「フィボナッチリトレースメント」は、その名称から複雑でややこしいイメージがありますが、使い方は至って簡単。挿入する方法さえ分かれば初心者にも簡単に使いこなすことができます。フィボナッチリトレースメントは、理数学のフォボナッチ数列に基づいたインジケーターで、数学的に実証済みで信頼性が高いインジケーターの1つです。
どのインジケーターがよいのか迷う方には、ひとまずは「フィボナッチリトレースメント」を使ってみることをおすすめします。
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FXテクニカル フィボナッチリトレースメント
「フィボナッチリトレースメント」は、メインチャートに複数のレジスタンス・サポートラインを表示してくれる描画機能を有したインジケーターです。
まずは、「フィボナッチリトレースメント」の概要を簡単に見ていきましょう。
フィボナッチリトレースメントとは
フィボナッチリトレースメントとは、
フィボナッチ数列・フィボナッチ比率から「1:1.618」という数値が導き出されていて、一般的に自然界のあらゆる形状は「1:1.618」の比率で構成されているとのことです。
この「1:1.618」の数値を基に、フォボナッチリトレースメントでは上昇・下降の可能性を6パターンのラインで想定していきます。
6本の各ラインはレジスタンス・サポートの役割を果たしていて、上昇・下降のターゲット価格・トレント転換の目安とすることができるのです。
しかし、挿入するだけで自動でラインを引いてくれますので、挿入方法さえ覚えれば実は初心者にも使いやすいインジケータなのです。
フィボナッチリトレースメントの開発者
フォボナッチリトレースメントで適用されているフィボナッチ数列・フィボナッチ比率は、何と13世紀に発見された法則なのです。
フィボナッチ数列・フォボナッチ比率を発見したのは、イタリアの数学者レオナルド・フォボナッチです。おそらく、この法則が市場分析・データ分析にも応用できると判断されて、誰かがチャートのインジケーターとして使うようになったのだと思われます。
フォボナッチの起源は800年以上も昔にさかのぼり、数百年に渡って使われ続けている分析方法です。フォボナッチの数列・比率は絶対的な数値となるため、覆すことのできない自然の摂理だといえるのです。
フィボナッチリトレースメントは信頼性が高く、プロの投資家にも高く評価されているインジケーターとなります。
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フィボナッチリトレースメントの基礎知識
自然の摂理ともいえる、フィボナッチ数列・フィボナッチ比率とは一体どのような仕組みで計算されているのでしょうか。
フィボナッチ数列とは
フィボナッチ数列とは、「1+1から始めて2つの数を順番に足し算していくと、一定の比率で数値が増えていく」という数学の法則です。
1+1=2、1+2=3、2+3=5、3+5=8・・・・
「1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89・・・・」という一定の法則をフィボナッチ数列といいます。
フィボナッチ数列の数式
フィボナッチ数列を数式で表すと、
となります。
フィボナッチ数列の図形
フィボナッチ数列を1、3、5と正方形にして図形で見ると、
不思議と、一定の比率にて長方形が延々と形成されていくのです。これらの長方形のサイズはいずれの場合でも「1:168」となります。建築や絵画、名刺や国旗など、視覚的にバランスがとれて心地よい長方形はすべて「1:168」が採用されています。
フィボナッチ数列から発見された比率は、建築や絵画などの造形物だけに限らず、生物、植物や地形、自然界の様々な形状においても見られているのです。
フィボナッチ比率とは
フィボナッチ比率とは、フィボナッチ数列から導き出された「1:168」の比率のことをいいます。
フィボナッチの「1:168」は、古代から建築や芸術の基盤とされてきた「黄金比」の比率とマッチすることが判明し、「黄金比」のことを「フィボナッチ比率」と呼ぶこともあります。
黄金比 = 1:168
フォボナッチ比率 = 1:168
フィボナッチ比率が見られる例
フィボナッチ数列の正方形に半円を描いていくと、渦巻きができる仕組みになっています。
巻貝やカタツムリの殻などはフォボナッチ比率に沿って渦を巻いているのが見られます。
ひまわりの種、アロエの葉など多くの植物もフィボナッチ比率に沿って渦を巻いています。
銀河を渡るミルキーウェイ(天の川)や、台風の雲にもフォボナッチ比率で構成されています。
葛飾北斎の名画や、レオナルドダヴィンチのモナリザ、タマゴの殻にもフォボナッチ比率が見られています。
さらには、人口マップなどのデータにもフォボナッチ比率が確認されているのです。
フィボナッチリトレースメントの基本的な仕組み
フィボナッチリトレースメントはチャートに6本のラインが表示されます。6本のラインは、フィボナッチ数列・フィボナッチ比率に基づいて設定される仕組みになっています。
各ラインは基準となる価格から、
- 0.0%
- 23.6%
- 38.2%
- 50.0%
- 61.8%
- 100.0%
の場所に、ターゲット価格として水平ラインが挿入されます。
利用するチャートソフト・取引ツールによっては、
- 161.8%
- 423.6%
のラインが表示されるものもあります。これらのパーセンテージには意味があって、いずれの場合もフォボナッチ比率が基盤となっています。
比率0.0%
0.0%は基準となる価格から相場が動いていない状態です。
比率23.6%
フィボナッチ数列の数を3つ後の数で割って得られる数値です。
比率38.2%
フィボナッチ数列の数を2つ後の数で割って得られる数値です。
比率61.8%
フィボナッチ数列の数を次の数で割って得られる数値です。
比率50.0% 100%
比率50.0%と100%はフィボナッチ数列とは関係ない数値です。これはダウ理論から価格変動率100%とその半分の50%が、フィボナッチ比率に追加されています。
フィボナッチリトレースメントの見方
最初に、フォボナッチリトレースメントの挿入方法から見ていきましょう。
フィボナッチリトレースメントの挿入方法
フィボナッチリトレースメントは、その他多くのインジケーターと違って、テクニカルリストから選択すると、それでチャートにラインが挿入されるわけではありません。
トレンドラインや水平ラインなどの描画ツールを使う時のように、各自でラインを挿入したい場所をマウス操作しなければならないのです。
それぞれで利用するツールによって挿入の手順は若干異なりますが、概ねのところ以下のようになります。
1. テクニカルまたは描画ツールから「フィボナッチリトレースメント」を選択
リストから「フィボナッチリトレースメント」を選択すると、チャートの画面に下記のような専用の「カーソル」が出てきます。
2.カーソルを起点に合わせる
この「カーソル」を基準にしたい価格・起点に持っていきます。どこを起点にするかは、投資家の判断によりますが、トレンドが始まる起点に合わせたり、直近の高値・安値に合わせる方法があります。
カーソルを起点に合わせたら、次に終点となる価格にマウスを動かしてラインを拡大させていきます。終点の目安は、現在の価格に合わせたり、高値・安値に合わせたりする方法があります。
最初は適当な場所にひとまずラインを拡大させていって、徐々に起点・終点を調整していきます。
- 相場が上昇傾向にある時は、起点0%を下にして終点100%を上にカーソルをあてて拡大させていきます。
- 相場が下降傾向にある時は、起点0%を上にして終点100%を下にカーソルをあてて拡大させていきます。
3.終点となる価格までカーソルを引っ張る
的確な場所を起点に、ラインを挿入しなければなりません。
4.レジスタンス・サポートとマッチするようにラインを調整する
ある程度の範囲までフィボナッチリトレースメントを拡大させたら、相場の動きと各ラインの位置を、レジスタンス・サポートレベルとマッチするように調整します。
カーソルを前後左右に動かしながら、起点・終点をずらしたり、ラインを引っ張ったり縮めたりしながら、マッチする場所に調整します。リトレースメントの軸となる中央のトレンドラインに、相場のトレンドラインを合わせてみるのも1つの方法です。
相場の高値・安値、上昇・下降のポイントにちょうどラインがマッチする場所が、有効なフィボナッチリトレースメントの場所だといえます。
5.チャートの動きに合わせてラインを横に拡大
一旦ラインが相場の動きとマッチしたなら、後はチャートが動くにつれてそのままの状態でラインを横に長く伸ばしていきます。流れが変わったら、また起点・終点を変えてラインを設定しなおします。
各ラインの見方
A. 上昇に向かった相場はレジスタンス23.6%、38.2%、50.0%を超えました。次のターゲット価格は61.8%です。もし61.8%を抜けきらなかった場合は下降に向かうと見ることができます。下降し始めたこの相場のサポートラインは23.6%ですね。
B. 61.8%のレジスタンスをブレイクした相場は100.0%のラインまで上昇する可能性が高まります。100.0%のラインを抜けると、新しい上昇トレンドのレベルに突入。しかし相場は反転。反転した相場の次のサポートラインが61.8%のラインで、下降トレンドへの転換ポイントと見ることができます。ここを下に抜けるとさらに下降トレンドが継続します。
C. 下降トレンドに切り替わった相場は、サポート0.0%とレジスタンス23.6%の間を推移しています。もし23.6%を上に抜けるならば上昇トレンドへの転換、0.0%を下に抜けるならば新たな下降トレンドが継続と見ることができます。ここでは下に抜けましたので、下降トレンドが継続する結果となっています。
フィボナッチリトレースメントの使い方
各ラインを目安にエントリー・エグジット
- 勢いをつけて上昇した相場は一旦下降して、38.2%のラインで反発しました。ここからまた上昇トレンドが継続する可能性が高くなります。確実に価格が上がり始めたら「買い」です。
- 次のターゲット価格はレジスタンス50.0%。ここを抜けたら、次は61.8%のラインを狙い、さらにここをブレイクしたら、レジスタンス100.0%に向けて今度は大きく上昇する可能性が高まります。100.0%で下に反転し始めた時点で「売り」でたっぷりの利確です。
- 下降トレンドに切り替わった相場は、38.2%のサポートまで下がり続けます。38.2%で反転した後で確実に50.0%のレジスタンスを抜けたら「買い」です。
- 61.8%のレジスタンス、次に100.0%のレジスタンスを抜けるかどうかを確認します。ここで上に抜ければ保有です。もし反転するならば61.8%のサポートまで下がる可能性が高いので、下に向かったタイミングで「売り」で利確です。
勝つためのフィボナッチリトレースメントトレード手法
どんなに優れたインジケーターも100%完璧ではありません。
RSIを使ってエントリー・エグジット
RSIは、
- 70以上:買われすぎ → 売りシグナル
- 30以下:売られすぎ → 買いシグナル
として使うオシレーター系インジケーターです。
価格がフィボナッチのサポートラインで反発したら、RSIでは売買シグナルが出ているかどうかを確認します。RSIで30に触れて上に向かい始めたタイミングで「買い」エントリーします。
各レジスタンスラインを抜けて相場が上昇に向かったら、次に反転し始める地点が利確のタイミングです。フィボナッチのレジスタンスで価格が下がり始めた時に、RSIが70に触れて下がり始めていたら「売り」エグジットで利確を決めます。
まとめ
フィボナッチリトレースメントは、黄金比とも呼ばれているフィボナッチ数列・フィボナッチ比率を基盤にしたインジケーターです。13世紀に発見された法則で、科学的にも実証されている信頼性が高いインジケーターです。
おもに中級者~上級者に使われているインジケーターではありますが、挿入のコツさえ覚えれば初心者でも簡単に使うことができます。