移動平均線はFXチャート分析でよく使われているインジケーターで、移動平均線からの乖離率を基盤に算出されているインジケーターも多いようです。
移動平均線からの乖離率をシンプルに表したものに「移動平均乖離率」と呼ばれるインジケーターがあるのはご存知でしょうか。乖離率を目安に最適なエントリー・エグジットのタイミングを計ることができます。
「FXプロのFXチャート分析実践講座」では基礎的なインジケーターから上級者向けのインジケーターまで幅広い種類をシリーズでご紹介しています。
FXテクニカル 移動平均乖離率
「移動平均乖離率」は文字通り、移動平均線からの乖離率を表したオシレーター系のインジケーターです。メインチャートの下にサブチャートにて表示されます。
まずは、「移動平均乖離率」の概要を簡単に見ていきましょう。
移動平均乖離率とは
移動平均乖離率とは、
移動平均線は一定期間における相場の平均価格を表したものです。相場が動くサイクルは、慣性の法則に基づいて移動平均線の価格に戻ろうとする傾向にあるといわれています。
移動平均乖離率は、移動平均線に対する乖離率が大きくなりすぎると、価格は移動平均線が表す慣性の力によって引き戻されるという考え方に基づいたものです。
乖離率の大きさを見ることで、上昇相場の天井、下降相場の底を計る目安になります。上昇・下降のタイミング、トレンドが切り替わるタイミングを計ることが可能となるのです。
移動平均線の乖離率を基盤にしたインジケーター
移動平均線からの乖離率を基盤にしたインジケーターには、
- ボリンジャーバンド → ボリンジャーバンドに関する記事はこちら
- MACD → MACDに関する記事はこちら
- CCI → CCIに関する記事はこちら
- ベアパワー → ベアパワーに関する記事はこちら
- ブルパワー → ブルパワーに関する記事はこちら
などがあります。
移動平均乖離率は、数多くのインジケーターにも使われているように、相場動向を読むための重要な指標だといえるのです。
移動平均乖離率の基礎知識
移動平均線からの乖離率はどのように計算されているのでしょうか。どれくらいの乖離率を目安に見ていけばよいのでしょうか。
計算に使われる移動平均線の平均値は、設定する期間によります。デフォルトでは、5、8、25あたりの期間が使われることが多いです。設定する期間によって算出結果も変わってきますので、各自の投資スタイルに合わせて調整してみましょう。
- 短期トレード: 5~8期間
- 中期トレード: 9~25期間
- 長期トレード: 25~50期間
時間足によっても算出される期間は異なってきます。
時間足別の期間 5期間の場合
- 1分足: 5分
- 30分足: 150分
- 1時間足: 5時間
- 4時間足: 20時間
- 日足: 5日間
- 週足: 5週間
- 月足: 5か月
移動平均乖離率の基本的な仕組み
移動平均乖離率は、中央値0を基準に上下にプラスマイナスの数値で表示されます。
- 乖離率が下から上に向かう・ゼロを上に超える → 上昇トレンド
- 乖離率が上から下に向かう・ゼロを下に超える → 下降トレンド
- 乖離率がゼロ付近 → ニュートラルな状態/値動きが小さい
- 乖離率がプラスで大きい → 「買われすぎ」の状態/売りシグナル
- 乖離率がマイナスで大きい → 「売られすぎ」の状態/買いシグナル
移動平均乖離率がプラスの方向に動く時は上昇を意味していて、プラスの数値が高くなるほど移動平均線から大きく乖離していることになります。プラスの数値が一定以上のレベルになると「買われすぎ」の状態となり、下降し始める傾向にあります。
乖離率がプラスで大きく動いた時は「売りシグナル」です。
移動平均乖離率がマイナスの方向に動く時は下降を意味しています。マイナスの数値が大きくなるほど移動平均線から大きく乖離していることになります。マイナスの数値が一定以上を超えると「売られすぎ」の状態となり、上昇し始める傾向にあります。
乖離率がマイナスで大きく動いた時は「買いシグナル」です。
どれくらいの数値を目安にすべきか
どれくらいの数値を目安にすべきかは、通貨ペアやその時の相場動向、時間足などによって変わってきます。
過去のデータを目安にする
過去のチャート・移動平均乖離率のデータから、どれくらいの数値で反転しているのかを参考にすることができます。とくに直近ではどのように動く傾向があるのかをチェックしておくと判断の目安になります。
移動平均乖離率チャートの天井と底を目安にする
移動平均乖離率チャートの天井と底を目安に、天井に近づいたら売られすぎ、底に近づいたら買われすぎと判断する方法もあります。
移動平均乖離率の見方
数値の見方
中央値0を基準に上下にプラスマイナスで数値が表示されます。
- 中央値0 → 移動平均線から乖離していない状態
- 中央値0より上 → プラスの数値/移動平均線よりも高値にある/上昇
- 中央値0より下 → マイナスの数値/移動平均線よりも安値にある/下降
- 最大値 → 最大値付近まで乖離すると下降に転換するサイン
- 最小値 → 最小値付近まで乖離すると上昇に転換するサイン
最大値・最小値の目安となるラインが上下に2本表示されることもあります。その時の相場動向によってはプラス数値の幅が大きかったり、マイナス数値の幅が大きかったりと数値が表示される形式も変わってきます。
- 数値が0より上、プラスなのか
- 数値が0より下、マイナスなのか
を注意して見る必要があります。
ラインの位置でトレンドを読む
0より上で動いている
中央値0より上で移動平均乖離率のラインが動いている時は、全体的に平均値よりも高値で相場が推移していることを意味しています。
相場は上昇トレンドにあると見ることができます。
0より下で動いている
中央値0より下で移動平均乖離率のラインが動いている時は、全体的に平均値よりも安値で相場が推移していることを意味しています。
相場は下降トレンドにあると見ることができます。
0付近で動いている
中央値0付近で移動平均乖離率のラインが動く時は、全体的に平均値と変わらない価格で相場が推移していることを意味しています。
相場は値動きが少ない横ばいトレンドにあると見ることができます。
ラインの方向でトレンドを読む
ラインが徐々に上に向かう時は、平均値からの乖離率が徐々にプラス方向に大きくなっていることを意味しています。相場は上昇トレンドにあると見ることができます。
反対にラインが徐々に下に向かう時は、平均値からの乖離率が徐々にマイナス方向に向かっていることを意味しています。相場は下降トレンドにあると見ることができます。
0を抜けるかどうかがポイント
上昇トレンドに向かうか、下降トレンドに向かうかは、中央値0を上に抜けるか下に抜けるかで変わってきます。
ラインが0を下から上に抜ける時は、平均値からの乖離率がマイナスからプラスへと切り替わったことを表しています。相場は上昇トレンドに向かう可能性が高くなります。
反対に、ラインが0を上から下に抜ける時は、平均値からの乖離率がプラスからマイナスに切り替わったことを表しています。相場は下降トレンドに向かう可能性が高くなります。
移動平均乖離率の使い方
最大値・最小値を目安にエントリー・エグジット
相場は下降トレンド。乖離率のラインは下向きにきていたものが最小値に触れました。「売られすぎ」の状態でこれから上昇トレンドに切り替わるサインです。最小値に触れたラインが上に向かい始めるタイミングで「買い」エントリーを決めます。
予想どおりに相場は上昇トレンドに切り替わりました。次に、乖離率ラインが下降のサインを出すのを待ちます。
しばらく上昇トレンドが継続した後、ラインは最大値に触れました。「買われすぎ」の状態でそろそろ下降トレンドに切り替わるサインです。ラインが最大値に触れてから下に向かい始めるタイミングで「売り」エグジットで利確します。
ラインの向き・動きに沿ってエントリー・エグジット
基本的に乖離率のラインが下に向かう時は下降、上に向かう時は上昇と、移動平均乖離率と相場は連動して動く傾向にあります。
- 下に向かっていたラインが上に向かい始めたら「買い」
- 上に向かっていたラインが下に向かい始めたら「売り」
最大値や最小値も考慮しつつ、ラインの向き・動きに沿ってエントリーとエグジットを繰り返していけます。
この方法だと、最大値や最小値に触れていなくて、トレンドが切り替わるタイミングを察知することが可能です。
0を目安にエントリー・エグジット
- 相場は緩やかな下降トレンド。乖離率ラインは0より下で推移していたものが0を抜け始めました。ここでエントリーする方法もありますが、しばらく様子をみてから2回目で0で反発した時に手堅く「買い」エントリーを決めます。
- 予想どおりに相場は上昇トレンドに切り替わった後、一旦価格が下がり始めています。乖離率ラインは0を下に抜けましたが、また反発して上に向かっています。上昇が続くと判断して保有します。
- 上昇トレンドが継続しました。大きく上昇した時点での乖離率は最大値の近くに位置しています。そろそろエグジットの準備をします。
- 相場は下降に向かい、乖離率ラインは0を完全に下に抜けました。このタイミングで後悔なしの「売り」エグジットで満足の利確ですね。
勝つための移動平均乖離率トレード手法
インジケーターには色々な種類があり、使い方やサインも様々ですが、1つだけのインジケーターに依存するのは危険です。どんなに優れたインジケーターでも、100%正確に相場を読むことはできません。
ジグザグチャートを組み合わせた手法
ジグザグチャートとは、
ジグザグチャートはその名の通りに、下に向かったラインは必ず上に向かい、上に向かったラインは必ず下に向かうのが大きな特徴です。
つまり、
- 上向きの頂点ができれば、相場はほぼ確実に下降トレンドに切り替わる
- 下向きの頂点ができれば、相場はほぼ確実に上昇トレンドに切り替わる
仕組みになっているため、上昇・下降の転換ポイントが掴みやすいことが強みです。
ジグザグチャートを組み合わせたトレード・分析例
- 相場は下降トレンドから上昇トレンドに切り替わろうとしています。乖離率ラインは最小値に触れ上に向かい始めました。ジグザグチャートの下向きの頂点ができたのを確認して「買い」エントリーします。
- 乖離率ラインは最大値の近くにきました。ジグザグチャートを確認すると上向きの頂点ができて下に向かおうとしています。ここで「売り」エグジットで利確しておきます。
- 次に、下降トレンドにある相場が上昇するタイミングを狙います。乖離率ラインは0付近で推移、0を完全に上に抜けるのを待ちます。0を完全に上に抜けたのを確認したら、ジグザグチャートが上向きラインに切り替わった時点で「買い」エントリーします。
- 予想どおりに上昇トレンドに切り替わりました。一旦価格は下がるものの、乖離率ラインは0の上にありジグザグチャートのラインも上に向かっています。下降トレンドのサインを待ちます。乖離率ラインが最大値、ジグザグチャートが下に向かい始めた時点で「売り」エグジットですね。
まとめ
相場はつねに上がったり下がったりと、先のことは誰にもわかりません。ただ、長年のテクニカル分析の研究・検証の結果、相場の価格は慣性の法則から移動平均線の価格に戻ろうとすることが実証されています。
移動平均乖離率は、
- 乖離率ラインの最大値・最小値
- 乖離率ラインの位置、方向や動き
- 0を超えるかどうか
などから、上昇・下降のタイミング、トレンドが切り替わるタイミングを計ることができます。