代表的なFXのテクニカルインジケーターの1つにピボットというものがあります。分析レポートなどでピボットポイントという言葉を見聞きしますよね。そもそもピボットはどんなインジケーターなのか、疑問に思う方は多いのではないでしょうか。
テクニカルインジケーターは相性もありますので、使ってみないことには自分に合ったものなのかどうか判断できないものです。
「FXプロのFXチャート分析実践講座」では基礎的なインジケーターから上級者向けのインジケーターまで幅広い種類をシリーズでご紹介しています。
今回ご紹介するのは「ピボット」です。
「ピボット」の基礎知識、見方や使い方、勝つためのトレード手法などをこれから解説していきますので、ぜひ今後のFXトレードにお役立て下さい。
FXテクニカル ピボット
「ピボット」は、レジスタンス・サポートの目安になるラインが複数表示するトレンド系インジケーターで、有名なインジケーターの1つです。フィボナッチチャネルと似たようなものですが、自分で描画しなくても自動的に挿入される点が大きく異なります。
まずは、「ピボット」の概要を簡単に見ていきましょう。
ピボットとは
ピボットとは、
概ねのレジスタンス・サポートラインが数パターン表示されるので、価格が上昇・下降するタイミングや、トレンドの方向性やブレイクポイント、転換ポイントなどを探る目安になります。
ピボットにはいくつか種類があります。
- ベーシックピボット
- デイ・ウィークリーピボット
よく使われているピボットは上記の2種類です。
ベーシックピボット
ベーシックピボットは、現在の価格に水準をあててレジスタンス・サポートを6本、ピボットポイント1本のラインを表示します。
現在値が変化するごとにラインも自動的に更新されていきます。
デイ・ウィークリーピボット
デイ・ウィークリーピボットは、各自任意の設定にて、期間の指定が可能なピボットです。設定可能な期間は、1時間足、4時間足、日足、週足、月足など投資スタイルに合わせて設定できます。
レジスタンス・サポート6本、ピボットポイント1本が期間ごとに表示されるタイプです。
ピボットの開発者
ピボットを開発したのは、RSIやADXなどで有名なJ.W.ワイルダー/J.Wells.Wilder(1935年生まれ)です。J.W.ワイルダーは、「テクニカル分析の父」といわれている分析アナリスト・トレーダーで、今日のテクニカル分析の基盤となるインジケーターを数多く世に輩出しています。
ワイルダーが開発したインジケーター
- RSI
- DMI
- ADX
- ピボット
- パラボリック SAR
- ボラティリティ・システム
など、ワイルダーの投資手法に関する書籍も日本語版でたくさん出版されています。
ピボットの基礎知識
ピボットは、レジスタンスライン3本、サポートラインライン3本、ピボットポイント1本と合計7本のラインで、相場の価格帯を表示します。これらのラインはどのように計算されているのでしょうか。どのような仕組みになっているのでしょうか。
ピボットの7本のラインと計算方法
上図のように7本のラインでピボットポイントは構成されています。(チャートの動きによっては7本全部が表示されない箇所もあります)
7本のラインは上から、
- レジスタンスライン3(R3)
- レジスタンスライン2(R2)
- レジスタンスライン1(R1)
- ピボットポイント(PP)
- サポートライン1(S1)
- サポートライン2(S2)
- サポートライン3(S3)
となります。
PP/ピボットポイント
7本のラインのちょうど中央にくるのがPP/ピボットポイントです。
ピボットポイントは、
PP = (前日終値 + 前日高値 + 前日安値)÷ 3
で計算された数値です。
現在の価格がPPよりも高い場合は買いが優勢で、上昇傾向にあることを意味しています。現在の価格がPPよりも低い場合は売りが優勢で、下降傾向にあることを意味しています。
ライン1: R1/レジスタンスライン1、S1/サポートライン1
PPから一番近いラインが、R1、S1です。
S1 = PP -(前日高値 - PP)
で計算されます。
相場が前日と同じようなスタンスで動いた場合、R1とS1のライン内で値動きが見られる傾向にあります。
ライン2: R2/レジスタンスライン2、S2/サポートライン2
R1、S1の次に引かれるラインが、R2/レジスタンスライン2とS2/サポートライン2です。
R2とS2は、
R2 = PP +(前日高値 - 前日安値)
S2 = PP -(前日高値 - 前日安値)
で計算されます。
R1、S1を相場がブレイクした際には、R2、S2が次のターゲット価格となり得ます。
ライン3: R3/レジスタンスライン3、S3/サポートライン3
そして、PPから最も離れた距離にくるラインがR3とS3です。
R3とS3は、
R3 = R1 +(前日高値 - 前日安値)
S3 = S1 -(前日高値 - 前日安値)
で計算されます。
ライン1、ライン2の価格帯をブレイクした場合はライン3のレベルがターゲット価格となり得ます。相場が急騰・急落した時にはライン3の価格帯を考慮してトレードします。
ピボットの価格帯からブレイク
基本的に、相場はピボットの範囲内で動くと考えられています。R3、S3を超えるということは、想定外の強いトレンドを意味していて、「買われすぎ」や「売られすぎ」の状態と見なすことができます。
- R3 → ハイブレイクアウトポイント → 下降トレンドに切り替わるサイン
- S3 → ローブレイクアウトポイント → 上昇トレンドに切り替わるサイン
R3を相場が上に抜けることを「ハイブレイクアウトポイント」といいます。「ハイブレイクアウトポイント」は下降トレンドに切り替わるサインです。反対に、S3を相場が下に抜けることを「ローブレイクアウトポイント」といい、上昇トレンドに切り替わるサインと見ることができます。
ピボットの見方
ピボットを見るポイントは、
- PPよりも上にあるか下にあるか
- レジスタンス・サポートレベルを確認
- 各ラインをブレイク・反転するかどうか
以上の3つのポイントを見ていきます。
PPで相場の方向性を見る
ピボットでまず確認したいのが、現在のトレンドの方向性・勢いです。
- 相場がPPよりも上にある時は、「買い」が優勢で上昇トレンドを基調に推移
- 相場がPPよりも下にある時は、「売り」が優勢で下降トレンドを基調に推移
まずは大まかに、相場がPPの上と下のどちらで推移しているかを確認します。
サポート・レジスタンスラインの目安にする
- 価格はPPとRIの間で動いています。この部分のサポートはPP、レジスタンスはR1です。
- 価格はPPを下に抜け、今度はS1とR1の価格帯で動いています。サポートはS1、レジスタンスはR1です。
- 価格はPPを上に抜けきれずに下に反転しました。また、S1を下に抜けさらに安値をつけています。この部分のサポートはS2、レジスタンスはPPになります。
その時の相場動向によって、目安となるレジスタンス・サポートのラインが変わってきます。どのラインの価格帯で動いているかを確認すると、レジスタンス・サポートの位置がわかり、反転のポイント、ブレイクのポイントが読めるようになります。
各ラインをブレイク・反転するかどうか
- PPから上昇に向かい始めた相場はレジスタンスR1を超えました。上昇トレンドが継続する可能性が高くなります。次のターゲットとなるレジスタンスはR2です。
- 相場はさらにレジスタンスR2をブレイクしました。今度はレジスタンスR3/ハイブレイクアウトポイントを超えるかどうかを見ます。
- R3/ハイブレイクアウトポイントをブレイク。上昇のピークで「買われすぎ」の状態です。下降トレンドに切り替わるサインです。
- 下降に向かい始めた相場は、サポートR2を下にブレイクしました。下降トレンドが継続するサイン。
- 一旦上昇した後で、さらにR1を下に抜けました。まだまだ下がる可能性がありPPでどうなるかを確認します。
- PPをさらに下に抜け、相場はS1のサポートレベルまで下がりました。ここで反転するかどうかを見ます。
- 相場サポートラインS1で反発し上に向かい始めました。PPを上に抜ければ上昇トレンドに切り替わる可能性が高くなります。
というように、各ラインをブレイクするかどうかを見ることで、次の上昇・下降のターゲット価格や、トレンドの切り替わりを読むことができるのです。
ピボットの使い方
レジスタンス・サポートラインでエントリー・エグジット
ピボットの各ラインに価格が触れたら、反発するかブレイクするかのどちらかです。反発するかブレイクするかを見極めたうえで「買い」か「売り」かを決めていけます。
「買い」から入る場合は、
- 上昇に向かう相場がレジスタンスラインをブレイクしたら → 「買い」エントリー
- 上昇に向かう相場がレジスタンスラインで反転したら → 「売り」エグジット
「売り」から入る場合は、
- レジスタンスラインで反転したら → 「売り」エントリー
- サポートラインで反転したら → 「買い」エグジット
勝つためのピボットトレード手法
ピボットを使うことで、レジスタンス・サポートラインが自動的に表示されるため、より勝率が高いトレードが実現します。
しかしながら、ピボットだけに限らずインジケーターの利用にはサインの判断に戸惑う局面も多々あるものです。
ジグザグチャートと組み合わせたトレード手法
ジグザグチャートは、細かいトレンドの流れをジグザグのラインで表示してくれるトレンド系インジケーターです。ピボットが自動的にレジスタンス・サポートラインを引いてくれるように、ジグザグチャートは自動的にトレンドラインを引いてくれます。
レジスタンス・サポートラインとトレンドラインを使って、より強固な戦略を立てることが可能になります。描画する手間も省ける点でもおすすめのトレード手法です。
- PPで相場は反転、上昇トレンドが始まる気配を見せています。ジグザグチャートを確認すると小さな下降トレンドが終わってちょうど上昇トレンドが始まったところです。ここで上昇を確信して「買い」エントリーを決めます。
- 予想どおりに上昇トレンドが継続。相場はレジスタンスラインR2をブレイクしましたが、R3に達する前に下がり始めています。ジグザグチャートも下に降りてきています。ほどほどの利益が出たところなので「売り」エグジットで利確しておきます。
- 相場は下降トレンドに向かいましたが、R1のサポート近くで反転し始めています。再び上昇に向かく可能性があります。ジグザグチャートも上向きのラインが出てきました。ここで2回目の「買い」エントリーで利益を狙います。
- 手堅い上昇トレンドが継続してR2、R3と一気にブレイクしました。R3を大きく抜け「買われすぎ」の状態、これから下降トレンドに切り替わるサインです。ここで2回目の「売り」エグジットにて満足の利確です。
ジグザグチャートは、必ずジグザグにラインが引かれることが強みです。つまり、一旦下向きの頂点ができてラインが上に向かい始めれば必ず相場は上に向かうわけです。
ピボットのブレイクや反転のサインに戸惑った時には、ジグザグのラインがどちらの方向を向いているかで裏付けをとることができるのです。
まとめ
ピボットは、複数のレジスタンス・サポートラインを自動的に挿入してくれるインジケーターで、相場が上下する値幅をラインで区切って見極めていくことができます。
ピボットを見るポイントは、
- PPよりも上にあるか下にあるか
- レジスタンス・サポートレベルを確認
- 各ラインをブレイク・反転するかどうか
以上の3つです。