FXの評価損益は何を合算した額?スワップを含む会社と含まない会社
口座の「評価損益」は、建玉の値幅ぶんだけの会社と、未決済スワップまで合算する会社に分かれます。5社の公表定義、評価に使うレート、決済損益とずれる3つの理由、維持率と税金への効き方を確認日つきで整理します。
保有中の建玉に出ている「評価損益」は、建単価と評価レートの差額が土台です。GMOクリック証券はFXネオについて「FXネオの評価損益は、建単価と評価レートの差額のみで計算されており、スワップポイントは含まれておりません」と記載しています(2026年11月5日確認)。同社は、スワップを含めた損益は「累計スワップ」と「評価損益」を合算する必要があるとも案内しています。
ところが、同じ「評価損益」という項目名で、未決済のスワップまで合算している会社があります。外為どっとコムは口座照会の評価損益を「現在お持ちのポジションにおけるスポット評価とスワップ評価を合算したものです」と記載し、松井証券は口座状況の評価損益を「建玉評価損益、スワップポイント、未払手数料を合計した金額です」と記載しています。項目名が同じでも、2つの口座で同じ建玉を持ったときに画面の数字が同じ意味になるとは限りません。
この記事では、5社の公表定義を並べて自分の画面がどちらなのかを特定し、評価に使われるレート、公表された参照レートで追った1か月ぶんの振れ幅、決済したあとの金額と分かれる理由、そして証拠金維持率と税金への効き方を確認します。決済後の金額そのものの計算はFXの決済損益の計算式は?口座の表示と自分の計算がずれる6つの原因で扱っているため、ここでは決済する前の数字だけを見ます。
口座の「評価損益」に何が入っているか
各社が画面の項目として公表している定義を並べます。母数は、当サイトが2026年11月5日に公式ページで記載を確認できた5社です。並び順は本文で触れる順で、評価や優劣ではありません。
| 会社・サービス | 画面の項目名 | 公表されている定義 | 未決済スワップ |
|---|---|---|---|
| GMOクリック証券(FXネオ) | 評価損益(建玉一覧) | 建単価と評価レートの差額のみで計算されており、スワップポイントは含まれておりません | 含まない |
| 松井証券(MATSUI FX) | 評価損益(口座状況) | 建玉評価損益、スワップポイント、未払手数料を合計した金額です | 含む |
| 外為どっとコム(外貨ネクストネオ) | 評価損益(口座照会) | 現在お持ちのポジションにおけるスポット評価とスワップ評価を合算したものです | 含む |
| SBI FXトレード | 損益評価額(口座状況) | 取引中のポジションに発生している損益とスワップポイントの合計額。評価損益+スワップポイント(未決済) | 含む(評価損益は別項目) |
| みんなのFX(期間損益報告書) | 評価損益 | 建玉に対する評価損益のうちスワップ損益を含まない金額 | 含まない(未決済スワップは別項目) |
読み比べると、分かれ方は3通りです。1つめは、評価損益を値幅ぶんだけに限り、スワップを別の欄に出す形です。GMOクリック証券とみんなのFXの記載がこれにあたります。2つめは、評価損益という1つの項目に合算してしまう形で、松井証券と外為どっとコムの記載がこれです。松井証券は未払手数料まで同じ項目へ入れると記載しています。3つめは、両方の項目を並べて出す形で、SBI FXトレードは「評価損益」と、それにスワップを足した「損益評価額」を別に表示すると記載しています。
自分の口座がどれなのかは、建玉一覧の画面にスワップだけを表示する列があるかで見分けられます。別の列があるなら、評価損益は値幅ぶんだけの可能性が高く、合算した金額は自分で足すことになります。スワップポイントがどう計算されるかはFXのスワップポイントの計算方法は?、付与される日の考え方はFXのスワップポイントはいつ付く?日数の考え方で扱っています。
評価レートは買建がBid、売建がAsk
もう1つ、画面の数字を再現するために要るのが評価レートです。GMOクリック証券は、FXネオ取引の建玉一覧の評価レートについて「売建玉はAskレート、買建玉はBidレートでリアルタイムに計算しております」と記載しています(2026年11月5日確認)。
ここが、自分でレートを拾って検算したときに合わなくなる最初の原因です。買いの建玉は売って決済する前提なので、評価に使われるのは売るときのレート、つまりBidです。チャートや気配の画面でAskを見て計算すると、スプレッドのぶんだけ有利な金額が出ます。1万通貨でスプレッドが0.2銭なら20円、10万通貨なら200円の差です。BidとAskの関係そのものはFXのBidとAskとは?売値と買値の違い、その差が何なのかはFXのスプレッドとは?手数料との違いで整理しています。
評価が更新される頻度も、画面の数字が常に動く理由です。GMOクリック証券は上記のとおりリアルタイムと記載し、外為どっとコムは有効評価額を「その時点でのお客様の口座内の資産価値を表す金額です」、有効比率を「ロスカットの基準となる値です」と記載しています。評価損益は「いまの瞬間の見込み」であって、約定した金額ではありません。この区別を付けておくと、次の節の数字の見え方が変わります。
同じ建玉の評価損益が1か月でどう動くか
決済していないあいだ、評価損益はどのくらいの幅で動くのでしょうか。公表された日次参照レートで追ってみます。使うのはFrankfurterが公開している2026年9月の米ドル/円の日次参照レート(2026年11月5日取得)で、ここから先は仕組みを確かめるための仮定の計算例です。実際の取引レート(BidとAsk)ではなく、特定の会社の条件を示すものでもありません。
9月1日の参照レート160.16円で1万通貨を買い、そのまま持ち続けたと仮定します。評価損益は(その日の参照レート-160.16円)×10,000通貨で、スワップと取引コストは入れていません。
数字で押さえておきたい点が3つあります。1つめは振れ幅です。いちばん大きい含み損は9月9日の参照レート153.27円のときで−68,900円、いちばん小さいのは9月24日の158.85円のときで−13,100円でした。その差は55,800円で、建てた金額(160.16円×10,000通貨=1,601,600円)の約3.5%にあたります。
2つめは有効証拠金への効き方です。口座へ10万円を入れてこの建玉を1本だけ持っていたとすると、9月9日の時点の有効証拠金は100,000円-68,900円=31,100円です。入金額は1円も動いていないのに、取引に使える実質的な資産は3分の1近くまで減ります。この考え方は有効証拠金とは?口座残高との違いで扱っています。必要証拠金の側は会社の証拠金率と算出レートで決まるため、ここでは金額を置きません。決め方は必要証拠金の額はどう決まる?証拠金率・算出レート・判定時刻の3点で整理しています。
3つめは月末の数字だけを見ても動きは分からないことです。9月30日の参照レートは157.00円で評価損益は−31,600円ですが、月の途中には倍以上の含み損になった日がありました。建玉を複数持っている場合、この振れが同時に起きます。合計でどれだけのリスクを抱えているかの数え方は複数ポジションの合計リスクはどう数える?で扱っています。
評価損益と決済損益が分かれる3つの理由
画面に−31,600円と出ているとき、いま決済すれば−31,600円が確定するのかというと、そうは言い切れません。分かれる理由は3つです。
1つめは、評価レートと約定価格が別物であることです。評価損益はその瞬間に提示されているレートで計算されますが、決済損益に入るのは実際に約定した価格です。成行で決済すれば、注文を出した瞬間に見ていた価格と約定した価格はずれます。
2つめは、スワップの扱いが表示と計算式で違うことです。GMOクリック証券は決済の損益額を「(決済レート-建玉レート)× 取引数量 × 取引単位(10,000)± 累計スワップ = 損益額」と公表しています。評価損益にスワップが入っていない会社では、決済した瞬間に累計スワップのぶんだけ金額が動いて見えます。逆に、評価損益へすでに合算している会社では、この段差は起きません。
3つめは、端数処理と円転レートが決済のときに当たることです。外貨同士の通貨ペアでは日本円へ換算するための円転レートが掛かり、会社によっては1円未満を切り捨てます。どちらも評価の段階では見えにくい差です。換算の考え方は為替換算のやり方は?掛けるか割るかの決め方、円が入らない通貨ペアの区別はクロス円とは?ドル円との違いと仕組みで扱っています。
つまり、画面の評価損益は決済したときの金額の予想値です。損切りの金額を事前に決めるときは、この予想値と確定値の差が出る前提で余裕を持たせておくほうが安全です。
評価損益は証拠金維持率とロスカットに直結する
評価損益がいちばん効くのは、口座の維持率です。各社が公表している計算式を並べます。
| 会社・サービス | 画面の項目名 | 公表されている計算式・説明 |
|---|---|---|
| 松井証券(MATSUI FX) | 口座維持率 | (総資産-注文証拠金)÷ポジション必要証拠金×100 |
| SBI FXトレード | 証拠金維持率 | 資産評価額÷取引必要証拠金×100(資産評価額=預託金残高+評価損益+スワップポイント(未決済)-出金依頼額) |
| 外為どっとコム(外貨ネクストネオ) | 有効比率 | ロスカットの基準となる値です(有効評価額は、その時点でのお客様の口座内の資産価値を表す金額です) |
SBI FXトレードの式を見ると、評価損益と未決済スワップが分子の「資産評価額」へそのまま入っていることが分かります。含み損が増えると分子が小さくなり、維持率が下がります。建玉を増やしていなくても、レートが動くだけで維持率が動くのはこのためです。維持率そのものの読み方は証拠金維持率とは?計算方法と目安で扱っています。
そして維持率が基準を割ると、強制決済が入ります。外為どっとコムは外貨ネクストネオのロスカットについて「ロスカットレベル(100%~50%の間で10%刻みに設定)を有効比率が下回った際に随時ロスカットを執行」し、加えて「毎営業日の取引時間の終了時刻の直前1時間以内に限り、ロスカットレベルの設定値にかかわらず有効比率が100%を下回るとロスカットを執行」すると記載しています(2026年11月5日確認)。松井証券は、口座維持率が選択したロスカット率を下回った場合、新規の未約定注文があればすべて強制的に取り消されると記載しています。
この監視は会社の判断で任意に行われているものではありません。金融先物取引業協会は、ロスカット・ルールの整備・遵守の義務付けについての確認事項として「取引時間中の各時点における顧客のポジションを適切に把握し、…水準に抵触した場合には、例外なくロスカット取引を実行しているか」を挙げています(2026年11月5日確認)。評価損益は、読者が見ている画面の数字であると同時に、会社が強制決済を判断するための数字でもあります。ロスカットの仕組みはロスカットとは?仕組みと注意点で扱っています。
決済前の評価損益は、個人口座では課税対象にならない
含み益が出ている状態で年を越すと税金がかかるのか、という疑問もここに関係します。
国税庁は、外国為替証拠金取引の課税関係について、課税の対象を「差金等決済(決済または行使もしくは放棄もしくは譲渡の総称です。)により生じた損益」と記載しています(2026年11月5日確認)。決済していない建玉の評価損益は、この範囲に入りません。
各社の案内も同じ内容です。みんなのFXは個人口座について「ポジション決済前の評価損益や未決済ポジションに付与されている受取前のスワップポイントは課税対象ではありません」と記載しています。ただし同社は法人口座では扱いが変わると記載しており、「決済損益とポジション決済前の約定評価損益が課税対象となります。また、未決済ポジションに付与されている受取前のスワップポイントも課税対象です」としています(いずれも2026年11月5日確認)。
もう1つ注意したいのは、決済していなくてもスワップだけを受け取れる会社がある点です。その場合は受け取った時点で扱いが変わります。個人の確定申告の考え方はFXの税金の仕組みは?で扱っています。税額の判断そのものは個別の事情で変わるため、最終的には国税庁の記載と税務署、税理士に確認してください。
自分の口座で確かめる3か所
ここまでの内容を作業に落とします。画面を開いて書き留めるのは3か所です。
1か所めは評価損益の項目名と、その横にスワップの列があるかです。別の列があるなら、合算した金額は自分で足します。2か所めは評価レートの説明で、買建がBid、売建がAskであることを取引ルールやよくあるご質問で確かめます。3か所めは維持率の計算式と、選んでいるロスカット率です。分子に評価損益が入る形になっているかを見ます。
この3つが分かっていれば、画面の評価損益を自分で再現できるようになり、レートが何円動いたときに維持率がどこまで下がるかも先に計算できます。評価損益は、決済するまで1円も確定しない数字です。確定した金額として読まないことが、この項目の正しい使い方です。決済したあとの金額の追いかけ方はFXの決済損益の計算式は?口座の表示と自分の計算がずれる6つの原因へ続きます。
この記事の更新・確認情報
- 情報の基準日
- 編集部による確認日
- 情報の変動性
- 中(サービス・制度の情報)
- 次回確認予定
- 一次情報の件数
- 13件(本文末の参考資料に記載)
金融庁は、外国為替証拠金取引について相場変動、金利変動、流動性、信用、システムなど複数のリスクを挙げています。 ロスカットは損失の拡大を抑える仕組みですが、急変時に証拠金を上回る損失が生じる可能性まで消すものではありません。 「ロスカットがあるから安全」と考えず、取引数量と損切りを先に決めてください。 出典:金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」
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