【FX予想】ユーロの2021年の為替相場見通しとFXトレードの攻略ポイントを解説

2020年はユーロが勢いをつけた年でした。コロナショックから米ドルが下がり続ける中、利を得たのはユーロだったようです。米国長期金利は1.0%を大きく下回り、政策金利は0.25%まで低下しました。

金利の優位性を失った米ドルからユーロへと資金が流れ、欧州復興基金が好感を呼んだこともあって、ユーロ円は8月に127.05円、ユーロドルは9月には1.201ドル、さらに2021の年明けも高値よりで推移しています。

Brexitも前向きな展開で決着がつき、さて、2021年のユーロはどのように推移していくでしょうか。

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今回は、ユーロの2021年の為替相場見通しとFXトレードの注目トピック・攻略ポイントを解説していきます。ぜひ、参考にして頂ければ幸いです。

【2021年】ユーロの価値はどうなる?

【2021年】ユーロの価値はどうなる?

2021年のユーロはどうなる?

コロナウイルスの影響は?Brexitリスクは考慮すべき?まだまだこれから上がる?それとも下がる?

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これからのユーロの動きを予想していくために、まずは確認しておきたいの通貨インデックスです。

通貨インデックスとは

1つの通貨の価格の動きを複数の主要通貨と比較して、単体での価値を表示したものです。通貨インデックスは、ICE、日経新聞やBloomberg、Reuterなど多種多様な種類があり大手機関によって公開されています。(市場に上場して取引できるインデックスもあります。)

一般的に通常目にする通貨の価格というのは、対象となる通貨に対して今いくらなのかが表示されています。対象となる通貨が変わるごとにユーロの価格は変化しますので、ユーロ単体での価値がどうなのかわかりづらいですよね。

通貨インデックスを見ることで、ユーロ単体の価値を見出すことが可能となります。

2020年のユーロインデックス

上記のユーロインデックスは2019年11月~2020年1月までの期間を表示したものです。

1ユーロ単体の価値はコロナ勃発後、総額5,400憶ユーロによる欧州経済対策の公表にて、1.0448ドルまで高騰しています。その後、一旦価格は下がった後で持ち直し。2020年後半から1.0255あたりのレンジ相場が続いています。そして年明け以降のユーロは下降ぎみで、1.0060~1.0100ドルあたりで推移しています。

コロナ以前の価格から見れば、確実に1ユーロの価値はコロナウイルスの打撃を受けずに、むしろ高くなっているようです。

主要通貨インデックス

主要通貨インデックス 主要通貨インデックス

https://intomillion.com/charts/

次に、スイスフラン、ユーロ、英ポンド、日本円、米ドルの通貨インデックス比較を見ていきます。上記のチャートは2020年1月を100として現在(2021年1月)までの価格の推移を比較したものです。1年間で価格が最も上がっているのはスイスフラン。次にユーロとなります。

対円でのユーロの動き

円とユーロの動きは大まかに相反する関係にあり、円が下がる局面ではユーロが上昇、円が上がる局面ではユーロは下降しています。円自体の動きはそこまで激しくはないものの、現状では円が上昇に向かいユーロの力がやや弱まっているかなといったところです。

対ドルでのユーロの動き

とくに目立つのが対ドルでのユーロの動きです。ユーロと米ドルは激しく相反する関係にあり、ドルの急下降にともないユーロが勢いをつけて上昇しています。このインデックスにて米ドルからユーロへと資金が流れていることがわかります。

米ドルの弱さがユーロ高につながる可能性が高いといえるでしょう。

【2021年】ユーロ相場の注目トピック

【2021年】ユーロ相場の注目トピック
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では、次にユーロ相場に影響を与えると思われるファンダメンタルズの注目トピックを確認していきます。

2021年ユーロ相場の注目トピックは、

  1. コロナウイルス
  2. 経済対策
  3. 政策金利
  4. Brexit
  5. 中国との関係

以上5つにポイントを絞ってみました。

それぞれ、どのような点に注目すべきなのかを見ていきましょう。

1.コロナウイルス

2020年~2021年の最大の注目トピックはすでに周知のごとく「コロナウイルス」に尽きます。2021年現在の欧州のコロナウイルスとワクチン接種の状況と、今後の見通しを解説していきます。

欧州のコロナウイルス 感染者数・死者数(2021年1月21日時点)
欧州のコロナウイルス 感染者数・死者数(2021年1月21日時点)
  • 英国  感染者数 約351万人/死者数 約9万人(EU圏外)
  • フランス 感染者数 約302万/死者数 約7万人
  • イタリア 感染者数 約241万/死者数 約8万人
  • スペイン 感染者数 約241万人/死者数 約5万人
  • ドイツ 感染者数 約209万/死亡者数 約4万人
感染者数に関しては、多くの欧州諸国では減少傾向にありながらも、スペインが現在でも上昇中。死者数はドイツで増加が見られ、スペインスウェーデンは上昇の過程にあります。
世界の感染者数・死者数 上位国
世界の感染者数・死者数 上位国

欧州では感染者数・死者数で目立った英国(EU圏外)の位置づけを見れば、米国の感染者数・死者数は人口差があるものの数倍に及んでいるのがわかります。世界全体で見ると、いかに米国の感染者数・死者数が高いのかがわかります。

この歴然とした感染者数・死者数の違いが、米ドルが売られリスク回避先としてユーロに資金が動く理由の1つとなっています。ただ、EU圏を率先するドイツの新規死者数が1月15日に過去最多を記録、英国からの変異種の感染リスクやロックダウンの強化が懸念されユーロ売りが進んだ状態。米国の感染者数・死者数に著しく減少した場合は、ユーロ高ドル安からユーロ安ドル高に反転するきっかけになるかもしれません。

コロナウイルスワクチンの接種状況

昨年末から、欧州にてワクチンの承認と接種が開始され、欧州委員会は夏までには最低でも70%の接種率を達成するよう各加盟国に促しています。すでに米モデルナ、ファイザーなどからワクチン3憶回分を確保するも、1度で供給できるワクチン数には限りがあることが、接種加速を妨げているようです。

ワクチン接種率の向上による、ロックダウンの緩和がユーロ高の1つのポイントとなりそうです。

2.EUの経済対策

コロナウイルスが猛威をふるう中、ここまでユーロが飛躍したのは大規模な経済対策によるところが大きいといえます。

EUの経済対策は

  • 「復興基金の設立(Next Generation EU)」
  • 「緊急経済支援策(SURE)」
  • 「次期多年次財政枠組み(MFF)」

の3つの柱で構成されています。

復興基金の設立(Next Generation EU)

EUの「復興基金」とは

コロナウイルスの経済的打撃からの復興を図るために使われる基金のことです。失業給付金などの返済不要の補助金が3,900憶ドル、公的支出などに備える財政融資金が3,600憶ドルの基金が設立されました。

緊急経済支援策(SURE)

EUの「緊急経済支援策」とは

一時的支援策(SURE)とも呼ばれているコロナウイルスの経済対策のことです。EUから加盟国に対して総額1,000憶ユーロの融資による財政支援が開始されました。

次期多年次財政枠組み(MFF)

EUの「次期多年次財政枠組み(MFF)」とは

緊急措置として融資や補助金の対象期間を延長するための予算のことです。経済の回復には時間がかかることを見据えたEUの政策で、支援金や融資の種類によって最大で2027年までの枠組みが設定されています。

総額1兆8,000億ユーロの経済対策

「復興基金の設立(Next Generation EU)」「緊急経済支援策(SURE)」「次期多年次財政枠組み(MFF)」と3つの経済支援対策は1つの包括的な「コロナウイルス支援パッケージ」として、総額1兆8,000億ユーロの予算がEU委員会によって制定されました。

財政支援の第一弾では、

  • イタリア100億ユーロ
  • スペインに60億ユーロ
  • ポーランドに10億ユーロ

の融資が行われています。

イタリアへの財政支援から、イタリアとドイツの10年国債の金利差が縮小、EUのネガティブ要因となっていたイタリアの財政リスクが大幅に軽減。ユーロ圏全体での信用力が向上、ユーロ買いを加速させました。EUの経済対策には、地球温暖化対策・ゼロエミッションや5Gの促進支援もおりこまれていることからEUの将来性に期待が集まり、さらに支援金の規模の大きさから大手金融・投資機関などに高い投資モチベーションを与えています。

3.金融政策

次に、ユーロ相場で注目しておきたいのがECB(欧州中央銀行)の金融政策です。

2020年のユーロ上昇の背景には、米ドルとの金利格差の縮小がありました。FRBがコロナ勃発後に大幅な金利の引き下げを実施した時には、当然、平行してECBも金融緩和に踏み出すとの見方が多かったのです。

ところが、ECBは引き下げの余地はないと判断。そこで、米ドルとユーロの金利格差の縮小がユーロ買いのきっかけを与え、さらに、米国の感染者・死者数の増加の経済の低迷から、巨額のドルがユーロへと流れ込んだわけなのです。

また、バイデン氏の次期大統領就任が決まった時も、民主党の過去の金融政策から低金利の長期化が懸念されたことも、ユーロ買いを加速させました。

ユーロ/米ドルと独米金利格差

2021年に、ユーロ相場の強さを図る目安として、ECBの利下げが再び見送られることが条件となり得るでしょう。加えて、EU加盟諸国の長期金利格差の縮小などもユーロ買いにつながる要素だといえます。
米ドルの金利上昇がユーロの価値を減少

米ドルに関しては、追加緩和の可能性の方が高いとの声も多いのですが、米経済に良好な回復が見られた場合は、FRBの利上げがないとは言い切れません。仮に、米ドルの金利上昇にて、ユーロとの金利格差が拡大した場合は、ユーロ売りを促す結果となることを考慮しておきましょう。

4.Post Brexit

そして忘れてはならない、EUのネガティブ要因とはBrexitです。

2020年までは英国はEU加盟国でしたが、交渉に難航しつつも、いよいよEUとの合意に達しBrexitを実行しました。2021年度からは、英国不在のEU経済となります。EU委員会は2020年のEU27カ国の実質GDP成長率をマイナス7.4%と予測しています。

双方に納得のいくBrexitだったとはいえ、英国の実質GDP成長率は世界で5位、EU圏内ではドイツの次に位置する経済規模です。英国がぬけた今、EU全体での経済規模は確実に縮小しています。EUの実質GDP成長率はコロナウイルス抜きにしても、低下することは避けられません。
具体的な数値に対する幻滅の可能性もあり

上昇を見せたユーロではありますが、現時点では「EU・ユーロへの期待が高まっている」という段階です。将来的には、EU主要国の具体的な経済指標の数値(失業率、PPI、小売売上高、鉱工業生産率など)に幻滅することもあるかもしれません。EUの回復・成長の過程の中途では、ユーロが一旦落ち込む可能性は当然あるでしょう。

5.中国との協定

英国が空けた穴をふさぐ役割をするかと思えるのが中国の存在です。英国と入れ替わりにEUは中国と投資協定を締結しました。

EUと中国の投資協定とは、

正式には包括的投資協定(CAI)と呼ばれる協定で、世界経済の回復に向かって、グローバルな投資の拡大と自由貿易を促すことを目的としたものです。

EU企業はバイオテクノロジー、IT、EV自動車などで中国市場への参入が可能となり、中国側も大規模なEU貿易への足掛かりを得ることでアジア圏内にて優位性が確保できます。将来的にはEUと中国間の自由貿易への展開が前提にあるようで、7年前から交渉が進められています。

中国からEU企業への投資残高は約3倍に増加、中国としてもEUとの貿易には米国も関与できないことから双方に利がある協定だといえます。
中国は米国がライバル意識を持つほどに高度な経済成長を遂げています。世界第2位の中国と第3位のドイツ(EU)との協定は、最強の組み合わせともいえ、高い経済効果が期待できるでしょう。

【2021年】ユーロ相場の見通し

【2021年】ユーロ相場の見通し
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それでは、2021年ユーロ相場の見通しを2つの方向から検証していきたいと思います。

ユーロは上昇?

ユーロが上昇するシナリオは、

  • コロナウイルス接種率の加速
  • 米国との金利格差の縮小
  • EU加盟国間での財政格差の縮小
  • 具体的な数値によるEC経済の回復見込み
  • 中国との協定における具体的な進展

などの項目にてポジティブな展開となるなら、ユーロは引き続き2021年も強さを維持していくと見れます。

ユーロは下落?

一方、ユーロが下落するシナリオとは、

  • 米国との金利格差の拡大
  • EU加盟国間での財政格差の拡大
  • 具体的な数値にてEC経済の回復が読めない
  • 中国との協定における具体的な進展が見れない

などのネガティブ要因にて、ユーロ売りが進む可能性が高いでしょう。

対円でのユーロ相場

円は、政策金利や経済対策において、ユーロや米ドルに比べるとやや魅力にかけるのが現状。かつ、ワクチン導入にも数歩出遅れ、世界的な規模でのコロナウイルス対策への貢献度も低く、東京オリンピックを控えている国としてのインパクトに欠けます。

コロナウイルス以前はドルの逃避先として円買いが進んでいたものが、今はユーロへと代替えされ、ドルが売られる局面では円も売られる傾向にあります。

対円でのユーロ相場は、上昇シナリオにて130円~135円あたりで推移。下降シナリオではユーロからドルへと資金が動きますが、同時に円からもドルへと資金が流入するため121円~125円あたりで下げ幅は限定的となるでしょう。

対ドルでのユーロ相場

EU圏におけるワクチン接種率の向上を前提とした時に、もしドルの低金利が長引く、あるいはゼロ金利が導入されるなどすれば、ユーロ買いが加速する見込みがあります。米経済の回復を急ぐなら、必然的に大規模な経済対策と金融緩和が生じるため、しばらくはユーロ高が続く可能性が高いです。

急速な米経済の回復が見られたとしても、具体的な利上げに踏み切るには時間がかかります。しかし徐々にドルが買い戻されるため上値は限定されます。

対ドルでのユーロ相場は、1.160~1.230ドルあたりで推移すると予想します。

もし、EU経済が良好な回復状態にあり、米国内でコロナ以外のネガティブ要因があがるならば、1.235ドル超えもありでしょう。

今回の為替予想には、東京オリンピックの先行きは考慮していません。各国のワクチン接種の予定・状況がまだ現時点では何ともいえないからです。日本では2月あたりから接種が開始される予定です。春頃には「中止か実施」か正確に公表される予定です。

仮に東京オリンピックが中止になったとすれば、経済効果が大きいだけに円がらみの通貨ペアはネガティブな影響を与えると思われます。

【2021年】ユーロの攻略ポイント

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最後に米ドルの攻略ポイントをまとめておきました。
  • コロナウイルス感染者数・死者数は減少するか
  • コロナワクチンの接種率が向上するか(もしくは効果はあるか)
  • 米国との金利格差はどうか
  • EU加盟国間の財政格差はどうか
  • 具体的な数値にてEU経済の回復が見込めるか
  • 中国との協定による具体的な進展があるか

まとめ

まとめ

EU加盟国の中には、まだまだ成長余地の高い国々が数多く、EUは無限の可能性を秘めています。これまでは、EU経済は英国とドイツ経済による寄与度が大きく、その他の国の英国・ドイツへの依存度も高かったといえます。しかし、今となっては英国も不在。ドイツ経済のみではEU経済をこれまでのレベルで維持することは不可能です。

EUにてユーロが統一通貨として導入されたのは1999年。以来、EUでは金融政策も統一されきたものの、各国の財政管理は完全に分離され、財政状況には大きな差が生じていました。

しかし、コロナウイルスに対する経済対策が財政の統合・共有化を実現させるきっかけとなったのです。バラバラだった各EU加盟国の財政・経済は、コロナウイルスを機会に、均等化に向けてより強固な結束力が生まれようとしています。
コロナショックで世界が騒然とする中、思い切った行動に出たEU。巨大ともいえる経済回復へのロードマップから、今後のEUの秘められた可能性に投機を見出した投資家・投資機関は決して少なくなかったようです。
ここで、将来への可能性を提示し続けていけるのかどうかがEU・ユーロの命運を左右していくでしょう。

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