FXチャート分析には様々なタイプのインジケーターが使えますが、どんなインジケーターを使うとしても、ぜひ覚えておきたいのがサイクル理論です。
サイクル理論の原理を抑えておくと相場の動きが読みやすくなります。
投資家の予想・期待を裏切ることも多いFXトレードにて、サイクル理論を使うことで相場が流れる1つのパターンを把握することができます。どのようなサイクルで動いているのかが分かれば、次の動きのヒントになりますよね。
FXテクニカル サイクル理論
おそらく投資家それぞれにとって、使いやすいインジケーターや分析手法も異なりますよね。どんな方法を使う場合でも、チャート分析で大いに役にたつのが「サイクル理論」です。
まずは、サイクル理論の概要から簡単に見ていきましょう。
サイクル理論とは
サイクル理論とは、
相場のサイクルとは、「上昇→ 最高値(天井) → 下降 → 最安値(底)」の流れのことです。
このサイクルを繰り返しているだけなので、現在の相場がどの段階にあるのかが分かれば次の動きが見えてくるというわけです。
シンプルなサイクル理論ではありますが、すべての相場が同じサイクルで動くわけではありません。ドル円、ユーロドル、ポンド円など通貨ペアごとにサイクルの形状も変わってきます。
この通貨ペア・この時間足なら、どんなサイクルで動いているのか?
これを掴むために活用できるのがサイクル理論なのです。
サイクル理論の提唱者
サイクル理論の提唱者は、Raymond Merriman/レイモンド A.メリマンで、現役で活躍している市場分析アナリストです。メリマンのサイクル理論が初めて登場したのは、1982年に出版された「The Gold Book」にて、最初はGold Price Cycle/ゴールドプライスサイクルとして解説されています。
ほとんどのテクニカルインジケーターが金融関連のプロによって考案されているのとは違って、サイクル理論のメリマンは天文学・占星術の専門家。天文学・占星術の法則をチャート分析に導入し、Financial Astrology/金融占星術と呼ばれる分野を確立しました。
メリマンの書籍も日本語版でたくさん出ています。ラジオNIKKEIでも時々メリマン特集が組まれたりと、メリマンのサイクル理論は国内外で有名な分析手法なのです。
サイクル理論の基礎知識
サイクル理論は占星術がベースになっている一風変わったマーケット分析です。
占星術といえば、三日月や満月、星座に流れ星など、幻想的なイメージを持ってしまうのですが、実は月や星の動きは、物理学・科学と同等に実証可能で永久不変の法則に満ち溢れているのです。
サイクル理論の提唱者であるメリマンは、長年に渡って天体の動きと金融市場の動きの関連性を研究していました。過去の膨大なデータを活用しながら、ある日、一定の法則で天体が動くのに合わせて金融市場も一定の法則で動いていることを発見。
では、サイクル論の基礎知識をここで抑えていきましょう。
1つのサイクルの流れ
サイクル理論でいうところの「1つのサイクル」とは、
のことをいいます。
- 下降トレンド → 転換 → 上昇トレンド
- 上昇トレンド → 転換 → 下降トレンド
基本的にどちらか2つのパターンにてサイクルは構成されています。
この1つのサイクルを相場は延々と繰り返していく、とサイクル理論では見ていきます。
7種類のサイクル
サイクル理論では、相場のサイクルを7種類の基本パターンに分類しています。
サイクルの種類 | 周期の目安 | 特徴 |
---|---|---|
1Dayサイクル | 1日 | 約24時間未満の超短期サイクル |
4Hサイクル | 5~8日 | 1週間未満の短期サイクル |
トレーディングサイクル | 10~18日 | 約1週間~3週間程度の短期~中期サイクル |
メジャーサイクル | 20~25日 | 約3週間から1か月未満の中期サイクル |
プライマリーサイクル | 18~30週 | 約5か月~7か月の中期サイクル |
中間(季節)サイクル | 12~20か月 | 1年~3年未満の長期サイクル |
長期サイクル | 40~100か月 | 約3年~8年単位の超長期のサイクル |
というのがメリマンのサイクル理論です。
つまり、長期サイクルの中には中間サイクルやプライマリーサイクルがあって、中間サイクルやプライマリーサイクルの中にはメジャーサイクルやトレーディングサイクル、そしてさらに、メジャーサイクルやトレーディングサイクルの中には4Hサイクル、4Hサイクルの中には1Dayサイクルがあるのです。
各サイクルのイメージ
上図は、長期サイクルの中にプライマリーサイクルがあって、プライマリーサイクルの中に4Hサイクルがあるイメージです。
大きなサイクルは中小のサイクルで構成されていますので、中小のサイクルは、あくまでも大きなサイクルの流れに沿って動いていくと見ていきます。
サイクルをローソク足で見ていく
各サイクルは、ローソク足の時間足別で分けることができます。
- 1Dayサイクル → 分足~1時間足
- 4Hサイクル → 1時間足~4時間足
- トレーディング・メジャー → 4時間足~日足
- プライマリー・中間 → 日足~週足
- 長期サイクル→ 週足・月足
ローソク足の数でサイクルを見極める
サイクルを見極めるにあたって、ローソク足の本数を目安にすることができます。
- 1Dayサイクル → 5分足(50本~100本)
- 4Hサイクル → 4時間足(60~80本)
- トレーディング・メジャー → 日足(30~45本)
- プライマリー・長期 → 週足(15~21本)
上記のローソク足の本数は、サイクル理論では「平均周期」といって的中率は80%だといわれています。
メインで使うチャート
どのサイクルをメインを使っていくかは、それぞれの投資手法・スタイルによります。
- 短期トレード → 1Dayサイクル、4Hサイクル
- 中長期・スイング → トレーディング、メジャー、プライマリー
- 長期トレード → プライマリー、長期サイクル
短期でも長期でも最もよく使われているのが、トレーディングサイクル、メジャーサイクル、プライマリーサイクルです。
サイクル理論の見方・使い方
サイクル理論の基礎を抑えたら、実際にチャートを見ながらサイクルを見ていきましょう。
サイクル理論 基本チャートパターン
サイクル理論の基本チャートパターンは2つあります。
- ライトトランスレーション (上昇トレンド)
- レフトトランスレーション (下降トレンド)
この2つの基本パターンを覚えておけば、上昇トレンドか下降トレンドか判断の材料になります。
ライトトランスレーション
1つのサイクルの中間地点よりも、右側で高値をつけるチャートパターンを「ライトトランスレーション」といいます。
「上昇トレンド → 下降トレンド」と切り替わるサイクルで、上昇トレンドの方が長くて下降トレンドの方が短い形状になっています。安値の位置が、サイクルのスタート地点の安値よりも高い位置にくるのが大きな特徴です。
ライトトランスレーション エントリー・エグジット例
ライトトランスレーションが確認できたら、1つのサイクルが終わって反発、上昇し始めたタイミングでエントリーします。
予想通りに上昇に向かったら、高値をつけて下がり始めたタイミングでエグジット、そして上昇し始めたら再びエントリーできます。
レフトトランスレーション
1つのサイクルの中間地点よりも、右側で安値をつけるチャートパターンを「レフトトランスレーション」といいます。
「下降トレンド → 上昇トレンド」と切り替わるサイクルで、下降トレンドの方が長くて上昇トレンドの方が短い形状になっています。高値の位置が、サイクルのスタート地点よりもどんどん低くなっていくのが大きな特徴です。
レフトトランスレーション エントリー・エグジット例
レフトトランスレーションが確認できたら、1つのサイクルが終わって再び下降し始めたタイミングでエントリーします。
予想通りに下降に向かったら、安値をつけて上がり始めるタイミングでエグジット、そして下降し始めたら売りでエントリーできます。
勝つためのサイクル理論トレード手法
サイクル理論で勝つためには、1つのサイクルだけを見ていてもだめです。
大きなサイクルの中に、中小のサイクルがいくつも含まれています。4Hサイクルや1Dayサイクルも結局は、プライマリーサイクルや長期サイクルの一部・細部なのです。
とくに短期トレードの方は、長期サイクルを軽視しがちなので注意して下さい。
1つのチャートで複数のサイクルを見る
週足チャート
サイクル理論を使ってチャート分析する時は、まずは中長期の時間足(日足・週足)でサイクルを確定させた方がわかりやすいです。
上図は週足チャートにて、大まかに3つのサイクルにラインを引いてあります。
- 長期サイクル → 長期の相場動向
- プライマリーサイクル → 中期の相場動向
- 4Hサイクル → 短期の相場動向
複数のサイクルを見ることによって、中期も短期も長期サイクルを基盤に上下していくのがわかりますね。
もっと短期で見たい時は、上図の週足チャートを日足にしてみる以下のようにラインも拡大されます。
日足チャート
拡大して、細かいラインの修正などを行ってからチャート分析に入ります。
日足チャートで見てみると、長期サイクルの転換ポイントではプライマリーも4Hサイクルも、ほぼ同じ箇所で反転していますね。
サイクルラインの引き方
さて、いざサイクルラインを引いてみようと思った時に悩むのがどうやってラインを引くかです。
長期サイクルならあまり動きがないので、描画ツールのラインを使って簡単に引けますが、4Hサイクルや1Dayサイクルなどの短期のサイクルは動きも細かくなるので、ラインを引くのも大変ですよね。
描画ツールのライン機能を使う
各自で利用している取引ツールの描画・ライン機能を使ってラインを挿入することができます。
- トレンドライン
- Ganライン
利用できるライン機能は、トレンドラインです。Ganラインを代用に使うことも可能です。
ZigZagを使えば簡単に複数ラインが引ける
複数のサイクルラインを引きたい時に、最もおすすめの方法はZigZagを挿入する方法です。
ZigZagはトレンドの動きに合わせて文字通りに「ジグザグ」のラインを挿入してくれるインジケーターです。基本は1本のラインしか挿入できませんが、3本別々で設定を変えて挿入することが可能です。
ZigZagで3種類のラインが引ける
ZigZagで異なる設定で3つのラインを挿入すれば、どの時間足でもどの通貨ペアで簡単ラクラクに高度なサイクル理論の分析が実現します。
※短期と中期のサイクルはラインが重複することもあり、その場合は1色で表示されます。
ZigZagのパラメーターの設定方法
異なる設定で3種類のZigZagを入れるコツは、
- 短期、中期、長期で設定する
- 3つの設定の数値差をなるべく大きくする
です。
複数のサイクルでエントリー・エグジット
- 長期サイクルも短期・中期のサイクルもすべて転換ポイントにきています。ここから上昇トレンドが始まる可能性が高いです。短期ラインが上に向かい始めたら「買いエントリー」します。
- 短期ラインは中期ラインの上で推移しています。加えて、ライトトランスレーションを形成。上昇がまだ続くサインですね。しばらくすると、短期ラインが中期ラインを割り込みました。そろそろ上昇トレンドが終わるサインと見ます。大きく下に向かい始めたら「売りエグジット」で利確しましょう。
- 下がり始めた相場は長期サイクルに触れました。長期サイクルをサポートラインとして見ます。中期ラインはライトトランスレーションを形成、相場は反発、ここから再び「買いエントリー」することも可能です。
複数のインジケーター・分析手法を併用していくのが成功のコツです。ちなみに以下の記事では、サイクル理論を補足していくれるローソク足分析・酒田五法について解説しています。こちらも合わせてご覧ください。
まとめ
“millionnaires don’t use astrology, billionaires do./100万長者は占星術を使わないけど、億万長者は使う”
これは、米国の超大手銀行の設立者モルガン・スタンレーの言葉です。
中途半端な資産家だと占星術は信じないらしいけれど、モルガン・スタンレーぐらいの強者になると、逆に天体や星・宇宙の法則には抗えないと思っているのでしょうか。
元米大統領のドナルド・レーガンも専属の占星術師を抱えていました。なんとFRBのマーケットレポートでも占星術が使われたこともあります。Gan理論のギャンも占星術を投資に活用していたそうです。
とくに重要な日時を決める時などは占星術によって、天体の動きに沿うことで最も効果的なタイミングが狙えるらしいです。