FXチャート分析で使うインジケーターには色々な種類があります。まだ使ったことがないインジケーターの中には、意外と優れものが潜んでいることも多々あります。実際に使ってみないことには、自分のトレード手法に合ったものなのかわからないですよね。
「FXプロのFXチャート分析実践講座」では基礎的なインジケーターから上級者向けのインジケーターまで幅広い種類をシリーズでご紹介しています。
今回のFXプロでご紹介したいインジケーターは「カオスアリゲータ」です。
FXテクニカル カオスアリゲータ
「カオスアリゲーター」はインジケーターで有名なビル・ウイリアムズが開発した、トレンド系のインジケーターです。「カオスアリゲーター」の売買サインがワニ/Aligator(アリゲーター)が口を開けたような形状をとることから、「アリゲーター」という名称がつけられています。
まずは、最初に「カオスアリゲーター」の概要を簡単に見ていきましょう。
カオスアリゲータとは
カオスアリゲーターとは、
カオスアリゲーターを英語に直すと、Chaos Aligatorとなり、Chaosとは物理学のカオス理論のことで、Aligatorはワニを意味しています。日本語でわかりやすく言い換えると、カオス理論に基づいたワニ型のインジケーターといったところです。
カオスアリゲーターでは、短期・中期・長期と3本のEMA/Exceptional Moving Averageという移動平均線を使います。通常、一般的に使われている移動平均線はSMA/Simple Moving Averageですね。
SMAに比べるとEMAは、より敏感に相場に連動する移動平均線といわれています。
3本の移動平均線が、
- ワニが口を開けたように広がった時 → トレンドの始まり
- ワニが口を閉じたように収束した時 → トレンドの終わり
と売買タイミングを見るために使われています。
ビル・ウイリアムズについて
カオスアリゲーターを開発したビル・ウイリアムズは、MT4やMT5ではインジケーターメニューに「ビル・ウイリアムズ」の項目があるほど、世界的に有名な分析アナリスト・投資家です。
投資心理学と物理学カオス理論を融合させ、ビル・ウイリアムズ独自の分析理論を開拓したことで注目されています。
ビル・ウイリアムズのインジケーター
- ACオシレーター
- オーサムオシレーター
- Gatorオシレーター
- アリゲーター
- フラクタル
- BW MFI
ビル・ウイリアムズの著作物
- 相場の達人~常勝のカオス思考
- Trading CHAOS
- New Trading Dimention
日本語版の書籍もたくさん出版されているので、Amazonなどから探すことができます。
カオスアリゲータの基礎知識
カオスアリゲーターは、物理学カオス理論が基盤となっているインジケーターです。ビル・ウイリアムズのインジケーターはすべてカオス理論に基づいて構築されています。
では、そもそもカオス理論とは何なのでしょうか。
カオス理論とは
カオス理論とは、
カオスは英語でChaos、日本語に訳すると、「混沌、混乱、複雑、無秩序」などの意味になります。つまり、世の中には法則や秩序、数学的な根拠に従わない、混沌とした予測不能の現象があるという考え方です。
カオス理論では、ある現象に対して、
「一定の法則が導き出せない = 法則そのものがない = 予測は不可能」
なケースがあるとしています。すべては科学的に証明できるといった数学・科学・力学の世界に大きなショックを与えた考え方で、19世紀後半から20世紀初頭にかけて台頭しはじめた理論です。
カオス理論に当てはまる事象
カオス理論に当てはまる事象は、意外と身の回りに多くあります。
例えば、
炎のゆらめき、海外に寄せる波、風になびく旗、水道の蛇口からもれる水滴のリズム、心臓の鼓動、バスの到着時刻などと、複雑な外的要因によって大きく左右されるものの多くは、一定の法則を導く出すことは不可能なのです。
市場の動きは予測できない
ビル・ウイリアムズによると、
市場は、カオス理論でいうことろの「予測不能」な事象だと見なされています。
従って、
「こうなるから、次はこうなる」「〇〇だから上がる」「〇〇だから下がる」などの考えを、トレードにおいては捨て去ることが大切だとしています。私達投資家に分かるのは、あくまでも過去のデータと現状の動きのみだという考え方がビル・ウイリアムズの分析手法の根底にあるのです。
現在の位置づけを知ることが大切
ビル・ウイリアムズは、市場に対する先入観をすべて無にして、現在の相場の動きや位置づけを知ることがトレードで成功するためには必要だとしています。相場を予想する必要はなく、
との考え方です。
カオスアリゲーターの基本的な仕組み
カオスアリゲーターで使われるEMA(移動平均線)は、短期・中期・長期の3本で、それぞの線には役割があります。
- 短期線 → ワニの上唇
- 中期線 → ワニの歯・牙
- 長期線 → ワニの顎
に例えてあります。
3本の線がどのような形状になっているかによって、現在のトレンドの流れを見ることが可能となります。現在のトレンドがどのように流れているのかがわかれば、「買い」なのか「売り」なのか、「待つ」べきなのかの判断ができるというわけですね。
カオスアリゲータの見方
それでは次に、カオスアリゲーターの見方をチャートを見ながら解説していきます。
3本の移動平均線
カオスアリゲーターは短期、中期、長期の3本の移動平均線で表示されます。期間は、各自任意で設定することができます。
デフォルトでは、
- 短期 → 5期間
- 中期 → 8期間
- 長期 → 13期間
となっています。
通貨ペアや時間足などによって、若干の効果が変わってくるのでチャートに挿入してみてマッチする期間を設定します。期間の設定に悩む場合は、とりあえずはデフォルトで使ってみるといいでしょう。
各線のワニの部位
- 短期線 → ワニの上唇
- 中期線 → ワニの歯
- 長期線 → ワニの顎
と見なして、チャートを見ていきます。移動平均線の色の設定も任意でできますので、短期線を目立つ色にしておくとわかりやすいと思います。
上図のワニのイラストのようなイメージで、カオスアリゲーターを見ていきます。
ワニの口が開く・閉じる
3本のラインが収束している状態を、「ワニが口が閉じる」といってトレンドの終わりやトレンドがない状態を表しています。
3本のラインが大きく拡散していく状態を、「ワニが口を開く」といってトレンドが新しく始まる状態を表しています。
カオスアリゲーターの使い方
それでは、実際にカオスアリゲーターを使ってFXでトレードしてみましょう。
原則として、
- ワニが口を開けたら「エントリー」
- ワニが口を閉じたら「エグジット」
- ワニの口が上を向いていたら「買い」
- ワニの口が下を向いていたら「売り」
- ワニが口を閉じたまま「待ち」
以上の5つがカオスアリゲーターでトレードするポイントです。
ワニの口を見てエントリー・エグジット
ワニが口を閉じた時点で、エントリーの準備をします。ワニが口を開いた時にいつでもエントリーできるように構えておきます。
上昇トレンドの場合
ワニが上向きに口を開けたら上昇トレンドが始まるサインです。口を上向きに開けたのを確認したら「買い」エントリーします。エントリーしたら、ワニが口を閉じるまで待ちます。ワニが口を開けている間はトレンドが継続していることを意味しています。ワニが口を閉じたタイミングで「売り」エグジットで利確します。
下降トレンドの場合
ワニが下向きに口を開けたら下降トレンドが始まるサインです。口を下向きに開けたのを確認したら「売り」エントリーします。エントリーしたら、あとはワニが口を閉じるまで待ちます。下降トレンドが継続してワニが口を閉じ始めたらエグジットのタイミングを見ます。ワニが口を閉じたタイミングで「買い」エグジットで利確です。
ワニの口が閉じたままの時は様子見
ワニが口を閉じたままの状態が続いた時は、トレンドが発生していない、横ばいトレンドであることを意味しています。ワニが完全に口開けるまでは様子見です。
ワニが口閉じた期間が長くなるほど、ワニがお腹を空かしているため、大きな値動きが発生することが多いです。ワニが口を閉じている時は、いつでもエントリーできる状態で構えておきましょう。
勝つためのカオスアリゲータトレード手法
カオスアリゲーターはユニークでわかりやすいインジケーターですが、時にはワニが口を開けたようでも、すぐに閉じてしまったり、方向が微妙だったりと判断に迷う局面もあります。
カオスアリゲーターに限らず、どんなに優れたインジケーターでも100%完璧ではありません。
ACオシレーター
ACオシレーターは、ビル・ウイリアムズの代表的なオシレーター系インジケーターです。メインチャートの下に挿入するので、カオスアリゲーターを邪魔することなく使えて、上昇や下降の強さやトレンドの終局がACオシレーターで確認できます。
ACオシレーターは、棒グラフにて上向きの山と下向きの山が連なる形で表示されます。
- 上向きの山(上昇エリア) → 上昇トレンド
- 下向きの山(下降エリア) → 下降トレンド
- 長いバー → 勢いが強い
- 短いバー → 勢いが弱い
と相場の勢いやトレンドの方向性を見ることができます。
エグジット・エントリー例
- ワニが口を閉じた状態が続いています。ACオシレーターでも、ごく小さな山わずかに見られているだけで、相場に勢いがないことを表しています。ワニが大きく口を開けるのを待ちます。
- ワニが大きく口を開けて、価格がジャンプし始めました。
- ACオシレーターでも長いバーが出てきてトレンドの強さを表しています。上昇しきらないうちに、「買い」エントリーを急ぎます。
- しばらく上昇が続いた後、一旦下降しますが、ワニの口は開いたままです。また価格が上昇し始めたので上昇の継続を期待したいところですが、ACオシレーターでは下向きの山が2つ続いています。下降の勢いが出てきていることを表しています。そろそろエグジットの準備をします。
- ワニが口を閉じようとしています。ACオシレーターでも、下向きの長いバーが出てきているので下降トレンドに切り替わる可能性が高まりました。完全にワニが口を閉じたところで「売り」エグジットで利確します。
まとめ
カオスアリゲーターでは、ワニの口が閉じているか開いているかによって、エントリー・エグジットを計ります。ワニの口が開いた時にエントリー、ワニの口が閉じた時にエグジットと実にシンプルです。
カオスアリゲーターは、ビル・ウイリアムズが開発したインジケーターの中で、最もわかりやすくて使いやすいインジケーターだといえます。シンプルなわりに、ダマシがほとんどなく比較的に正確なサインが得られることが大きな特徴です。
カオスアリゲーターは、誰でも簡単に使いこなせるインジケーターなので、ぜひ、試してみて下さい。