プロのFXチャート分析実践講座「EMAの見方と勝つための活用法」

FXのテクニカル分析でよく使われているのが移動平均線です。移動平均線はわかりやすく、かつ的中率も高いため初心者から上級者まで幅広く使われているインジケーターです。すでに活用している方も多いですよね。一般的に使われているのがSMAと呼ばれる移動平均線ですが、他にもEMAという移動平均線があります。

同じ移動平均線でもSMAとEMAでは違う動きを見せるため、EMAをあえて使う投資家も少なくないようです。

今回のFXプロでは、EMAの見方や基礎知識使い方や勝つためのトレード手法を解説していきます。
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「FXプロのFXチャート分析実践講座」では基礎的なインジケーターから上級者向けのインジケーターまで幅広い種類をシリーズでご紹介しています。ぜひ、自分に合ったインジケーターを探してみるのにお役立ていただければと思います。

FXテクニカル EMA

FXのテクニカル分析で通常使われている移動平均線は「SMA」と呼ばれるインジケーターで、他にも「EMA」と呼ばれる移動平均線があります。

「SMA」とは

Simple Moving Average/単純移動平均線のことです。最も一般的に使われている移動平均線です。

「EMA」とは

Exponential Moving Average/指数平滑移動平均線のことで、より細かい値動きを分析したい時に使われています。

移動平均線(MA)とは

移動平均線/Moving Average(MA)は、一定期間の価格の平均値をラインで表示したものです。

短期、中期、長期と各自で期間の設定を行います。5日移動平均線なら5日間の終値の合計を5で割って算出されます。14日なら14日間の終値の平均値が出されます。チャートの時間足ごとに対象となる期間が異なり、1分足なら「1分足の終値」、30分足なら「30分足の終値」計算されます。

移動平均線を表示することで、一定期間の平均価格から現在の価格が高いのや安いのか判断することができます。

移動平均線は数あるインジケーターの中で、最もスタンダードな分析手法だといえます。どのインジケーターを使うにしても、移動平均線はとりあえず表示させておく投資家は多いですよね。

SMAとEMAの違い

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そこで、移動平均線の応用編として覚えておきたいのが「EMA」です。まずは最初に移動平均線「SMA」と「EMA」の違いやそれぞれの特徴を詳しく解説していきます。

SMAの特徴

SMA/単純移動平均線は文字通り、シンプルに終値を足して期間で割って平均値を算出します。概ねのところで、現在の価格との乖離率から分析可能となりますが、実際の相場の動きに対してやや遅れ気味となるのが特徴です。

例えば、ありがちな移動平均線のトレード手法として、ゴールデンクロス・デッドクロスがありますが、ゴールデンクロス・デッドクロスが形成された時点で取引しても、もうすでに遅しといった局面も少なくありません。形成しようとする気配が見られた時に動く必要があります。

EMAの特徴

EMA/指数平滑移動平均線は、日本語で見ると非常にややこしい文字で難しそうですよね。(なぜ、日本語訳にすると、こうも複雑な言葉が使われるか疑問ですよね)

EMAは英語のイメージから解説した方がわかりやすいです。日本語訳は一旦忘れて下さい。

Exponentialとは、「急激な動き」を意味する言葉です。金融用語的には、価格高騰や価格急落の局面のことを指しています。EMAとは、とくに相場が急激に動いた時の平均価格を重視して算出された移動平均線のことをいいます。

EMAでは相場の動き中でも、モーメンタムなキーポイントとなる価格がいくらなのかを算出した移動平均線となります。

SMAとEMAの違い

20期間移動平均線の比較
20期間移動平均線の比較
3本の移動平均線 SMA
3本の移動平均線 SMA
3本の移動平均線 EMA
3本の移動平均線 EMA

SMAは単純に平均価格を割り出すため、動きが緩やかになる反面、EMAは急激な変動があった時の価格が重視されるため敏感に相場に反応する移動平均線だといわれています。

若干EMAの方が動き先行している傾向にあり、SMAでは反応しない価格の高低がEMAで表示できることが両者の違いだといえます。

  • 長期的な視野で大まかな相場の流れを見ていきたい時はSMA
  • 短期的な視野で細かい値動きを見ていきたい時はEMA

と使い分けることができます。

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ただ、基本的に両者は移動平均線に変わりはないので、そこまで大きな違いは見られません。より厳密な値動きを分析したい時はEMAを選ぶといいでしょう。

EMAの基礎知識

EMAの基礎知識

SMA、EMAなどの移動平均線は、最長の歴史をもつテクニカル分析の王道ともいえるインジケーターです。多くのインジケーターが移動平均線を基に計算されています。

移動平均線はテクニカル分析の基本中の基本。ファンダメンタルズを重視する投資家でも、移動平均線だけはチャートに表示しいてるケースが多いです。

EMAの歴史・開発者

移動平均線はもともと統計データーを分析する方法として、1900年代初頭あたりから使われていました。この移動平均線を株式や為替取引におけるチャート・テクニカル分析として確立させたのは、J.E.グランビルです。

1960年にJ.E.グランビルは「グランビルの法則」という本を出版し、移動平均線と価格との乖離率から相場予想が可能であることを紹介したのが、インジケーター移動平均線の始まりです。当時はSMAを基盤とした移動平均線の使い方が広く普及しました。

EMAはSMAよりも一足早く発表されていた

しかし、実はJ.E.グランビルよりも一足早く移動平均線の使い方は、チャールズ.C.ホルトによって1957年に発表されていたのです。チャールズ.C.ホルトが紹介した移動平均線というのが「EMA/Exponetial Moving Average」だったのです。

EMAはSMAほど広く普及拡大したわけではありませんが、一部の分析アナリストからは高く評価されてきたインジケーターです。近年になって、オンライン取引の普及拡大などからテクニカル分析が一般投資家の間でも広く知られるようになり、EMAを使う投資家も増えてきました。

EMAの計算方法

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EMAがどのように計算されているのかを簡単に見ていきましょう。

インジケーターは挿入するだけで自動的に計算してラインを表示してくれますので、計算方法を正確に理解する必要はないです。大まかな計算の流れだけでも、さらっと見ておいて下さい。

EMAは、

EMA = 前日のEMA + α ×(当日の終値 − 前日のEMA)
で算出されます。

αとは

α = multiplier/乗数効果

α = 2 ÷ (一定の期間・日数 +1)

例えば、10日間の期間で計算した場合、

α = 2 ÷ (10 + 1)
= 0.1818
= 18.18%

EMAでは古いデーターよりも、直近のデータが重視されるため、SMAに比べると相場の動きに敏感に反応する傾向にあるのです。短期間・短時間での相場動向が気になるスキャルピングやデイトレードなどに活用できる移動平均線だといえます。

EMAの見方

EMAの見方

EMAはトレンド系のインジケーターで、メインチャートに直接ラインが表示されます。EMAは移動平均線なので、文字通りに一定期間内での平均価格がラインで描かれていきます。

どれくらいの期間で設定するかによって、EMAの動きは変わってきます。一般的に短期・中期・長期と3本のEMAを使いますが、見づらい方は最初は1、2本から使ってみてもいいでしょう。

EMAを見るポイント

EMAを見るポイントは、

  • 相場がEMAよりも上の位置にあるか
  • 相場がEMAよりも下の位置にあるか
  • どれくらいEMAから離れているか
  • 下から上に向かっているか
  • 上から下に向かっているか

などです。

基本的にEMAから相場が離れすぎるとEMAの位置まで相場が戻ろうとする傾向にあります。

  • EMAから遠く離れた位置まで上昇 → 下降の可能性
  • EMAから遠く離れた位置まで下降 → 上昇の可能性

EMAのベーシックな見方は上記の2つです。

為替レートとEMAの関係

為替レートとEMAの関係

相場の動きとEMAの関係を5つに絞って解説していきます。

  1. EMAを相場が下から上に抜ける → 上昇のサイン
  2. EMAからかなり離れた位置に相場が下がる → 上昇のサイン
  3. EMAの上で反発して相場が上がる → 下降のサイン
  4. EMAを相場上から下に抜ける → 下降のサイン
  5. EMAの下で上昇した相場が下がる → 下降のサイン

など

1本のEMAでも相場の動きとの関係から上昇サインや下降サインを見つけることができます。

ゴールデンクロスとデッドクロス

EMAを短期、中期、長期と3本のラインを使うことで、より強力な上昇・下降のサインを得ることができます。3本の移動平均線を使った代表的なサインに「ゴールデンクロス」「デッドクロス」があります。

「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」はテクニカル分析の定番なので覚えておきましょう。

ゴールデンクロス

ゴールデンクロス
赤 → 短期、 青 → 中期、 黄 → 長期

ゴールデンクロスとは、

短期線が中期・長期線を下から上に抜けることをいいます。ゴールデンクロスが形成されると上昇トレンドが始まる傾向にあります。

デッドクロス

デッドクロス
赤 → 短期、 青 → 中期、 黄 → 長期

デッドクロスとは、

短期線が中期・長期線を上から下に抜けることをいいます。デッドクロスが形成されると下降トレンドが始まる可能性が高いです。
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というように3本のEMAを使うことで、上昇トレンド・下降トレンドの始まりをキャッチしてトレードに活かすことができます。

EMAの使い方

では、実際にEMAをチャートに挿入して使ってみましょう。

EMAの設定方法

テクニカルインジケーターのメニューには「EMA」との記載がない場合が多いかもしれません。

EMAを挿入する方法は、インジケーターメニューからまず「移動平均線/SMA」を選択します。次に、移動平均線のメニューの中から「指数平滑移動平均線/EMA」を選択します。

期間の設定に決まりはありませんので、各自で好きなように設定できます。どれくらいがいいのか迷う時はデフォルトで使ってみてもいいでしょう。

EMAの設定方法

大抵、数本の移動平均線の設定が可能なので挿入したい本数を色分けにして設定します。色の設定は、短期の動きがキーワードとなるので短期を目立つ色にしておくと分かりやすいですよね。

EMAの期間はどれくらいがよいのか

EMAの期間は、短期、中期、長期と各自で設定できます。具体的にどれぐらいの期間がいいのかは、それぞれの投資スタイル・手法によって変わってきます。一応、参考までに期間の目安を解説しておきます。

デイトレード・スキャルピング(短期)

短期:5~13 中期:20~45 長期:50~75

スイングトレード(中期)

短期:8~20 中期:25~55 長期:75~120

長期トレード

短期:14~25 中期:45~75 長期:100~200

※EMAを1本で使ってみる時は、各トレード手法の中期の期間を目安に設定して下さい。

期間を決めるコツは、実際に色んな数値を設定してみて、相場の流れにマッチするかどうか確認した方がよいです。トレードする通貨ペアや表示する時間足などによって相場の動きからEMAが遅れて反応する場合もあります。

できるだけ先行してサインが現れるような期間の設定を試してみましょう。

EMAでトレードしてみよう

EMAを見ながらトレードするポイントを解説していきます。

EMAでトレードしてみよう
  1. EMAを抜けきらずに価格が下がり始める →「売り」
  2. 価格がEMAを下から上に抜ける → 「買い」
  3. EMAの上にある価格がEMAに触れて反発する → 「買い」
  4. EMAから遠く離れて価格が上昇 → 「売り」
  5. 価格がEMAを上から下に抜ける → 「売り」
  6. EMAの下にある価格がEMAに触れて下がる → 「売り」
  7. EMAから遠く離れて価格が下降 → 「買い」
  8. EMAから遠く離れて価格が上昇 → 「売り」

など

相場の位置、EMAとの距離、相場がEMAの上にあるか下にあるか、どちらの方向にEMAを抜けようとしているか、などのポイントから「買い」か「売り」か判断の目安にすることができます。

勝つためのEMAトレード手法

短期、中期、長期と3本のEMAを使うことで「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」と2つの強力な売買サインを得ることが可能です。しかしながら、どんなに強力な売買サインだとしても1つのサインのみに依存するのは危険です。

必ず、その他の分析手法を用いながらインジケーターが表示するサインを裏付けていくことが大切です。

EMAのサインを裏付ける方法の1つがローソク足分析です。最後に、EMAの手堅いトレード手法である「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」を、「ローソク足分析」で確認しながらトレードする方法を解説していきます。

ゴールデンクロスとローソク足 エントリー・エグジット

ゴールデンクロスとローソク足 エントリー・エグジット
赤:短期  青:中期  黄:長期

短期線が中期線に近づいてきたらゴールデンクロスのサインです。トレーダーの中には中期を超えそうになった時点でエントリーする方もいますが、確実に上昇を狙うのであれば中期線を抜けて、さらに長期線を抜けそうな辺りが「エントリー」の最適なポイントです。

ここでローソク足を見て上昇するかどうかを分析します。

下降トレンドできていたローソク足チャートを見ると、ボティが大きい陰線ローソク足が目立ちますね。下降トレンドの終わりあたりからボディが大きい陽線ローソク足が出始めています。まず大きな上昇サインとなるのが①の大きくて長い陽線ローソク足です。その数本前にはT字型ローソク、クロス型ローソクが出現しています。安値の位置も高くなってきていて強い上昇サインが出ているといえます。

ゴールデンクロスの後、陽線ローソクが続き価格はジャンプしていきます。上昇が続いたら下降のサインがローソク足に出ていないか注意しておきます。②の箇所では逆T字型ローソク、T字型ローソク、クロス型ローソクが連続で出てきています。これは、そろそろ下降に向かうサインです。短期線の動きに注意しておきます。

③の箇所では陰線ローソクが連続、高値の位置が低下、短期線が下を向き始めました。ここで「エグジット」して利確です。

デッドクロスとローソク足 エントリー・エグジット

デッドクロスとローソク足 エントリー・エグジット
赤:短期  青:中期  黄:長期

短期線が下に向かい始めたら中期線に向かって下がり始めたら、デッドクロスのサインです。中期線を抜けるかどうかを注意して見ておきます。ここで、ローソク足に下降のサインが出ていないかを確認します。

①の箇所のローソク足には、陰線T字型、連続の大陰線と下降のサインが出ています。中期線を下に抜けたなと思った時点で「売り」エグジットです。デッドクロスが形成された後、一旦上昇の気配を見せています。判断に悩むところですが、短期線は中期線に触れていませんので下に向かうと判断します。

その後も何度か上昇に向かいそうになっていますが、ひとまずは短期線が中期線に近づくまでは様子を見ます。②の箇所にて陽線ローソク足が連続、きれいな上昇トレンドが形成されています。そろそろ下降トレンドが終わるサインですね。③の箇所で大陽線、大きくて長いローソク足が出てきたのでエグジットの準備をします。ここで利確しておくのも1つの方法です。

最終的に短期線が中期線を上に抜け、長い陽線のT字型、クロス型、大陽線と続いたところで「エグジット」して利確です。

「ゴールデンクロス」「デッドクロス」が完全に形成されてからでは遅すぎてしまう局面も多々あります。中期線に触れたあたりで、クロスが形成されるのを期待してエントリーするのが理想ですが、もちろん当てが外れることもあります。

そこでローソク足からもサインを探すことが勝負に勝つコツです。ローソク足のサインは実際に上昇・下降に向かう前から少しづつ出ていることが多いので細部を注意して見るようにしましょう。

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以下の記事では、SMA/単純移動平均線について詳しく解説しています。こちらも合わせて参考にして下さい。

まとめ

チャート分析でどのようなインジケーターを使おうとも移動平均線は基盤となるテクニカル手法です。最低でも1本は表示しておきたいものです。3本の移動平均線が使いこなせるようになれば、「ゴールデンクロス」「デッドクロス」と最もポピュラーな売買サインを活用することができます。

最もポピュラーなサインということは、そのサインに従って売買する投資家が多いことを意味しています。移動平均線の「ゴールデンクロス」「デッドクロス」はサイン通りに相場が動きやすくなるため、成功率が高い代表的な分析方法だといえます。

EMAはSMAよりも敏感に値動きに反応する移動平均線です。双方に大きな違いはないものの、より厳密な短期よりの分析がEMAでは可能です。スキャルピングやデイトレードなど短時間の取引にぜひ活用してみて下さい。

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移動平均線は全体的緩やかに動くインジケーターです。相場に敏感なEMAであっても、サインが完全に出てから動いてもすでに遅し、といった場面もあります。同時に、今回ご紹介したローソク足分析など他の手法を交えながら、しっかりと確実に利益を得ていきましょう。

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