FXチャート分析に欠かせないテクニカルインジケーター。どのインジケーターを使うべきなのか悩みますよね。とくに初心者の方は複雑なインジケーターはわかりづらいと戸惑う方も多いのではないでしょうか。まずは、シンプルで分かりやすいインジケーターから始めて、使えるインジケーターを増やしていきましょう。
「FXプロのFXチャート分析実践講座」では基礎的なインジケーターから上級者向けのインジケーターまで幅広い種類をシリーズでご紹介しています。
今回のFXプロでご紹介したいインジケーターは「HLバンド」です。
FXテクニカル HLバンド
「HLバンド」はメインチャートにラインが表示されるトレンド系のインジケーターです。
まずは、簡単にHLバンドの概要を見ていきましょう。
HLバンドとは
HLバンドとは、
基本的に、HLバンドでは相場は一定期間内の高値と安値の価格帯の中で推移していくとの考え方で、HLバンドからトレンドの方向性やトレンドが切り替わるタイミングを見ることが可能となります。
バンド/価格帯を表示して分析する方法してはボリンジャーバンドにも似ている考え方です。また、一定期間内の価格から分析するといった意味では、移動平均線とも近似している部分があります。使い方も、ボリンジャーバンドや移動平均線と若干似ています。
HLバンド
- HLバンドの高値のラインで推移しているか → 上昇トレンド
- HLバンドの安値のラインで推移しているか → 下降トレンド
- HLバンドを抜けようとしているか → トレンドの切り替わり
というように、わかりやすくシンプルに使えることがHLバンドの大きな特徴です。
HLバンドの開発者
HLバンドを開発したのは、Richard Donchian(リチャード・ドンチアン)で、HLバンドはDonchian Channel(ドンチアン・チャンネル)とも呼ばれています。
Richard Donchianは、1930年代から1990年代にかけて米国ウォールストリートで活躍したトレーダー兼アナリストで、商品先物や株式を中心に数々の分析手法を発表しています。トレンドの流れを読むことがDonchianの相場分析の基盤となっていて、HLバンドはトレンドを読むために開発されたインジケーターです。
現在でもRichard Donchianの崇拝者・支持者は多く、HLバンド・Donchian Channelを解説する本も多数出版され、彼の業績を記念した「Richard Conchian Foundation」も設立されています。
HLバンドの基礎知識
HLバンドはメインチャートに2本のラインがシンプルに表示されるインジケーターで、見やすくわかりやすいのが大きな特徴です。
HLバンドは高値のラインと安値のラインが以下のように挿入されます。
HLバンドの仕組み
インジケーターは計算方法など理論的なことはわからなくても十分に使いこなすことができます。インジケーターを挿入するだけで自動的にラインが表示されます。ただ、どのように計算されているのか、大まかにでも知っておいた方が独自の分析手法を固めるためにも役に立ちます。
- High(高値ラインの数値)→ 一定期間の最高値の価格
- Low(安値ラインの数値)→ 一定期間の最安値の価格
ここでいう一定期間とは、各自で任意の設定が可能です。デフォルトでは20日間になっている場合が多いです。それぞれの投資スタイルに合わせて期間を設定するようにしましょう。
短期トレードは短めの期間で、中長期トレードは長めの期間を設定するとより効果的です。設定に迷う時はデフォルトのままで使ってみましょう。
Middleラインが挿入される場合もある
HLバンドは基本的に高値ラインと安値ラインの2本のラインが表示されますが、中にはMiddle(中央値)が表示されるタイプもあります。考え方、使い方は2本でも3本でも同じです。
ちなみにMiddleラインは、
一定期間の最高値から最安値を引いた数値を2で割って算出されています。
HLバンドの見方
HLバンドは高値ラインと安値ラインが形成するバンドを使って相場分析を行っていきます。
HLバンドを見るポイントは、
- 相場が高値ラインよりで動いている → 上昇トレンド
- 相場が安値ラインによりで動いている → 下降トレンド
- HLバンドを価格が抜けた → トレンドが反転
以上の3つです。
HLバンドの上昇サイン
HLバンドの上にあるライン、「高値ラインに向かって相場が動いている」「高値ラインに沿って相場が動いている」場合は、上昇トレンドのサインです。相場が上昇トレンドに向かっている・上昇トレンドにあることを意味しています。上昇トレンドが継続する時は、HLバンドが階段状に上がっていきます。
高値ラインの角度が大きくなるほど、上昇トレンドが強いことを表しています。最大の角度は90度で、高値ラインが90度で上に伸びている時は価格が大きくジャンプすることが多いです。
HLバンドの下降サイン
HLバンドの下にあるライン、「下値ラインに向かって相場が動いている」「下値ラインに沿って相場が動いている」場合は、下降トレンドのサインです。相場が下降トレンドに向かっている・下降トレンドにあることを意味しています。下降トレンドが継続する時は階段上に下にHLバンドが下がっていきます。
安値ラインの角度が大きくなるほど、下降トレンドが強いことを表しています。直角に下に向けて安値ラインが伸びている時は価格が急落することが多いです。
相場が高値ラインに近いのか、安値ラインに近いのか、どちらのラインに向かって動いているのかを見極めるだけで、相場分析が行えるのです。とても簡単です。しかも、的中率が高いことにも驚きです。HLバンド外で相場が動くことはほとんどありません。
初心者の方でも簡単に上昇・下降のサインを読むことができます。中級者以上で、複雑なインジケーターを使いこなす方でもこのシンプルで正確なサインには脱帽ですよね。
HLバンドのトレンド転換のサイン
HLバンドと相場の動きからトレンドの転換を読むことができます。
下降から上昇へ切り替わるサイン
相場が安値ラインに接して下に突き抜けた場合は、そこから上昇トレンドに切り替わる傾向にあります。この時に、安値ラインが水平に横に線を描いていることがポイントです。
安値ラインを下にブレイクしたとしても、トレンドが切り替わらずに一時的に価格が上がる局面もあります。また、ブレイク後に安値ラインが下に動いていく場合は、まだ下降トレンドが継続するサインとして見れます。
上昇から下降に切り替わるサイン
相場が高値ラインに接して上に突き抜けた時は、そこから下降トレンドに切り替わることが多いです。注意するポイントは高値ラインが水平に横に動いていることを確認します。
高値ラインをブレイクした場合でも、トレンドは切り替わらずに一時的に価格が下がる局面もあります。また、ブレイク後に高値ラインが上に向かっていく時は、まだ上昇トレンドが続くサインです。
むしろ、ブレイクした時に相場が反転するサインとして見た方が的中率は高そうです。
価格が上昇し、上昇トレンドが続いた後はトレンドが切り替わるサインをチェックするようにしましょう。
HLバンドは、値動きに敏感に反応するため、どちらかというと大きめのトレンドの流れを読むよりは小さめのトレンド、細かい値動き・相場が上下する動きを読むのに適しています。
HLバンドの使い方
それでは、実際にHLバンドを使ってトレードする方法を解説していきます。
上昇と下降を繰り返すトレンド・値動きに合わせて売買をしていく手法がHLバンドに最適です。数十分~数時間おきに取引するデイトレード、上下の波に合わせて取引するスイングトレード、細かい値動きに合わせて数分の取引を繰り替えるスキャルピングなどで使うことができます。
上昇と下降を繰り返すトレンドに最適
どんな相場も上がったり、下がったりしながら1つのトレンドを形成していきますよね。大きなトレンドの中にも小さなトレンドが複数作られていきます。
安値ラインを相場が抜けきった時に「買い」エントリーします。判断が微妙な局面も多いと思いますので、上がると思って下がり始めたら早めに損切りしましょう。
次に、相場が高値ラインに達してブレイクしたら「売り」エグジットで利確です。このポイントで「売り」エントリーも可能です。
エントリー・エグジットを決める際のポイント
- ローソク足のボディがしっかり突き出ている
- 複数のローソク足が突き出ている
- その後、安値ライン・高値ラインが水平に移行している
上昇トレンドを見極める
安値ラインを相場(ローソク足)がブレークして、「買い」エントリー。上昇し始めた時に確実なサインが出るまでは様子を見ます。2,3か所でローソク足の若干飛び出て、その後高値ラインが水平に移行していますが、ボディが出ていないので弱いサインとして見れます。(もちろん、ここで一旦利確する方法も有り)
上昇しているローソク足のボディが、確実にブレイクした後でHLバンドの高値ラインが水平に移行したら下降トレンドに切り替わるサインです。ここで「売り」エグジットで利確します。
下降トレンドを見極める
高値ラインを相場(ローソク足)がブレークして、「売り」エントリーします。下降し始めた時に確実なサインが出るまでは様子を見ます。2,3か所でローソク足がブレイクしていますが、その後の水平ラインが微妙なので弱いサインとして見れます。(もちろん、ここで一旦利確していくこともできます)もっと強いサインが出るまで待ってみます。
下降しているローソク足のボディが、確実にブレイクした後でHLバンドの安値ラインが水平に確実に移行したら上昇トレンドに切り替わるサインです。ここで「買い」エグジットで利確します。
勝つためのHLバンドトレード手法
数え切れないほどのトレード手法・インジケーターがある中、どの方法も100%完全ではありません。ファンダメンタルの要素も考慮しながら、その他複数の手法・インジケーターを活用していくことがFXトレードで勝つためには欠かせません。
シンプルな戦略が一番強い!
HLバンドはシンプルでわかりやすいインジケーターです。追加で使うインジケーターやラインもごくシンプルなものがおすすめです。まず、使ってみたいのがレジスタンス・サポートラインです。
レジスタンスライン・サポートライン
HLバンドとレジスタンス・サポートラインを使ってエントリー・エグジットを判断していく例を挙げていきます。
一番左端のポジションにて、サポートラインにてちょうどトレンドが切り替わるサインがHLバンドに出ていますので、「買い」エントリーします。
- レジスタンスラインを確実にブレイクしたので、HLバンドで反転のサインが出ていても保有、様子を見ることにします。
- サポートラインを下回りましたが、反発しHLバンドで反転のサインが出ているので、まだ待ちます。
- ここで、HLバンドでは非常に強い反転のサイン、レジスタンスラインをブレイク後で価格が折り返しているので、このポイントで「売り」エグジットすることにします。
- このレジスタンスラインで価格が下がる動きが継続しているので、HLバンドの反転サインは弱めでも、また下降するかなと「売り」エントリーします。
- サポートラインを価格が下回り、HLバンドは下に向けて下がり始めています。下降トレンドが継続するサインです。しばらく保有したまま様子を見ます。
- サポートラインを下に抜け、反発し始めました。HLバンドにも反転サインが出ています。上昇トレンドに切り替わる可能性が高いので、ここで「買い」です。
- レジスタンスラインに届かない位置で価格が下がり始め、ちょうどHLバンドにも反転サインが出ているので「売り」と判断します。
まとめ
HLバンドとは、Donchian Channelとも呼ばれている、シンプルで使いやすい最もベーシックなインジケーターだといえます。高値ラインと安値ラインと2本のラインがつくる価格帯の中で不思議と相場は移行していきます。
トレンドの流れを見る方法として、
- 相場が高値ラインに沿って動いている → 上昇トレンド
- 相場が安値ラインに沿って動いている → 下降トレンド
トレンドの切り替わりを見る方法として、
- 安値ラインを相場がぬけた後、安値ラインが水平に移行 → 上昇トレンドに切り替わるサイン
- 高値ラインを相場がぬけた後、高値ラインが水平に移行 → 上昇トレンドに切り替わるサイン
などを参考にすることができます。