FXの税金に特定口座はあるのか?

FXの税金が源泉徴収してもらえるなら税金を計算したり確定申告をする必要がないのですが、FXにはそもそも株式のような特定口座はあるのでしょうか。

FXでも特定口座が利用できれば税金の心配をせずに済みます。しかし結論からいえば、FXでは特定口座を利用することはできません

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なぜFXでは特定口座がないのか、FXの税金と株式の税金の違い、そしてFXの税金の計算方法などをわかりやすく解説していきます。確定申告をすべきか迷っている人は参考にして下さい。

特定口座とは

特定口座とは

まず最初に、特定口座についてよく仕組みがわからない方のために、特定口座とはどのような口座なのかを解説していきます。

株式取引の特定口座

株式取引では口座の種類を選ぶことができて、口座の1つに特定口座というものがあります。

株式取引の特定口座とは

株式の売却益にかかる税金を源泉徴収してくれる口座のことです。金額を受け取る時には自動的に税金が引かれているため確定申告をする必要がありません。(ここでいう株式とは上場株式のことです)

株式の特定口座には2種類あって、源泉徴収ありとなしを選べるようになっています。

特定口座(源泉徴収あり)

特定口座の源泉徴収ありを選択すると、基本的に株式取引で生じる税金は源泉徴収されます。あらかじめ税金を払っている所得になりますので、株式の利益がいくらになろうと確定申告をしなくても済みます。

特定口座(源泉徴収なし)

もう1つの特定口座は源泉徴収なしの口座です。株式で得た利益は源泉徴収されないのですが、年間取引報告書を確定申告用に証券会社が作成してくれる口座です。

一般口座

年間取引報告書も源泉徴収もない口座が一般口座です。

一般口座では取引をする度に取引報告書が発行される仕組みになっています。取引数が多い人だと年間で膨大な数になるので確定申告する時には大変です。分配金目当てで長期的に株式を保有する場合や、自分でこまめに損益計算を行う場合などに使われています。

株式取引では、売却益と配当金にそれぞれ20.315%の税金が課税されます。
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このように、FXでも源泉徴収してくれる口座があると助かりますよね。しかし、FXでは特定口座はありません。なぜなら、FXの利益は源泉徴収することができないからです。

なぜFXには特定口座がないのか

なぜFXには特定口座がないのか

FXの利益は一定の金額を超えると各自で確定申告をすることが義務づけられています。では、なぜFXには特定口座がないのでしょうか。

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株式の税金とFXの税金の違いをここで正確に確認しておきましょう。

株式とFXの税金の違い

株式の税金とFXの税金の違いを見ていくためには、所得にはどんな種類があるのかを見ておく必要があります。

[所得税の種類]
所得 所得の内容
利子所得 公社債や預貯金の利子、貸付信託や公社債の分配金など
配当所得 株式、投資信託の分配金、余剰金からの分配金など
不動産所得 不動産・土地、船舶・航空機の貸付から生じる賃料など
事業所得 商業・工業・農業・漁業・自由業などの事業所得
給与所得 給与・賞与など雇用によって生じる所得
退職所得 退職によって生じる所得
山林所得 5年以上保有する山林をを伐採・立木で売却した所得
譲渡所得 不動産や株式など固定資産の売却で生じる所得
一時所得 懸賞金、キャンペーン、満期保険金などで得た所得
雑所得 先物取引、原稿料・印税など上記に該当しないその他の所得

所得の種類から見ていくと、

株式の利益とFXの利益は所得の種類が全く異なるのです。株式とFXの所得税の違いを詳しく解説していきます。

株式取引で得た所得

株式取引で得る利益は、株式を保有している間に生じる分配金と株式の売却によって生じる売却益があります。この2つは異なる所得に区分されます。

  • 株式の分配金 → 配当所得
  • 株式の売却益 → 譲渡所得
配当所得と譲渡所得の税金の仕組み

預金の利子や株式・投資信託の分配金などの配当所得はもともと源泉徴収して支払われる所得です。配当所得の20.315%が税金で引かれて支払われる仕組みになっています。

譲渡所得は本来は申告が必要な分離課税となるのですが、「株式の譲渡にかかる特例」において金融取引業者が特定口座から源泉徴収することができる所得になります。譲渡所得の税率も20.315%です。

従って、もともと源泉徴収される配当所得そして特定口座(源泉徴収あり)を介して売却した株式の利益は税金が引かれているので確定申告は基本的に必要ありません。
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とても便利な特定口座のしくみですが、思いがけない盲点もあります。本来は株式の譲渡所得に税金が発生するのは給与所得がある人で20万円以上からです。

ところが複数の特定口座を利用することによって、通算では損益となる場合でも税金が引かれていることになるのです。(払いすぎた税金は、確定申告をすることで環付金として戻ってきます)

FX取引で得た所得

一方、FXは先物取引に分類される金融商品で、税制上は株式とは全く異なる商品として雑所得に区分されています。

FXはCFDやバイナリーオプション、商品先物取引などの「先物取引に係る雑所得等」に分類されており、分離課税として一定の金額を超えると確定申告をしなければなりません。FXの所得に税率20.315%で課税されます。

例えば、同じ証券会社で株式を特定口座で取引していたとしても、FXに関しては源泉徴収をすることが法律的にできないのです。

年間取引報告書

源泉徴収はできないのですが、各FX会社(証券会社)ではFXの取引では年間取引報告書を提供しています。FXの確定申告の際には年間取引報告書をもとに申告を行うことができます。

FXで得た利益は法律で源泉徴収できない所得として区分されています。従って、どこのFX会社・証券会社であっても特定口座を利用することはできないのです。
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確かに、一定金額を超えた時に自分で確定申告するのは面倒ですよね。ただ、自分で計算して税金を納めるから必要以上に税金を支払うことがなく安心だともいえるんですね。

FXの分離課税とは

FXの分離課税とは

FXの所得は申告分離課税方式にてその他の所得と切り離して計算される所得です。つまり、原則として給与所得とは合算できない所得になり、規定の税率にて切り離して計算しなければなりません。

そこでFXの税金を計算する際に覚えておきたいのが分離課税とは何なのかということです。

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ではFXの確定申告にて重要なポイントとなる分離課税について解説していきます。

分離課税とは

所得税は、総合で合算できる総合課税とその他の所得と切り離す必要がある分離課税とに分かれています。

総合課税の対象となる所得

総合課税の対象となるのは以下の所得です。

  • 分離課税に該当しない利子所得
  • 分離課税に該当しない配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 一時所得
  • 分離課税に該当しない雑所得

これらの所得は総合課税方式によって、所得額を1つにまとめて課税額を計算します。

分離課税の対象となる所得

分離課税の対象となるのは以下の所得です。

  • 利子所得で源泉徴収されていないもの
  • 配当所得で源泉徴収されていないもの
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得
  • 分離課税に区分される雑所得

これらの所得は、総合課税の所得とは別で規定の税率にて課税額を計算しなければなりません。FXは分離課税の雑所得になりますので、その他の所得と切り離して課税額を計算します。

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ちなみに世界のFX会社の場合は総合課税の雑所得となります。世界のFX会社の税金について知りたい方は下記からご覧になれます。

源泉分離課税と申告分離課税

さらに、分離課税は源泉分離課税申告分離課税の2つ課税方法があります。

源泉分離課税

源泉分離課税となる所得は、その他の所得とは別で個別に課税されますがすでに源泉徴収されているため基本的に確定申告は不要です。

例えば、預金の金利や株式の分配金などはその所得額に20.315%の税率で税金が引かれています。株式の譲渡所得は申告分離課税ですが特定口座によって実質は源泉分離課税で課税されることになります。

申告分離課税

申告分離課税となる所得は、それぞれ規定の税率が定められ、所得区分ごとに合計金額を計算する必要がある点は源泉分離課税と同じですが源泉徴収ができない所得になります。申告分離課税は、一定の所得額を超えると各自で確定申告をして税金を払うことが義務づけられています。

FXの税金は申告分離課税になりますので、個別でFXの所得額に20.315%の税率で課税額を計算しなければなりません。

FXの税金

FXの税金が申告分離課税であることがわかりました。FXの所得額が一定の金額を超えると、申告分離課税にて確定申告をします。では、実際にFXの利益がいくらになったら確定申告が必要になるのでしょうか。

FXの利益がいくらなら申告が必要?

FXの利益に納税義務が生じるのは大まかに、

  • 給与所得がある人 → 20万円以上から
  • 給与所得がない人 → 38万円以上から

となります。

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それぞの状況によって、基準となる金額は異なりますので詳しくはこちらの記事をご覧下さい。

利益と所得の違い

課税対象となるのはFXの利益ではなく必要経費を引いた所得額です。

FXの所得額

FXの所得額は、

FXの年間の利益 − 必要経費 = FXの所得額

で計算します。

FXの年間の利益

FXの年間の利益は、

  • 決済したポジションの為替差益
  • 受取済みのスワップポイント

この2つの金額を足したものです。

含み損や含み益の金額は対象外になりますので気を付けて下さい。
FXの必要経費

それがないとFX取引ができない、収益が出せないと判断できるものは必要経費として計上することが可能です。

  • FX用に購入したPCやモバイル端末
  • 通信費、プロバイダー料金
  • FX口座開設にかかった費用
  • FX取引にかかった手数料
  • 入出金にかかった手数料
  • 書籍・セミナーの費用
  • 為替関連の新聞・情報配信の費用
経費にする支出はレシートや領収証など、費用を支払ったことが証明できることが条件になります。

プライベートや株式取引とも重複している支出は、その一部を経費とすることができます。例えば、FX取引にかける時間が多い人、トレーディングルームを備えている人は家賃や光熱費の一部を経費にすることも可能です。

株式取引を特定口座で源泉徴収している場合でも、専業や事業主であれば株式を確定申告しておけば環付金が戻ってくる可能性もあります。

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FXの税金は必要経費や損益の活用による節税が可能です。FXの節税対策に関する記事が下記からご覧頂けます・ぜひ参考にしてみて下さい。

FXの税金を計算

FXの税金は、申告分離課税で一律20.315%の税率にて計算します。

FXの所得額 × 20.315% = FXの課税額

先物取引は損益通算が可能

FXは申告分離課税となるため、FXのみ個別で計算する必要がありますが、「先物取引に係る雑所得等」に該当する金融商品であれば合算して課税額を計算することができます。

株式の現物取引・信用取引は先物取引ではありませんので合算することができません。

「先物取引に係る雑所得等」

先物取引に係る雑所得等に該当する金融用品には以下のようなものがあります。

  • バイナリーオプション
  • 日経225先物
  • 日経225ミニ
  • TOPIX先物
  • JPX日経インデックス先物
  • 東証REIT指数先物
  • CFD

など・・・

損益でも確定申告した方が節税できる

FXで損益を出した場合でも確定申告をしておけば、3年間の損益繰越しや先物取引の通算ができるため節税対策になります。

損益の繰越し

例えば、50万円の損益を確定申告することで翌年のFXの利益から50万円を差し引くことが可能です。

翌年の必要経費を引いたFXの所得額が40万円だったとします。40万円の所得額は課税対象ですが損益の繰越しで、翌年も10万円の損益として計上できます。さらに10万円の損益額を翌々年に繰り越すことで節税効果が高くなります。

損益の繰越しは通関できる

「先物取引にかかる雑所得等」に該当する金融商品であれば、通算で3年間の繰越しができます。

毎年確定申告をすることが条件

確定申告した損益は3年間の繰越しが可能ですが、毎年確定申告を行うことが条件になります。

株式取引でも損益を確定申告しておけば、3年間の繰越しが可能です。

FXの確定申告

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それでは最後にFXの確定申告について解説しておきましょう。

確定申告の申請方法

確定申告は毎年2月中旬~3月中旬までの期間に、前年度の1月1日~12月31日までの分を申請します。期限に遅れた場合は延滞税が加算されますので、時間に余裕を持って取り組むことが大切です。

申請方法は3つの方法があります。

1.税務署の窓口・特設会場で申請

税務署の窓口で確定申告を申請することができます。それぞれの地域にて管轄の税務署が決まっていますので、管轄の税務署にて手続きを行います。

申告に必要な確定申告書の用紙も窓口でもらうことができます。不明点や記載方法などわからない事が相談できるのが窓口を利用する利点です。

また、確定申告の時期になる特設会場が設けられる地域もあります。会場でも確定申告書を用意してあり、書き方を教えてくれますので便利です。近くに会場がないか探してみるといいでしょう。

地域の税務署の検索はこちら

確定申告会場の検索はこちら

2.郵送で送付する

必要な書類を一式をそろえて郵送で送付する方法もあります。郵送で送付する際は、書き漏れ・印鑑の押し忘れなどがないように注意しましょう。

郵送で送付する場合は、各自で確定申告書を用意しておく必要があります。税務署の窓口や会場から申告書をもらう方法や国税庁の公式サイトから印刷する方法があります。

郵送先は管轄の税務署あてです。

確定申告書の印刷はこちら

3.オンラインで申請する

わざわざ申告書を用意したり窓口に出向いたりしなくともパソコン・スマホから簡単に「e-Tax」にて確定申告が行えます。

「e-Tax」を利用するには、

  • マイナンバーカードをリーダーで読み取らせる
  • IDとパスワードの登録を行う

以上どちらかの方法が選択できます。

e-Taxのご利用はこちらから

申告に必要な書類

  • 申告書B
  • 申告書第三表
  • 先物取引にかかる雑所得の計算書
  • 申告書第四表(損益の繰越しをする場合)

申告時に必要なその他の書類

上記の確定申告書に合わせて、他にも各自で用意しておく書類があります。

  • FXの年間取引報告書
  • 給与所得の源泉徴収票
  • 医療控除などの控除書類
  • 本人確認書類・印鑑
  • 銀行口座情報
必要経費を最大限に活用したい場合は、領収証やレシートに購入した目的や収益への効果など詳細を添付しておくことで経費として認めてもらえる確率が高くなります。
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国内FXと世界のFX会社では税金のしくみが全く異なります。今後の節税対策として、国内FXと世界のFX会社の税金の違いをこの機会にぜひ参考にしてみて下さい。

まとめ

まとめFX取引では今回解説したように株式のような特定口座はありません。

いざFXで課税対象となった場合は、自分で確定申告をしなければならないので面倒だと思う人は多いでしょう。しかし、自分で確定申告できるFXは節税しやすい所得だといえます。

株式取引で特定口座を利用する場合、複数の口座の損益が通算できずに余計に税金を払うこともあり得ます。また、必要経費を計上できないというデメリットもあります。

株式の売却益は譲渡所得であれば経費にできるのは原則として手数料のみとされています。ただ個人事業主の場合は雑所得・事業所得とすることで必要経費を計上できる場合があります。

FXの利益は必要経費を最大減に活用して課税額を節約していくことが可能です。これは自分で確定申告が必要なFXならではのメリットだといえます。

給与所得にしても、確定申告が必要ない = 払いすぎた税金がない、というわけではありません。

年末調整はあくまでも年間の暫定所得額で税金が計算されています。計算しなおしてみたり、利用できる控除を最大限に活用すれば税金は還付金として戻ってくるのに、確定申告が不要であることからその機会を逃しがちです。
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特定口座が使えないFXの税金は確かに面倒ではありますが、むしろ、FXの税金を確定申告しなかればならないことで、その他の様々な税金について見なおす機会になります。

この機会に株式や給与その他の税金について、改めて払いすぎている税金はないか、控除できる税金はないかじっくりと税金対策に取り組むことをおすすめします。

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