FXチャートを分析する方法は実に様々で、投資家ごとに得意とする手法も変わってきます。ローソク足分析を基本に、移動平均線やボリンジャーバンドなどのインジケーターを組み合わせて分析する投資家が多いようですが、中には「逆ウォッチ曲線」など特殊な分析手法を用いる投資家もいます。
「逆ウォッチ曲線」は出来高に着目したインジケーターで、相場動向を価格と出来高の関係性から分析していくために使われています。普段はあまり見聞きすることがない「逆ウォッチ曲線」ですが、一部の投資家からは非常に高い評価を受けています。使い方次第では大いに役に立つインジケーターだといえます。
FXテクニカル 逆ウォッチ曲線
「逆ウォッチ曲線」は、ローソク足やラインチャートのようにチャートの表示パターンの1つです。「逆ウォッチ曲線」が搭載されているチャートソフトであれば、チャートパターンの設定項目から選択して設定することができます。
まずは「逆ウォッチ曲線」の概要を簡単に見ていきましょう。
逆ウォッチ曲線とは
逆ウォッチ曲線とは、
逆ウォッチ曲線は不規則時系列チャートというタイプに分類されているチャートの表示方法で、上図のように不規則で複雑なラインを描いていきます。一見意味不明の曲線に見えますが、このラインの動きから先の相場の動きを読むことができるのです。
一般的に出来高の増減と価格の動きは非常に相関性が高いといわれています。
この出来高と価格の関係が一目で確認できるのが逆ウォッチ曲線なのです。考え方としては、出来高移動平均線と似たようなものです。
逆ウォッチ曲線の横軸と縦軸
逆ウォッチ曲線では、
- 横軸 → 出来高
- 縦軸 → 価格
となり、時計とは反対周りでラインが描かれていきます。
ラインのパターンは逆時計周りで1 ~ 8のパターンが形成されていきます。逆ウォッチ曲線がどのパターンにあるかによって、上昇・下降、トレント転換のタイミングを計ることができます。
逆ウォッチ曲線の起源・由来
逆ウォッチ曲線はその名称からもわかるように、日本で考案されたチャート分析手法の1つです。英語に訳すとReverse Watch Curve/Counterclockwise となりますが、海外の情報を調べてみてもインジケーターとしては一切使われていないようです。
誰が開発していつ頃から使われるようになったのかは不明で、ある意味ニッチなインジケーターだといえます。
日本のテクニカル情報を調べると、逆ウォッチ曲線は日本式罫線表の1つとして分類されていますので、おそらくチャートが罫線表と呼ばれていた時代に考案された分析手法ではないかと思われます。
ちなみに、日本のテクニカル分析は「罫線学」と呼ばれ、その歴史は江戸時代にまで遡ります。ローソク足や平均足、カギ足などが代表的な日本の罫線表です。日本独特のテクニカル分析を徹底的に学びたい方は、Amazonなどでテクニカル分析大全的な本などから解説を探すことができます。
逆ウォッチ曲線の基礎知識
逆ウォッチ曲線は時計回りとは逆にラインが描かれていきます。どのような仕組みで動き、どのようなパターンがあるのでしょうか。
逆ウォッチ曲線の基本的な仕組み
逆ウォッチ曲線は時計周りと反対の方向に動きますが、実際には、複雑な曲線を描いていきますのできれいな時計回りの輪を描くわけではないのですね。
一定の期間ごとに大まかに左回りに1つの円がつくられていく仕組みになっています。期間を長くしていくほど、たくさんの左周りの円が重なっていきます。つまり相場は1つの円のサイクルを繰り返しているということです。
このように左回りにラインが描かれる仕組みなっているのは、逆ウォッチ曲線が経済学でいうところの需要曲線と供給曲線に基づいたラインだからなのです。
需要曲線と供給曲線
需要曲線とは、ある商品への需要を表した線で、FXでいうと「買い」ポジションのことを意味しています。一般的に需要は価格が上がるほど減少していく傾向にあることから上図のような反比例の円を描いていきます。
つまり通貨の価格が上昇するほど「買い」ポジションは少なくなっていくということですね。
供給曲線とは、ある商品への供給を表した線で、FXでいうと「売り」ポジションのことを意味しています。供給は需要とは逆に価格が上昇するほど増加していく傾向にあり、上図のようなほぼ比例した円を描いていきます。
つまり通貨の価格が上昇するほど「売り」ポジションは多くなっていくということになります。
市場価格が決定する仕組み
需要曲線と供給曲線がちょうど交わるところが均衡点で、現在の市場の商品の数と市場価格を示すポイントとなります。そして、市場価格を示す均衡点は市場サイクルとして左回りに推移していく傾向にあるのです。
逆ウォッチ曲線のサイクル~8つのポイント
逆ウォッチ曲線の左回りの円は、冒頭でも軽く触れましたように8つのポイントから形成されています。
上図のように1~8のポイントを経て逆ウォッチ曲線が描かれていくわけですね。この8つのポイントのどこにラインが位置しているかによって、相場動向を読むことが可能となります。
- 注目 → 買いが入り出来高が増え始める兆し
- 買い → 買いが集中し価格が上昇し始める
- 買い継続 → 出来高は大きく増加、売りよりも買いが圧倒的
- 買い見送り → 買いの勢いが弱まっている状態
- 警戒 → 出来高が減少し始める
- 売り → 出来高が大きく減少、売りが買いよりも多くなる
- 売り継続 → 出来高の減少はやや弱まるが、売りが続く
- 売り見送り → 売りの勢いが弱まり始め、買いが入り始める
といったサイクルで相場は動いていく傾向にあり、それぞれのポイントにて「売り」か「買い」か「様子見」か判断の目安にすることができるのです。
逆ウォッチ曲線の見方・使い方
8つのポイントをチャートで見る
逆ウォッチ曲線の8つのポイントをチャートで見ていきます。
1.注目
上図のチャートは、逆ウォッチ曲線の「ポイント1.注目」に位置しています。まだ、買いが集中していない状態ですが、出来高に増加が見られ始めている段階です。
この状態は下降トレンドまたは弱めのレンジ相場の終盤に見られるケースが多くなります。これから上昇トレンドが始まるサインです。しかしまだ予断はできない状態だといえます。ここで、「買い」の準備をします。
2.買い
1つのサイクルを終えて、相場は「ポイント2.買い」の方向に向かいまたもう1つの円を描こうとしています。この状態がちょうど「買いシグナル」となります。
ロングの場合はここで「買い」エントリー、ショートの場合はここで「買い」エグジットですね。
3.買い継続
まさに時計と逆方向に円を描き始めました。「ポイント3.買い継続」の場面です。出来高が著しく増加している段階で、価格も大きく上昇、「買い」に勢いがある局面となります。このまま「買い」ポジションを保有です。あるいは、この段階を確認してから手堅いエントリーを計ることも可能。
4.買い見送り
上昇の勢いが弱まり始める「ポイント4.買い見送り」の段階です。そろそろ上昇トレンドが天井で落ち着き、下降に向かうサインを見せる頃かなと判断します。
出来高も減少に向かい始める局面となり、エグジット・利確の準備をします。
5.警戒
逆ウォッチのラインは半円を通過して「ポイント5.警戒」の位置にきました。相場は上値追いの買いと利確売りが繰り返されている局面でおそらくもみ合いの状態が見られる段階です。売りの勢いが徐々に強くなっていく可能性がありますので、十分に注意してエグジットのタイミングを見ます。
ショートの場合はこの段階でエントリーの準備をします。
6.売り
ラインは完全に半円を超えて「ポイント6.売り」の段階になりました。出来高はあきらかに減少し始めていて、「買い」よりも「売り」の方が優勢になってきている状態です。これから下降し始めるサインです。
このタイミングで「売り」エグジット、ショートなら「売り」エントリーします。
7.売り継続
ラインが下向きになり円を描こうとしています。「ポイント7.売り継続」に位置していて、まだ下降が継続するサインです。出来高は大きく減少し価格も下がり続けていきます。「売り」ポジションはそのまま保有ですね。ロングを狙う場合は、下降トレンドが底をつくタイミングを待ちます。
8.売り見送り
下向きに向かったラインは一旦ひとつの円を完成しようとしています。「ポイント8.売り見送り」の段階で、徐々に「買い」が入り始める局面です。出来高も増える気配があり下落のスピードも緩やかになっていきます。下降トレンドがじきに底をつくサインで、上昇トレンドに切り替わるタイミングを待ちます。
そして、相場は逆ウォッチ曲線のサイクルの始まりに戻る流れになりますので、また「ポイント1.注目」から相場が動いていきます。
逆ウォッチ曲線の応用編
半円が継続する場合もある
上図のように、円を完全に描かずに半円が2つ続くことがあります。これは「ポイント5.警戒」から「ポイント6.売り」に進まずに、「ポイント1.注目」に戻ったことを意味しています。
半円から「ポイント1」がまた始まった時は、上昇トレンドがさらに継続するサインと見ることができます。ここから、「買い」エントリーまたは「買い」ポジションの維持ですね。
時計回りに動く時もある
逆ウォッチ曲線はたまに時計回りでラインが動くことがあります。この場合は逆ウォッチのサイクルを逆行、下降トレンドに向かっていることになります。
本来なら「ポイント1」から「ポイント2」に向かうところ、「ポイント8」の方向に相場が行ってしまったわけです。この場合は「ポイント8」に向かった時点で「売り」シグナルと見ることができます。ちょっとややこしいですが、相場のサイクルは「ポイント8~ポイント1」に向かうことになります。
逆ウォッチが下向きで動くときもある
また、逆ウォッチのラインが下に向けて左回りで描かれる時もあります。その場合は以下のようにサイクルを下向きで見ていきます。
というように左下に円を描きながらラインが下がり、右上に向かって円を描いていきます。サイクルの見方は通常通りに「ポイント1~8」という流れになります。
勝つための逆ウォッチ曲線トレード手法
色々なタイプのインジケーター・分析手法がある中、どの方法なら完璧に相場を読むことができるのか疑問に思う方は多いですよね。しかし、どんなに優れたインジケーターを使ったとしても100%正確な売買シグナルを得ることは不可能だといえます。
どんなインジケーターもダマシがあったり、肝心な時にサインをくれなかったり、加えて相場はファンダメンタルズの要素にも左右されていくからです。
そこで最後に、逆ウォッチ曲線で勝つためのトレード手法をご紹介しておきたいと思います。
ローソク足チャートと併用で使う
逆ウォッチ曲線は基本的にチャートの表示方法として設定できるインジケーターなので、逆ウォッチ曲線チャートとは別でローソク足チャートを表示させておくのがおすすめです。逆ウォッチチャートだけでは、細かい相場の動きがわかりません。
また、ローソク足チャートには出来高を表示させておきましょう。逆ウォッチ曲線チャートだけでは具体的な出来高の推移がわかりづらいですよね。
- 逆ウォッチチャートと同時にローソク足の動きが確認できれば、最適な売買タイミングを計ることが可能です。
- 出来高の増減がグラフでチェックできれば、逆ウォッチ曲線が今どの段階にきているのか判断する目安になります。
まとめ
逆ウォッチ曲線は、時計とは反対方向の左回りで推移していくインジケーターで、8つのポイントから構成されています。
- 注目 → 買いが入り出来高が増え始める兆し
- 買い → 買いが集中し価格が上昇し始める
- 買い継続 → 出来高は大きく増加、売りよりも買いが圧倒的
- 買い見送り → 買いの勢いが弱まっている状態
- 警戒 → 出来高が減少し始める
- 売り → 出来高が大きく減少、売りが買いよりも多くなる
- 売り継続 → 出来高の減少はやや弱まるが、売りが続く
- 売り見送り → 売りの勢いが弱まり始め、買いが入り始める
相場は上記の逆ウォッチ曲線のサイクルで動いていく傾向にあり、上昇トレンドと下降トレンドを繰り返していきます。