海外FXの損失は繰り越せる?国内FXと通算できるかは業者の登録で決まる

海外のFX業者で出した損失を翌年以後へ繰り越せるかは、拠点がどこの国かではなく、取引の相手方が第一種金融商品取引業者か登録金融機関かで決まります。区分が分かれたあとの通算・繰越・税率の違いと、金融庁の一覧での確かめ方を国税庁の説明で整理します。

本記事は情報提供を目的としたもので、投資判断を勧誘するものではありません。FXには元本割れのリスクがあります。

海外に拠点があるFX業者で損失が出たとき、その損失を翌年以後へ繰り越せるかどうかは、業者がどこの国にあるかでは決まりません。国税庁の区分では、取引の相手方が金融商品取引法上の第一種金融商品取引業者または登録金融機関に当たるかどうかが分かれ目になります。

この条件に当たらない相手との取引は、国税庁のタックスアンサーNo.1521によると、一般的に総合課税の雑所得になります。すると、繰越控除を定めたNo.1523の対象から外れ、同じ年に国内のFX口座で出た利益から差し引くこともできません。損失の金額や取引の回数ではなく、区分がどちらに入るかで先の扱いがまるごと変わります。

この記事では、繰越と通算の入り口になっている区分の条件を確かめ、区分が分かれたあとに損失の行き先がどう変わるかを並べます。そのうえで、自分の取引がどちらに当たるかを金融庁の2つの公表一覧で確かめる手順を示します。繰越控除そのものの数え方と毎年の書類はFXの損失の繰越控除で扱っているので、ここでは「その手前の判定」に絞ります。

繰越も通算も、入り口は「先物取引に係る雑所得等」

国税庁のNo.1523は、繰越控除の対象を先物取引に係る雑所得等の計算上生じた損失としています。No.1521も、FXで差損が出た場合について、ほかの「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益通算は可能だが、それ以外の所得の金額との損益通算はできないとしています。

つまり、この2つの制度はどちらも「先物取引に係る雑所得等」という区分の内側で働きます。区分の外にある損失は、金額が大きくても、同じFXという名前の取引であっても、内側の利益とは関わりを持ちません。

では、その区分には何が入るのか。No.1522は、対象になる取引として次の3つを挙げています。

  • 商品先物取引等(商品取引所で行う差金等決済に当たるもの)
  • 金融商品先物取引等(市場デリバティブ取引と店頭デリバティブ取引のうち、通貨・金利などを対象とするもの)
  • カバードワラントの権利行使・放棄・譲渡

どれも共通して、差金等決済で生じた損益を対象にしています。差金等決済とは、現物の受け渡しをせず、反対売買などで差額だけを受け払いして取引を終える決済のことです。FXでポジションを決済して口座の残高が動くのは、この差金等決済に当たります。

FXは上の2つ目に入ります。No.1521は、金融商品取引法上の「市場デリバティブ取引」または「店頭デリバティブ取引(第一種金融商品取引業者または登録金融機関を相手方とする取引に限ります)」に当たるFXについて、差金等決済で生じた損益を先物取引に係る雑所得等として扱うと説明しています。

括弧の中が、この記事の主題です。取引所に上場している取引には取引所という場の規律がありますが、店頭のFXは会社と直接向き合う取引なので、相手方が誰かが条件として置かれています。そして同じNo.1521は、これらに当たらない取引について、一般的に総合課税の雑所得になるとしています。

区分が変わると、損失の行き先が変わる

区分が分かれたあと、損失の扱いは4つの点で変わります。

左の列に第一種金融商品取引業者・登録金融機関を相手方とする取引で生じた損失、右の列にその条件に当たらない相手との取引で生じた損失を置き、課税の方式、同じ年に通算できる相手、翌年以後への繰越、損失が出た年の確定申告の4つの軸で扱いを並べた左右比較の図
左の列は申告分離課税で、同じ区分どうしの通算と翌年以後3年間の繰越が使えます。右の列は総合課税の雑所得で、ほかの所得との損益通算ができず、No.1523の繰越控除も使えません。国税庁タックスアンサーNo.1500・No.1521・No.1522・No.1523・No.2250・No.2260の説明をもとに作図しました(2026年10月29日確認)。

右の列の根拠は、損益通算の仕組みそのものにあります。国税庁のNo.2250は、損益通算ができる所得として不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つを挙げ、配当所得、給与所得、一時所得および雑所得の計算上生じた損失の金額は、ほかの各種所得の金額から控除できないとしています。No.1500も、雑所得の計算上生じた損失の金額は他の所得の金額と損益通算できないと書いています。

総合課税の雑所得になった損失は、この一般的な決まりに戻ります。そして繰越控除の側では、No.1523が対象を先物取引に係る雑所得等の損失に限っているため、やはり出番がありません。同じ年の中でも、年をまたいでも、差し引く相手が見当たらない状態になります。

ここで注意したいのは、「損をしたのに税金だけ取られる」という話ではないことです。損失そのものに税金はかかりません。起きるのは、ほかの利益を減らす材料として使えないということです。国内の口座で40万円の利益、区分の違う口座で40万円の損失が出た年でも、申告では40万円の利益だけを計算の対象にします。

年をまたぐと、差はさらに見えやすくなります。たとえば2026年に50万円の損失、2027年に50万円の利益が出たとします。どちらも先物取引に係る雑所得等なら、2026年分の確定申告で損失を繰り越しておくことで、2027年の利益から差し引けます(No.1523)。ところが2026年の損失が総合課税の雑所得で、2027年の利益が先物取引に係る雑所得等だった場合、差し引く手段がありません。2年を通せば行って来いでも、税金の計算には2027年の50万円だけが残ります。金額は仕組みを示すための仮定で、特定の取引の記録ではありません。

利益が出た年の税率も、区分で変わる

区分の違いは、損失の年だけの話ではありません。同じ取引で利益が出た年には、適用される税率が変わります。

No.1521によると、先物取引に係る雑所得等は所得税15パーセント(ほかに地方税5パーセント)の税率で、ほかの所得と分けて税額を計算します。これに対して総合課税の雑所得は、給与などほかの所得と合算した課税所得に、次の表の税率を当てはめます。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,999円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

表は国税庁No.2260の所得税の速算表です(令和8年4月1日現在法令等、2026年10月29日確認)。地方税(住民税)と、所得税に上乗せされる特別所得税は、この表とは別に計算します。

表から読み取れるのは、総合課税では、FX以外の所得が多い人ほど高い率が当てはまることです。所得税15パーセントで固定される申告分離課税とは、増え方の形が違います。先物取引に係る雑所得等の税率の内訳と、2027年分から変わる上乗せ分についてはFXの税金の仕組みにまとめています。

なお、総合課税の雑所得に当たる所得の計算や、確定申告が必要かどうかの判定は、ほかの所得の状況によって変わります。自分の取引が区分の外になると分かった時点で、金額の計算に入る前に税務署へ確認するのが確実です。

自分の取引がどちらかを確かめる

「海外のFX」という言い方は、法令の区分の言葉ではありません。日本で登録を受けた会社が外国資本であることもあれば、日本語の画面で案内していても登録を受けていない相手もいます。確かめる対象は、サービスの見た目ではなく、口座の相手方になる会社が一覧に載っているかです。

取引の相手方になる会社の商号、金融庁の業者一覧に載っているか、無登録業者の公表一覧にないか、口座ごとの年間損益を分けて持つことの4項目について、確かめる場所とその結果で変わることを左右に並べたチェックリストの図
番号の順に確かめます。2番目で名前が見つかれば先物取引に係る雑所得等、3番目の一覧に名前があれば第一種金融商品取引業者・登録金融機関との取引に当たりません。金融庁の2つの公表一覧と国税庁タックスアンサーNo.1521をもとに作図しました(2026年10月29日確認)。

金融庁の免許・許可・登録等を受けている業者一覧には、金融商品取引業者の一覧がPDFとExcelで置かれています。2026年10月29日に見たときの表示は「令和8年9月30日現在」でした。登録を受けている会社は、ここに商号と登録番号が載ります。

もう一方の無登録で金融商品取引業を行う者の名称等については、無登録で金融商品取引業を行っているとして金融庁(財務局)が警告書を出した者の名称などを載せているページです。国内の者と海外の者の一覧に分かれており、2026年10月29日に見たときは、いずれも令和8年10月23日の更新と表示されていました。

このページが対象にしているのは、平成22年1月以降に警告書が出された者です。警告書が出ているということは、無登録で金融商品取引業を行っていると当局が指摘したという意味になります。そこに名前のある相手を、第一種金融商品取引業者や登録金融機関として扱うことはできません。

机の上に広げた収支の資料と虫眼鏡、ボールペン、眼鏡を真上から写した写真
確かめるのは損益の金額より先に、口座の相手方になっている会社の商号です。商号が分かってはじめて、金融庁の一覧で探せます。写真は説明のためのイメージで、特定の業者や書類を示すものではありません。写真:Towfiqu barbhuiya(Pexels、Pexels License、2026年10月29日取得)。

どちらの一覧にも名前が見つからないこともあります。一覧は金融庁が公表している範囲のもので、「載っていないこと」がそのまま税務上の区分を決めるわけではありません。その場合は、取引の相手方が分かる書類をそろえて税務署に確認してください。推測で先物取引に係る雑所得等として申告すると、あとで区分ごと組み替えることになります。

区分をまたいで、損益を1つにまとめない

複数の口座を使っている人がつまずきやすいのが、年間の損益を足し合わせるところです。先物取引に係る雑所得等は、その区分に入る口座どうしだけで合算します。

次の表は、仕組みを確かめるための仮定です。特定の会社や実際の取引の記録ではありません。

口座 相手方の区分 2026年の損益(仮定) 申告での扱い
A社の店頭FX 第一種金融商品取引業者 −300,000円 先物取引に係る雑所得等として合算する
B社の店頭FX 第一種金融商品取引業者 +120,000円 同じ区分として合算する
取引所FX 市場デリバティブ取引 +40,000円 同じ区分として合算する
C社(一覧に見当たらない) 確認できなかった −200,000円 この区分には合算しない

上の3つを合わせると、先物取引に係る雑所得等の金額は140,000円の損失になります。繰越控除の対象になりうるのはこの140,000円で、4行目の200,000円は加えません。合算してしまうと、繰り越せる金額を実際より大きく書くことになります。

合算の取り違えが起きる原因の多くは、年間の損益を口座ごとではなく、入出金の合計や自分の記録の総額だけで出していることです。区分ごとに分けるには、会社ごと・年分ごとの損益報告書を手元に並べるところから始めます。報告書の名前と発行の時期は会社によって違うため、口座の案内で確かめてください。

この整理ができていれば、確定申告の手順そのものは区分の内側だけの話になります。計算明細書と付表の書き方、提出と納付の期限はFXの確定申告のやり方で扱っています。区分の外になった損益の申告が必要かどうかは、ほかの所得と合わせた判定になるため、同じ手順では決められません。

口座ごとの年間の損益報告書は、年分をまたいで保存しておきます。区分の判定をあとから見直すときに、どの会社のどの口座の数字かが分からないと、合算し直せなくなるためです。

よくある質問

海外に拠点があるFX業者なら、必ず総合課税の雑所得になりますか

拠点の国では決まりません。No.1521が条件にしているのは、金融商品取引法上の市場デリバティブ取引に当たること、または店頭デリバティブ取引のうち第一種金融商品取引業者・登録金融機関を相手方とする取引であることです。外国の資本でも日本で登録を受けている会社はあるため、金融庁の業者一覧で商号を確かめてください。どちらの一覧でも判断が付かないときは、税務署に確認します。

国内のFX口座の利益と、登録のない相手との取引の損失を合わせて申告できますか

できません。No.1521は、FXの差損について、ほかの先物取引に係る雑所得等の金額とは損益通算できるが、それ以外の所得の金額とは損益通算できないとしています。区分が違う損益は、同じ「FX」という名前でも合算しません。

総合課税の雑所得になった損失は、翌年以後に繰り越せますか

この記事で確認した国税庁の資料の範囲では、繰り越せる根拠を確認できませんでした。No.1523の繰越控除は先物取引に係る雑所得等の計算上生じた損失を対象にしており、No.2250は雑所得の計算上生じた損失をほかの各種所得の金額から控除できないとしています(いずれも2026年10月29日確認)。個別の事情については税務署に相談してください。

暗号資産の取引で出た損失と、国内FXの利益を相殺できますか

No.1521のとおり、国内FXの利益から差し引けるのはほかの先物取引に係る雑所得等の損失に限られるため、別の区分の損失は差し引けません。暗号資産そのものの課税関係について、国税庁のNo.1524は別の資料を見るよう案内しており、この記事では内容を確認していません。

参考資料

この記事の更新・確認情報

情報の基準日
編集部による確認日
情報の変動性
高(相場・条件が変わりやすい情報)
次回確認予定
一次情報の件数
9件(本文末の参考資料に記載)

金融庁は、外国為替証拠金取引について相場変動、金利変動、流動性、信用、システムなど複数のリスクを挙げています。 ロスカットは損失の拡大を抑える仕組みですが、急変時に証拠金を上回る損失が生じる可能性まで消すものではありません。 「ロスカットがあるから安全」と考えず、取引数量と損切りを先に決めてください。 出典:金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」

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