FXのチャート分析ではインジケーターの利用が欠かせませんが、皆さんはどんなインジケーターを使ってますか?インジケーターには色んな種類があって、それぞれの投資スタイルや戦略、通貨ペアなどで最適なインジケーターも変わってきます。どのインジケーターがいいのか、まずは使ってみないことにはわかりませんよね。
「FXプロのFXチャート分析実践講座」では基礎的なインジケーターから上級者向けのインジケーターまで幅広い種類をシリーズでご紹介しています。
今回のFXプロでご紹介したいインジケーターは「アルーン」です。
これから、インジケーター「アルーン」の見方や基礎知識、使い方や勝つためのトレード手法をわかりやすく解説していきます。ぜひ、試しに使ってみて下さい。
FXテクニカル アルーン
「アルーン」は、あまり知られていないインジケーターですが、隠れた逸品ともいえるインジケーターです。売買サインが分かりやすいうえに割と正確、さらに相場よりも先行している局面も多いので結構使えるインジケーターだといえます。
最初に「アルーン」の概要を簡単に見ていきましょう。
アルーンとは
アルーンはメインチャートの下に挿入される、オシレーター系のインジケーターです。2本のラインを使って表示されるのですが、仕組みがシンプルでわかりやすいのが特徴です。
アルーンとは、
何だかロマンチックな響きがあるインジケーターですよね。アルーンを使うことで、新しいトレンドの始まりが早めに察知できるため有利なトレードが実現しやすくなります。
アルーンでは、
- アルーンアップ(上昇線)
- アルーンダウン(下降線)
と2本のラインを使います。
2本のラインの重なり具合や位置や高さなどから、トレンドの転換地点だけでなく、強弱や方向性、上昇・下降のポイントを見極めることができます。数値は概ねで「0から100」の間で表示され、70、50、30の数値を基準にトレンドの強さや方向性を判断することができます。
アルーンの開発者
アルーンは、1995年にトゥシャー・シャンデ(Tushar Chande)によって開発されたインジケーターです。
トゥシャー・シャンデは、米国シカゴの科学者・投資家・分析アナリストで、シャンデの名前がつけられたインジケーターをいくつか他にも開発しています。実はシャンデはインド生まれで、イリノイ大学への入学を期に米国に移住。工学エンジニアとして博士号を取得したのち、独特のアプローチ法で市場の分析手法を生み出し、金融業界にて名前が知られるようになったのです。
シャンデのインジケーター
- Aroon(アルーン)
- Chande momentum oscillator(シャンデ・モーメンタム・オシレーター)
- Chande Trend Index(シャンデ・トレンド・インデックス)
投資に関する多数の著作物(英語版)を出版していて、日本語版でも「売買システム入門」という本が出ています。
アルーンの基礎知識
アルーンは一定期間における相場の高値・安値をもとに、上昇トレンドの可能性と下降トレンドの可能性をパーセンテージで導き出していきます。
アルーンの計算方法
アルーンは
- アルーンアップ(上昇ライン)
- アルーンダウン(下降ライン)
と2本のラインで表示されます。
アルーンアップ(上昇ライン)=
(任意の期間 - 最高値を記録してからの期間)÷ 任意の期間 × 100
アルーンダウン(下降ライン)=
(任意の期間 - 最安値を記録してからの期間)÷ 任意の期間 × 100
任意の期間とは
任意の期間とは、とくに決まりはないので、パラメーターにて各自で期間の設定が可能です。デフォルトでは「9~14」あたりの設定になっています。まずはデフォルトで使ってみて相場の動きとしっくりこない場合は調整してみるといいでしょう。
期間10と設定した場合、時間足によって対象となる期間が異なります。
- 1分足 → 10分間
- 30分足 → 300分間
- 1時間足 → 10時間
- 日足 → 10日間
となります。
アルーンの計算例
例えば、期間10の最安値がローソク足で5本前、最高値がローソク足で3本前だとすると以下のような計算になります。
- アルーンアップ = (10 - 3) ÷ 10 × 100 = 70%
- アルーンダウン = (10 - 5) ÷ 10 × 100 = 50%
となり、現在の相場は上昇に向かう可能性の方が高いと判断できるのです。
アルーンの基礎的な仕組み
基本的に、
- アルーンアップが上にきている → 上昇・上昇トレンド
- アルーンダウンが下にきている → 下降・下降トレンド
- アルーンアップが下から上に向かう → 上昇・上昇トレンドの始まり
- アルーンダウンが下から上に向かう→ 下降・下降トレンドの始まり
- 2本のラインが交差して入れ替わる → トレンドの転換
などのサインがあり、売買タイミングを計ることができます。
アルーンの見方
アルーン 2本のラインと数値
アルーンの2本のラインは、アルーンアップとアルーンダウンの2種類。
- アルーンアップ(上昇ライン)→ この数値が高いほど強い上昇
- アルーンダウン(下降ライン)→ この数値が高いほど強い下降
アルーンチャートの数値は、
- 最高値100(100前後の数値で表示)
- 中間値70、50、30(上昇・下降を判断する目安)
- 最低値0(0に近い数値で表示)
アルーンを見るポイント
アルーンを見るポイントは、
- どちらのラインが上に来ているか
- 2本のラインの交差点
- 2本のラインの数値はどれくらいか
以上の3つです。
アルーンを見るポイントを具体的にチャートで確認していきます。
1.どちらのラインが上に来ているか
まず、アルーンを見るベーシックなポイントは、アルーンアップとアルーンダウンのどちらのラインが上にきているかです。
- アルーンアップが続けて上にきている → 上昇トレンド
- アルーンダウンが続けて上にきている → 下降トレンド
- アルーンアップが1か所で上にきている → 上昇
- アルーンダウンが1か所で上にきている → 下降
アルーンアップが、しばらく上に見られる時は上昇トレンドが形成されていることを意味しています。アルーンダウンがしばらく上に見られる時は下降トレンドが継続していることを意味しています。
1か所だけ、どちらかのラインが突き出ている時は、一時的に上昇・下降が見られていることを表しています。
上昇トレンドの中の下降
アルーンアップが上に続く中、一時的にアルーンダウンが出てくるときは、上昇トレンドにありつつも一旦価格が下がったことを表しています。
下降トレンドの中の上昇
アルーンダウンが上に続いている中、一時的にアルーンアップが出てくるときは、下降トレンドの中でも一旦上昇する局面があったと見ることができます。
2.2本のラインの交差点
次に、アルーンで見るポイントは2本のラインが交差する地点です。ちょうど交差した時にトレンドが切り替わったり、一旦上昇・下降が見られる傾向にあります。
- アルーンアップが下からアルーンダウンを上に抜ける → 上昇・上昇トレンドのサイン
- アルーンダウンが下からアルーンアップを上に抜ける → 下降・下降トレンドのサイン
どちらのラインが上に抜けようとしているのかを見ることが大切です。アルーンアップが上に抜ける時は上昇、アルーンダウンが上に抜ける時は下降。
しばらくトレンドが続いた後でこのサインが見られる時はトレンドが切り替わるサインと見ることができます。
3.ラインの数値・高さ
2本のそれぞれのラインがどの数値・高さにあるのかによって、上昇・下降の可能性がかわってきます。
アルーンアップ
- 70~100 → 強い上昇サイン
- 50~70 → やや微妙な上昇サイン
- 50~30 → 上昇の可能性は低い
- 30~0 → 上昇の可能性はほとんどない
アルーンダウン
- 70~100 → 強い下降サイン
- 50~70 → やや微妙な下降サイン
- 50~30 → 下降の可能性は低い
- 30~0 → 下降の可能性はほとんどない
上昇トレンドにある中、アルーンアップが70を下に抜けてきたら一旦下降に向かう可能性があります。50を下に抜けたら下降トレンドに切り替わる可能性があります。
下降トレンドにある中、アルーンダウンが70を下に抜けてきたら一旦上昇に向かう可能性があります。50を下に抜けたら上昇トレンドに切り替わる可能性があります。
アルーンの使い方
ラインの交差点でエントリー・エグジット
アルーンアップが下からアルーンダウンを上に抜けるポイントで「買い」エントリーします。
アルーンアップが最高値で横に水平に伸びる時は、かなり強い上昇トレンドだと判断できます。強気で下降トレンドに切り替わるサインを待ちます。一旦、アルーンアップが70近くに下がった時にエグジットすることもできますが、確実なサインを待って、アルーンアップが下に交差する地点で「売り」エグジットで利確です。あるいはここで「売り」エントリー」することもできます。
相場は下がり始めますので、次の上昇ポイントを待ちます。再び、アルーンアップが下から上に抜けはじめた交差点で「買い」エントリーします。「売り」から入っていた場合はここで「買い」エグジットですね。
次のサインが出てくるまで待って、アルーンアップが上からアルーンダウンを下に抜け始めたら「売り」エグジットで利確します。
70と30を目安にエントリー・エグジット
アルーンを使って、2本のラインが70以上と30以下になるタイミングでエントリー・エグジットを決める方法もあります。
- アルーンアップは70以上に抜けました。この時点でアルーンダウンが30以下であることを確認します。強い上昇のサインです。ここで「買い」エントリーします。
- しばらくアルーンアップの強い上昇サインとともに上昇トレンドが続きました。次にアルーンアップが70以下、アルーンダウンが30以下のタイミングで「売り」エグジットで利確です。
- 一旦、アルーンダウンは50以下まで下がってますね。ところが、アルーンダウンは30以下のままなので上昇トレンドが継続すると判断してサインを待ちます。相場は上昇し始め、アルーンアップが70超え、アルーンダウンは30以下ですので「買い」エントリーです。
- 予想どおりに上昇トレンドが継続、下降トレンドに切り替わるサインを待ちます。アルーンアップは70に向けて下がり始めます。上昇トレンドが弱まってきているサインですね。そして、アルーンアップが70を完全に抜けて、アルーンダウンが30以下であるのを確認したら「売り」エグジットです。
勝つためのアルーントレード手法
アルーンだけに限らず、どんなに優れたインジケーターでも完璧ではありません。
移動平均線とローソク足
アルーンを使ったエントリー・エグジットを移動平均線とローソク足分析を交えて解説していきます。相場分析の参考にして下さい。
- アルーンアップがアルーンダウンを上に抜けました。ただ数値が30辺りの低い位置にあるので若干微妙です。移動平均線ではサインなし、ローソク足ではT字型やクロスが出始めています。上昇の気配があるのでタイミングを見ます。
- アルーンアップは一旦下がりましたが50あたりで反転、同時に移動平均線は「ゴールデンクロス」に向かっています。ローソク足はここ数本中でもっとも長めの陽線、次のローソク足でジャンプしたので「買い」エントリーです。
- アルーンアップは30以下まで下がり、アルーンダウンが上に抜けています。ちょっと慌てる場面ですが、ローソク足は陽線で上昇、移動平均線の短期線も上に向かっていますので、様子を見ます。すぐにアルーンアップがまた上に向かいました。
- 再びアルーンダウンが上に向かっています。しかしこの時点での移動平均線には下降のサインなしでローソク足は安値の位置が上がっています。下がり始めますが、まだ上昇の可能性はあると見ます。
- アルーンアップがようやく上に向かい、ローソク足も長めの大陽線が連続しています。移動平均線も短期線が上に向かっています。強い上昇のサインなので利確のタイミングを待ちます。
- 相場は上昇、アルーンアップは上昇、ローソク足・短期線も上昇、ただし、アルーンダウンが50を上に抜けています。また、下がり始める可能性があると利確の準備をします。
- ローソク足の高値が下がり始めました。短期線は急角度で下に向かい始めています。アルーンダウンも最低値までは下がらずに途中で上に反転し始めています。強い下降サインです。ここで下がりきる前に「売り」エグジットで利確です。
まとめ
アルーンは、トレンドの夜明け・始まりを読むことができるインジケーターです。
- アルーンアップ(上昇ライン)
- アルーンダウン(下降ライン)
と2本のラインを使って、トレンドの強弱や方向性、トレンドの切り替わりを先駆けて読むことができます。
アルーンを見るポイントは、
- どちらのラインが上に来ているか
- 2本のラインの交差点
- 2本のラインの数値はどれくらいか
以上の3点です。