スキャルピングの許容スリッページ設定|8社の記載と空欄の意味

許容スリッページの設定範囲は0〜999pipsの会社から0.0〜9.0ポイントの会社まで分かれます。空欄で制限なしになる会社とチェックを外すと幅0になる会社の違い、スピード注文で設定が効かない会社を8社の公式記載と確認日つきで整理しました。

本記事は情報提供を目的としたもので、投資判断を勧誘するものではありません。FXには元本割れのリスクがあります。

許容スリッページは、注文を出したときの価格と実際に約定する価格のずれを、どこまで受け入れるかを先に決めておく設定です。短い値幅を何度も往復する取引では、この1つの設定で「約定しない」のか「想定より不利な価格で約定する」のかが入れ替わります。ところが公式ページとマニュアルを8社ぶん読むと、設定できる範囲の公表のしかたがそろっていません。0〜999Pipsと書いている会社、0.0〜9.0ポイントと書いている会社、範囲そのものを公表していない会社に分かれます。

口座を移したときに事故になりやすいのは、制限を外す操作です。GMOクリック証券のFXネオは、スリッページの欄を空欄にすると制限なしになると記載しています。松井証券のMATSUI FXは、チェックを外すと幅0として発注されると記載しています。どちらも数値を入力しない操作ですが、結果は正反対です。

この記事では、8社の公式ページに書かれている設定範囲、単位、制限を外す指定、設定が効かない注文を、確認日つきで並べます。推奨値は書きません。単位の定義も公表されている範囲も会社ごとに違うため、同じ数値を入力しても同じ条件にならないためです。ずれを記録して検証する手順はスキャルピングのスリッページ対策、手法そのものの可否と約款の扱いはFXのスキャルピングと会社選びで扱っています。

低いスプレッドで選ぶときに、監督指針が挙げている論点

金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」は、スプレッドまたは手数料が特に低い取引を広告等で強調して表示している場合に生じ得るおそれの1つとして、次を挙げています(2026年10月9日確認)。

顧客の注文時に表示されている価格又は顧客が注文時に指定した価格と約定価格との相違(以下「スリッページ」という。)が生じ、広告等で表示するよりも高いスプレッドで取引を行うこととなるおそれ

スプレッドの数字だけを見て会社を決めると、実際に負担する幅はずれのぶん広がり得るという指摘です。往復の回数が多い取引では、1回あたりの小さな差が回数ぶん積み上がります。

同じ監督指針には「通貨関連店頭デリバティブ取引等におけるスリッページの取扱い」という項目もあり、顧客に不利な方向だけずれを適用する扱いや、不利な方向の許容幅を有利な方向より広く設定する扱いが行われていないかを、監督上の着眼点として挙げています(2026年10月9日確認)。非対称な扱いは、業者側の管理態勢の問題として扱われているということです。利用者の側で確認できるのは、自分の口座で設定できる幅と、その幅を超えたときに何が起きるかです。スプレッドという言葉の意味はスプレッドとは、銭とpipsの換算はpipsと銭の違いにまとめています。

公表されている設定範囲は、会社で2桁ちがいます

公式ページとアプリのマニュアルに書かれている範囲を、表記のまま並べます。要約や単位の換算はしていません。

会社(サービス) 公式ページの記載 単位 出典・確認日
MATSUI FX(松井証券) スリッページ幅は0〜999.0pipsの範囲内で設定できる。対日本円通貨ペアは1.0pips=1銭 pips 松井証券(2026年10月9日)
みんなのFX 通貨ペア(LIGHTペア以外):0〜999Pips、LIGHTペア:0〜999.9Pips Pips みんなのFX(2026年10月9日)
LIGHT FX スリッページ幅を入力します(0〜999.9Pips) Pips LIGHT FX(2026年10月9日)
DMM FX スリッページを設定します(0〜99.9pips)。設定値を超えるスリッページが発生した場合、注文が失効 pips DMM FX(2026年10月9日)
外貨ex(GMO外貨) 設定した値(0.0〜9.0ポイント)よりも不利な方向へ変動した場合、約定を制限 ポイント GMO外貨(2026年10月9日)
外貨ネクストネオ(外為どっとコム) マーケット注文では初期設定を50pipsとしている pips 外為どっとコム(2026年10月9日)
FXネオ(GMOクリック証券) 許容スリッページの限度幅を予め設定することが可能。空欄時はスリッページ制限なし pips GMOクリック証券(2026年10月9日)
SBI FXトレード 許容スリッページを取引画面で設定することができる 記載を確認できず SBI FXトレード(2026年10月9日)
許容スリッページとして設定できる上限の公表値を8社ぶん対数目盛の棒グラフで比べた図。1,000pips近くまで伸びる3社、100pipsまでの1社、9ポイントまでの1社、範囲の記載がない3社に分かれる
棒は各社が公表している上限までの幅です。目盛が対数なので、右の目盛へ1つ進むごとに10倍になります。破線の枠は上限の記載を確認できなかった会社で、外為どっとコムは初期設定の50pipsの位置だけを縦線で示しました。外貨exだけ色を変えているのは、単位が「ポイント」と書かれているためです。

上限を公表している5社のうち、3社が999前後、1社が99.9、1社が9.0です。約100倍の開きがありますが、これは「どの会社なら滑らないか」を示す数字ではありません。上限は、利用者がどこまで広い幅を指定できるかであって、実際に発生するずれの大きさではないためです。

単位の書き方もそろっていません。松井証券は対日本円通貨ペアで1.0pips=1銭、外貨同士では1.0pips=0.0001と定義を書いています。外貨exは「ポイント」で、他社の「pips」と同じ幅かどうかは公表されていません。SBI FXトレードは取引画面で設定できるとだけ記載しており、範囲を確認できませんでした。範囲の記載が無いことは、設定できないという意味ではありません。当サイトが公式ページから見つけられなかった、という意味です。

「空欄」と「0」は、見た目が似ていて逆の意味になります

ここが、口座を増やしたときにいちばん危ない部分です。制限を外す操作が、会社によって違う形で用意されています。

制限をなくす指定と制限を最も強くする指定を5社ぶん並べた比較マトリクス。MATSUI FXはチェックを外すと幅0、FXネオは空欄で制限なしになることが強調されている
中央の列は約定を優先する側、右の列は価格を優先する側の指定です。黄色で塗った2つのセルは、どちらも数値を入力しない操作ですが、FXネオでは制限なし、MATSUI FXでは幅0になります。みんなのFXとLIGHT FXには【無制限】という明示のボタンが用意されています。

GMOクリック証券のよくある質問は、WEB取引について新規注文発注時に注文タイプ「成行」を選択したあと許容スリッページを入力できるとし、空欄時はスリッページの設定がない注文として受け付けられると記載しています。スマートフォンアプリの操作マニュアルでも、スピード注文のスリッページは初期値を設定する項目で、空欄時はスリッページ制限なしになると書かれています(いずれも2026年10月9日確認)。

松井証券の説明は逆向きです。スリッページ幅はpipsで0〜999.0の範囲内で設定し、チェックを外すとスリッページ幅0として発注されると記載しています(2026年10月9日確認)。幅0は、ずれを一切受け入れない指定です。空欄にすれば緩くなるという思い込みのまま同じ操作をすると、約定しない注文を出し続けることになります。

みんなのFXとLIGHT FXは、幅を入力する欄とは別に【無制限】をタップする操作が用意されており、設定を無効にする手順として明示されています。みんなのFXの公式ページは、約定を優先させる場合にはスリッページ幅を広く、価格を優先させる場合にはゼロもしくは狭く設定すると、設定の考え方そのものを書いています(いずれも2026年10月9日確認)。どちらを優先するかを決める設定であり、両方を同時に満たす値はありません。

幅を超えたときに起きるのは、不利な約定ではなく失効です

幅を狭くしておけば不利な価格を避けられますが、その代わりに注文が成立しません。会社の記載を読むと、超えたときの動作が同じ形で書かれています。

発注、約定処理時点のレートとの照合、設定した幅の範囲内かの判定を経て、範囲内なら約定し範囲外なら失効する流れと、再発注までに価格が動くことを示した工程図
判定されるのは発注した瞬間の表示レートではなく、約定処理をする時点のレートです。範囲外になった注文は不利な価格で約定するのではなく、失効します。下に並べた3つは、その動作を書いている各社の記載です。

松井証券のFX取引ルールは、発注画面の当社生成レートを基準としてスリッページ幅の設定が可能で、約定処理をする時点の当社生成レートがスリッページ幅の範囲内であれば約定し、範囲外であれば約定しないと記載しています。DMM FXは、即時注文で設定幅を超えたスリッページが発生した場合は注文が不成立になるとし、スマホアプリのクイックガイドでは注文が失効すると書いています。GMOクリック証券のスリッページのページは、許容スリッページを設定された場合、注文を受け付けることができない場合があると記載しています(いずれも2026年10月9日確認)。

失効そのものはエラーではありません。ただ、約定したつもりで次の操作に進むと、建玉が無いまま決済注文を出したり、同じ注文を二重に出したりします。注文が通らなかったときの確認の順番は注文が受け付けられないときに整理しています。

有利な方向へずれたときの扱いを書いている会社もあります。外為どっとコムは、トレーダーにとって有利な方向へレートがずれた場合は、設定したスリッページの許容値に関係なく注文が成立するとしています。外貨exは、有利な方向への変動の場合は設定値にかかわらず有利なレートで約定するとしています。GMOクリック証券のスリッページのページにも、有利なレートで約定する場合があるという記載があります(いずれも2026年10月9日確認)。許容幅は、不利な方向だけに働く上限として書かれているということです。

ワンクリックで出す注文では、設定が効かない会社があります

スキャルピングで使われるのは、確認画面を省いて1タップで発注する注文です。ところが、その注文ではスリッページ設定が対象外になると書いている会社があります。

会社(サービス) 設定が有効と記載されている注文 対象外・設定できないと記載されている注文 出典・確認日
みんなのFX 注文設定で指定した幅の範囲内で新規注文・決済注文が約定 スピード注文、全決済注文ではスリッページ設定が有効にならない みんなのFX(2026年10月9日)
DMM FX 即時注文(発注時に許容幅を設定できる) 成行注文はスリッページ幅の設定を行うことができない DMM FX(2026年10月9日)
外貨ex(GMO外貨) リアルタイム注文、ワンタッチ注文(0.0〜9.0ポイント) 逆指値注文には制限を設けていない GMO外貨(2026年10月9日)
FXネオ(GMOクリック証券) 成行注文(許容スリッページ機能で最大値を設定)、スピード注文(初期値を設定) 該当する記載を確認できず(空欄時は制限なしとして受け付け) GMOクリック証券(2026年10月9日)
MATSUI FX(松井証券) 成行注文(0〜999.0pipsで幅を設定) 該当する記載を確認できず 松井証券(2026年10月9日)

みんなのFXのアプリ版マニュアルは、スピード注文と全決済注文ではスリッページ設定が有効にならないと記載しています。全決済は表示されている建玉を一度に決済する機能で、同マニュアルは、保有建玉の数量が1度に発注できる最大数量を上回る場合、約定日時の古い建玉から順に最大発注数量で部分決済をするとしています(いずれも2026年10月9日確認)。まとめて閉じる操作ほど幅の指定が働かない、という組み合わせです。全決済そのものの使いどころは建玉をまとめて決済するで扱っています。

DMM FXは、注文の種類のうち即時注文について発注時に許容するスリッページ幅を設定できるとし、成行注文についてはスリッページ幅の設定を行うことができないため意図しない不利なレートで約定する場合があると記載しています(2026年10月9日確認)。同じ会社の中でも注文の呼び方で扱いが分かれるため、普段押しているボタンがどちらなのかを先に確かめる必要があります。

GMOクリック証券のFXネオ取引ルールのページ。お取引に関する条件や取引手数料などの項目が並んでいる
引用:GMOクリック証券「FXネオ 取引ルール」のファーストビューです。許容スリッページの記載はこの画面より下の「注文タイプ」の欄にあり、成行注文について、許容スリッページ機能を利用してスリッページの最大値を設定することが可能と書かれています。同ページからは「スリッページについて」の解説へのリンクも張られています。出典:GMOクリック証券「FXネオ 取引ルール」(キャプチャは2026年8月16日取得、記載は2026年10月9日に確認)。画像内のサービス名・ロゴ・商標は各権利者に帰属します。

ツールごとの提供形態や対応端末はFXの取引ツール・アプリを比較する、会社全体の取引条件はFX会社の総合比較で項目別に並べています。

幅を金額に直すと、設定の意味が見えます

pipsのままでは幅の大小が実感しにくいので、金額に直します。以下は仕組みを理解するための仮定の計算です。松井証券が記載している対日本円通貨ペアの1.0pips=1銭(0.01円)を使い、1回の約定で許容幅いっぱいまでずれた場合の金額を出しました。特定の会社で実際に発生する金額や、平均的なずれを示すものではありません。

設定した幅 1,000通貨 1万通貨 10万通貨
0.3pips 3円 30円 300円
1.0pips 10円 100円 1,000円
3.0pips 30円 300円 3,000円
9.0pips 90円 900円 9,000円
99.9pips 999円 9,990円 99,900円
999.0pips 9,990円 99,900円 999,000円

この表から読み取れるのは、上限の数値が実用の目安ではないということです。1万通貨で999.0pipsまで許容するという指定は、1回の約定で最大9万9,900円ぶんの不利なずれを受け入れる計算になります。反対に、幅を0に近づけるほど失効が増え、同じ場面で何度も発注し直すことになります。どちらを選ぶかは往復の頻度と狙う値幅によって変わり、公表値から決まるものではありません。だから当サイトは推奨値を書きません。

自分の口座で確認する順番

確認の手順に置き換えます。会社が変わるたびに、この順でもう一度見ることになります。

  • 取引ルールまたは取引概要のページで、スリッページ幅の設定ができると書かれているかを見る
  • よくある質問で、設定できる範囲と単位(pipsかポイントか)を確認する
  • アプリやツールの操作マニュアルで、注文設定の画面に幅の入力欄があるかを見る
  • 制限を外す操作が「空欄」「無制限」「チェックを外す」のどれなのかを確認する
  • 普段使う注文(即時注文、成行注文、スピード注文、全決済)で設定が有効になるかを確認する
  • 有利な方向へずれた場合の扱いが書かれているかを見る

いずれも確認した日付を値と一緒に控えてください。注文設定の仕様はアプリの更新で変わることがあり、日付の無い記録は半年後に使えません。

確認した日付と見直しの周期

この記事の記載は、すべて2026年10月9日に各社の公式ページとマニュアルで確認したものです。取引ルールやマニュアルは会社の判断で変わるため、90日を目安に見直します。次回の確認予定は2027年1月7日です。

とくに変わりやすいのは、アプリの注文設定の画面構成と、注文の種類ごとの可否です。範囲を公表していない3社については、公表が始まれば表を更新します。表の確認日から日数が経っている場合は、記事の表記より公式ページの表示を優先してください。

出典と確認日の一覧

  • 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(IV.監督上の評価項目と諸手続)」(2026年10月9日確認)
  • 松井証券「スリッページ幅の設定方法を教えてください。」「FX 取引ルール」(2026年10月9日確認)
  • みんなのFX「スリッページについて」「操作マニュアル アプリ版(注文設定・スピード注文)」(2026年10月9日確認)
  • LIGHT FX「操作マニュアル 設定 - 注文設定」(2026年10月9日確認)
  • DMM FX「スリッページの幅を指定することはできますか?」「注文の種類について教えてください。」「クイックガイド スマホアプリ DMMFX」(2026年10月9日確認)
  • GMOクリック証券「スリッページ」「FXネオ 取引ルール」「設定/注文設定(操作マニュアル)」「許容スリッページの設定方法を教えてください。」(2026年10月9日確認)
  • GMO外貨「スリッページとはなんですか。」「指値注文、逆指値注文にスリッページはありますか。」(2026年10月9日確認)
  • 外為どっとコム「スリッページとは?原因と許容値の設定方法を解説」(2026年10月9日確認)
  • SBI FXトレード「スリッページとはなんですか?」(2026年10月9日確認)

この記事の更新・確認情報

情報の基準日
編集部による確認日
情報の変動性
中(サービス・制度の情報)
次回確認予定
一次情報の件数
18件(本文末の参考資料に記載)

金融庁は、外国為替証拠金取引について相場変動、金利変動、流動性、信用、システムなど複数のリスクを挙げています。 ロスカットは損失の拡大を抑える仕組みですが、急変時に証拠金を上回る損失が生じる可能性まで消すものではありません。 「ロスカットがあるから安全」と考えず、取引数量と損切りを先に決めてください。 出典:金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」

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