FXで利益が出たら20万円以内なら確定申告は必要ありません。ただ、この20万円というのは条件があるのでFXの利益が20万円以内であっても確定申告しなければならないケースもあります。
どういった場合にFXの利益が20万円以内で申告不要になるのか確認しておくことが大切です。税金の仕組みはそれぞれの状況によって変わりますので戸惑う人も多いでしょう。
FXの利益は20万円以下は申告不要!
FX所得が20万円以下だと申告は不要ですが、これは正確には給与所得がある人が対象となります。給与所得がない人はFXを含めた所得が48万円を超えると申告の義務が生じます。
ここで注意しておきたいのは、課税対象となるFXの利益とは正確には必要経費を差し引いた所得のことです。
FX所得とは
FXで稼いだ利益がすべて課税対象となるわけではありません。FXの利益から必要経費を差し引いた金額が課税対象となるFX所得です。
FXの利益 − 必要経費 = FX所得
FX所得 = FXの課税所得額
以上のように計算してみて、FXの所得額が課税対象になるのかどうかを確認する必要があります。
FXの利益と必要経費について改めて見ておきましょう。
FXの利益
FXの利益は、為替差益とスワップポイントの2つの利益を合わせた金額になります。
- 為替差益
- スワップポイント
それぞれ正確にどこまでの金額を利益として計上するのか解説していきます。
1.為替差益
利益として計上する為替差益は、すでに決済したポジションから得られた売却益のことです。まだ、決済していない含み益や含み損は対象外となります。
決済して実際に得られた年間の売却益がいくらなのかを計算します。
2.スワップポイント
もう1つ利益として計上するのがスワップポイントです。通常、スワップポイントは保有中のポジションに対しても毎日付与されています。つまり、すでに確定している利益になりますので決済していないポジションでもスワップポイントは利益として計算します。
決済したポジションの分も含めた年間のスワップポイントがいくらなのかを計算します。
利益を計算する
年間の為替差益とスワップポイントの合計金額がFXの粗利益となります。
FXの必要経費
次に、FXの必要経費とはどのような費用になるのかを見ていきましょう。
FXの必要経費になるもの一覧
- FX取引用に購入したパソコンやモバイル端末
- 通信費・プロバイダー料金
- 付属のモニターやPC用の机
- FX口座開設にかかった費用全般
- FX取引にかかった手数料全般
- 新聞や情報配信にかかる費用
- 自動売買ソフトやVPSの費用
- セミナーの参加費用や交通費
- 家賃や光熱費の一部(取引に費やす時間にもよる)
など、FX取引に必要なものが対象となります。プライベートとの区別が難しいものは、その費用の一部を経費としてあてることができます。
トレーディング用の部屋を用意したり、取引にかける時間比率が多い方などは家賃や光熱費の一部を費用にすることが可能です。
FXの所得がいくらなのか
FXの利益から必要経費を差し引いた金額がFXの所得になります。FXの所得がいくらだったのかによって、課税されるかどうか、確定申告が必要なのかどうかが決まります。
- 給与所得がある人 → 20万円以上
- 給与所得がない人 → 48万円以上
FXの税金はFX所得の20.315%
FXの税金は、
で計算して確定申告を行います。
会社員、アルバイト、給与所得、その他副業など、それぞれの状況によっていくら以上になれば確定申告が必要になるのかが異なります。
FXの税金は雑所得
給与所得に該当しないFXの税金は雑所得として区分されます。
雑所得の中でも、FXは申告分離課税である「先物取引に係る雑所得等」に分類され、基本的に法人以外はその他の所得と切り離して計算することが義務付けられています。
給与所得やその他の所得には、所得に応じて5%~55%の税率がつきます。分離課税であるFXなどの先物取引は一律で20.315%の税率が課されます。
20万円以下で申告不要となる条件
一般的にFXの利益が20万円以下なら確定申告が必要ないと言われていますが、誰でも必ずそうだとはいえないのです。
20万円以下で申告不要となるのは、一定の条件があります。いざ詳しく調べてみると、実は20万円以下でも確定申告が必要だったとなるケースもあります。では、この「20万円基準」が該当するのは、どのような条件なのかを解説します。
給与所得がある人
「20万円基準」が該当するのは、まず会社員やフリーターなどで、一定の給与をもらっている人です。雇用者が年末調整(源泉徴収)を行っていることが条件になります。
そこで、所得税法では給与所得以外で20万円以上の所得が出た場合に確定申告を行うことを義務付けています。FXで20万円以下は確定申告が必要ないと言われている理由は、給与がすでに源泉徴収されているからなのです。
退職所得がある人
また、退職所得がある人も「20万円基準」が該当します。
退職金も給与と同様に、原則として会社が源泉徴収を行っています。従って、退職金を受け取る時にはすでに源泉徴収にて税金がひかれています。
所得税法では、退職所得がある場合もその他の所得が20万円以下であれば確定申告必要ないと規定しています。
給与所得・退職所得以外の所得がFXだけの人
給与所得、退職所得がある人はFX所得が20万円以下なら確定申告は必要ないのですが、あくまでもその他の所得がFXのみである場合です。
給与所得以外の所得がFX以外でも、株式投資、不動産投資、その他副業などとある場合は、FX所得を含めた給与以外の所得が20万円以内であることが条件となります。
扶養家族ではない主婦や学生
給与所得というと、どうしも会社員やフリーターなどをイメージしてしまいますが、主婦や学生でも控除からはずれて収入を得ている人はいますよね。
主婦や学生でそれぞれ源泉徴収にて税金を納めている場合は、会社員と同様に「20万円基準」が適用されます。FXの所得が20万円以下なら非課税、20万円を超えると確定申告が必要になります。その他の所得がある場合は合計で20万円以下となることが条件です。
公的年金が400万円以下の人
公的年金が年間で400万円以下の受給者は、FXの所得が20万円以下であれば確定申告は必要ありません。FX以外の所得がある場合はFXを含めた所得が20万円以下となることが条件になります。
公的年金が400万円を超える場合は、FXの所得にかかわらず確定申告をして税金を払わなければなりません。
確定申告が必要なケースについて、国税庁の公式サイトから詳しく確認して頂けます。
48万円以下で申告が不要となる条件
FXの所得額が20万円を超えた場合でも、確定申告が必要ないケースもあります。20万円を超えても課税義務が発生しない条件を解説していきます。
給与所得がない人
専業主婦や学生などで給与所得、その他の所得がない人は、FXの所得が20万円以上でも確定申告は必要ありません。
48万円を超えると確定申告をして税金を払わなければなりません。
単発で収入を得た場合
給与所得がない人でも、単発の仕事を受けたり、ネットオークションなどで収入を得る場合があります。また、FX以外で株式や不動産、先物取引などで収入を得ている場合もあるでしょう。
給与所得がなく、FX以外で何らかの収入を得た場合はFXの利益を含めた所得が48万円以下であることが非課税の条件になります。
扶養家族の人は38万円に注意
本人が扶養家族である場合、FXの所得が48万円を超えると扶養家族の対象外となってしまうので注意が必要です。
配偶者控除を受けている人は、給与所得者の年収が900万円以下であれば48万円以下までは確定申告は必要ありません。
配偶者控除と障害者控除を受けている人は配偶者控除額にプラス27万円の控除額がつきます。また、70歳以上の老人控除対象配偶者である人はFXの所得が48万円までは税金はかかりません。
20万円以下でも申告が必要なケース
自営業の場合
自営業の場合は事業所得とFXを含めた総所得額が48万円以内であれば、確定申告は必要ありません。ただ、自営業をしていて所得額が48万円以内で収まることはまずないでしょう。
従って、FXの稼ぎがいくらであっても原則として確定申告は必要になります。
フリーランスの場合
フリーランスで収入を得ている人は、給与所得ではなく報酬として収入を得ています。フリーランスの事業所得とFXの所得が38万円を超えると確定申告をしなければなりません。
フリーランスの場合でも、自営業と同様に所得額が年間で48万円以下で収まることは滅多にないといえます。従って、基本的にFXの利益は金額を問わず確定申告する必要が出てくるでしょう。
副業やその他の収入が多い場合
給与所得者であっても「20万円基準」が該当しない場合はあります。給与所得者でFXの所得が20万円以下であっても確定申告が必要となる例を挙げておきます。
- 副業で得る給与は源泉徴収されていない
- ネットオークションやアフィリエイトの収入がある
- Web製作で単発で収入を得ている
など、給与所得以外の雑所得が多くトータルで20万円を超える場合は、FXの所得が少なくても確定申告をしなければなりません。
専業トレーダーの場合
専業でFXや株式取引などを行っている場合は、個人事業主になりますので基本的に48万円以上の所得があれば確定申告が必要になります。FXトレードの所得が事業所得にできるかどうかは、事業主としての申請内容や税務署の判断によります。
申告が必要なその他のケース
FXの所得を問わず確定申告が必要なケース
以下にご紹介する内容に該当する場合は、FXの所得がいくらであっても基本的に確定申告が必要となります。
年間の所得が2,000万円を超える
会社の役員クラスに多くなるケースですが、給与所得が2,000万円を超える場合は年末調整の対象とならず、各自で確定申告を行わねばなりません。
医療控除などの控除を受けたいケース
医療控除、住宅ローン控除、雑損控除、寄付金控除などの控除を受けたい場合は、いずれにしても確定申告を行う必要があります。
給与はあるが年末調整をしていない
小規模な会社や個人経営の店舗では、会社や経営者の事情で年末調整を行わない場合があります。給与収入があっても年末調整がされていなければ、FXに限らず確定申告をしなければなりません。
ダブルワークなど2か所で働いていて、年末調整が行われない収入が20万円を超える場合も確定申告が必要です。
また、給与の支払い者が個人である場合、源泉徴収義務がないため受け取った給与を確定申告しなければなりません。(原稿料やセミナー講演料、弁護士・税理士への報酬など)
同族会社の役員が給与以外を受け取る場合
同族会社の役員が受け取る給与は基本的に源泉徴収されます。その他FXの所得などが20万円以内であれば確定申告は必要ありませんが、貸付金の利子や不動産の賃料などを受け取っている場合は確定申告が必要になります。
災害減免法により源泉徴収の猶予を受けている
災害によって住宅や家財に損害があった時は災害に合った年度の所得が軽減・免除される制度があります。この制度を適用するためには、被害の状況や損害金額を記載して確定審古書を提出しなければなりません。
在日大使館の外交官や職員
外国大使館での給与は、支払いを受ける時には源泉徴収されないことになっています。日本国籍を有していない、または日本の永住権を有していない場合を除いて、受け取った給与は確定申告をすることが義務づけれています。
法人のFXの利益
法人名義でFX取引を行う場合、FXの利益は会社の売り上げとして計上されるため金額を問わず法人税の対象となります。
法人のFX所得は、分離課税ではなく総合課税方式となりますので、総所得額に応じて5%~45%の税率にて課税額が決まります。
まとめ
今回は、FXの利益は20万円以内なら申告しなくてよい条件やその他のケースについて解説していきました。自分の場合はどうなるのか確認して頂けたのではないでしょうか。
最初に確認しておきたいことは、課税対象となるのはFXの実際の利益ではなく必要経費を引いた所得額であることです。まずは所得額を計算しておきましょう。
FXの所得が20万円以下で申告が不要となるケースをまとめると、
- 源泉徴収された給与がある
- 給与以外の雑所得はFXだけ
- FXを含めた雑所得が20万円以下
といった条件になります。
FXの所得が48万円以下で申告が不要となるケースは、原則として給与所得がないこと。あるいは、主婦や学生などで扶養控除内で給与を得ている場合です。
自営業やフリーランスなどは事業所得とFX所得、その他所得を合わせた金額が48万円以下であれば確定申告は必要ありません。ただ、大半はその金額を超えてしまうでしょうから、基本的に確定申告は必要だということになります。
他にもFXの金額を問わずに、確定申告が必要なケースなどをご紹介していきました。それぞれの状況に合わせて課税対象なのかどうかをチェックしてみて下さい。
課税対象となった場合でも、必要経費や損益決済の活用にて課税額を小さくしたり非課税にしたりすることが可能です。この機会にFXの節税対策について学んでおくことをおすすめします。