FXチャート分析にテクニカル・インジケーターを使うことで、より勝率の高い相場予測が可能になります。使えるインジケーターが多いほど、多方面から裏付けが取れるためトレードには有利です。「FXプロのFXチャート分析実践講座」では基礎的なインジケーターから上級者向けのインジケーターまで幅広い種類をシリーズでご紹介しています。
今回のFXプロでご紹介したいインジケーターは「A/Dライン」です。
FXテクニカル A/Dライン
「A/Dライン」はオシレーター系・ボリューム系のインジケーターです。
まずは「A/Dライン」の概要を簡単に見ておきましょう。
A/Dラインとは
A/Dライン(エーディーライン)は、
Accumulationとは、蓄積、累積、収集、貯蓄、増大など、数が膨大に増えていく状態を意味しています。金融用語では利息が貯まって利益が増えていくようなイメージで使われることが多いです。
Distributionとは、分配、分散、流通、流出、散乱など、数が多方面に配分されていく状態を意味しています。金融用語では分配金や資金が流れ出ていくイメージで使われます。
A/Dラインの開発者
A/Dラインの作成者は株式アナリスト・ブローカーのMarc Chaikin(マーク・チャイキン)。Marc Chaikinは、アルゴリズム分析のデベロッパーとしてCNBCやReuterなどでも活躍しています。A/Dライン以外にもVACインジケーター、チャイキン・オシレーター、チャイキン・マネーフローなど数種類のインジケーターを開発しています。
A/Dラインの基礎知識
A/Dラインは相場の3つの価格とボリューム(出来高)をベースに算出される数値です。
A/Dラインの計算方法
A/Dラインは、
で計算されます。
- Previous A/D → 1つ前のA/D(1本前のローソク足)
- CMFV → Current Money flow volume(マネーフローボリューム)
CMFV
A/Dラインの計算で出てくる「CMFV(マネーフローボリューム)」は、Marc Chaikinが開発したインジケーター「CMF(チャイキン・マネーフロー)」を使った計算方法で、以下のように3つの価格を用いて算出されます。
- PC = 一定期間の終値
- PL = 一定期間の高値
- PL = 一定期間の安値
- V = 一定期間の出来高
※一定期間とは、各自のトレードスタイルによって期間の設定が可能です。一般的には20日程度が使われています。
※CMF(チャイキン・マネーフロー)に一定期間の出来高を乗じたものが、CMFV(マネーフローボリューム)となります。
計算の仕方
- (終値 − 安値)−(高値 − 終値)÷ (高値 − 安値)= チャイキン・マネーフロー
- マネーフロー × 一定期間の出来高 = マネーフローボリューム
- マネーフローボリューム + 1つ前のA/D = A/D
上記の流れで、A/Dラインが形成されていきます。
A/Dラインの見方
A/Dラインはチャートの下部にグラフが挿入されるオシレーター・ボリューム系のインジケーターです。
- A/Dラインの数値が高い → Accumulation(買い圧力が強い)
- A/Dラインの数値が低い → Distribution(売り圧力が強い)
グラフで見るA/Dライン
上記の緑枠で囲んだ部分がA/Dラインです。
A/Dラインのグラフを拡大して見ていきましょう。
A/Dラインの数値
- 現在のA/Dの数値
- 表示する期間内のA/Dの高値圏の数値
- 表示する期間内のA/Dの安値圏の数値
チャートの表示期間や時間足の種類によって、数値が異なってきます。
例えば、上記は1H足チャートのA/Dと週足チャートのA/Dでは、
- 30分足チャートの現在のA/D → 49021
- 週足チャートの現在のA/D → 4565351
というように、A/DはRSIやストキャスティクスのようにパーセンテージではなく、累積ボリュームを基盤としたインジケーターですので、長期になればなるほど数値は高くなる傾向にあります。
A/Dラインの動き・方向が重要
A/Dラインを使った分析では、ラインがどのように動いているのかが重要なポイントとなります。
A/Dラインを見るポイントは、ラインが上に向かっているか下に向かっているかで、需要と供給、買いが強いか売りが強いかが参考にすることができます。
- A/Dラインが上に向かっている
A/Dラインが上に向かっているということは、Accumulationの状態にあるということです。供給よりも需要が大きく、買いが強いことを意味しています。
- A/Dラインが下に向かっている
A/Dラインが下に向かっている場合は、Distributionの状態にあると判断できます。需要よりも供給の方が大きく、売りが強いことを意味しています。
- A/Dラインが上部で横ばい
A/Dラインに変化が見られず横ばいに進んでいるということは、価格の変動があまり見られず、相場も横ばいで進む傾向にあります。需要と供給が等しく、Accumulationが同じ強さで継続している状態です。
- A/Dラインが下部で横ばい
A/Dラインが下の方で横ばいで動いている時は、重要・供給ともに低下し、Distributionが一定の強さで継続している状態です。
- AccumulationからDistribution(上昇から下降)
- DistributionからAccumulation(下降から上昇)
A/Dラインの使い方
A/Dラインでトレンドを読む
A/Dラインを使うことで、トレンドがこのまま継続するのか切り替わるのかヒントを得ることができます。
上昇トレンドが続く?
上記のように上昇トレンドが続いていて、下落の局面がありました。一旦価格が落ち込んだ時に、果たしてここから上昇に向かうのかどうか気になるところです。
価格が落ち込んだ時点でのA/Dラインを見ると
- ここまでの上昇トレンドはA/Dラインでは下値の位置で動いている
- 中央よりも下値よりの位置にある
- まだ、上昇に向かう可能性がある
との分析が可能で、その後A/Dラインが上に進んでいけば強い上昇トレンドが継続していくとの予想ができます。
下降トレンドが続く?
このチャートでは、相場は結果的に下降トレンドがずっと続いていますよね。しかし、黒丸で囲んで箇所では上昇の気配が見られています。上昇の気配が見られる度に、これは上昇トレンドに切り替わるのかなと、思える局面です。
上昇しようとした箇所のA/Dラインを見ると、
- A/Dラインはまだ下の方まで下がりきっていない
- 下降の余地がまだある
- 上がりそうにも見えるが結局は下がっている
- A/Dラインの位置はどんどん低下している
との分析が可能で、相場はまだ下降トレンドがしばらくは継続すると見ることができます。
トレンドが切り替わる?
A/Dラインが下がりきった後で上昇し始めたら、相場がDistributionからAccumulationへと移行していることを意味しています。下降トレンドが終わって上昇トレンドへと切り替わる可能性が高くなります。
A/Dラインの動きから、トレンドの切り替わりを察知することができます。
A/Dラインの時間足を変えてみる
30分足チャート
30分足チャートでは相場もA/Dラインも上昇しきっていて、そろそろ下降に切り替わるのかなと思えそうですが、まだ、上昇トレンドが続くかもしれないですよね。
そんな時は、時間足を切り替えてA/Dラインを見てみることでヒントが得られます。
日足チャート
日足チャートに切り替えてみると、相場はやや上昇に向かおうとしているところで、ちょうどA/Dラインも一番下の部分から上向きになりそうなところです。
日足では上昇へと切り替わっていないので、まだこれからAccumulationの位置へと向かう余地が高く、上昇が続くものと予想できるでしょう。
ダイバージェンス
A/Dラインで強力なヒントとなり得るのが「ダイバージェンス」という現象が現れた時です。
A/Dラインの「ダイバージェンス」とは、本来なら相場と並行して動くA/Dラインが逆行して動くことをいいます。この「ダイバージェンス」から先の相場動向が読めることが多々あるのです。
A/Dライン「ダイバージェンス」の例
上記のチャートでは最初の部分で上昇が始まってからしばらくはA/Dラインと相場はリンクしていますよね。
その後、相場が大きく下降トレンドに向かっているのですが、A/Dラインは逆行してやや上向きに向かっています。価格は下がりつつもA/DラインがAccumulationの動きを見せているということは、下降しながらも上昇へと向かう買い圧力が強まっていることを意味しています。
その後価格が一気にジャンプしています。
反対に、価格上昇の局面にてダイバージョンが現れた時には、急落するサインだと見ることができます。
細かい値動きはわからない
A/Dラインを読むことで、トレンドの継続や切り替わり、価格暴落や価格急騰のサインを見つけることができますが、細かい価格の動きは読みづらいといえます。
A/Dラインの動き自体が緩慢であまり大きな上下を見せないからです。
勝つためのA/Dライントレード手法
A/Dラインは、他のインジケーターと組み合わせることで効果的な相場予測が実現できます。A/Dラインを使って勝つためのトレード手法をいくつかご紹介しておきたいと思います。
移動平均線とA/Dライン
A/Dラインはオシレーター・ボリューム系のインジケータなのでトレンド系と組み合わせることで、エントリー・エグジットの目安が掴みやすくなります。
移動平均線には短期・中期・長期とありますが、ここではわかりやすいように、まずは1本の中期移動平均線と部分的にトレンド・サポート・レジスタンスラインを入れてトレードのポイントを解説していきす。
中期移動平均線とA/Dラインのトレード例
中期移動平均線を相場がクロスする時に、A/Dラインで確認してみます。
- 中期移動平均線を上に超えた時に、A/Dラインも上に向かったいます。ここで「買い」エントリーです。
- やや上昇のレンジ相場となり、A/Dラインも上昇しているので間違えやすいところですが、ひとまずはレンジ相場のサポートと移動平均線を下回ってしまったので「売り」エグジットですね。あるいは一旦「売り」エントリーする方法もあります。
- ここの移動平均線を超える以前に、A/Dラインで「ダイバージョン」が出ていることが注目点です。「あれ?そろそろ上昇に切り替わるのかな」とエントリーの準備をしておきます。そして、移動平均線を超え始めたので「買い」エントリーします。一旦は、下降し始めた地点で「売り」エグジットで利確しておく方法もあります。
以上のような流れで、移動平均線とトレンドライン、レジスタンス・サポートラインを使いながら、A/Dラインがどうなのかを確認しながらトレードのヒントを得ることができます。実際にエントリー・エグジットすべきかどうかA/Dラインで裏付けをとるイメージですね。
まとめ
おそらく、投資家のみなさんはすでに使っている得意なインジケーターがあると思います。
A/Dラインでトレンドの流れや切り替わりを読むことができても、単体で使うにはちょっと物足りないインジケーターでもあります。すでに使っているインジケータと組み合わせたり、他のインジケーターと併用することでA/Dラインの効果が発揮できます。
早速試しに使ってみて下さい。