FX会社の信託保全を12社で比較|信託先の銀行名と返還の条件
店頭FXの証拠金は内閣府令で信託が義務づけられ、12社すべてが区分管理の記載を持っていました。差が出たのは信託先の金融機関名を公表しているかと、全額返還を保証しないと書いているかの2点です。公式表記を出典と確認日つきで並べます。
FX会社が破綻したら、預けていたお金はどうなるのか。店頭FXでは、顧客から預かった証拠金を信託銀行等へ金銭信託することが内閣府令で義務づけられています。会社が独自に用意した付加サービスではありません。当サイトが公式ページを確認できた12社は、いずれも区分管理または信託保全の記載を持っていました。この項目の有無で会社を選び分けることはできない、ということです。
差が出たのは別の2点でした。1つは、信託先の金融機関名まで公表しているかどうか。もう1つは、仕組みの限界を自分から書いているかどうかです。この記事では、12社の公式ページの表記をそのまま並べ、制度の根拠と、この仕組みでは戻ってこないお金の範囲を示します。編集部の点数や順位は付けません。
信託は会社の判断ではなく府令で決まっています
金融先物取引業協会は、FX取扱業者が顧客から預かった証拠金の管理方法について、2010年2月1日より信託銀行等への金銭信託に一本化されたと説明しています。根拠は金融商品取引業等に関する内閣府令143条1項1号です。改正府令は2009年8月1日に施行され、既存の業者には2010年1月31日を期限とする6か月の経過措置が置かれました(2026年10月7日確認)。
同協会の説明では、業者は「個別顧客区分管理金額及び顧客区分管理必要額を日々適切に算定し、それに見合う金額を期限内(計算日の2営業日以内)に信託銀行等へ金銭信託する」ことが求められます。信託財産の元本の評価額が顧客区分管理必要額に満たなくなった場合は、満たなくなった日の翌日から数えて2営業日以内に不足額を追加信託しなければなりません。加えて、受益者代理人のうち「その中の一人は弁護士等を充てなければならない」とされ、業者が破綻したときは弁護士等の受益者代理人のみが顧客資産保全のための権限を行使します(2026年10月7日確認)。
ここで押さえておきたいのは、計算の日と信託が実行される期限がずれている点です。必要額の算定は毎営業日でも、その金額が信託先へ渡るまでには2営業日の猶予があります。制度としてそう設計されているので、どの会社を選んでもこの時間差は残ります。証拠金そのものの考え方を整理していない場合は、先にFXの証拠金とは何かを読んでおくと、以下の表記の意味が取りやすくなります。
12社の信託先と公式ページの表記
次の表は、各社の公式ページにあった文章をそのまま転記したものです。要約や言い換えはしていません。並び順は、信託先の金融機関名を確認できた会社を先に置き、その中は当サイトのデータ登録順です。優劣の順位ではありません。
| サービス(会社) | 公式ページの表記 | 出典・確認日 |
|---|---|---|
| FXネオ(GMOクリック証券) | 三井住友銀行・三井住友信託銀行、および日証金信託銀行の3行と顧客区分管理信託契約を締結することにより、お預かりしている証拠金を信託口座にて分けて管理いたします | FXネオ(2026年10月7日) |
| DMM FX | 日証金信託銀行株式会社、株式会社SMBC信託銀行、SBIクリアリング信託株式会社にて金銭信託 | サービス概要(2026年10月7日) |
| 外貨ネクストネオ(外為どっとコム) | お預かりしたお客様の資産を当社の固有資産とは区分して三井住友銀行、みずほ信託銀行、あおぞら銀行、SBIクリアリング信託、および三井住友信託銀行に信託するセーフティーネクストを実施いたしております | セーフティーネクスト(2026年10月7日) |
| みんなのFX | 信託先(区分管理先) 三菱UFJ信託銀行株式会社、SBIクリアリング信託株式会社、株式会社三井住友銀行、日証金信託銀行株式会社 | サービス概要(2026年10月7日) |
| LIGHT FX | 信託先(区分管理先) 三菱UFJ信託銀行株式会社、SBIクリアリング信託株式会社、株式会社三井住友銀行、日証金信託銀行株式会社 | 取引概要(2026年10月7日) |
| トライオートFX(インヴァスト証券) | お預かりしている証拠金等を信託契約を締結している「三井住友銀行」、及び「日証金信託銀行」にて当社の資産とは区分して保管 | 取引ルール(2026年10月7日) |
| 外貨ex(外貨ex byGMO) | お客さまからお預かりしている資産を「三井住友銀行」、「みずほ信託銀行」および「SBIクリアリング信託」に預け、当社の固有財産と区分して、信託財産として管理しております | 公式サイト(2026年10月7日) |
| IG証券 FX | お預かりした資産は法令の定めにより三井住友銀行及びみずほ信託銀行の専用信託口座で管理しています | 資産の管理(2026年10月7日) |
| FXブロードネット | お客様からお預かりした証拠金等の資金は三井住友銀行への金銭信託により区分管理しております | 取引概要(2026年10月7日) |
| SBI FXトレード | お客さまが預託された証拠金等は当社の資産とは区分管理されて保全されております(信託保全)。万が一、当社に不測の事態が生じた場合でも、受益者代理人を通じてお客さまに返還すべき金額が返還されます | 会社概要(2026年10月7日) |
| MATSUI FX(松井証券) | 当社は、経営破綻等、万が一の場合に備えるため、分別管理を行っています。また、公的な補償である投資者保護基金にも加入しています。 | よくあるご質問(2026年8月16日) |
| 外為オンライン | 信託保全(当社の財産と区分して管理) | 公式サイト(2026年8月16日) |
信託先の金融機関名まで確認できたのは、表の上から9ブランドです。名前までは確認できなかったのが、SBI FXトレード、松井証券、外為オンラインの3社でした。外為オンラインの取引要綱には信託保管に基づく旨の記載がありますが、金融機関名は確認できていません(2026年10月7日確認)。確認できなかったことは、保全していないという意味ではありません。別のページや約款に書かれている可能性があります。
信託先の数は1行から5行まで分かれました。少ないほうが危ないとも、多いほうが安全とも言えません。制度が求めているのは必要額に見合う金銭信託で、信託先の数に基準はないためです。数が多いことを安全性の指標として並べ替えると、公表値にない順位を作ってしまいます。
「全額返還を保証するものではない」と書いた会社があります
12社のうち、仕組みの限界を自分から書いていたのはFXブロードネットでした。同社は取引概要で、法令上要求される区分管理方法の信託一本化を整備しているとしたうえで、「区分管理必要額算出日と追加信託期限に時間差があること等から、いかなる状況でも必ずお客様からお預りした証拠金が全額返還されることを保証するものではありません」と記載しています(2026年10月7日確認)。
これは同社だけに固有の弱点ではありません。先に見たとおり、算定日と追加信託の期限がずれるのは府令に沿った運用です。つまりこの但し書きは、どの会社にも共通する構造を言葉にしたものです。書いていない会社にこの時間差がない、とは読めません。
受益者代理人を誰が務めるかを書いている会社があります
府令が弁護士等を1人以上求めているのは受益者代理人です。破綻時に顧客資産の返還を動かすのはこの人たちなので、誰が務めるかを書いている会社の記載は読んでおく価値があります。
外為どっとコムは、受益者代理人(甲)を当社の内部管理担当役員または内部管理責任者、受益者代理人(乙)を外部の弁護士としています。インヴァスト証券は、当社と利害関係がない第三者の弁護士を選任しており、毎営業日の信託すべき証拠金等の金額や信託先との資金の授受を弁護士に報告すると書いています。SBI FXトレードとIG証券も、返還が受益者代理人を通じて行われるとしています(いずれも2026年10月7日確認)。
信託の頻度まで書いている会社もあります。外為どっとコムは、毎営業日(日本の祝祭日は除く)の午前7時に入金を確認し、確認した日の翌営業日に顧客区分管理信託へ入金すると記載しています。インヴァスト証券は、毎営業日の取引時間終了時点を基準に信託すべき金額を計算し、その金額以上の額を2営業日後に信託先へ預託するとしています(2026年10月7日確認)。
信託保全は、取引で減ったお金を戻す仕組みではありません
区分管理の対象は、預けた現金だけではありません。外為どっとコムは、保証金だけでなくポジションの評価損益や未実現スワップポイント等も信託保全の対象であり、為替取引によって実現した損益も保全されるとしています。インヴァスト証券は、為替差損益金、評価損益相当額、スワップポイントを含む有効証拠金が対象だと書いています(いずれも2026年10月7日確認)。
裏返すと、相場が動いて減った分は戻りません。保全されるのは、その時点で会社が顧客へ返すべき金額です。ロスカットで損失が確定したあとの有効証拠金が保全の対象になるのであって、確定した損失が埋め戻されるわけではありません。預けた額を超える損失が出たときの扱いは、預けた額を超える損失は起きるのかで整理しています。
もう1つ、混同しやすいのが投資者保護基金です。日本投資者保護基金は、補償の対象と対象外を次のように公表しています(2026年10月7日確認)。
| 区分 | 日本投資者保護基金の記載 |
|---|---|
| 補償の対象 | 株式の取引(海外で発行されたものを含む)/公社債の取引(海外で発行されたものを含む)/投資信託の取引(海外で発行されたものを含む)/株式の信用取引に係る保証金/国内の取引所の市場デリバティブ取引に係る証拠金 |
| 対象とならない主な取引 | 店頭デリバティブ取引(先物、オプション、CFD取引(差金決済取引)を取引所市場外で相対で行う取引)/海外取引所の有価証券市場デリバティブ取引/外国為替証拠金取引(FX取引)/合同出資などの第二種金融商品取引業の商品に該当するものの取引 |
| 補償の限度 | お一人あたり合計1,000万円までを上限に、金銭で補償を行います |
ここで、上の表にある松井証券の記載をもう一度見てください。同社は分別管理に加えて投資者保護基金への加入を書いています。証券会社としての説明であり、事実です。一方で、基金の側は補償の対象とならない主な取引に外国為替証拠金取引を挙げています。基金に加入している会社でFXを取引しても、FXの部分は基金の補償対象にはならない、という読み方になります。店頭FXで預けた資金を支えているのは、基金ではなく区分管理信託です。
比較表には、いつの時点かを書いてください
この種の表は、作った時点を書かないと使えなくなります。実例が2つあります。
1つは信託先の金融機関です。当サイトは2026年8月16日時点で、みんなのFXの信託先を3社として記録していました。2026年10月7日に同じページを開くと、日証金信託銀行株式会社が加わった4社になっていました。2か月弱で変わる項目だということです。
もう1つは、会社そのものが変わる場合です。岡三オンラインは、店頭FX(岡三アクティブFX)事業を2026年9月14日を効力発生日としてヒロセ通商株式会社へ譲渡し、原則として取引口座をヒロセ通商へ引き継いだうえで、効力発生日以降はヒロセ通商で継続して取引できると公表しました。店頭FX口座の預り残高と顧客情報も移管されます。取引所FX(くりっく365)は譲渡後も岡三オンラインで取引できるとしています(2026年10月7日確認)。この記事の表は効力発生日より後に作ったため、岡三オンラインの店頭FXは比較対象から外しました。
公式ページで確認する順番
- 探すページは「取引概要」「取引ルール」「会社概要」「資産の管理」のいずれかです。商品の紹介ページには書かれていないことが多いです
- 信託先の金融機関名が書かれているかを見ます。書かれていない場合は、そのことを空欄として残します
- 受益者代理人に関する記載があるかを見ます。弁護士等が入っているかが府令の要件です
- 信託の頻度と、追加信託の期限に関する記載を探します。時間差について但し書きがあれば、それも記録します
- 投資者保護基金への加入の記載は、FXの補償とは別の話として分けて書きます
- 確認したページのURLと日付を、値と同じ行に残します
会社が破綻したときにお金が戻るかどうかは、広告の文言ではなく、この仕組みが法令どおりに動いているかで決まります。12社の表記を並べても、そこに優劣は現れませんでした。現れたのは、どこまで自分から書いているかの違いです。会社ごとの取引条件そのものの差は、強制決済の水準と判定が13社でどう違うかで扱っています。
参考情報
- 金融先物取引業協会「区分管理方法の信託一本化」(2026年10月7日確認)
- 金融先物取引業協会「FX取引の規制について」(2026年10月7日確認)
- 日本投資者保護基金のQ&A(2026年10月7日確認)
- GMOクリック証券「FXネオ」、DMM FX「サービス概要」、外為どっとコム「セーフティーネクスト」、みんなのFX「サービス概要」、LIGHT FX「取引概要」、インヴァスト証券「トライオートFX 取引ルール」、外貨ex byGMO 公式サイト、IG証券「お預かりした資産の管理」、FXブロードネット「取引概要」、SBI FXトレード「会社概要」(いずれも2026年10月7日確認)
- 松井証券「よくあるご質問」、外為オンライン 公式サイト(2026年8月16日確認)
- 岡三オンライン「店頭FX事業の譲渡に関するお知らせ」(2026年10月7日確認)
この記事の更新・確認情報
- 情報の基準日
- 編集部による確認日
- 情報の変動性
- 中(サービス・制度の情報)
- 次回確認予定
- 一次情報の件数
- 16件(本文末の参考資料に記載)
金融庁は、外国為替証拠金取引について相場変動、金利変動、流動性、信用、システムなど複数のリスクを挙げています。 ロスカットは損失の拡大を抑える仕組みですが、急変時に証拠金を上回る損失が生じる可能性まで消すものではありません。 「ロスカットがあるから安全」と考えず、取引数量と損切りを先に決めてください。 出典:金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」
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