FXの損失の繰越控除|3年間の数え方と毎年の申告で付ける書類

FXで出た損失は、付表を付けて確定申告すれば翌年以後3年間、FXなどの利益から差し引けます。対象になる損失の条件、古い年分から差し引く順番、期限切れになる例、取引がない年も申告を続ける理由を国税庁の説明で確かめます。

FXの損失の繰越控除|3年間の数え方と毎年の申告で付ける書類(FXプロ)
本記事は情報提供を目的としたもので、投資判断を勧誘するものではありません。FXには元本割れのリスクがあります。

FXで出た損失は、その年に確定申告をしておけば、翌年以後3年間に繰り越して、その間に出たFXなどの利益から差し引けます。国税庁のタックスアンサーNo.1523が説明する「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」という制度です。

ただし、繰り越した損失を差し引ける相手は限られます。給与や株式の売却益からは差し引けず、差し引けるのは各年の「先物取引に係る雑所得等」の金額までです。そして、損失が出た年に申告書を出し、その後も毎年途切れずに申告を続けることが条件になっています。損失の年はFXの所得に税金がかからないため、申告を省いてしまい、あとで繰越ができなくなるのがいちばん起きやすい失敗です。

この記事では、どんな損失が繰越の対象になるか、3年間をどう数えるか、損失が複数の年にあるときにどの順番で差し引くか、使い切れない分がどう期限切れになるかを、仮定の数字で年ごとに追います。あわせて、損失の年・取引のない年・差し引く年のそれぞれで、確定申告書に何を付けるかを整理します。FXの税率や課税される所得の範囲はFXの税金の仕組みで扱っているので、ここでは損失が出たあとの扱いに絞ります。

繰越控除は「FXなどの利益からだけ」差し引ける制度

国税庁のNo.1523は、この制度を、先物取引に係る雑所得等の計算上生じた損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、繰り越された年分の先物取引に係る雑所得等の金額を限度として控除するもの、と説明しています。

言葉を分けて読むと、要点は3つです。

  • 繰り越せるのは、「先物取引に係る雑所得等」の計算で出た損失。店頭FXや取引所FXの損失がこれに入ります(条件は次の節で見ます)
  • 繰り越せる期間は、損失が出た年の翌年から3年間。2025年分の損失なら、2026年分・2027年分・2028年分です
  • 差し引ける金額は、差し引く年の先物取引に係る雑所得等の金額まで。その年のFXの利益を0円まで下げることはできても、給与などほかの所得を減らすことはできません

似た言葉に「損益通算」があります。損益通算は同じ年のなかで、ある所得の損失を別の所得の利益から差し引くことです。繰越控除は年をまたいで差し引く仕組みで、両者は使う場面が違います。

比べる点 損益通算 繰越控除
いつの利益から差し引くか 損失と同じ年 損失の翌年以後3年間の各年
差し引ける相手 同じ年のほかの先物取引に係る雑所得等(別口座の店頭FX、取引所FX、取引所の先物取引等) 差し引く年の先物取引に係る雑所得等の金額(その金額が限度)
給与・株式の売却益などとの差し引き できない できない
必要な手続き その年の先物取引に係る雑所得等の金額を計算する中で差し引く 損失の年から付表を付けた確定申告書を連続して提出する

表は国税庁No.1521・No.1522・No.1523の説明をまとめたもので、2026年9月21日に確認しました。順番としては、まず同じ年の先物取引に係る雑所得等どうしで損益通算をし、それでも残った損失が繰越の対象になります。

株式の売却損とFXの利益を相殺できない点は、株式投資と比べたときの大きな違いの1つです。制度の違い全体はFXと株式投資の違いでも触れています。

その損失は繰越の対象になるか

繰越控除の対象になるかどうかは、損失の金額より先に、どこで取引したかで決まります。

国税庁のNo.1521は、金融商品取引法上の「市場デリバティブ取引」または「店頭デリバティブ取引」に当たるFXの損益を、先物取引に係る雑所得等として扱うと説明しています。店頭FXについて、No.1522は、第一種金融商品取引業者または登録金融機関を相手方として行うものを対象としています。国内で登録を受けたFX会社との取引は、この条件に当たります。

これに当たらない取引について、No.1521は、一般的に総合課税の雑所得になるとしています。その場合、この記事で扱うNo.1523の繰越控除は、先物取引に係る雑所得等の損失ではないため使えません。どう扱われるかは取引の内容によるので、税務署に確認してください。

FXで損失が出たときに、取引の相手が国内の登録業者や取引所なら先物取引に係る雑所得等になり、同じ年の損益通算をしても損失が残れば翌年以後3年間繰り越せ、残らなければ繰り越す損失はないこと、登録業者などに当たらない相手との取引は一般的に総合課税の雑所得になりNo.1523の繰越控除は使えないことを示した分岐図
左の経路をたどって最後に「繰り越せる」へ着いた損失だけが、翌年以後の申告で差し引く対象になります。右の経路(登録業者などに当たらない相手との取引)は、途中で先物取引に係る雑所得等から外れます。国税庁タックスアンサーNo.1521・No.1522・No.1523の説明をもとに作図しました(2026年9月21日確認)。

図の左下の分かれ道が、見落としやすいところです。1年のうちに、ある口座で損失、別の口座で利益が出ていれば、先に同じ年のなかで差し引きます。No.1522によると、先物取引に係る雑所得等には、店頭FXのほか、通貨等先物取引や有価証券先物取引などの取引所の先物取引等も含まれます。FXで損をした年に、これらの取引で利益が出ていれば、その利益と先に通算し、残った損失だけを繰り越します。

3年間の数え方と、古い損失から差し引く順番

No.1523は、繰越控除の方法として2つの決まりを挙げています。

  1. 複数年分の損失がある場合は、最も古い年分から順に差し引く
  2. 雑損失の繰越控除も行う場合は、まず先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を行い、そのあとで雑損失の繰越控除を行う

1つ目の決まりが、損失を使い切れるかどうかに効いてきます。古い損失は期限が早く来るので、利益が出た年には期限の近い損失から先に充てる、という順番になっています。

次の数字は、仕組みを確かめるための仮定です。特定の人の取引や相場の実績ではありません。各年とも、付表を付けた確定申告書を途切れずに出している前提で、FX以外に先物取引に係る雑所得等はないものとします。

年分 その年のFXの損益 差し引いた繰越損失 差し引いた後の所得 翌年へ持ち越す損失の残り
2025年分 −600,000円 なし 所得なし(損失の年) 2025年分 600,000円
2026年分 +150,000円 2025年分から150,000円 0円 2025年分 450,000円
2027年分 −100,000円 なし 所得なし(損失の年) 2025年分 450,000円、2027年分 100,000円
2028年分 +300,000円 2025年分から300,000円 0円 2027年分 100,000円(2025年分の残り150,000円は期限切れ)
2029年分 +250,000円 2027年分から100,000円 150,000円 なし
2030年分 取引なし なし 0円 なし

年ごとに追うと、次のようになります。

  • 2026年分:利益150,000円に対して、2025年分の損失から150,000円を差し引きます。差し引ける上限はその年の利益までなので、残りの450,000円は翌年へ持ち越します
  • 2027年分:また損失が出たので、差し引く利益がありません。2025年分の残り450,000円に、2027年分の新しい損失100,000円が加わります
  • 2028年分:利益300,000円に対し、古い2025年分から先に差し引きます。2025年分の残り450,000円のうち300,000円で利益が0円になり、2027年分の損失には手が付きません。2028年分は2025年分の損失を差し引ける最後の年なので、使い切れなかった150,000円はここで期限切れになります
  • 2029年分:2027年分の損失100,000円を差し引き、残りの150,000円が課税の対象になります
2025年分の損失60万円が2026年から2028年までの青い帯の中で15万円と30万円差し引かれて残り15万円が期限切れになり、2027年分の損失10万円が2028年から2030年までの帯の中で2029年に差し引かれる様子を、年分ごとの列に並べた時系列図
上の段が2025年分の損失、下の段が2027年分の損失です。青い帯はそれぞれの損失を差し引ける3年間で、2028年分では2つの帯が重なりますが、利益30万円はすべて古い2025年分に充てられます。金額は仕組みを示すための仮定で、国税庁No.1523の説明をもとに作図しました(2026年9月21日確認)。

この例から分かるのは、繰り越した損失の合計額がそのまま将来の利益と相殺できるわけではないことです。損失の合計は700,000円ありましたが、実際に差し引けたのは550,000円でした。期限内に同じ区分の利益が出なければ、損失は差し引けないまま消えます。

損失の年・取引のない年・差し引く年に付ける書類

No.1523と国税庁の確定申告書等作成コーナーの説明では、繰越控除を受けるための手続きは3段階に分かれています。

  1. 損失が生じた年分:「申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」と「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付した確定申告書を提出する
  2. その後の年分:同じ申告書付表を添付した確定申告書を、連続して提出する
  3. 控除を受ける年分:申告書付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出する

付表の正式な名前は「令和 年分の所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」で、年分ごとに様式が用意されています。記入のしかたは、その年分の国税庁の手引きで確かめてください。

損失が出た年、控除しない年、控除を受ける年の3列について、確定申告書と申告書付表はすべての年で必要、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書は損失が出た年と控除を受ける年で添付し、その間の年について国税庁の案内が挙げるのは付表の添付だけであることを示したマトリクス
横に3つの年の種類、縦に書類を並べ、どの年に何を付けるかを示しました。真ん中の列(取引がないなど控除しない年)でも、確定申告書と付表は省けません。国税庁No.1523と確定申告書等作成コーナーの説明をもとに作図しました(2026年9月21日確認)。

図の真ん中の列が、繰越を途切れさせやすいところです。たとえば、損失を出したあとにFXを休み、翌年は取引が1回もなかったとします。国税庁のNo.1900は、給与を1か所から受けている人で確定申告が必要な例として、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人を挙げています。FXのほかに所得がない会社員なら、取引がない年はこの例に当たらず、税金の計算だけを考えれば申告書を出す場面がない年になりえます。

それでも、No.1523の要件は「その後、連続して付表を添付した確定申告書を提出すること」です。申告が必要かどうかと、繰越を続けるために申告書を出すかどうかは、別の判断になります。損失の年も同じで、FXの損失しかない年は税金が生じませんが、申告書を出さなければ繰越の出発点ができません。

木の机の上で、ペンを持った手が税金の書類に記入している様子を近くから写した写真
損失の年から差し引き終わる年まで、毎年の申告書の控えと付表を並べて保管しておくと、前の年から持ち越してきた損失の残りと、期限が切れる年を確かめやすくなります。写真は説明のためのイメージで、特定の申告書や付表を写したものではありません。写真:RDNE Stock project(Pexels、Pexels License、2026年9月21日取得)。

1年分の損益は、取引しているFX会社が発行する年間の報告書で確かめられます。複数の口座を持っているなら、すべての口座の損益を合わせてから、繰り越す損失の額を出します。日々の取引記録を残しておくと、報告書の数字と照らし合わせやすくなります。記録の付け方はトレード記録の振り返り方で扱っています。

雑損失の繰越控除と重なるとき

FXの損失とは別に、災害や盗難で受けた損害の繰越が重なる人もいます。国税庁のNo.1110によると、雑損控除の対象は、震災・風水害などの自然現象の異変による災害、火災などの人為による異常な災害、害虫などの生物による異常な災害、盗難、横領による損失に限られ、詐欺や恐喝は含まれません。その年の所得から控除しきれない分は、翌年以後3年間繰り越せます(東日本大震災や、令和5年4月1日以後に発生する特定非常災害による損失は5年間)。

2つの繰越が同じ年に重なる場合、No.1523の決まりでは、先にFXなどの損失(先物取引の差金等決済に係る損失)の繰越控除を行い、そのあとで雑損失の繰越控除を行います。FXの繰越損失は先物取引に係る雑所得等からしか差し引けないので、まずそこで使い、雑損失はそのあとに回すという順番です。

繰越を途切れさせないための確認

損失が出た年から、差し引き終わるか期限が来るまで、毎年次の点を確かめます。

  1. 取引先と区分:損失を出した口座は、国内で登録を受けたFX会社か取引所の取引か。当たらなければ、No.1523の繰越控除の対象外
  2. 同じ年の通算:ほかのFX口座や取引所の先物取引等に利益があれば、先にその年のなかで差し引いたか
  3. 損失の年の申告:付表と計算明細書を付けた確定申告書を出したか。税金が生じない年でも出す
  4. 途中の年の申告:取引がない年、利益が小さい年も、付表を付けた確定申告書を出したか
  5. 差し引く順番と期限:複数年の損失があるとき、最も古い年分から差し引いているか。その年で期限が切れる損失がいくら残っているか

5番目は、前の年の付表を見ながら確かめられます。期限が近い損失が大きく残っている場合でも、差し引くためだけに取引を増やす理由にはなりません。損失を取り戻そうとして取引量を増やすと、繰越の残高より大きな損失を新たに抱えることがあります。

よくある質問

損失が出た年に確定申告をしなかった場合、あとから繰越控除を受けられますか

No.1523が挙げる要件は、損失が生じた年分について付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出し、その後も連続して提出することです。申告期限を過ぎてから出した申告書でこの要件を満たせるかどうかについて、国税庁のタックスアンサーNo.1521・No.1522・No.1523には個別の記載を確認できませんでした(2026年9月21日確認)。心当たりがある場合は、早めに税務署に相談してください。

繰り越したFXの損失を、給与や株式の売却益から差し引けますか

差し引けません。No.1523の繰越控除は、繰り越した年分の先物取引に係る雑所得等の金額を限度とする制度です。同じ年の損益通算でも、No.1521・No.1522は先物取引に係る雑所得等以外の所得との通算はできないとしています。

途中の年にFXを休んでいた場合も、申告は必要ですか

繰越を続けるなら必要です。No.1523は、損失が生じた年のあとも連続して付表を添付した確定申告書を提出することを要件にしています。取引がなく税金が生じない年でも、付表を付けた申告書を出さないと、その後の年に繰り越した損失を差し引けなくなります。

3年間は、損失が出た年から数えるのですか

損失が出た年の翌年から数えます。No.1523の表現は「翌年以後3年間」です。2025年分の損失なら、差し引けるのは2026年分・2027年分・2028年分で、2029年分の利益からは差し引けません。

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