FXの確定申告で経費になるもの|所得税法の判定基準と家事按分の50%ライン

FXの必要経費は品目の一覧では決まりません。所得税法37条が定める2つの条件、家事と共通する支出の50%判定、10万円以上の機器の扱い、12月31日時点の債務確定という4つの軸を、条文と国税庁の説明で確かめます。

本記事は情報提供を目的としたもので、投資判断を勧誘するものではありません。FXには元本割れのリスクがあります。

FXの利益から差し引ける必要経費は、品目の一覧では決まりません。国税庁のタックスアンサーNo.1521(FXの課税関係)、No.1522(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)、No.1500(雑所得)、No.2210(必要経費の知識)を確認した範囲では、FXで認められる経費の品目を並べた案内は見当たりませんでした(2026年10月29日確認)。判定の根拠になるのは、所得税法が定める費用の条件、家事と共通する支出の区分、そして12月31日の時点で債務が確定しているかどうかです。

ここを一覧で考えると行き止まりになります。同じ1台のパソコンでも、取引だけに使うのか家族と共用するのかで扱いが変わり、同じ通信費でも取引に使った部分を区分できるかどうかで差し引ける金額が変わるからです。世の中にある「FXの経費になるもの一覧」は、条件に当てはめたあとの結果です。条件そのものを先に押さえれば、自分の支出を自分で判定できます。

この記事では、必要経費の範囲を決めている2つの条件、収入側と経費側の区分、家事と共通する支出の50%の判定、10万円以上の機器の扱い、その年の経費になるかどうかの線引き、そして記録の残し方を、条文と国税庁の説明で順に確かめます。申告が必要かどうかの判定や書類・提出・納付の手順はFXの確定申告のやり方、税率と課税の対象はFXの税金の仕組みで扱っているので、ここでは金額の作り方に絞ります。

範囲を決めているのは、品目ではなく2つの条件

国税庁のNo.1521は、市場デリバティブ取引または店頭デリバティブ取引に該当するFXの差益を「先物取引に係る雑所得等」として扱い、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で課税すると説明しています。つまりFXの所得は雑所得です。そしてNo.1500は、雑所得を公的年金等・業務に係るもの・その他のものの3つに区分したうえで、公的年金等以外はいずれも総収入金額から必要経費を差し引いて計算するとしています。

その「必要経費」の中身を定めているのが所得税法第37条第1項です。e-Gov法令検索で確認した条文は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額を、別段の定めがあるものを除き、次の2つの合計としています(2026年10月29日確認)。

  • 総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額
  • その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く)

国税庁のNo.2210も、必要経費に算入できる金額をこの2つとして示しており、適用されるのは事業所得・不動産所得・雑所得の計算だとしています。FXの所得は雑所得なので、この条件がそのまま当てはまります。

もうひとつ、引けないものを定めた条文があります。所得税法第45条第1項は、居住者が支出し又は納付する一定のものの額を、雑所得の金額の計算上必要経費に算入しないと定めています。第1号が家事上の経費およびこれに関連する経費で政令で定めるもの、第2号が所得税、第4号が道府県民税および市町村民税(都民税および特別区民税を含む)、第7号が罰金および科料ならびに過料です。

FXのために使った支出が、所得税法37条1項の費用に当たるか、家事と共通する部分を明らかに区分できるか、12月31日までに債務が確定しているかの3段を順に通ると必要経費になり、各段を満たさない場合に算入しない・区分できる部分だけになる・その年の経費にならないへ右へ分岐することを示した判断フロー図
左の列を上から下へ通れば必要経費に算入でき、右へ分岐したものは算入しないか、金額が狭まります。右端の列はそれぞれの根拠です。関門2と関門3は、関門1を通った支出にだけ現れます。所得税法第37条第1項・第45条第1項、所得税法施行令第96条第1号、国税庁タックスアンサーNo.2210、所得税基本通達45-2をもとに作図しています(2026年10月29日確認)。

図の形が示しているのは、経費かどうかは3回の判定の結果だということです。関門1で「FXの所得を得るために直接要した費用か、取引という業務について生じた費用か」を見て、関門2で家事と共通していないかを見て、関門3でその年のものかを見ます。どれかで引っかかる支出は、品目が何であっても全額を引けません。

収入から引くもの、引けないもの、そもそも引く対象でないもの

条件が分かったところで、FXで実際に出てくるお金を3つに分けます。混同しやすいのは3列目です。

出てくるお金 扱い 根拠
決済して確定した損益、スワップポイント 総収入金額の側で集計する No.1521・No.1500。計算の出発点になる
取引手数料 必要経費として差し引く GMOクリック証券は「利益の合計額から手数料などの必要経費を控除した額」が課税対象と案内
FXの学習に使った書籍代、通信費、機器代 第37条第1項の条件と家事との区分を満たした範囲で差し引く 所得税法第37条第1項、同施行令第96条第1号
所得税・住民税 必要経費に算入しない 所得税法第45条第1項第2号・第4号
延滞税、無申告加算税、延滞金、罰金・科料・過料 必要経費に算入しない 所得税法第45条第1項第3号・第5号・第7号
スプレッド 経費欄に書くものではない 売値と買値の差として約定価格に含まれ、決済損益に反映される

表の根拠は条文と各社の案内で、2026年10月29日に確認しました。1行目と2行目は、FX会社から受け取る年間損益報告書で金額を確かめられます。GMOクリック証券は、FXネオの年間損益報告書を毎年年初に発行し、確定申告に利用できると案内しています。

いちばん誤解されやすいのは最後の行です。スプレッドは手数料のように請求される費用ではなく、注文が成立する価格そのものに含まれています。したがって、スプレッドのぶんはすでに決済損益の中で引かれています。これを経費として別に差し引くと、同じ負担を二重に引くことになります。仕組みはFXのスプレッドとは、取引で発生する費用の全体像はFXの手数料で整理しています。

取引手数料を0円としている会社でも、強制的に決済される場面にだけ手数料を定めていることがあります。自分が払った手数料があるかどうかは、年間損益報告書と取引ルールの手数料欄で確かめてください。

家事と共通する支出は、50%の線で扱いが変わる

通信費、電気代、自宅の一部を取引に使っている場合の家賃。これらは生活のための支出とFXのための支出が1つになっています。所得税法第45条第1項第1号が「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」を必要経費に算入しないとしているため、まずこの政令を見ることになります。

e-Gov法令検索で確認した所得税法施行令第96条第1号は、家事上の経費に関連する経費のうち、その主たる部分が雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費を、必要経費に算入できるものとしています(2026年10月29日確認)。条件は「主たる部分が業務上必要」と「必要な部分を明らかに区分できる」の2つです。

では「主たる部分」はどこで切れるのでしょうか。国税庁の所得税基本通達45-2は、この判定を、その支出のうち業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかで行うとしています。あわせて、50%以下であっても、必要である部分を明らかに区分することができる場合には、その部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えないとされています(2026年10月29日確認)。

1つの支出のうちFXの取引のために必要な部分の割合を0%から100%の帯で表し、50%を境に左は主たる部分ではないと判定されるが明らかに区分できる場合はその部分を算入できる、右は主たる部分が必要と判定され区分できる部分に相当する経費を算入すると示した判定図
帯は1つの支出の全体で、左へ寄るほど生活のための部分が大きくなります。50%の線を越えるかどうかで入口の判定が変わり、どちらの側でも「明らかに区分できるか」が最後の条件として残ります。所得税法施行令第96条第1号と国税庁の所得税基本通達45-2をもとに作図しています(2026年10月29日確認)。

図の右側に入っても、全額を引けるわけではありません。算入できるのは必要である部分に相当する経費で、残りは生活のための支出として残ります。つまり、どちらの側であっても「どこまでが取引のための部分か」を自分で示せることが要になります。

仕組みを確かめるために、仮の数字で考えます。自宅の通信回線の料金が月5,000円で、そのうち取引のために使った割合を回線の利用記録から6割と区分できたとすると、月3,000円、年間で36,000円が区分できる部分です。これは仕組みを理解するための仮定の計算で、この割合が認められることを示すものではありません。実際の割合は使い方によって変わり、根拠を示せる区分の方法も人によって違います。

なお、施行令第96条の第2号には、取引の記録等に基づいて業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分を算入できるという定めがありますが、こちらは青色申告書の提出について税務署長の承認を受けている居住者の、不動産所得・事業所得・山林所得を対象にしています。FXの雑所得で見るのは第1号です。

10万円以上の機器は、その年に全額を引けない

取引に使うパソコンやモニターのように、買った年だけでなく何年も使う資産は、支払った年にまとめて引く形になりません。国税庁のNo.2100は、減価償却資産を時の経過等によって価値が減っていく資産とし、取得価額によって扱いを分けています。

取得価額を軸にして、10万円未満は全額をその年分の必要経費にできる、10万円以上20万円未満は一括償却資産として合計額の3分の1を3年間の各年分に算入できる、20万円以上は法定耐用年数に応じて各年分に分けて必要経費にすると3区分で示した図
区分は資産1つごとに判定します。左端の区分には、使用可能期間が1年未満のものも入ります。右端の法定耐用年数は財務省令の別表に定められており、国税庁の耐用年数表で品目ごとに確かめられます。国税庁タックスアンサーNo.2100をもとに作図しています(2026年10月29日確認)。

No.2100の記載を順に見ます。使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を、業務の用に供した年分の必要経費とします。取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一定の要件のもとで、一括した取得価額の合計額の3分の1に相当する金額を、業務の用に供した年以後3年間の各年分において必要経費に算入することができます。それ以上の金額のものは、法定耐用年数に応じて各年分に分けていきます。

当サイトでは、品目ごとの法定耐用年数の年数そのものをこの記事に載せていません。国税庁の耐用年数表(PDF)を機械で読み取れず、年数を一次情報で確認できなかったためです(2026年10月29日確認)。自分が使う機器が何年になるかは、国税庁の耐用年数表で品目を探して確かめてください。

No.2100には、一定の金額未満の資産をその年分の必要経費に算入できる「少額減価償却資産の特例」も載っていますが、これは青色申告者を対象とする制度です。FXの所得だけがある人が使えるかどうかは、申告の種類と所得の区分で変わるため、税務署で確かめてください。

機器については、順番にも注意が必要です。家族と共用しているパソコンは、取得価額の区分を考える前に、前の節の区分の判定が入ります。先に按分、次に取得価額の区分という順です。

その年の経費になるかは、12月31日の時点で決まる

第37条第1項の括弧書きは、償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除いています。年末に申し込んだ有料サービスや、年をまたいで請求が来る費用は、この線引きで分かれます。

国税庁のNo.2210は、債務が確定しているというためには、その年の12月31日までに次の3つをすべて満たす必要があるとしています。

要件 12月31日までに満たすこと
債務の成立 その費用に係る債務が成立していること
原因となる事実 その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
金額の算定 その金額が合理的に算定できること

表の3要件は国税庁No.2210の記載で、2026年10月29日に確認しました。支払いが済んでいるかどうかではなく、債務の側で判定するのがこの要件の特徴です。12月に申し込んで翌年に届くもの、翌年の期間に対応する前払いなど、年末をまたぐ支出は3つのうちどれが満たせているかを個別に確かめることになります。

ここで差が出るのは、損失が出た年です。損失の金額は翌年以後3年間の繰越控除の出発点になるため、年末の数日の扱いが翌年以後の計算にも残ります。繰越の要件はFXの損失は3年繰り越せるに整理しています。

記録を残しておかないと、判定を示せない

ここまでの3つの関門は、どれも自分で示せることを前提にしています。施行令第96条第1号の「明らかに区分することができる場合」も、No.2210の「金額が合理的に算定できる」も、根拠となる記録がなければ満たせません。

木製のデスクに置かれた電子決済端末と、そこから印字されたレシート
金額の根拠になるのは、こうしたレシートや領収書と、支出のうちどこまでが取引のための部分かを示す記録です。写真は説明のためのイメージで、特定の支出や書類を示すものではありません。写真:Hook Tell(Pexels、Pexels License、2026年10月29日取得)。

帳簿や書類の保存については、国税庁のNo.1500に定めがあります。前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合は現金預金取引等関係書類の保存が必要で、1,000万円を超える場合は確定申告書に収支内訳書等の添付が必要とされています(2026年10月29日確認)。

ただしこの定めの対象は「業務に係る雑所得」です。FXの所得である「先物取引に係る雑所得等」がこれに当たるかどうかは、No.1500・No.1521・No.1522のいずれにも記載を確認できませんでした(2026年10月29日確認)。自分に保存の義務があるかどうかは、税務署に確認してください。義務の有無とは別に、必要経費を主張する側として記録は残しておくことになります。

申告の段で必ず要るのは計算明細書です。No.1522は、この特例の適用を受ける場合、確定申告書に「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付しなければならないとしています。経費として集計した金額は、ここに書く数字の一部になります。日々の記録の付け方は取引記録をスプレッドシートで管理するで扱っているので、経費の記録を同じ表に足しておくと年末の集計が短くなります。

判定がつかない支出は、推測で入れずに税務署へ確認してください。当サイトでは、個別の支出が必要経費に当たるかどうかの判断は示しません。この記事で示したのは、判定に使われる条文と国税庁の説明までです。

よくある質問

FXのセミナー代や書籍代は経費になりますか

品目だけでは決まりません。所得税法第37条第1項の2つの条件(総収入金額を得るため直接に要した費用か、業務について生じた費用か)に当てはまるかどうかを、その支出ごとに見ることになります。国税庁がFXについて品目別に認否を示した案内は、No.1521・No.1522・No.2210を確認した範囲では見当たりませんでした(2026年10月29日確認)。判断がつかないものは税務署に確認してください。

経費の領収書は確定申告書に添付しますか

No.1522が添付を義務づけているのは「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」です。領収書そのものの添付を求める記載は、今回確認した国税庁のページには見当たりませんでした(2026年10月29日確認)。添付しない場合でも、金額の根拠になる書類なので手元に保管しておきます。

取引用のパソコンは買った年に全額引けますか

取得価額で分かれます。10万円未満なら取得に要した金額の全額をその年分の必要経費にでき、10万円以上は一括償却資産または法定耐用年数による償却に進みます(国税庁No.2100)。さらに家族と共用している場合は、その前に施行令第96条第1号の区分の判定が入ります。

利益が出ていない年も経費を集計する意味はありますか

あります。経費を引いた結果が損失なら、その金額が翌年以後3年間の繰越控除の対象になります。No.1523は、損失が生じた年分について申告書付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出し、その後も連続して提出することを要件にしています。利益が出なかった年の集計が、翌年以後の税額に効いてくる形です。

この記事の更新・確認情報

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高(相場・条件が変わりやすい情報)
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