テクニカル分析とは?過去の値動きから判断する方法とFXでの前提
テクニカル分析は過去の値動きから今後を判断する方法です。用語集の定義、入力に入るものと入らないもの、店頭FXでは元データが会社ごとに違うこと、出来高の公表状況、計算を公表データで確かめる手順を整理します。
テクニカル分析とは、過去の値動きから今後の動きを判断する方法です。日本証券業協会が運営する「投資の時間」の用語集は「テクニカル」を「今後の株価の動きを、過去の株価の動きから判断すること。」と定義しています。対になる言葉が「ファンダメンタルズ」で、こちらは「今後の株価の動きを、会社の業績などに基づいて判断すること。」と書かれています。材料が過去の価格かそれ以外か、という線で分かれています。
先に2つ断っておきます。1つは、この定義が株価について書かれたものだということです。同協会は証券の団体なので、用語集の記述は株式が前提になっています。もう1つはFX特有の事情で、店頭FXには誰もが参照できる共通の価格がありません。元になる値動きが会社ごとに違うため、同じ指標を同じ設定で表示しても、値が一致しない場面が出てきます。
この記事では、定義のうえで何が入力に入り何が入らないのかを確かめ、FXに当てはめたときに前提が変わる2点(価格の出どころ、出来高の公表状況)を公的な資料で押さえます。そのうえで、自分の指標の値が他人と合わないときの切り分け方と、公表データで計算を確かめる手順までを扱います。どの手法が当たるか、どの指標の的中率が高いかという数値は扱いません。2026年10月22日に確認した公的な資料に、そうした数値は示されていませんでした。
用語集の定義は、材料の違いで2つに分けている
まず、2つの言葉の定義を転記します。要約や言い換えをせず、そのままの文を並べます。
| 用語 | 「投資の時間」用語集の定義 | 材料になるもの |
|---|---|---|
| テクニカル | 「今後の株価の動きを、過去の株価の動きから判断すること。」 | 過去の価格そのもの |
| ファンダメンタルズ | 「今後の株価の動きを、会社の業績などに基づいて判断すること。」 | 業績など価格以外の情報 |
定義を並べると、違いは判断に使う材料だけだと分かります。どちらが正しいという書き方にはなっていません。また、どちらの定義にも「当たる」「予測できる」という言葉はありません。あるのは「判断すること」までです。
FXへ当てはめるときは、読み替えが1か所必要になります。株価のところを為替レートに置き換えるのは素直ですが、「会社の業績など」に相当するものは、通貨には存在しません。為替で同じ位置に来るのは、金利や金融政策、経済指標などです。用語そのものが為替向けに別に定義されているわけではないので、どこを読み替えたのかを自分で意識しておくと、話がずれにくくなります。
入力は、過去の値動きと時刻だけ
テクニカル分析と呼ばれるものは、形も名前もさまざまですが、入力は共通しています。ローソク足の四本値、つまり始値・高値・安値・終値と、それぞれの足がいつのものかという時刻です。移動平均線は終値を平均し、RSIは値動きのうち上昇分が占める割合を出し、水平線は価格の水準を指定します。計算の中身は違っても、入れている材料は同じです。
この図で押さえておきたいのは右端です。出力は判断の材料であって、将来の値動きそのものではありません。入力が過去の価格だけなので、そこから出てくるのも過去の価格をまとめ直したものです。値動きの形に名前を付けた分類も、同じ材料から作られています。
反対に、下の帯にあるものは入力に入りません。金利や経済指標を見ながら取引しても構いませんが、それは定義のうえでは別の材料です。指標を複数組み合わせるときも、足しているのは同じ材料から作った別の計算結果です。材料が増えているわけではない、という点は押さえておいてください。
店頭FXでは、元になる値動きが会社ごとに違う
ここがFX特有の前提です。入力が過去の価格だとして、その価格はどこの価格なのか、という問いが残ります。
金融先物取引業協会の「学ぼう!FX」は、店頭FXの配信レートについて「店頭FX取引では、FX業者のビジネスモデルにより価格生成の仕組みは異なります。」と説明し、理由として「カバー先(生成元となるレートを取得する先)や、価格生成ロジックも異なるため、配信されるレートは異なります。」と書いています。同協会は、店頭FXの位置づけについても「取引所を介さずに当事者間の合意で成立する取引を相対取引といいます。店頭FXも顧客とFX業者の相対取引です。」としています。取引所に注文が集まって1つの値がつく仕組みではない、ということです。
つまり、同じ通貨ペアの同じ時刻でも、四本値は会社ごとにずれます。するとその四本値から計算する指標の値も、会社ごとにずれます。平均の値、比率の値、線を引く水準のすべてが影響を受けます。会社ごとに価格が違う理由と、個人が見るレートがインターバンク市場のレートと別物であることはインターバンク市場とはで整理しています。
例外は取引所FXです。同協会は「現在国内で行われている取引所FXは、東京金融取引所の上場商品「くりっく365」のみです。」としています。こちらは取引所が価格を出すため、参照するデータが1つに定まります。両者で何が共通になり何が会社ごとに残るのかは店頭FXと取引所FXの比較にまとめてあります。
出来高を使う指標には、1本ごとの元データがない
株式のチャートでよく出てくる出来高は、FXでは扱いが変わります。公表されているものの単位が、ローソク足1本とそろっていないためです。
金融先物取引業協会は「店頭FX月次速報」として、取引状況・主要通貨建玉・通貨ペア別取引金額・預託額情報を公表しています。2026年10月22日に確認した時点で、最新は2026年9月分(更新日2026年10月15日)でした。会員数は「店頭外国為替証拠金取引取扱会員数:46社(2026年9月30日現在)」と記載されています。通貨ペアごとの取引金額も出ていますが、いずれも月単位・業界合計です。
一方、東京金融取引所はくりっく365のヒストリカルデータベースで「前営業日までの取引数量、4本値、建玉数量スワップポイントなどが日単位でご覧いただけます」と案内しています。こちらは日単位です。
| 指標が必要とするデータ | 店頭FX | 取引所FX(くりっく365) |
|---|---|---|
| 1本ごとの四本値 | 自分が使う会社の配信レートに基づく値のみ。共通の公表値はありません | 日単位の四本値が公表されています |
| 1本ごとの出来高 | 共通の公表値はありません(業界合計を月単位で公表) | 日単位の取引数量が公表されています |
| 建玉の残高 | 業界合計を月単位で公表 | 日単位の建玉数量が公表されています |
この表の2行目が、出来高を使う指標を扱うときの分かれ目です。店頭FXのツールに出来高らしい表示がある場合、それは業界全体の売買量ではなく、その会社の中で数えた何かです。何を数えた値なのかは、ツール側の説明を見ないと分かりません。公表値と同じものだと考えて読むと、実際とずれます。
値が人と一致しないときは、3段階で切り分ける
ここまでの前提を踏まえると、「同じ指標なのに値が違う」という場面の原因は、おおむね3つに絞れます。上から順に確かめるのが早道です。
1つ目は元データです。使っている会社が違えば、配信レートが違います。2つ目は1本の区切りで、日足の区切り時刻は取引時間の定め方で決まり、サマータイムの切り替えで動きます。足種ごとの対応はFXの時間足とはで扱っています。3つ目が設定です。同じ名前の指標でも、期間の既定値や計算方法はツールごとに違います。
この3つをそろえずに数値だけを比べると、どちらが間違っているのかを決められません。逆に、3つを書き出して突き合わせれば、どこで分かれたのかはすぐに分かります。チャートの初期設定の段階で設定値を控えておくと、この照合が後から楽になります。
公表データで確かめられるのは、計算が合っているかまで
「計算が合っているか」は、自分で確かめられます。東京金融取引所のヒストリカルデータベースは「最新の相場表は翌営業日の午前中に公開されます」とされ、対象期間は「くりっく365の上場日2005年7月から取得最大期間1年分をまとめて表示する事が可能です」と案内されています。「またCSVダウンロードを選択すればテキストファイルとしてダウンロードする事ができ、表計算ソフトなどに活用して頂く事が可能です」とも書かれています。
この手順で分かるのは、自分が思っている計算と、ツールが出している値が同じかどうかです。合わなければ、期間の取り方か計算方法か元データのどれかが違います。合っていれば、少なくとも計算の前提は固まります。
分からないことも、はっきりしています。この工程では、その判断が当たるかどうかは確かめられません。確かめているのは過去のデータに対する計算の一致だけです。また、ここでそろう四本値は取引所FXのものです。自分の口座の値を確かめたいときは、その会社が出している過去データとツールの設定を使うことになります。
「不確実な事項」として扱われている
最後に、この言葉を使うときの線引きを確認しておきます。過去の値動きから出した判断は、確実な事項としては扱われていません。
金融先物取引業協会は、FX取引に係る行為規制として、勧誘にあたって禁止される行為を挙げています。そのうちの1つが「不確実な事項について断定的判断を提供し又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げる行為」です。ほかに「虚偽のことを告げる又は必要な情報を告げない等の行為」も挙げられています。相場の先行きは、制度のうえで「不確実な事項」に位置づけられています。
同協会は、個人投資家向けのページでも「取引の仕組みを理解し、取引に伴うリスクについて十分研究した上で、自己の責任において行うことが肝要です。」としています。これは分析の手法を選ぶ前の話です。テクニカル分析を使うかどうかにかかわらず、判断の結果を引き受けるのは自分だという前提は変わりません。
自分の記録を書くときも、同じ言葉づかいが役に立ちます。「この形が出たから上がる」ではなく、「この形が出たので、この条件で入り、この条件で降りる」と書けば、後から前提を確かめられます。前者は確かめようがありません。
この言葉を使う前に確かめる3つのこと
- 材料は何か。過去の価格だけを使っているのか、金利や経済指標も見ているのかを分けて書きます。混ぜたまま「テクニカル分析で決めた」と記録すると、後から再現できません
- どこの価格か。店頭FXでは、自分の会社の配信レートが自分の四本値です。他人の画面と一致する保証はありません
- 設定値はいくつか。期間・計算方法・基準線を控えます。これが無いと、同じ指標の話をしているつもりで別の値を比べることになります
この3つを先に決めておけば、「テクニカル分析」という一語で済ませていた部分が、確かめられる形の記録に変わります。用語の意味よりも、この3つのほうが後から効きます。
参考資料
- 日本証券業協会「投資の時間」金融・証券用語集「テクニカル」(2026年10月22日確認)
- 日本証券業協会「投資の時間」金融・証券用語集「ファンダメンタルズ」(2026年10月22日確認)
- 金融先物取引業協会「学ぼう!FX」店頭FXの配信レートについて(2026年10月22日確認)
- 金融先物取引業協会「学ぼう!FX」取引所取引と店頭取引について(2026年10月22日確認)
- 金融先物取引業協会「学ぼう!FX」不招請勧誘等の禁止について(2026年10月22日確認)
- 金融先物取引業協会「店頭FX月次速報」(2026年9月分・更新日2026年10月15日。2026年10月22日確認)
- 金融先物取引業協会「FX取引を行おうとする個人投資家の皆さまへ」(2026年10月22日確認)
- 東京金融取引所「取引所FX『くりっく365』の過去データ」(2026年10月22日確認)
この記事の更新・確認情報
- 情報の基準日
- 編集部による確認日
- 情報の変動性
- 中(サービス・制度の情報)
- 次回確認予定
- 一次情報の件数
- 9件(本文末の参考資料に記載)
金融庁は、外国為替証拠金取引について相場変動、金利変動、流動性、信用、システムなど複数のリスクを挙げています。 ロスカットは損失の拡大を抑える仕組みですが、急変時に証拠金を上回る損失が生じる可能性まで消すものではありません。 「ロスカットがあるから安全」と考えず、取引数量と損切りを先に決めてください。 出典:金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」
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