テクニカル・インジケーターは、実に多彩な種類があります。どのインジケーターも100%正確ではないものの、使い方次第ではトレードで大いに役に立ちます。それぞれの手法に合ったもの使いやすいものを選ぶことが大切です。
「FXプロのFXチャート分析実践講座」では基礎的なインジケーターから上級者向けのインジケーターまで幅広い種類をシリーズでご紹介しています。
今回のFXプロでご紹介したいインジケーターは「P&F(ポイント&フィギュア)」です。
FXテクニカル P&F (ポイント&フィギュア)
「P&F (ポイント&フィギュア)」はメインチャートの下に挿入されるオシレーター系のテクニカルインジケーターです。
まずは、最初に大まかなP&Fの概要を見ていきましょう。
P&F (ポイント&フィギュア)とは
P&F (ポイント&フィギュア)とは、
10pipsで「〇」が1つ、などとあらかじめ1単位の値動き値や、基準となる価格を設定しておきます。
基準の価格から値動きがあった時に、「〇」「×」が値動きの大きさによって付け足されていく仕組みになっています。つまり、「〇」「×」の数が大きいほど価格が動いたことになります。記号の数でどれくらい値動きがあったのか、計算しなくてもぱっと見でわかりやすいのが特徴です。
P&Fは、エクセルを使って自分で表を作成する投資家もいるほどで、米国では人気の分析手法の1つです。
時系列と非時系列チャート
ほとんどのチャートは「時系列チャート」といって、縦軸に価格、横軸に時間が表示され、一定の期間内における値動きが表示されています。
P&Fは「非時系列チャート」と呼ばれるもので、時間の概念がない特殊な分析手法です。値動きがあった時にだけ記号が加えられていくチャートなので、そのチャートからは「値動き」以外の要素は読むことができません。
P&Fの開発者
P&Fが金融市場に初めて登場したのは1890年代だといわれており、P&Fはインジケーターの中でもとくに古い歴史を持ち信頼性が高い分析手法でもあるのです。
P&Fの開発者はA.W.Cohen(A.W.コーエン)で、1955年には有名なNYSE Bullish Percentage Index/BPIを公表しています。BPIはP&Fを基盤にして開発されたインジケーターで、現在でも米国株式やFXの分析に使われたりと大手投資機関などから高く評価されています。価格動向の推移グラフを、Bull(買い)エリアとBear(売り)エリアと2つのエリアに分けて視覚的に分かりやすく表示したのはBPIが最初だとのことです。
日本では1970年代に、A.W.CohenのP&Fが紹介されたとのことで、「70年代の株式投資法―ポイント・アンド・フィギュアの手引」という書籍が出版されています。本人の自著作の分析解説書も多数出版されていて、英語版であれば探すことができます。
P&F (ポイント&フィギュア)の基礎知識
P&F (ポイント&フィギュア)は、「値動き」のみに集中して相場を見ていくためのインジケーターです。
「〇」と「×」だけを使って、値動きを表示していきます。歴史も古く信頼性が高いインジケーター、P&Fの基礎的な仕組みを解説していきます。
P&Fの仕組み
例えば、米ドル/円の場合で基準価格が「100.00円」だとします。そして、「〇」と「×」の1単位を10pipsと設定します。100.00円から10pips上昇したら、「×」が1個。100.00円から10pips下降したら「〇」が1個つきます。
- 「×」が3個ということは、価格が30pips上昇
- 「〇」が4個ということは、価格が40pips下降
列が変わる仕組み
最初に価格が30pips上昇して100.00円から「×」が3つ付いたとします。さらに上昇して40pips価格が上がったとすれば、同じ列に「×」が4つ付け足されます。1列に「×」が7個できるわけですね。次に価格が30pips下がったとすれば「〇」が隣の列に3個つきます。
ただし、列が変わるのは価格の方向性が変わった時のみです。価格変動があったとしても、最低でも3つの「〇」か「×」がつかなければ列はそのままです。1単位を10pipsで設定していますので、少なくとも30pipsの値動きがなければ列は変わらないということです。
従って、2~3日間値動きがなかったとすれば、時間は経っていてもP&Fは動かないのです。
P&Fチャートのイメージ
「×」から「〇」
上昇で「×」の列ができて、次に下降で「〇」ができる時は「×」の一番上の高値の価格から10pips下がった時に「〇」が表示されます。急落などで一気に価格が下がった時は3段ぐらい下から「〇」が始まることもあります。
「〇」から「×」
下降で「〇」の列ができて、次に上昇で「×」の列ができる時は「〇」の一番下の安値の価格から10pips上がった時に「×」が次の列に始まります。高騰で価格がジャンプして始まる時もあります。
P&F (ポイント&フィギュア)の見方
P&Fを見るポイント
P&Fを見るポイントは、
- P&Fのパターンで見る(パターン分析)
- P&Fのトレンドで見る(トレンド分析)
- P&Fの数で見る(カウント分析)
と3つあります。
それぞれ、どのように見て分析すればよいのかを見ていきましょう。
P&Fのパターン分析
P&Fのパターン分析とは、
ダブルトップ
2列前の「×」の列を次の「×」が上回った時は、「買い」が優勢なことを表しています。
ダブルボトム
2列前の「〇」の列を次の「〇」が下回った時は、「売り」が優勢なことを意味しています。
トライアングル
P&Fがトライアングルを形成した後で、上に「×」が抜けていく時は下降トレンドから「上昇トレンドに切り替わるサイン」です。
このパターンを「上昇トライアングル」または「上昇ペナント」といいます。
トライアングルが形成されて、「〇」が下に向かう時は上昇トレンドから「下降トレンドに切り替わるサイン」です。
このパターンを「下降トライアングル」または「下降ペナント」といいます。
P&Fのトレンド分析
P&Fのトレンド分析とは、
上昇トレンドか下降トレンドが続いた時に有効な分析方法です。
下降トレンドから上昇トレンド
P&Fで下降トレンドのラインが形成された後、ラインを「×」が上に突き抜けた時は「上昇トレンドに切り替わるサイン」です。このタイミングから大きく相場が上昇する可能性があります。
上昇トレンドのラインが形成された後、「〇」がラインを下に抜けていくときは「下降トレンドに切り替わるサイン」です。ここから、大きく相場が下降する可能性が高くなります。
P&Fのカウント分析
もう1つ参考までに覚えておきたいのが、P&Fのカウント分析です。
P&Fのカウント分析とは、
カウント分析には、列で計算する「水平カウント」と記号の個数で計算する「垂直カウント」とあります。もみ合いになった時に使われる方法で、数字に強い方や数学的なアプローチが好きな方は、実践で試してみて下さい。
水平カウント
水平カウントは、「〇」と「×」がもみ合いになった場合に、「もみ合いの列 × 3」で概ねの値動き幅が予想できるという分析方法です。
上図のチャートでは7列もみ合っていますので、「7 × 3 = 21」です。1個の記号が10pipsですので、「10pips × 21 = 210pips」となり210pipsあたり上か下かに動く可能性が高くなります。
垂直カウント
垂直カウントは、もみ合いから最初に抜け出た「〇」か「×」の個数を数えて、「個数 × 3」で概ねの値動き幅を予想する分析方法です。
上図のチャートの場合、もみ合いから最初に抜け出た「×」が6個あります。「6個 × 3 = 18個」になりますので、上昇に向けて「×」13個分ぐらい価格が上がることが予想できます。「13個 × 10pips = 130pips」となり、130pipsぐらいの上昇が見込めるということになります。
P&F (ポイント&フィギュア)の使い方
それでは、実際にP&Fを使ってトレードする方法を解説していきます。
P&Fの分析方法の中でも、最もわかりやすい「ダブルトップ」と「ダブルボトム」、「トレンドライン」を使ってエントリー・エグジットしてみましょう。
ダブルトップとダブルボトムでエントリー・エグジット
黄緑:「×」 赤:「〇」
下降トレンドにあった相場にて、目立つダブルトップ出現しています。そろそろ上昇トレンドに切り替わるタイミングです。ここでエントリーするのも1つの方法ですが、メインチャートでは、まだ価格が下がってきているので様子を見てみることにします。
2つ目のダブルトップが出てきたので、上昇に切り替わる可能性が高まります。2つ目のダブルトップが出てきたところで「買いエントリー」です。予想どおりに上昇に向かいましたので、上昇トレンドが終わるサインが出てくるのを待ちます。
上昇トレンドが継続した後でダブルボトムが出現しました。強いダブルボトムなのでエグジットの準備をします。2つ目のダブルボトムが形成されようとした時に「売りエグジット」で利確です。
トレンドラインでエントリー・エグジット
黄緑:「×」 赤:「〇」
45度に近いトレンドラインが形成されたので、下降トレンドからブレイクして上昇に切り替わるサインです。「×」がトレンドラインを上にブレイクしたら「買いエントリー」します。
ブレイク後に相場は予想通りに上昇トレンドへと切り替わりました。上昇トレンドが出てくるサインを待ちます。上昇トレンドがある程度継続した後、トレンドラインが形成されてきたので、エグジットの準備をします。
上昇しているP&Fにトレンドラインを引いて下にブレイクし始めたら、下降トレンドに切り替わるサインです。トレンドラインを「〇」が下に抜けはじめたら「売りエグジット」で利確しいます。
P&Fはオシレーター系でメインチャートの下に挿入されますので、通常の状態で見ると「〇」「×」の表示や数がわかりづらいので注意しましょう。インジケーター画面を調整して時々拡大しながら確認するとわかりやすいです。
メインチャートでは上昇していても、P&Fは下降するなど、P&Fの波はメインチャートの動きとは連動しないことも多いです。P&Fは時系列チャートではないので、トレンドラインが形成された時や、パターンのサインが出た時などポイントを絞って使うのが効果的です。
勝つためのP&F (ポイントフィギュア)トレード手法
最後にP&Fと相性がいいチャネルラインを使ったトレード手法をご紹介しておきたいと思います。
チャネルラインでP&Fのサインを確認
P&Fのサインを確証するために、チャネルラインを引いてトレンド系のインジケーターと組み合わせるのがおすすめです。
例えば、上図のチャートのようにP&Fでトレンドラインのサインが出たとします。P&Fでトレンドラインが形成された時に、メインチャートの上昇トレンドや下降トレンドにチャネルラインを引いておきます。
そうすれば、P&Fでブレイクした時に、メインチャートではどうなのかが確認できます。
同様にメインチャートのチャネルラインでもブレイクしているようであれば、ほぼ間違いなく「エントリー・エグジット」につなげることができます。
ローソク足の確認も必須
また、売買サインが出た時にはどんなインジケーターを使っていたとしてもローソク足の確認は必須です。上図のチャートでは、上昇に切り替わる前に「T字型やクロス型のローソク足」が出てきています。
まとめ
P&Fで相場分析する方法は、
- パターン分析
- トレンド分析
- カウント分析
と3つのタイプがあります。中でも、「ダブルトップ」「ダブルボトム」「トレンドライン」を用いた分析がよく使われています。
P&Fのデフォルト設定では、 「〇」「×」の単位は10pipsとなっている場合が多いです。設定は各自の投資スタイルに合わせて大きめにしたり小さめにしたりできますので、最適なpips数に調整して使ってみて下さい。