークのサインが出るのを待ちます。
チャートでみるエグジット
エグジットは山の頂上にあたる部分、一番長いラインだと思われるあたりでエグジットします。色が変わってしまうと、最大のポイントでの利益は得られませんので、ラインが数本出た後でこの辺かなと推測するのも1つの方法です。
ACオシレーターの特徴を活かした使い方です。
スキャルピングやデイトレに最適
ACオシレーターは、上昇トレンド・下降トレンド、レンジ相場の上げ下げに沿って効率よく売買したい時にうってつけのインジケーターです。とくに、小さな値動きを狙って取引を繰り返すスキャルピングや、短時間で数回取引するデイトレードにて効果を最大限に発揮するでしょう。
もちろん、スイングが長期トレードでもACオシレーターを活用することはできます。エントリー・エグジットのタイミングに悩みがちな初心者の方にも役に立つインジケーターです。
読みづらいACオシレーターもある
その時の市場動向によっては、きれいな山を作らずに読みづらいACオシレーターが表示されることもあります。そう、頻繁にあるわけではないのですが、いつ上記のような読みが難しいケースが出てくるかはわかりません。
勝つためのACオシレータートレード手法
トレンドラインとACオシレーター
ACオシレーターは、1つのトレンドの流れの中で上下する動きに合わせてこまめに売買する方法がおすすめです。ACオシレーターと最も相性がいいのはトレンドラインとの併用です。まさにジグザグに動く相場に強いインジケーターだといえます。
まず、相場が大きく下降したのちに、ACオシレーターの動きに注目です。そろそろ反転するかもしれないサインを見つけます。下向きの山が終わりになってきた時に、次に上向きのラインが出てくるかどうか。下向きの山が終わったかなと思える段階でエントリーします。
次に予想通りに相場が上に向かった場合にACオシレーターのピークのポイントで売りエグジットです。あるいは、ここで売りエントリーもできます。次にの下向きの山がピークに達するポイントで買い、ここで上昇トレンドが形成されつつあるのがわかりますので、トレンドラインを引いておきます。
あとは、トレンドラインに沿って動く相場をACオシレーターで確認しながら買い・売りのエントリー・エグジットを繰り返していけます。
上向きの山がピークに達した時に「買い」
下向きの山がピークに達した時に「売り」
最後のACオシレーターにトレンドが終わるサイン
上図のトレンドラインの最後の部分に小さなACオシレーターが2つ出てきています。勢い・過熱していた市場が冷えてきていることを教えています。これは上昇トレンドが終わりを告げるサインですね。
そろそろ動きが変わるかな、と注意して様子を見ます。
レンジ相場ならサポート・レジスタンス
ACオシレーターは、レンジ相場にも最適なインジケーターです。一定の幅で上下する相場をACオシレーターを見ながら絶好のタイミングで売買できます。レンジ相場でACオシレーターを使う方法は至って簡単。レンジ相場にサポート・レジスタンスラインを引いて取引します。
レンジ相場が始まる地点では、それがレンジ相場なのかどうかはわかりませんよね。ひとまずは上昇に向かいそうに見えた時点で様子を見て、折り返し地点で下がるかなと売りエントリーしておきます。
予想どおりに相場が下に向かったら、次のACオシレーターで下向きの山がピークに達したところで買いエグジットです。この反転し始めたポイントで買いエントリーする方法もありますね。
次に上に向かった相場はまた下がり始めたの売りでエントリー。そして、同じ地点で反転し始めたのでレンジ相場かなとサポート・レジスタンスラインを引いておきます。あとは、サポート・レジスタンスに沿ってACオシレーターを見ながら売買し、ブレイクのサインが出るのを待ちます。
ACオシレーターでブレイクのサインを待つ
ブレイクする前にわずか3本の下向きACオシレーターが出てきていますね。これはレンジ相場が終わるサインです。すぐに上向きのACオシレーターの山ができ始めましたので買いエントリーします。ブレイクした後はACオシレーターのピークが出るまで待って売りエントリーで利確です。
レンジ相場で待つ方法もある
あるいは、レンジ相場に入った時に取引しないでブレイクを待つ方法もあります。レンジ相場の動きとACオシレーターを見ながら、何かブレイクのサインになりそうなラインが出てくるのを待ちます。そして、ブレイク後にエントリーする方法あります。
まとめ
ACオシレーターは上下する相場の動きに沿って敏感に反応していくので、短い時間でも細かい価格変動のヒントを得ることができます。スキャルピングやデイトレードを中心に取引している中級者以上の方にぜひ使って頂きたいインジケーターです。
とくに一定の値幅で推移するジグザク系のトレンドに強い点がおすすめです。
テクニカル・インジケーターと聞けば、難しく考える方も多いと思います。しかし、今回ご紹介したACオシレーターはエントリー・エグジットのタイミングに戸惑いがちな初心者でも簡単に使いこなせるインジケーターです。
どのようなラインを表示した時に「買い」なのか「売り」なのかACオシレーターのポイントを抑えておけば、チャートを見ながらACオシレーターに沿って売買していけます。
ぜひ、この機会に使ったことがない方は試してみて下さい。