FXを本格的に始めている投資家のほとんどが複数のFX口座を利用しています。FX初心者の方は、まずは1つ開設して使い方に馴れてからもう1つ、2つと徐々に口座数を増やしていけます。まだ口座開設をしていない方や、1つの口座を使い始めたばかりの方は、なぜFX口座を複数開設するのか疑問に思う方も多いでしょう。
おそらく1つの口座を使い始めてみると、わかると思いますが、1社のチャートソフトや取引ツールだけでは足りないと感じるようになると思います。FXトレードを有利に取引していくためには、複数のチャート画面、複数のニュースツールや分析ツールなどが必要になってくるからです。
より迅速に、より効率よくテクニカル・ファンダメンタルズをこなしていくためには1社だけのFX口座では不十分だといえます。分析面だけでなく、資金管理をしていく上でも長期や短期、主要通貨ペアや新興国通貨ペアなど投資の目的に合わせて複数のFX口座を使い分けた方が管理しやすくなるのです。
FX口座は複数あった方がよい?
FX口座は複数あった方がよいです。
FXメディアサイトで有名なザイFX!の統計によると、1社だけでFX取引をしている人は全体の19.8%、まだ口座を持っていない人が15.7%、2社以上持っている人が64.5%となっています。
FX会社はそれぞれ使い勝手が異なる
初めてFXの口座開設した人は、まずは1社のアカウントや取引ツールを使いこなすのが精一杯ですよね。まずは一般的なFX口座の管理方法や取引の仕方を学ばなくてはなりません。最初のうちは1つの口座で十分だと思われる方は多いでしょう。
しかし、FX会社はそれぞれアカウントの管理方法や取引ツールの機能・サービスが異なり、どのFX会社を選んだとしても一長一短で100%満足できるFX口座は存在しないといえます。
最初から2社、3社と口座を開設する人は少ないものの、使っていくうちに2社、3社と複数の口座を開設して使いわけていく人がほとんどです。1社を使いこなせるようになったら、いずれかのタイミングで2社、3社と口座開設していくことをおすすめします。
FX口座を複数開設する理由
ちなみに、FX口座を複数開設する具体的な理由を参考までに見ておきましょう。
- いざという時のシステム障害に対応するため
- 業者ごとにスワップやスプレッドが異なるため
- チャートソフトを複数使いたいため
- 1社の分析機能に限界があるため
- 複数の情報配信を受けたいため
- 資金を分散して管理したいため
- 複数の口座を比較したいため
などの理由が挙げられています。
FX口座を複数開設するメリット
1.1社でシステム障害が生じても安心
どんなに質の高いシステムを使いメンテナンスに費用をかけていたとしても、いついかなる理由でシステム障害が起きてしまうかは予測ができません。絶対に100%システム障害が発生しないと約束できる金融関連の会社は無きに等しいのです。
金融機関を代表するメガバンクでさえも過去にはシステム障害で一定時間使えなくなったことがあります。FX会社も例にもれず、過去にはシステム障害が生じて、「ログインできない」「取引できない」「チャートが固まった」などの事象が起きたことが報告されています。
そのようなリスクがある中、万が一に備えて2社、3社のFX口座があれば最適な売買タイミングを逃さずに済みます。
FX会社のシステム障害の例
2013年には、インヴァスト証券、サイバーエージェント、DMM、セントラル短資など複数のFX会社にてシステム障害が発生しています。経済統計発表後にアクセスが集中したためシステムが対応しきれずに不具合が生じてしまったのです。最適な売買タイミングを逃した投資家からの苦情も多かったようです。
他にも、2014年にはFXTFのMT4でシステム障害、2015年には外為どっとコム、YJFXなどで目立つシステム障害が発生しています。
2011年あたりから2015年ぐらいまで証券会社やFX会社おけるシステム障害が多発して、業務停止処分などが相次いだため、2017年以降はサーバーを高水準に移行するなどの動きが見られています。現在ではFX会社のシステム障害のリスクは以前よりは低減してきているといえます。
ただ、記事にならない程度の軽いシステム障害はおそらく割と頻繁に起きているでしょうし、どのFX会社を選んだとしてもシステム障害のリスクを完全に回避することはできません。
FX会社のシステム障害で発生した損失は補填されない
万が一、FX会社のシステム障害にて損失が発生した場合でも、基本的にFX会社は責任を負わないとしているので注意する必要があります。
ごく一部のFX会社では損失が発生した状況によっては損失分を補填してくれるケースもあるようですが、ほとんどの場合システム障害時の損失は「機会損失」となるため、FX会社では補填できないことを明確にしています。
2.投資スタイルごとに資金を分散して管理できる
複数のFX口座があると、投資スタイルごとに口座を使分けて資金を管理してくことができます。
デイトレードやスキャルピングなどの短期投資とスイングなどの長期投資を1つの口座ですべて行うとすれば、証拠金やレバレッジの計算、損益状況の把握などが非常に困難になり資金管理が円滑にできません。
各ポジションの保有数や売買単価、損益状況を効率よく管理していくためには、最低でも短期用と長期用は口座を分けておいた方がよいです。
長期用と短期用の口座を用意することで、長期投資と短期投資の資金管理や投資計画が行いやすくなります。
長期用と短期用と口座を使い分ける例
FXの投資資金が10万円(100万円)だとします。
10万円(100万円)を短期トレードと長期トレードに配分します。一般的に長期よりは短期の方がリスクが高くなりますので、短期投資の配分を少なめにします。あるいは、それぞれの投資計画に応じて配分を決めていけます。
- 長期投資 7万円(70万円) → 口座A
- 短期投資 3万円(30万円) → 口座B
長期投資用の口座Aは、スイング・長期などの長期トレードに利用します。短期投資用の口座Bはデイトレードやスイングトレードに利用します。そうすると、現在どのようなポジションを保有していて、利益・損益はいくらぐらいなのか簡単に把握できます。
3.1社で不足している機能やサービスが補える
複数のFX口座があれば、1社だと不足しがちな機能やサービスを補うことが可能です。国内のFX会社はそれこそ数え切れないほどありますが、どの業者でも完璧ではありません。
など・・・
どんなにお気に入りのFX会社を使っていたとしても「〇〇があればもっと良いのに・・・」と悩む部分が必ず生じてくるものです。これは1社を使い始めてみて、自分がどんな機能を求めているのかが見えてきますので、まずは1社使ってみることが次の1社を選ぶ決め手になります。
複数口座で得られる機能やサービス
複数口座で得られる機能やサービスの代表的なものをご紹介しておきます。
チャートの表示数
各FX会社の取引ツール・チャートソフトはそれぞれ一度に表示できるチャート数が限定されています。4~6画面しか表示できないFX会社もあれば、最大16画面まで表示可能なFX会社もあります。16画面表示可能なFX会社と10画面表示可能なFX会社を選べばトータルで26画面のチャートが一度で表示できることになります。
表示できるチャート数が多いほど売買タイミングを逃さない取引が実現できますよね。
情報配信・教育コンテンツ
FX会社によって情報やコンテンツの量や質が異なるため、複数の口座を使えば情報やコンテンツの量が倍増して、満足できる情報収集が行えます。また、同じ米ドル/円の為替予想が配信される場合でもFX会社やアナリストによって見解は異なります。多種多様な情報を得てより高度な相場分析に役立てることができます。
スプレッド・スワップポイント
スプレッドやスワップポイントも、FX会社によって格差があります。米ドル/円はA社がよい条件だけど、英ポンド/円ならB社の方がコストが安いなどと、通貨ペアごとに有利なFX会社、不利なFX会社が存在します。複数口座があれば、通貨ペアごとに有利なスプレッドやスワップポイントで取引できる口座を選ぶことができます。
約定スピード
約定スピードが各社で異なることも複数口座を持つ理由になっています。約定スピードが高水準にあるFX口座はスキャルピングやデイトレードの短期に最適です。スイングや長期トレードならそこまで約定スピードにこだわる必要はないので、約定力が気になるFX口座は長期用に使うことが可能です。
独自のツール
FX会社の中には、他社では利用できない独自のツールを用意しているところも多いです。チャート予測機能がついたチャートソフトや、ポートフォリオ管理に使えるトレードレポート、証拠金計算ツール、自動売買プログラム、システムトレードなど、複数口座にて目的に合わせた取引ツールを便利に使っていけます。
FX口座を複数開設するデメリット
FX口座は無料で開設できますし、口座維持費がかかるわけでもありませので複数持っていても損はしません。複数開設することのメリットは大きいのですが、それなりにデメリットも生じてしまいます。
ここではFX口座を複数開設することのデメリットを確認していきましょう。
1.資金が分散されてしまう
資金を分散して投資を行うことは損失リスクを低減したり、資金管理が行いやすいメリットがある一方では、まとまった資金で運用しづらくなるデメリットがあります。
FXの投資資金が10万円あったとしても、先述したように長期と短期で2つの口座に分けるならば1つの口座で使える運用資金は数万円と小分けになってしまいます。10万円以下の少額から投資を始める方などは、2~3か所に資金を分けるのが難しい場合もあるでしょう。
少額投資の方は無理して複数口座に資金を分ける必要はありませんので、状況に応じて判断していきましょう。
2.複数口座の使い方で混乱することもある
利用するFX口座の用途や投資計画が明確になっていないと、資金管理が容易になるどころか、むしろ混乱してしまうこともあります。
FX初心者の方は、必要を感じてから口座数を増やしていくことが大切です。無意味に口座が増えたとしても、アカウントや取引ツールの使い方も各社で異なるため、1から覚えるために労力や手間もかかります。口座を増やす理由や使い道、必要性などを明確にして、しっかりと投資計画を立てていくことが大切です。
3.確定申告の手間がかかる
もう1つ、FXの複数口座でデメリットとなるのが税金の計算です。
FXの税金は給与所得がある方で年間20万円を超えると確定申告の必要があります。FX口座には源泉徴収してくれる特定口座などはないので、各自でFXの所得額から自分で税金を計算しなければなりません。1つの口座だけなら計算も楽ですが、3つ、4つと口座数が増えるにつれて総額を計算していかねばならないので手間がかかります。
FX口座を複数開設するポイント
ポイント1.メインで使う口座を決めておく!
投資家によって重視したい機能やサービス、投資スタイルやトレード手法も様々ですよね。最初にメインで使っていきたい口座をある程度決めておくと、2つ目、3つ目のFX口座も選びやすいと思います。
1つの口座を使ってみると、不満に思うことや足りないなと思うことがあると思います。足りない機能やサービスを補足してくれるFX口座を探すのが、複数口座を使いこなすポイントです。まずは1つの口座を使いこなすことが大切です。2つ3つと慌てて作っても混乱してしまいます。
ポイント2. 少額取引ができる口座を少額で確保!
資金が少なめの方や、投資方法を分散していくつもりがない方など、1つの口座で取引した方が効率がよいケースもあります。FX口座を複数開設したからといって、すべての口座で必ず取引しなければならないわけではありません。FX会社の中には、最低入金金額の規定がない業者や、100円程度から口座開設が可能な業者もあります。
取引ツールや情報配信を使うためだけに口座数を増やすことも可能です。少額取引ができる口座を1つか2つ、ひとまず確保しておいてもいいですよね。
ポイント3.各社の強みを調べておこう!
ひとまずは1つの口座でFX取引を学びながら、その他のFX会社の情報を調べていきましょう。
FX会社によって、売りにしている機能やサービスが全く異なります。スプレッドに強い会社、チャート機能に強い会社、キャンペーンが充実している会社などFX会社ごとに強みがあります。各社の強みがわかっていると、それぞれの投資スタイルに合わせたFX会社が選びやすくなりますよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回はFX口座を複数開設する必要性、メリットデメリットを徹底的に解説していきました。なぜ2社、3社と複数の口座を利用する投資家が多いのか納得できたのではないでしょうか。
FX取引を本格的に始めていくには、口座を2,3社を併用して使っていくのが一般的ですが、初心者の方が急いで複数口座を開設する必要はないので自分のペースに合わせて口座数を増やしていきましょう。
基本的な使い方はどの業者でもそんなに変わりませんので、1つの口座を使いこなし、ベーシックなFX取引の仕組みを理解しておくことが大切なのです。