よく見聞きするテクニカルカルインジケーターの1つに、「パラボリック」というものがあります。「パラボリック」と聞いても、どんなインジケーターなのかイメージしづらいですよね。
「パラボリック」は英語のParabolicのことで、「放射線状の」「放物線の」といった意味を持ちます。どのように使うものなのか気になるトレーダーは多いのではないでしょうか。
FXテクニカル パラボリック
「パラボリック」はメインチャートに挿入されるトレンド系のインジケーターです。ボリンジャーバンドやRSIなどと並ぶ代表的なインジケーターの1つで、ほとんどの取引ツールで使うことが可能です。使ってみないことには、自分の投資スタイルに合ったものなのかわからないですよね。
パラボリックとは
パラボリックとは、
- 上昇トレンドではSAR(点)がチャートの下にくる
- 下降トレンドはSAR(点)がチャートの上にくる
- 上昇・下降の勢いが強いとSAR(点)の隙間が広くなる
- 上昇・下降の勢いが弱くなるとSAR(点)の隙間が狭くなる
- 価格がSAR(点)に触れるとトレンドが転換する
などが大まかなパラボリックの特徴です。
パラボリックの開発者
「パラボリック」の開発者は、「テクニカル分析の父」「テクニカル分析の確立者」といわれているJ.W.ワイルダー(J.W.Wilder)です。ワイルダーは、メカニカルエンジニア、不動産デベロッパー、トレーダーとして、RSIやピボットなど今日のテクニカル分析の基盤となるインジケーターを数多く開発しています。
J.W.ワイルダーが開発したインジケーター
- RSI
- DMI
- ADX
- ピボット
- パラボリックSAR
- ボラティリティ・システム
ワイルダーは1978年、投資マガジンにて新しい相場の分析手法を紹介しました。同時に「New Concepts in Technical Trading Systems」という分析解説書を出版し「RSI」や「パラボリックなどの分析方法や理論を詳しく紹介しています。
パラボリックの基礎知識
パラボリックはチャートの流れに沿って、弧を描くように放射線状にSAR(点)が並んでいます。これらのSAR(点)はどのような仕組みで表示されているのでしょうか。
SARとは
パラボリックの正式名称はパラボリックSAR。チャートに挿入される点のことをSARといいます。
SARとは、
パラボリックの計算方法
SARの計算式は以下のとおりです。
SARの計算式
SARを算出するにあたって、EP、AFの数値を求めなければなりません。
EPの計算
EPとは、「Extreme Price/エクストリームプライス」の略で、直訳すると極限の価格つまり最高値・最安値を意味しています。
EPは、上昇トレンドでは一定期間中の最高値を指し、下降トレンドでは一定期間中の最安値のことを指しています。この価格がEPです。
AFの計算
AFとは、「Acceleration Factor」の略で、日本語では「加速因子」と呼ばれる数値です。「加速因子」とはわかりやすくいうと、相場の勢いや価格の敏速度などを表すもので、特定のルールに沿って算出されています。
AFの数値は新高値・新安値を更新するたびに、「初期値0.02」に「0.02」ずつ加算されていく仕組みになっています。
- 初期値:0.02
- 1回の新高値・新安値:0.02
- 最大値:0.2
もし、価格が3回の高値更新を続けたとしたら、「0.02(初期値)+ 0.02 + 0.02 + 0.02 = 0.08」という計算になります。最大値0.2を超えた数値はすべて0.2で算出されます。
- 上昇トレンドでは一定期間中の新高値の更新数から算出
- 下降トレンドでは一定期間中の新安値の更新数から算出
となります。
パラボリックの基本的な仕組み
パラボリックはSARの位置や形状から、基本的に3つのポイントから相場分析が行えます。
- トレンドの方向性 → 上昇トレンド、下降トレンド、横ばいトレンド
- トレンドの強弱 → 上昇・下降の勢い、価格が収束するタイミング、買われすぎ・売られすぎ
- トレンドの転換ポイント → 上昇トレンドから下降トレンド、下降トレンドから上昇トレンド
パラボリックのメリット・デメリット
パラボリックのメリット・デメリットをまとめると
メリット
- 大きなトレンドの流れが掴みやすい
- トレンドの転換ポイントがわかる
- エントリー・エグジットのタイミングが読みやすい
などです。
デメリット
- 細かい上昇・下降のタイミングは分からない
- レンジ相場ではサインがわかりづらい
- ダマシ・誤サインもある
などを挙げることができます。
パラボリックは、トレンドの方向性・転換ポイントが掴みやすいことが大きなメリットで、トレンドごとに売買を繰り返すスイングトレードなどに適したインジケーターだといえます。
一方では、トレンド内の細かい上昇・下降のタイミングが読みづらいため、スキャルピングやデイトレードではちょっと物足りないインジケーターかもしれません。
パラボリックの見方
パラボリックでトレンドを読む
- 上昇トレンド → SARがチャートの下で上向きに推移
- 下降トレンド → SARがチャートの上で下向きに推移
- 横ばいトレンド → SARが交互に短く推移
上昇トレンド
SARがローソク足チャートの下に出てきたら、上昇するサインです。下向きのSARから上向きのSARが出てきたら「買いシグナル」と見ることができます。
ここで注意するのは、上昇トレンドにある中でも下降の局面にて下向きのSARが出てくるということです。上昇トレンドにあると見極める方法は、上向きのSARよりも下向きのSARが短いことを確認します。
- 上向きの長いSARがメインで出てくる
- 下向きの短いSARがたまに出てくる
上記の状態が確認できたら、相場は上昇トレンドで推移していると判断できます。上昇トレンドが継続する中、上向きのSARが短くなってきたら上昇の勢いが弱まっていると見ることができます。
下降トレンド
SARがローソク足チャートの下に出てきたら、上昇するサインです。下向きのSARから上向きのSARが出てきたら「売りシグナル」と見ることができます。
下降トレンドにある中でも上昇の局面にて上向きのSARが出てきます。下降トレンドが継続すると見極める方法は、下向きのSARよりも上向きのSARが短いことを確認します。
- 下向きの長いSARがメインで出てくる
- 上向きの短いSARがたまに出てくる
上記の状態が確認できたら、相場は下降トレンドで推移していると判断できます。下降トレンドが継続する中、下向きのSARが短くなってきたら下降の勢いが弱まっていると見ることができます。
横ばいトレンド
横ばいトレンドのSARの特徴
- SARの間隔が狭い・凝縮されている
- 短めにSARが弧を描く
- 交互に同じ高さで連続する
SARが上記のような形状を見せる時は、レンジ相場・横ばいトレンドにあると判断できます。
ブレイクするタイミングを読む
レンジ相場に入った時は、まずSARの間隔が広くなるタイミングを待ちます。価格が上か下かに動きだしたサインで、そろそろブレイクすると予想できます。
SARの間隔が拡がりだしたら、拡がりだした方向にブレイクする可能性が高くなります。上図のチャートでは一旦下にブレイクした後で、大きく上昇に向かっていますので、これはちょっとダマシが入った例となります。
ブレイク後は価格が大きく動く傾向にあるので、レンジ相場・横ばいトレンドを確認したらSARにチャネルライン(サポート・レジスタンス)を引いておいて、ブレイクするのを待ちます。
- 上にブレイクしたら「買い」
- 下にブレイクしたら「売り」
です。
先にも軽く触れましたが、パラボリックでは横ばいトレンドの時の見極めが若干難しいのが欠点です。
トレンドの強弱を読む
- SARの間隔が広い → 上昇・下降の勢いが強い
- SARの間隔が狭い → 上昇・下降の勢いが弱い
上向きのSARの間隔が広くなってきたら、上昇の勢いが強く価格が高騰する可能性があります。間隔が狭くなってくると、上昇の勢いが弱まってい売りが入り始めているサインと見ることができます。
下向きのSARの間隔が広くなってきたら、下降の勢いが強く価格が急落する可能性があります。間隔が狭くなってくると、下降の勢いが弱まっていて買いが入り始めているサインと見ることができます。
トレンドの転換ポイントを読む
- 上向きのSARがローソク足に触れる・近づく → 下降トレンドに切り替わるサイン
- 下向きのSARがローソク足に触れる・近づく → 上昇トレンドに切り替わるサイン
SARがローソク足に近づいてきたら、そろそろトレンドが切り替わるとの目安にすることができます。
- 下向きのSARがローソク足に触れて、上向きのSARが出てきたら「買い」です。
- 上向きのSARがローソク足に触れて、下向きのSARが出てきたら「売り」です。
パラボリックの使い方
では次に、パラボリックを使ってFXトレードする方法を解説していきます。
トレンドの転換ポイントでエントリー・エグジット
相場は下降トレンド。下向きのSARがローソク足に触れて、上向きのSARが出てきました。ここで、上昇トレンドを期待して即エントリーすることも可能ですが、SARが数点だけでまた下降トレンドが継続するケースがあります。
そこで、確実なエントリーを決めるのであれば、上向きのSARが下向きの最後のSARを超えた時に「買い」です。あるいはSARの間隔が拡がってきたタイミングを狙う方法もあります。ショートのポジションを持っている場合はここがエグジットのポイントとなります。
エントリーを決めたら、次は反対向きのSARが出てくるのを待ちます。上向きのSARがローソク足に触れて、下向きのSARが出てきました。この時点ですでに利益が出てますので、即エグジットしても問題ないでしょう。
下降トレンドに切り替わるのを見極めたい時は、下向きのSARが上向きの最後のSARを下に抜けた時に「売り」です。ショートの場合はこのタイミングでエントリーします。
勝つためのパラボリックトレード手法
どんなに優れたインジケータも完全ではありません。
パラボリックもその他多くのインジケーターの例にもれず、誤サインがあったりサインが遅れたりと判断に悩む局面もあるでしょう。
RSIと組み合わせたトレード手法
RSIもパラボリックと同じJ.W.ワイルダーが開発したインジケーターで、よく使われているインジケーターの1つです。
RSIの売買シグナルは大まかに、
- 70%以上 →「買われすぎ・売りシグナル」
- 30%以下 →「売られすぎ・買いシグナル」
と見ていきます。
エントリー・エグジット、分析例
- 下向きのSARがローソク足に触れ、上向きのSARが出てきました。RSIを確認すると30以下から上に向かっています。ここで「買い」です。
- 値動きは小さいながらも順調に上昇トレンドが継続。一旦価格が下がり、SARもRSIも下降のサインが出ています。しかし、SARは2つですぐに上向きに転換、RSIも70に向かっていますので保有することにします。
- 想定どおりに上昇トレンドが継続。ほどほどに利益も出ているので利確のタイミングを待ちます。SARは上向きから下向きに転換、RSIは70を大きく割り込み下がり始めています。ここで「売り」で満足の利確ですね。
まとめ
パラボリックは、SAR(点)の位置や形状・長さからトレンドの方向性を読むことができます。
- 上昇トレンドではSAR(点)がチャートの下にくる
- 下降トレンドはSAR(点)がチャートの上にくる
- 上昇・下降の勢いが強いとSAR(点)の隙間が広くなる
- 上昇・下降の勢いが弱くなるとSAR(点)の隙間が狭くなる
- 価格がSAR(点)に触れるとトレンドが転換する
などから的確な売買タイミングを計る目安になります。