FXの決済順序とは?建玉を指定しない決済で、どの建玉が消えるかの決め方
建玉を指定しない決済注文は、どの建玉を対象にするかが口座の設定で決まります。約定日時の古い順・新しい順・評価益の大きい順・評価損の大きい順という4つの選択肢と初期設定を各社の公表記載で確かめ、順序で確定損益が変わることを計算で示します。
同じ通貨ペアで建玉を2つ以上持っている状態で決済注文を出すと、どの建玉が対象になるかは、注文の出し方と口座の設定で決まります。建玉一覧から1つ選んで出す決済なら、消えるのはその建玉だけです。いっぽう一括決済や全決済、スピード注文のように対象を選ばずに出す決済では、口座側の規則が自動的に対象を選びます。この規則が「決済順序」です。
決済順序は、相場をどう読むかとは関係のない場所にあります。それでも、同じ相場で同じ操作をしたときに、確定する損益と手元に残る建玉が変わります。しかも規則の初期設定は会社ごとに違い、設定画面を開かないまま使っている人には見えません。
この記事では、まず決済注文が2通りに分かれることを各社の記載で確かめ、次に選べる順序を7つの資料から並べます。そのうえで、同じ4建玉から1万通貨だけ決済したときに結果がどう分かれるかを仮定の計算で示し、最後にFIFO設定が両建てと一括決済の上限につながっていることを確認します。入る価格や待ち方の決め方はFXのブレイクアウトとは?だましを前提に注文と待ち方を決める手順で扱っているため、ここでは決済が当たる先だけを扱います。
対象を指定するかどうかで、決まり方が変わります
決済注文は、対象を指定するものと指定しないものに分かれます。この分かれ目が最初の分岐です。
岡三オンラインは、取引所FX(くりっく365)の注文方法・決済方法のページで「オートネッティング(先入先出法)と、建玉指定決済のいずれかを選択してお取引できます」と書いています。建玉指定決済は「建玉を保有した状態で反対売買を行う場合、建玉を指定して決済する方法です」、オートネッティングは「建玉のうち先に成立していた建玉から順次自動的に決済する方法」と説明されています。そして「初期設定は、建玉指定決済となっています」と続きます。
外為どっとコムは、取引ツールの共通設定のページに「反対売買時の決済順序」という項目を置いています。この設定は「対象ポジションを指定しない決済注文において、決済対象とするポジションの優先順位を」選ぶものだと書かれています。読み替えると、建玉を指定しているあいだはこの設定は働きません。働くのは指定しなかったときだけです。
GMOクリック証券はFXネオのスピード注文について、「決済順序を下記の通りご選択いただけます」として、LIFOを「成立日時の新しいポジションから決済対象とする決済方式」、FIFOを「成立日時の古いポジションから決済対象とする決済方式」と説明しています。新規注文と決済注文がそれぞれ何をする操作なのかはFXの新規注文と決済注文の違いで確認できます。
選べる順序は、多い会社でも4つです
対象を指定しない決済で何を選べるのか、各社の記載のまま並べます。
| 会社・サービス | 公表されている記載 | 初期設定として書かれていること |
|---|---|---|
| 外為どっとコム(取引ツールの共通設定) | 「反対売買時の決済順序」として、約定日時の古い順/約定日時の新しい順/評価益の大きい順/評価損の大きい順 | 約定日時の古い順 |
| GMOあおぞらネット銀行(ハイスピード注文) | 「FIFO/LIFO/利益順/損失順の中から設定可能です。」 | 「初期設定は、FIFO(成立日時の古いポジションから決済)に設定されています。」 |
| GMOクリック証券(FXネオ スピード注文) | LIFOは「成立日時の新しいポジションから決済対象とする決済方式」、FIFOは「成立日時の古いポジションから決済対象とする決済方式」 | 記載を確認できませんでした |
| 岡三オンライン(くりっく365) | 「オートネッティング(先入先出法)と、建玉指定決済のいずれかを選択してお取引できます」 | 「初期設定は、建玉指定決済となっています」 |
| 松井証券(MATSUI FX) | 「FIFO(先入先出)設定」。反対ポジションを保有している場合は「約定日時が古いポジションから順に決済される注文」 | 記載を確認できませんでした |
| DMM FX(スマホアプリのFIFO注文) | 「同一通貨ペアで反対ポジションを保有されている場合は、約定日時が古いポジションから順に決済されます。」 | 記載を確認できませんでした |
| 三菱UFJ eスマート証券 FX | 取引ルールの「取引種類」の欄に「新規、決済、FIFO」と並んでいる | 記載を確認できませんでした |
いずれも2026年10月5日に各ページで確認した記載です。7社は当サイトが公式ページで記載を確認できた会社で、業界の全社ではありません。並び順は本文で触れる順で、条件の優劣を示すものではありません。
GMOあおぞらネット銀行は、4つの順序の中身も書き出しています。「FIFO(First In,First Out):成立日時が最も古いポジションから順に決済」「LIFO(Last In,First Out):成立日時が最も新しいポジションから順に決済」「利益順:取引単位あたりの評価益が大きいポジションから順に決済」「損失順:取引単位あたりの評価損が大きいポジションから順に決済」です。名前は会社ごとに違いますが、並べる基準は「成立した時刻」と「評価損益の大きさ」の2つしかありません。前者は相場と無関係に決まり、後者は相場が動くたびに順番が入れ替わります。
目を留めたいのは初期設定の列です。岡三オンラインは建玉指定決済、外為どっとコムは約定日時の古い順、GMOあおぞらネット銀行はFIFOと書かれていて、「自分で選ぶ」から始まる口座と、「古い順」から始まる口座に分かれます。選べる数も、2つの会社と4つの会社があります。残りの4社は、初期設定をこのページから読み取れませんでした。
順序が違うと、確定する損益が変わります
ここからは仕組みを理解するための仮定の計算です。実際の相場や、特定の会社の条件を示すものではありません。
| 建玉 | 成立の順番 | 建値 | 評価損益(決済レート148.000円) |
|---|---|---|---|
| 1番目の建玉 | 最初 | 149.000円 | −10,000円 |
| 2番目の建玉 | 2番目 | 150.000円 | −20,000円 |
| 3番目の建玉 | 3番目 | 147.000円 | +10,000円 |
| 4番目の建玉 | 最後 | 148.300円 | −3,000円 |
米ドル/円の買い建玉を1万通貨ずつ4つ、表の建値で持っているとします。決済に使うレートを148.000円とし、スプレッド・スワップ・手数料は含めません。評価損益は値幅に1万通貨を掛けた金額です。4つを合わせると評価損益は−23,000円になります。
この状態で、対象を指定せずに1万通貨だけ決済したとします。消えるのは4つのうち1つです。
結果は4通りに分かれます。約定日時の古い順なら1番目が決済されて確定する損益は−10,000円、新しい順なら4番目で−3,000円、評価益の大きい順なら3番目で+10,000円、評価損の大きい順なら2番目で−20,000円です。同じ「1万通貨を決済する」という操作で、確定する金額が30,000円ぶん違います。
ただし、合計は動きません。確定した損益と残りの評価損益を足すと、どの順序でも−23,000円です。決済順序が動かすのは合計ではなく、いま確定させる金額と、手元に残した建玉の建値です。残る3建玉の平均建値は148.100円から149.100円まで動き、そのぶん損益分岐点の位置がずれます。口座に出る金額を自分で再現する手順はFXの決済損益の計算式は?口座の表示と自分の計算がずれる6つの原因にまとめてあります。
もう1つ残るのが記録です。確定した損益は履歴に残りますが、「なぜその建玉が選ばれたのか」は残りません。設定を知らずに決済していると、あとから取引を振り返っても、自分の判断と口座の規則のどちらが結果を決めたのか区別できなくなります。
FIFOの設定は、両建てになるかどうかの分かれ目でもあります
順序の設定とは別に、「FIFO設定」「FIFO注文」という項目を置いている会社があります。こちらは順序を選ぶ設定ではなく、反対方向の注文を決済として扱うかどうかの設定です。
松井証券はFX取引ルールのページで、FIFO(先入先出)設定を「新規/決済の区別のない注文です。反対ポジションを保有していない場合は、新規注文となり、反対ポジションを保有している場合は約定日時が古いポジションから順に決済される注文です。」と説明しています。DMM FXのスマホアプリのクイックガイドも同じ考え方で、「FIFO注文は新規/決済の区別がない注文で、ポジションを保有していない場合や同一ポジションを保有されている場合はポジションが追加されます。」とし、「同一通貨ペアで反対ポジションを保有されている場合は、約定日時が古いポジションから順に決済されます。」と書いています。
区別がないということは、設定が働かないときに同じ売り注文が新規注文になるということです。買い建玉を持った状態で売りの新規注文が通れば、同一通貨ペアの買いと売りを同時に持つ状態、つまり両建てになります。操作そのものはFXで両建てする操作方法|同じ通貨ペアを売買するときの注意点にまとめてあります。
両建てになったあとの必要証拠金の扱いは、公表内容が会社で分かれます。楽天証券は楽天FXの取引ルールで「両建取引時の必要証拠金は、同一通貨ペアにおいてMAX方式(売、買ポジションの大きい方の証拠金が発生)で計算します。」と書いています。DMM FXはサービス概要で両建を「可能」としたうえで、「当社では買いと売りそれぞれの建玉に証拠金が必要となる、スプレッドコストが2重にかかる等、経済合理性を欠くため推奨いたしません。」と記載しています。同じ「両建て」という言葉でも、必要証拠金の計算方法として書かれている内容が違います。口座全体で合計を数える手順はFXで建玉を複数持つときの合計リスク|想定損失と必要証拠金の2つの上限にあります。
DMM FXは確認画面についても注意書きを置いていて、「スピード注文は確認画面が表示されません。」と明記し、注文をタップするとすぐに発注されると続けています。順序の設定を知らないことと、確認画面が出ないことが重なると、意図と違う建玉が消えたことに後から気づくことになります。
まとめて閉じる操作にも、一度に通る量の上限があります
建玉の数が増えると、まとめて閉じる操作の側にも条件が出てきます。
GMOクリック証券は「FXネオ取引で、建玉を一度にすべて決済することは可能ですか?」という質問に「同一の通貨ペアであれば可能です。」と答えています。PC会員ページとスマホアプリは同一通貨ペアの範囲で、「はっちゅう君FXプラスからは複数の通貨ペアでも、建玉の一括決済が可能です。(成行注文のみ)」と書かれています。使っているツールによって、一度に閉じられる範囲が変わります。
外為どっとコムは、同じ共通設定のページに「一括決済・全決済の部分約定」という項目を置いています。「本設定を有効にすると、全決済及び一括決済注文において、一度に発注できるLot数上限(5,000Lot)を上回る決済注文を発注した場合であっても、上限まで部分決済を発注できます。」という記載で、初期設定は無効です。隣の「反対売買時のオプション」は、「対象ポジションを指定しない決済注文において、決済対象とするポジションに未約定の決済注文が存在する場合、決済の優先順位を後回しにすることができます。」という設定で、こちらも初期設定は無効と書かれています。決済注文を置いたままの建玉を後回しにするかどうかも、順序の一部として設定できます。
DMM FXはサービス概要で「建玉件数※の上限は「未約定かつ有効な新規指値・逆指値注文」の件数と合算して最大1,000件です。建玉件数はLot数ではなく、約定件数および新規注文件数を指します。」と書いています。まだ約定していない注文が同じ枠を使う点は、建玉の数だけを見ていると見落ちます。一部だけ閉じる操作はFXの部分決済とは?ポジションの一部だけ決済する方法、まとめて閉じる操作はFXの全決済とは?一括決済の使い方と注意点で扱っています。
どの条件も、手法の解説ページではなく取引ルールのページに書かれています。
注文の前に確かめるのは、設定の場所と初期値です
ここまでに出てきたものを、注文を出す前に確かめる形へ落とします。見る先は3か所です。
1つめは、建玉を指定して決済注文を出せるかどうかです。指定できる口座なら、順序の設定に頼らずに済みます。2つめは、指定しなかったときの順序と、その初期値です。外為どっとコムのように4つから選べる口座もあれば、GMOクリック証券のスピード注文のように2つから選ぶ形もあります。3つめは、FIFO設定がある口座ならその状態です。働いていない状態で反対方向の注文を出せば、建玉は減らずに増えます。
今回確認したどのページにも、「どの順序を選ぶべきか」は書かれていませんでした。書かれているのは選択肢と、会社によっては初期設定だけです。推奨を公表している会社を確認できなかったため、この記事でも目安の順序は書きません。決めるのは自分で、決めた内容を控えておくところまでが手順になります。
決済順序は、相場の読みとは別の場所にある決めごとです。それでも、含み損を抱えた建玉を持ち続ける手法では、残る建玉がどれかで耐えられる幅も変わります。FXの逆張りとは?順張りとの違いと、含み損の上限を先に決める手順で扱った強制決済の水準は、残った建玉の建値を前提に判定されます。建玉が2つ以上になった時点で、一度だけ設定画面を開いて、順序と初期値を控えてください。それ以降、同じ問いを毎回考える必要はなくなります。
この記事の更新・確認情報
- 情報の基準日
- 編集部による確認日
- 情報の変動性
- 中(サービス・制度の情報)
- 次回確認予定
- 一次情報の件数
- 10件(本文末の参考資料に記載)
金融庁は、外国為替証拠金取引について相場変動、金利変動、流動性、信用、システムなど複数のリスクを挙げています。 ロスカットは損失の拡大を抑える仕組みですが、急変時に証拠金を上回る損失が生じる可能性まで消すものではありません。 「ロスカットがあるから安全」と考えず、取引数量と損切りを先に決めてください。 出典:金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」
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