FXでは給与所得者の場合で、収益が20万円を超えると税金を払わなければなりません。実際に課税される金額は、収益から必要経費を差し引いた金額になります。
毎年2月中旬~3月中旬にかけてが確定申告の期間です。収益を出した以上は、税金がかかってしまうのは仕方がないことですが、支払う税金は少しでも安い方が嬉しいですよね。
FXの所得金額とは
FXの課税対象は、基本的に給与所得者で20万円以上、給与所得がない場合で38万円以上の利益が出た場合です。
ここで確認しておきたいのが、出した利益の全額が課税対象となるわけではないことです。
FX粗利益 − 必要経費 = FXの所得金額
FXの所得金額 = 雑所得 = 課税される金額
というように、課税対象となるのはFXの粗利益から必要経費を引いた所得金額です。この所得金額に雑所得税(分離課税)の20.315%を乗じた金額がFXの税金になります。
FXの粗利益
粗利益は、
「売り上げ総利益」「gross margin」などと呼ばれているもので、原価を差し引いた利益や収益のことをいいます。
FXでいえば、資金を差し引いた金額のことです。例えば、証拠金20万円の取引で6万円の利益が出た場合、粗利益は3万円ということです。
FXの必要経費
国税庁が定めるところをまとめると必要経費とは、
- 収入を得るために要した費用の額
- 販売・管理、その他業務上の費用の額
と規定されています。
1つの支出が家事においても関わりがある場合、区分した金額に限られることが必要経費を算入する際の注意点として記載してあります。
国税庁の公式サイトから必要経費の規定が確認できます。国税庁/必要経費はこちら
FXの節税方法を全解説!
FXの税金を少なくする重要なポイントは、
- FXの所得額をできるだけ小さくする
- FXの所得にかかる税率をできるだけ下げる
この2つの考え方が基本となります。
FXの税金対策はこの2つのポイントを基盤にあらゆる手立てを検討することができます。意外な方法で節税ができる場合もあり、簡単なものから難易度が高いものまで様々です。
それでは、考えられるすべてのFX節税方法をご紹介していきます。
必要経費を最大限に活用
まず、誰にでも簡単に取り組めるFXの節税方法が必要経費の活用です。必要経費が大きくできればそれだけFX所得金額は小さくなります。
FXの経費になるもの一覧
FX取引に必要な経費
- 通信費・プロバイダー料金
- FX口座開設にかかる費用(コピー代、郵送代、用紙代など)
- 筆記用具(取引記録に必要な文具、ペン、計算機など)
- FX取引用に購入したPC端末の代金
- FX取引で発生した手数料
- FX会社への問い合わせなどの電話代
- FX資金の借金の利息
手堅いところで経費とできるものには以上のような項目があります。
やや微妙となるのがPC端末の購入です。プライベート用で別に1台あると説得力があるでしょう。
大画面にする必要があった、端末の性能が悪く速度が遅かったため性能のよいPCをFX用に購入した、などFX取引のために購入した理由が正当である必要があります。(10万円以上の高額なPCは減価償却できます)
FXで利益を出すために必要な経費
- 書籍代、新聞代、資料代、情報配信代
- FXセミナーの参加費用・交通費
- チャート専用の追加のモニター
- チャート専用の追加の端末
- FX取引の有料ソフト(自動売買プログラムなど)
FXで利益を得るためには、いかにスピーディに効率よく情報収集を行うかが勝負になります。従って、上記の項目は利益を出すにあたって必要な経費と見なすことが可能です。
新聞に関しては、一般の新聞は却下されるケースが多く、経済新聞の場合でも経済新聞のどのジャンルが為替取引に欠かせない情報となるのかを説明できることが大切です。
追加のモニターや端末などもどのような点が利益を出す上で役に立っているのか記載するようにしましょう。
認められるかもしれない経費
- 家賃・光熱費の一部
- 飲食代・交際費
FX専用のトレーディングルームを完備することで、家賃や光熱費の1部を経費にできます。取引金額や取引回数からFX取引にかける時間比率が大きいと想定できることがポイントです。
他の場所に事務所やトレーディングスペースを借りている場合は賃料を経費にできます。
レシートや領収書の保管
FXの必要経費で支払った費用のレシートや領収書、請求書は必ず保管しておくようにして下さい。
- 購入した期日
- 商品 品目 サービス名
- 支払い先の会社名
- 商品 サービスの詳細
- 使途 目的
など、ひと目でわかる状態にまとめておくといいでしょう。いざ、税務署から調査された時にいつでも証明できる状態であることが肝心です。
損益の繰越控除
FXの節税で、誰でも取り組めるのに怠りがちな対策の1つに損益の繰り越しがあります。損益の繰り越しは今後のFXの税金対策に大きく役に立ちます。
FXの所得額が最終的に損益計上となった際は、当然ながら税金はかかりません。
FXの損失額は確定申告しておくだけで、3年間の繰越控除が適用されます。翌年からの3年間のFX所得額は、損失額の繰り越しで小さくできたり、非課税対象にできたりするのです。
損益通算
FXの損益は、他の先物取引との損益通算が可能です。FXの損益額にて特定の雑所得の合算金額が小さくなり、課税額を抑えることができます。
口座名義を分散
具体的にどのような効果があるのか解説していきます。
FXの所得金額が分散できる
例えば、夫婦で口座を分散するとします。本来1つの口座名義では38万円になるところの雑所得が、2つに分けることで1人のFXの所得を20万円以下にできる可能性があります。(各口座の取引状況による)
給与所得がある場合、FXの所得が課税対象となるのは20万円以上からです。もし、家族などで3~4人分の口座名義を持つことができれば節税に非常に有利となります。
課税の対象金額が変わる
給与所得者の場合は20万円以上で課税されますが、給与所得がない者は38万円以上となり、非課税にできる可能性が高くなります。配偶者や家族に給与所得がない人がいれば活用しない手はないでしょう。
税率が変わる
配偶者や家族が会社設立をしていれば、会社名義のFX口座が使えると便利です。原則としてFXなど先物取引の所得は分離課税となり、一律で20.315%の税率が課されてしまいます。
法人のFX所得はトータルの総所得として計上できます。資本金1億円以下、所得800万円以下の法人税は15%です。個人の雑所得よりも税率が大幅に低くなります。
個人事業主として申請
個人事業主として申請しておくのも、FXの節税対策の1つになります。
個人事業主の場合でも、基本的にはFXの所得は雑所得となり20.315%の税率が課されます。メインとなる収入が他にあれば20万円以上から、なければFXの所得を合わせた金額が38万円以上から課税対象です。
個人事業主として青色申告をすれば事業所得の65万円が控除できる点がメリットだといえます。さらに、経費項目の幅が広がり、FX所得計上でも経費の算入がしやすくなります。
法人設立
法人であれば、FXの所得は会社の売り上げの一部として総所得で計上することができます。
口座名義の分散の項でも触れましたが、資本金1憶円以下で総所得800万円以下に関しては法人税の税率は15%になります。税率が低くなるだけでなく、法人設立には他にも税制面で多くのメリットがあります。
法人設立の税制上のメリット
法人設立の法人税以外の税制上のメリットは、
- 法人名義で支払ったものがすべて経費になる
- 本人や家族への役員報酬を経費で計上できる
- すべての収入を合算して損益計算ができる
- 10年間の赤字の繰越控除がある
など・・・
世界のFX会社口座の活用
国内のFXの所得に税金がかかるなら、海外のFXにすればいい、と思われる方もいるかもしれません。しかし、世界のFX会社口座でも確定申告を避けることはできません。
世界のFX会社口座は分離課税にならない
国内FXの所得は分離課税として、その所得を他の所得とは別で20.315%の税率が課されます。世界のFX会社の所得は総所得として合算できます。
個人の所得には累進課税が適用されるため、所得の金額に応じて課税率が変わります。20万~195万円以下の所得であれば税率は15%になります。195万~330万以下ならば税率は20%になり国内FXと同じです。
世界のFX会社の所得のもう1つのメリットは、総所得の金額が195万円以上あった場合に最小で9万75,00円が控除できる点です。所得額に応じて一定の金額が控除できるので、350万円以下であれば節税効果が期待できます。
タックスヘイブンを活用して税金がゼロ円?
世界のFX会社を活用したもう1つの節税方法として、この機会にご紹介しておきたいのがタックスヘイブンを活用した節税方法です。
タックヘイブン国の法人設立で非課税にする方法
- 法人の株式数または出資の割合が10%以下
- 日本非居住者が持つ株式または出資の割合が50%以下
- 日本法人の小会社を設立して売り上げ配当を受け取る
以上3つの方法にてタックスヘイブン国の法人名義で得たFX所得(総所得)は課税対象から除外されます。
その他FXの節税方法
両建てポジションで利益を減らす
年末になった時点で、ロングとショートの2つのポジションの含み損が出ている方を決済してあえて損失を出します。含み益が出ている方は、年明けまで持ち越してタイミングを見て利益を確定します。
早めの時点で計画的に、節税用の両建てポジションを1つ保有しておくと便利です。
スワップ収益を非課税にする
スワップ金利も為替差益と同様にFX所得に含まれる利益です。FX取引では保有する通貨のスワップ金利を毎日受け取ることができます。通常は毎日受け取った時点で利益として決済されます。
FX会社によってはポジションを決済した時点でスワップポイントが反映される口座があります。つまり決済しない限りスワップ金利による利益は所得に加算されません。
含み損を決済して利益を減らす
含み損は、原則として確定申告の対象にはならず損益として計算することができません。年末になって利益が多すぎるなとなった場合、思い切って含み損を決済して利益を減らす方法があります。
年明け以降に再ポジションを取り直すことができ、マイナス表示が消えてメンタル的にもスッキリします。とくに後少しで非課税にできるとなった時は、ぜひ活用したい方法です。
その他節税方法
他にも、FXの税金とは関係ない部分で節税すればトータルの課税額を小さくできます。
- ふるさと納税
- 住宅ローン控除
- 生命保険・地震保険料控除
- 医療費控除
- 固定資産税の節税
- 自動車税の節税
- 車や不動産など減価償却費の活用
- 青色申告の活用
など・・・
まとめ
節税は、非常に奥が深いテーマであり、探れば探るほど税制の抜け道をどこかに見つけることができます。1つの税制を知ることが次の税制を知るきっかになります。
また、税金は多くの人にとって生きている以上は避けることができない永遠のテーマでもあります。税金に関する疑問や不満を持ちながらも、一生払い続けなければなりません。
税金は知らない人ほど多く払い、知っている人ほど少なく払うといわれています。つまり知らないと損することになるのです。